転生者とTS聖女とTS悪役令嬢と追放系ハズレスキルが集まった結果。   作:RGN

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追放系と聖女様

「お前をパーティから追放する」

 

 転生者……ではなく現地人であるカイル・オドは1ヶ月と2週間ぶりにその言葉を聞いた。

 

 彼は黒曜石等級の冒険者であり、実力もそれ相応。

 人並みの剣技に加え、ある程度の補助魔法を行使できた彼が今し方追放されたパーティで何をしたのかと言えば、普通に役に立っていた。

 

 パーティの足を引っ張ったわけではない。

 他所のパーティとトラブルを起こしたわけでもない。

 罪を犯したわけでもなければ、その他公序良俗に反することもしていなかった。

 

 そんな彼が何度も何度もパーティを追放されているのは、彼が祝福(ギフト)持ちだからであった。

 

 祝福(ギフト)持ちというのはつまり一万人に一人の才能である。

 だから当然、人々からの嫉妬や羨望を集めるわけだ。

 故に、人の悪意をより受けやすくなってしまう。

 

 例えばカイルの場合、彼は平均的な黒曜石等級の冒険者であるが、しかしこれを悪し様に捉えるのなら、祝福(ギフト)持ちであるにもかかわらず平均的なのだとも言える。

 要するに、彼を評価する周りの目に『祝福(ギフト)持ちの癖に』という色眼鏡がかかっているので、彼の実力や功績は正当に評価される事はなく、パーティ内でもパシられ馬鹿にされ、最終的に『お前なんかに報酬なんかやらねぇよバーカ』と追放に至るわけである。

 しかもそうしてカイルを追放した結果として上手く回らなくなったパーティが空中分解し、その原因をカイルが一身に背負わされ、余計な悪評が立つところまでがワンセットである。

 

 しかし、それでもカイルは冒険者を続けた。

 理由は単純、明確な目的があるからだった。

 というのも、彼の持つ祝福(ギフト)は『栽培』であり、植えた植物の成長を超促進する上に最高レベルの品質を保証するとかいう農家になれば最強の能力で、彼はこの祝福(ギフト)を用いる事で貴重な薬草や果実を大量生産し、大金持ちになるのが夢であった。

 だからその祝福(ギフト)を使うための土地と高く売れる植物の種を集めるために金を手に入れるため、こうして冒険者を続けているわけだ。

 

 が、そんなカイルの心もいよいよ折れようとしていた。

 追放に次ぐ追放でカイルのメンタルはもうボロボロ。

 もはやカイルのことを入れてくれるパーティなど無いはずだから、どこか他所のギルドへ移動すべきなのだろうが、しかしもうカイルにはそんな気力も残されていなかった。

 こんな事になるのなら、もっと早くに移動していれば良かったが、より効率的な金稼ぎのためにこの都市に残る決断をしたのは自分自身。

 自業自得というやつだった。

 

(ああ、神様。どうして僕にこんな能力をお与えになったのですか? あなたは僕を愛してはおられないのですか?)

 

 トボトボと、都市外縁の人気のない道を歩きながら、考える。

 

(もうこのまま自殺してやろうかな)

 

 そんな事を彼が思った、その次の瞬間であった。

 

「ヘイそこな少年! 自殺を考えていたな!? 自殺なんていい事ないぞ全く。ってかそんな事するくらいなら俺の役に立ってくれねぇか? 頼むから」

 

 なんかよく分からない不審者が走って来た。

 声的には女性であろうが、しかし格好が常人のそれではない。

 よく分からない白いヒラヒラに赤いローブ……いやローブじゃないアレ。多分カーテンだ。

 っていうかあの人見たことある。聖女様だ。

 

「あの……聖女様、ですよね? 多分」

「おう! そういう事になってるな!」

「……は、はぁ」

 

 そんな馬鹿な。カイルは思った。

 聖女様がこんなところでこんな格好をしている理由がわからないからだ。

 ……しかし、輝くような美貌と、思わずひれ伏したくなるようなオーラ、そしてカイルの中の祝福(ギフト)が騒ぎ出すこの感覚は、正しく聖女様のものに違いない。

 と言う事は、本当に聖女様なのだろうか。

 だがしかし……何と言うか……その……。

 

