転生者とTS聖女とTS悪役令嬢と追放系ハズレスキルが集まった結果。   作:RGN

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転生者と教会と聖女

 ラガンは別に敬虔な信徒というわけではないが、教会の説教というものが嫌いではなかった。

 というのも、この世界の教会の教典が意外にも面白いからである。

 天地創世関連など、大筋こそラガンが前世より持ち越した記憶と一致するのだが、この世界ならではの要素……魔法や怪物と言ったそれらの影響している部分がかなり存在し、またその影響で解釈自体もかなり変わっていたりと、聞いていて「ほぉ」と感心させられる機会も少なくない。

 何なら説教会が終わった後に神父へ質問する事も多くあり、大抵の場合シスターさんも参加して結構白熱した議論になるのである。

 

 また、ラガンは津々浦々の書籍を趣味として蒐集しており、教典の関連を仕入れる時はこの教会を利用させてもらっていたりした。

 そしてその日、ラガンが教会に訪れたのは説教を聞くわけでも教典を受け取るわけでもなく、少々気になる事を聞き、それについて質問する事が目的であった。

 

「おや、ラガンさん。珍しいですね、平日にあなたが訪ねてくるなど」

「いや、少々聞きたい事があってな。教典関係でなく、教会の関連で」

「ふぅむ、私に答えられる事ならば良いのですが」

「答えられないのならそれで構わんが……聖女、という人物の存在を最近になって知ってな」

「あぁ、成程」

 

 神父が幾つか頷いて納得の意を示す。

 

「どうにも今までに聞いた事の無い単語だったもので、気になったわけだ」

「えぇ、えぇ。まぁ仕方ありますまい。何せその存在を教会が認知したのもつい最近の事でして、聖女の称号を与えたのもその後で御座いましたから」

「ふむ? その聖女の称号とやらに何か意味はあるのか?」

「まぁ、読んで字の如く聖なる乙女、と言った所でしょうね」

「……権力的には?」

「明言されておりませんな。つまりそういう事でしょう」

 

(要するに、お飾りって事か)

 

 ラガンはそのように理解する。神父も明言こそしなかったが、全く同じ事を考えているらしい。

 まぁ、前世では世紀の大失政とされていた免罪符を余裕で大量生産している教会の上部層の事である。

 どうせポッと出の女にそんな大層な役職を与えてなるものかと、わざわざ形だけの称号を用意したのだろう。

 

「……で? そうなると、一体何を以て教会はその少女を聖女と認定したんだ?」

 

 しかし逆に言えば、そんな上部層の連中が緊急でお飾りの椅子を用意しなければならないレベルの人物が発生したという事になるが。

 何がどうなったらそうなるというのだろうか、と。

 ラガンは非常に気になった。

 

「それが、私も未だ半信半疑なのですが……祝福(ギフト)を五つお持ちになっておられるのだとか」

「は? マジ?」

 

 思わず素で驚いてしまうラガン。

 実際、祝福(ギフト)五つというのはそのレベルの話であった。

 

 まずそもそも祝福(ギフト)が何であるかと言うと、生まれつき個人に宿ると言われる魔法とはまた別の特殊能力のことであり、後天的にはどう頑張っても入手できないこと、また魔法では不可能とされる事象を可能とする事から、教会では『神からの祝福』とされていた。

 要するに能力バトルものの作品における能力に相当するようなものである。

 

 何にせよ、そんな祝福(ギフト)であるが、当然ながら誰もが持つわけではない。

 少なくとも教会が調べた限りでは一万人に一人とされていて、当然そんな彼らが持つ祝福(ギフト)は一つのみである。

 歴史を紐解けば、過去に祝福(ギフト)を2つや3つ持った人物が教皇として存在したとされているが、それも眉唾ものであると言われていた。

 

 しかし、その聖女とやらはなんと五つも祝福(ギフト)を持っているらしい。

 そんな人物が本当にいれば、教会史上最も神に愛された人物である事には間違いなく、女であるとかそんなの関係なく教会のトップ、つまり教皇になるべき人物である。

 が、聖女としての椅子を与えられたという事は……。

 

「……まぁ、やっぱりそういう事になるのか」

「私の立場でこういう事を言うのは非常に憚られるのでしょうが……だいぶ腐っているかと」

「連中の事だ。最悪の場合、消される可能性もあるな」

「嘆かわしい事です。……しかし、どうにかするにも私どもでは力が足りない」

 

