転生者とTS聖女とTS悪役令嬢と追放系ハズレスキルが集まった結果。   作:RGN

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追放系と聖女様と戦闘

 この世界の旅には、いつだって危険が伴う。

 盗賊や山賊の存在はもちろん、怪物だって襲って来る。

 そして、彼らが尽きる事は無い。

 だから冒険者も傭兵も、仕事にあぶれる事はない。

 その点で言えばありがたい事ではあったが、しかし今はやめて欲しいところであった。

 まぁ、遭遇した以上は戦うしかないが。

 

「はぁっ!!」

 

 カイルが剣を振るう。

 そうすれば汚らしい断末魔を上げてゴミのように吹き飛んで行くのは、カイルの膝より少し高いくらいの身長を持つ緑肌の怪物(グリーンスキン)、ゴブリンだ。

 最弱の怪物として知られる怪物であるゴブリンだが、しかし相手取るのに全く命の危機が無いというわけではない。

 

「……くっ!」

 

 まず第一に、ゴブリンは群れる。

 一匹いたら三十匹は居ると思え、というのは、ゴキブリだけに当てはまる理屈ではない。

 開けた場所で、かつ少数で戦えば、まず囲まれる。

 

 第二に、武装する。

 棍棒やそれ以下の木の枝がメインだが、喰らえば痛い。

 骨が折れる可能性だってある。

 

 第三に、投石。

 ゴブリンは石を投げる。勿論人間の大人のそれとは比べるまでも無いほど弱いが、頭に当たれば揺れるし、当たりどころが悪ければ気絶する。

 武器に当たれば、武器が壊れる可能性だってあり得なくはない。

 

 並の人間が武装して数人集まったところで、真正面から戦えば平原ならまず殺される。

 それがゴブリンという怪物だった。

 しかしそれでも、ゴブリンという怪物は最も弱い。

 だからゴブリン退治は最も簡単で、最も安い依頼と呼ばれている。

 

 カイルとて、ゴブリン退治の経験はあったから、攻略法は既に知っていた。

 

「下がります!」

「あいよぉ!」

 

 まず第一に、囲われないこと。

 余程の手練れであっても、全方位からの攻撃に同時に対処する事は難しい。

 ましてや一般的な冒険者にそんな事ができるわけもない。

 だからこうして開けた場所で戦闘する時は、とにかく囲まれない事を優先して戦う必要があった。

 その上で一番手っ取り早いのが後退だ。

 

「ほら、こっちだ!」

 

 特にゴブリンは知能が非常に弱いので、自分が追いかけている獲物を目掛けて真っ直ぐ追ってきてくれるから誘導も楽。

 辛うじて覚えていた低威力の火矢(ファイヤアロー)石撃(ストーンシュート)で牽制し、追い着こうとした個体を斬りつけつつ後ろへ下がれば、あっという間にゴブリン共は縦一列に並んだ。

 

「っとぉ!」

 

 投石も、投げて来る方向がわかっているなら対処は十分に可能である。

 子供が喧嘩とかで普通に投げる石よりも遅いのだから、避けるのは勿論迎撃するのも取って投げ返すのも、見えていれば十分に可能だった。

 

「聖女様、まだですか!?」

「いや、いける!」

「了解、下がります!」

「ん! よっしゃ行くぞ2射目ェ!」

 

 カイルが横方向へ大きく飛んだのを目視で確認した後。

 掛け声と共にアルマが放つのは、聖なる白の光弾。

 拳大のそれは眩い光を放ちながら直進し───────

 

『!!?』

 

 ゴブリン共の戦闘にそれが着弾すると、大地を揺るがすような衝撃が発生。

 並んだゴブリン共を、ボウリングのピンよろしく薙ぎ倒した。

 

「っしゃあストライク!」

打撃(ストライク)にしちゃあ強すぎますが……ねっ!!」

 

 これぞアルマの祝福(チート)の一つ、『聖撃』だった。

 とは言っても、これは本来の使い方ではない。

 本来であればこの力は不死(アンデッド)無形の怪物(スピリット)などに使用するもので、それらの穢れた生命を浄化するためのものであるが。

 しかしアルマの「この衝撃波、上手いこと使えそうだな」という発想の下、擬似衝波(ショックウェーブ)として用いているのだった。

 

「よい……しょおっ!」

 

 ゴブリン共が体勢を立て直しきれていない所に突撃し、カイルは一匹一匹を確実に仕留めてゆく。

 そうしてゴブリン共が体勢を整えた所で撤退を開始し、『聖撃』を叩き込む。

 一度にそこまで多くの数のゴブリンを倒せるわけではなかったが、しかし確実にその数は減らす事ができたし、何よりゴブリンは馬鹿だ。

 同じ作戦を繰り返しても学習せず、馬鹿正直に向かって来る。

 だからこのサイクルを繰り返していくうちに、気が付けばゴブリンの数は10を下回っていた。

 

『!? !!? !』

 

 そこまで来れば、流石のゴブリンと言えど自らの不利を悟り、撤退を開始する。

 無論、大人しく帰してやる理由は無い。

 矢のようにカイルが飛び出し、背を向けて逃げるゴブリンを立て続けに殺す。

 ゴブリンはその体の小ささ故に足が遅い。

 余程のことがなければ、追い付けない事はなかった。

 

「これで……最後ッ!」

 