「……随分と、あー……あの時と随分印象が違うと言いますか」

 

 カイルの言うあの時と言うのは、聖女様が初めて民衆の前に降りて来た時のことである。

 あの時は非常に感動した。涙さえ流した。

 あの時の聖女様の台詞には、心を動かされた者も多かったはずである。

 ……が、今はこんなのである。

 本人に対してこう思うのも不敬かもしれないが、ぶっちゃけコレがあの時の聖女様だとは認めたくなかった。

 

「あー、アレ? 台本よ台本。あのクソデブ共が用意したヤツ。何だって俺に免罪符なんて売らせるかね。あんなのただの金策だろ金策」

「えっ、そうなんですか?」

「そーだよ。直接神様に会った俺が断言してやるよ。っていうか俺ってばああ言うのを正せって言われてこの世界に来てるんだよね」

「……神は……この事を……免罪符を……」

「知らね。免罪符の事を特に言われたわけでも無かったし。……でも普通に考えて、金払えば全部許されるってのも変な話だろうがよ。金は人間が作り出したモンだぞ。神じゃねぇ」

 

 カイルの頭の中が真っ白になるようであった。

 かつてカイルは、己の祝福(ギフト)について教会に相談したことがあった。

 祝福(ギフト)は神からの贈り物であるはずなのに、どうして僕はこんな目に遭っているのか。

 僕は神から愛されているのではないのか、と。

 

 そんなカイルに対し、教会の司教はこう言った。

 あなたが祝福(ギフト)を持ちながら虐げられているのは、あなたの先祖が罪を犯したからです。免罪符を買いなさい。さすれば罪は贖われるでしょう。

 言われるがままに、カイルは大枚を叩いて免罪符を買った。

 これで救われる。そう信じて。

 

 そんな免罪符が、ただの金策? 教会の不正を正すために送られたのが、聖女様?

 

「……わかりました。それで僕は何をすればいいのでしょう」

「いやぁ、それがまだよく分かってないんだよね、俺。このままあそこに閉じ込められてたら、この前みたいに体よく利用されるか、そうでなきゃ殺されると思ったから、逃げ出して来たの」

「そうなんですか……では、都市の外に?」

「ま、そうするつもり。んで、仲間を集めたいなって。ついて来てくれるか?」

「はい。喜んで」

 

 カイルは膝を突き、腰を折って、忠誠を誓った。

 それと同時に、教会への復讐も。

 

「復讐は何も生まないぜ……なんて言えりゃ良かったんだが、今回ばかりは流石になぁ。ただ復讐する事を第一に考えるんじゃねーぞ。メインはあくまで世直しだ」

「…………分かりました」

 

 内心を見透かされ、カイルは初めて心の底から彼女こそが聖女であると確信した。

 

(ああ、この人は本当に聖女様なのだ。そしてきっと、彼女こそが世界を変えて下さるのだろう)

 

 そう考えたカイルであり、この先絶対の忠誠を彼女に誓う事を決意したが、それはそれとして一つだけ気になるところがあった。

 

「ところで、聖女様はどうしてその口調なのです?」

「ああ、俺ってば元男だから」

「は?」

「いや、神が『御使ってんならやっぱ聖女でしょ』って」

「…………………………はぁ、そうなんですか」

 

 脳が理解を拒んだが、無理矢理飲み込んだ。

 カイルはもう細かい事は何も考えない事にした。

 それは思考停止というものであったが、信仰というのは得てしてそういうものである。

 

「しかし聖女様、その格好ではあまりにも目立ちすぎます。食料品のついでにいい感じに目立たない格好もお持ちしますので、どうかお待ち下さい」

「ん、分かった」

 

 と、カイルは踵を返し、自らの拠点へ駆け足で向かう。

 

 カイルがこの世界に生まれ落ちて15年。

 苦しくて苦しくてたまらなかった人生であった。

 祝福(ギフト)の重みに耐えかねて潰れる寸前であったが、しかし彼女に出会うことが出来た。

 

(有難うございます、神様)

 

 カイルは久しぶりに自信を持つことが出来た。

 自分も神に愛されている。

 その事実は、暗く壊れかけていたカイルの心を、明るく照らしていた。

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