ソル&ヴァルキリー:かませ騎士に転生した俺、破滅回避のため落ちこぼれヒロインを育成していたらいつの間にか天才と呼ばれてしまう 作:マテリ-AL
「来たわね、ルシアス君」
授業を終えた俺は、学園長に呼ばれて学園長室を訪れていた。部屋には俺以外に、赤髪の
「スカイちゃんはどうしてる?」
「部屋でぐっすり寝てます。無理はさせたくないんで、同行させませんでした」
「ならよし。……これからの話は、あんまりあの子には見せたくないしね」
学園長が黒色の魔力片――俺が砕いた『支配の宝珠』を取り出す。学園長の表情は暗く、この話が絶対に明るいものではないことを予期させてくる。
「……確認するわ。先の決闘で使われたのは、この宝珠で間違いないわね?」
「はい、これに魔力が込められた瞬間。
「そう……」
『支配の宝珠』は魔側の力が混ざっているため、販売が禁止されている。俺が呼ばれたのは、それが確かであることの事情聴取……といったところか。やっぱり、明るいもんではなかったな。
俺の証言を聞いた学園長は、深いため息をつき、金髪の
「……このことは、あなたの家に報告させていただくわ。貴方がこれをどうやって手に入れたか、明らかにするために」
「ぼ、僕のパパは一気に五人の
「そうね。だからこそ、伝説に傷がつかないよう全てを明らかにしないとね」
「うぐっ……!」
顔面に冷や汗をダラダラかく金髪の
金髪の
「次に、この子が支配の宝珠に関わっていないかについて聞きたいのだけど、ルシアス君の目から見て、『支配の宝珠』のことを知ってそうだった?」
「意識を半分失っているところを支配されたみたいなので、判断しかねます」
「そう……じゃあ、本人に聞くしかないわね」
「……一応この子、被害者では」
「本当にそうか分からないわよ? 少なくとも他の子からの証言でスカイへ強い敵意を持ってたことは分かってるし」
学園長の鋭い目線が赤髪の
「そんなこと、知らないに決まっているでしょ! ……私は、そんなに信じられてなかったの!?」
赤髪の
「不出来な
「それでするのが違法な宝珠で意識乗っ取って無理やり魔法使わせること!? この、サイテーのクズ男!」
「う、うるさい!
「――――ッ!!」
赤髪の
……ブツン、という太い綱が切れるような音がした。
俺は、この音に聞き覚えがある。前世で何度も聞いた――
神様は
「あっ……」
彼らは名家出身の
それを察したのか、顔面が蒼白になる金髪の
「お、おまえ! おまえのせいだからな! おまえの家が責任とれよ!」
「――うるさい黙れっ!」
「ぐへっ!?」
金髪の
「もう、誰にも!
「やめなさい」
目を真っ赤にし、涙をとめどなく流しながら魔法を放とうとする赤髪の
「……はぁ。ルシアス君、あなたはもう帰っていいわ。ただし、ここで見聞きしたことは他言無用で」
「……了解です」
その言葉と共に、学園長は金髪へ回復魔法をかけ始めた。こういう修羅場は慣れているようだ。
「では、これで――」
「そうだ。これからも、君の言う
「…………」
……学園長、『新しい可能性』っていう誤魔化しをまだ信じてたのか。俺にそんな力はないんだが……訂正するより、早くこの空間から出たい気持ちが勝つ。
学園長に軽く一礼をし、俺は地獄みたいな空気の学園長室から脱出した。
*
学園長室から出て、足早に廊下を歩く。
正直、まだ胃がキリキリしているため、早く部屋に戻りたい。
「くくっ。災難だったな、ルシアス」
後ろから声をかけられる。
この声は……。
「……何の用だ。ラーミア」
振り向くと、相変わらずの谷間が見える黄金の鎧を着用したラーミアが薄い笑顔を浮かべ、ウェーブがかった金髪をかき上げていた。
「何。気分を聞きたくてな。どうだった? 落ちこぼれ騎士なんて呼ばれた感想は」
「いや、特に思うところはないが」
「………………そうか。
瞬間、ラーミアが眼を見開き、体から莫大な量の雷が放たれる。
瞬間、その金の長髪は天井にまで舞い上がり、まさしく怒髪天となった。
「塵一つ残さず消し去ってやろうかと思ったよ」
長い髪を逆立てるラーミアから放たれた雷が、廊下や天井を這い、魔石製の照明器具を破壊しつくす。罰則は気にしていなさそう。というか、王女様からの依頼すらも受けるくらい多忙なラーミアに対して、罰則という時間的拘束なんて誰もできない。せいぜいお高めの罰金ぐらいだろう。
……そもそもなんでそんな怒ってんだ。俺、ラーミアになんかしたか?