 心の底から悲しそうに神父は言う。

 実際のところ、教会で腐っているのは上層部のみであり、彼らのような末端の神父やシスターは極めて敬虔な信徒である事が殆ど。

 彼らとしては、本当に口惜しい気分なのだろう。

 

「どうか無事でおられるのなら良いのですが……」

「そう思うなら、やる事は決まっているだろう」

「……そうですね。私はそのためにこの場所にいるのですから」

 

 と。彼は手を組み、神へ祈り始めた。

 ラガンもそれに倣って手を組み、特に信じているわけでもなかったが神に祈る。

 流石に無辜の少女が汚いオッサンどもの毒牙にかかるというのは、可哀想だった。

 

 一方その頃。

 

(……さて、ちょっとマズいって騒ぎじゃねぇよなァ)

 

 と、やけに布地が薄い上に少ない服を纏い、やけに豪華な椅子に座りながらそう考えるのは聖女ことTS転生者のアルマ・ラメセスである。

 彼女本人も、現状がどれだけヤバいかはしっかりと理解していた。

 

(まぁ、連中としては俺をモノにしたいか、排除したいかのどっちかってなるんだろうが……)

 

 にしても、ちょっとくらいは欲望を隠せないモンかね。

 

 いわゆる神様転生と呼ばれる手法でこの世に二度目の生を受けたアルマは、その際に神より授与された五つの祝福(チート)の一つ『邪視』によって、人の邪な欲望を視覚として察知する事ができた。

 また、もう一つの祝福(チート)である『看破』は嘘か否かを完璧に判断できるので、最早彼女にあらゆる腹芸というものは通用しないと言って良かった。

 

 そんな彼女であるので、教会のお偉方と色々と会話をしているうちに連中が欲望を曝け出しまくり嘘吐きまくりである事はもうバレバレ。

 彼女自身をして「うおっエッロ」と言わしめる肉体を見てはもう穢らわしい欲望を垂れ流していたのも勿論バレバレ。

 聖女としてあーでのこーでの、神の御使としてうんたらかんたらと言っていたが、色欲と腐敗にどっぷり浸かった連中の嘘塗れの言葉など完璧に聞き流していた。

 

 しかしまぁ実際、彼女が神の御使であるのは事実であり、「世の中を正せ」的な事を言われたのもまた覆しようのない事実。

 それに教会も上層部はクソであったが中層以下は割とそうでもないらしく、彼女が聖女としてそう言った人達の前に出た時、そう言った欲望を垂れ流すどころか畏怖と尊敬が集まって来てビックリしたのを彼女は覚えていた。

 だからそう言う人たちのためにも、彼女は出来る限り世直しを頑張ろうと決めていた。

 

 しかしあんな連中の主導の下でどうにかなりそうかと聞かれれば絶対にNO。

 むしろより酷い事になる気もする。

 だって免罪符売らされたし。

 

 アルマの前世はそこまで勉強のできる方では無かったが、免罪符が良くないモノであると言うことくらいは流石に知っていた。

 プロレタリアだかルネサンスがうんたらかんたらみたいな話だったと思う。知らんけど。

 

 まぁ何にせよ、今の教会は腐っていて、その毒牙が彼女に伸びているわけである。

 

(そーなると、早急に逃げ出すべきなんだろうが……)

 

 さて、どこにどうやって逃げよう。

 あのクソデブ共は自らの保身にかけては天才的かつ鼻が効く。

 アルマが下手に行動しようと思えば目ざとくそれを察知し、妨害しようとするだろう。

 であるならば、アルマはあのクソデブ共が口を出せないような方法で脱出する必要があったが……

 

(この世界の事、殆ど知らねぇんだよな、俺……)

 

 御使として、半ば『降り立つ』ような形でこの世界での生を受けたアルマは、言ってしまえば世間知らずも良いところだった。

 その事を知っての事だろうが、あのクソデブ共はアルマを出来る限り外の知識に触れさせないように立ち回っているらしい。

 

「じゃあ、無理矢理脱出するか」

 

 アルマは変なところで思い切りが良かった。

 っていうか前世はその思い切りの良さのせいで若くして死んだところがある。

 しかし幸いな事に、今世ではそれでも何とかなってしまいそうな祝福(チート)があった。

 取り敢えず放浪して、良い感じの場所を見つけて、ついでに味方も見つけよう。

 

 そう考えたアルマは、その辺にかかっていたカーテンを引き千切り、マントのようにして巻いて窓から飛び降りる。

 そんな彼女が早速一人目の仲間を見つけるのは、それから数分後の事であった。

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