 ザクリ。生き残った最後のゴブリンの首が刎ねられる。

 こうして、この世からゴブリンの群れがまた一つ消滅したわけだ。

 

「いやー……楽勝だったな!」

「まぁ、危ない場面が無かったという点で言えば楽勝でしたが……やはり攻撃面が弱すぎますね」

「そうだな。お前どっちかっつうと前衛ってより斥候ってタイプだもんな」

「そうなんですよねぇ……」

 

 実際のところ、カイルは剣士を名乗ってこそいるものの、どちらかと言えば斥候的な扱いをされることが多かった。

 そうなった理由はカイルが器用貧乏的な技能構成をしているというのもあったが、パーティ内で『死んでもいい人物』扱いをされ続け、常に最前を歩かされ続けたからというのも大きい。

 そのためカイルが生き残るためには、付け焼き刃でも斥候の技術を学ぶ必要があったのである。

 ……まぁ、この時に下手に斥候の技術を学んでしまったせいで、今度は罠探知や宝箱の開錠のような危険な仕事を率先してやらされるようになったのは失敗であったが。

 

「こうして戦うと、やっぱ前衛の必要性をひしひしと感じるのと……なんか魔法使いも欲しくね?」

「まぁ……そう思いはしましたが……」

 

 ゴブリン退治が最も簡単で最も安い依頼であると言われる理由の一つは、魔法の存在であった。

 というのも、ゴブリンはあくまでも群れるから強いのであって、単体で見るならザコもザコ。

 広範囲への魔法攻撃のできる魔法使いがいるのなら、本当に開戦から2秒で終わることもあり得てしまうのである。

 そしてそれは、他の群衆系の怪物にも同じようなことが言えた。

 

「……居ますかね? 誘いに乗ってくれる魔法使い」

「ン? どっかの冒険者の中には居るんじゃないのか?」

「まぁ、そりゃあそうなんですけど……魔法使いって需要の割に結構貴重で、奪い合いが激しいんですよね。だから好待遇は前提ですが、他パーティとの競争も……」

「あー……」

 

 魔法を使うには、相応の才能と教育が必要になる。

 であるので、そもそも魔法使いになる人物が前衛職と比べて少ない上、現在戦争を目前にして国が魔法使いを積極的に集めており、冒険者となる魔法使いは減少。

 なのに需要は以前と変わらないわけであるから、競争率は高くなるばかり。

 なのでフリーの魔法使いなぞまず居ないし、だからと言って既存のパーティに所属している魔法使いを引き抜こうにも色々大変、と。

 それが現状であった。

 

「ンー……そこはホラ、聖女パワーと教会の財力で……」

「むしろ教会関連のいざこざに巻き込まれるって敬遠されるんじゃないですかね……あーでも、それを差し引いても……どうなんでしょう。やっぱり人それぞれですかね」

「ハァー……そうかぁ。んじゃあやっぱり当面の目標はラガン・ゼムで、次点で魔法使いって事にするかぁ。パーティの名前も上がりゃあ優秀な魔法使いも寄って来るモンだろ?」

「まぁ、そうなんじゃないですかね……っと」

 

 ドサリ。

 カイルはこの会話の最中、ずっと周囲に散らばっていたゴブリンの死体を一箇所に集めていた。

 

「……さっきから気になったけど、それずっと何してんの?」

「何をしてるも何も……死体を何とかしないと、ゾンビになっちゃうじゃないですか」

「え? あー、そうなの?」

「知らなかったんですか?」

「いや、ゾンビがいる事自体は知ってたんだが……そんな簡単になるモンなのか?」

「その辺はそれこそ神のみぞ知るというもので……なるかも知れないし、ならないかも知れないって感じです。だから絶対にやらなきゃダメってわけじゃないですけど……死体の不始末でゾンビになった事が知られたら、ギルドから結構重めのペナルティが降るんです」

 

 当然、全てのケースでそうなるわけではない。

 ギルドとてどこで誰がどんな怪物をどれだけ殺したかなど、把握しきれるわけがないのだから、仮に死体の不始末が原因でゾンビが発生したとして、誰のせいなのかを把握する事はまず無理だ。

 ……が、特定できることもある。

 そういう時に、重たい罰が下る。

 そういう『見せしめ』をする事によって冒険者達に『もしかしたら』を恐れさせ、死体の始末をきちんと行わせるのである。

 

「はーっ……そういうモンなのかァ」

「はい、そういうものです。……僕が炎矢(ファイヤアロー)を覚えたのも、こういうところが理由だったりします」

 

 と、そう言ってカイルはかき集めた乾いた枝やら落ち葉やらを死体に被せ、炎矢(ファイヤアロー)で着火する。

 

「魔法使いが需要あるの、こういう後始末にも理由があるんですよ。火炎(フレイム)なんか使えば一発ですし」

「ほーん、そう考えるとやっぱり魔法使いって一人はいた方が良さそうだなぁ」

「そうですねぇ。まぁでもやっぱり、まずはラガン・ゼムでしょう」

「ま、そうかぁ」

 

 アルマは自らの進行方向へ視線をやる。

 未だ見えないが、この先にラガン・ゼムの活動している街があるという話だ。

 

「待ってろよぉ〜ラガン・ゼムぅ! 絶対に仲間にしてやるからなぁ〜……!」

「まぁ、一筋縄ではいかないと思いますがねぇ……」

 

 アルマとカイルがラガンに遭遇するまで、あと少し─────

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