理由に心当たりはないが、とりあえず怒りを鎮めとくか。
このままだと学園長室に押し入りかねない。
「やめろ。俺は気にしてないって言っただろ」
「……ッ! 貴様も貴様だルシアス! あんな権力だけのクズ共に見下されて、何故、何も感じない!? あんな奴ら、貴様が剣を一振りするだけで泣いて平伏するだろうに!」
「……あぁ?」
……なんかラーミア、俺のことを買い被ってないか? この剣は非常時の換金用に腰に下げているだけで、使うつもりなんて別にない。なんでスカイに任せたかについても、この
「俺は
まあ、スカイは天才だ。いつかは今回みたいな俺の支援がなくても勝てるようになるだろうけど。
「ちっ……!」
俺の反論に舌打ちして不快感を表すラーミア。丁度いい、この機会に前会った時から俺の中にあった疑問をラーミアにぶつけてしまおう。
「というか、そもそもなんで今更剣がどうとか言われないといけないんだ。五年前。
「――剣を捨てろと言った覚えはないッ!!」
ラーミアは声を荒げながら俺の目の前まで歩み寄り……胸ぐらをつかんできた。ラーミアの手を伝って俺へ電気が流れ、ちょっとビリッとする。
「答えろルシアス! この五年で貴様に何があった!? 何故、貴様は剣を捨ててまで
「……はぁ!?」
……天才騎士? なんでお前がそんな事言うんだ??
俺は基本的に剣を振らないし、騎士として活動したことのない落ちこぼれって評価をさっき貰ったんだが。なんか、ラーミアは別のもんが見えてんな。
というかそもそも。
何と答えるのが正解か分からず考え込んでいると、ラーミアは胸ぐらを掴む手を勢いよく離した。
「……答えないか。くくっ、まあいい。どの道、決闘祭が終われば貴様は
……ん? 待てよ? ラーミアって俺を騎士にするのが目標なのか?
ということは……そもそも魂導者云々は関係ないってことか?
「……なあ、ラーミアってもしかして、俺を
「当然だ。あれは絆の力ではなく、ただの
……流石、世界で唯一、
「故に、
「…………なんだそりゃ」
こんな事言っているが、ラーミアは周囲を踏み台程度にしか見ていない。利用価値が無くなったら、すぐに捨てられるに決まっている。
原作ゲームでもそうだ。
「くくっ。素晴らしい人生だろう?」
……いや、もっと素晴らしい生き方なんていくらでもある。
例えば、騎士も戦乙女もいない世界で、平穏に過ごしたりな。
「……悪いが興味はない。俺の行く道は俺が決める」
「何度も言っているが、貴様に拒否権はない。あの『白銀の光』を取り戻すためなら――
……白銀の光を、取り戻す?
原作にはそんな言葉どこにも出てこない。
だが、ラーミアの言葉には確かな意思が、確信がある。
なんか、俺とラーミアの間に何か齟齬があるような、変な感じがする。
「その時を、剣を磨いて待ち続けているがいい。ルシアス・アルスター!」
力強い宣言と共に、ラーミアは両手を大きく広げ――。
『――
確かあれ、電気を帯びてるから、地面に落ちる前は触れちゃ駄目なんだっけ。じゃ、避けるのが一番だな。
「――っと!」
羽毛を避けるとラーミアはいなくなり、廊下にはまき散らされた山盛りの羽毛と、壊れた照明器具だけが残っていた。
……
ラーミアが何に執着してるかは知らんが、火の粉が降りかかるのならば振り払うだけだ。まあ、それも結局、
ククッ……。本当に、天才のスカイと契約できたのは幸運だったな。さてと、そろそろスカイも起きてくるころだし、労いも兼ねてハンバーグを……。
考えを巡らせながら一歩踏み出すと、クッションを踏んだかのような、柔らかい感触が足裏から伝わってきた。
……そういえば、このまき散らされた羽毛と壊された照明はどうすりゃいいんだ?
…………。
……アイツ、片づけ俺に投げやがったな!
そんなに掃除が嫌いか!