ソル&ヴァルキリー:かませ騎士に転生した俺、破滅回避のため落ちこぼれヒロインを育成していたらいつの間にか天才と呼ばれてしまう   作:マテリ-AL

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第2話:『天才』の育成プラン

「じゃあ、ちょっと行ってくるからこの部屋で待っててくれ」

 

「分かった! この部屋探検してるね。……あっ、ソファーがふかふか」

 

 スカイと契約を結んだ俺は、シャワーで体を清めた後、スカイを寮の部屋に置いて出かけることにした。寮の部屋は魂導者(ソル)戦乙女(ヴァルキリー)で共用になっていて、キッチン、ソファー、テーブルが配置されている大きな共用居間と、大きなふかふかのベッドやシャワーが付いている個人寝室へ分かれている。

 

 ヒロインと同じ空間で過ごせるというのは、一見役得に見える。しかし、やらかすとヒロインからの好感度が下がるため、育成的には嬉しくない。

 

 実際、前世の『ソルキリー』新規勢が、最高に上手く行っていた育成をラッキースケベの好感度ダウンで潰され、『ラッキースケベしたら腹切って詫びろ!!!!』とTV画面へガチギレしていたのは、笑い話として前世の記憶に強く残っている。

 

 ……よくよく考えたら、俺にとっては笑い話ではない。そもそも()()()()()()は起こさないよう細心の注意を払い、紳士的にヒロインに接する方針で行こう。

 

 脱線していた話を戻すと、俺はこれから寮の一階にある購買へ買い物に向かう。目的は、スカイ育成のために必要な物資を買い上げるためだ。資金のために私物を売らないといけないが……後で取り戻すから何の問題もない。

 

 購買で私物を質に叩き込み、必要な物資を買い上げ、部屋に戻る。すると、スカイが右手を前へ突き出し、魔法を展開しようとしていた。

 

「ふぁいあぼーーーる!」

 

 間が延びた詠唱。だが、スカイの手からは魔法陣すら展開されなかった。

 

「……うぅ。またダメだったよぉ」

 

 スカイはがっくしと肩を落とし、膝から崩れ落ちた。

 

「……何やってんだ?」

 

「あ、おかえり! ルシアスと契約したら魔法が使えるようになるんじゃないかと思って、やってみたんだけど……」

 

「……待て。もし成功したら部屋が大惨事にならないか?」

 

 まあ、そこは流石の戦乙女(ヴァルキリー)のための学園。寮には最新鋭の魔力防御が施されてはいる。が、スカイの才能を考えるとそれでもまだ怖い。

 

「うぅ……。魔力がいっぱいあるのに、どうして魔法が使えないんだろう……。せっかくルシアスと契約したのに、これじゃ迷惑かけちゃうよぉ……」

 

 ……そもそも魂導者(ソル)と契約したからといって特別な力がすぐに手に入るわけではない。魂導者(ソル)の役割はあくまで育成だ。

 

「……気にすんなって。それより、パーティに出てないから飯食えてねえし腹減ってるだろ? 飯作るから食おうぜ」

 

 このゲームでは料理を作ってヒロインに食べさせるのが基本の育成論だ。その辺の管理をしないと、ヒロイン達は自分が好きなものしか食べない。

 

 袋から材料――肉や野菜。パンに卵に香辛料――を取り出してテーブルの上に並べる。だが、それを見たスカイは、さらに少し表情を曇らせた。

 

「あ、ごめん。ボク、お肉ダメなんだ。味とか食感が……」

 

「……そうか。じゃあこれは自分用にするとして、また違うの作るわ」

 

「ごめんね、ありがとう!」

 

 ククッ……。こんなこと言っておいて悪いが、残念ながら、俺はこれから一計を案じ、スカイに肉を食わせる。

 

……いや、食わせなければならない。スカイが強くなるために。

 

 肉にパン粉や卵などを大量に混ぜ、香辛料(スパイス)を惜しみなく入れることで、味と食感が苦手なスカイでも食べられる肉料理――柔らかハンバーグの作成を始める。作り方は、前世の俺がヒロインの誕生日に好物を捧げるタイプのオタクだったお陰で大丈夫だ。

 

 『ソルキリー』では、こうして肉を食べさせると肉体、魚は知能、お菓子だと魔力、野菜では精神が成長するようになっている。

 

 その上で言うが、スカイは肉体が貧弱だ。他の能力に比べて圧倒的に足りていない。なのに肉嫌いで基本的に食べてくれないため、肉体が成長しない。

 

 そのために、柔らかハンバーグを作る。これならスカイも食べられるし、むしろ大好物になってくれる……はずだ。

 

 あとは、どうやって一口目を食べさせるかだが……。

 

 肉の油と香辛料(スパイス)が入り混じった匂いを部屋全体に散らしながら一計を案じていると……スカイがキッチンへひょこっと顔を出した。よく見ると、小さくお腹が鳴っており口の端から少しよだれが垂れている。……匂いで釣れたか。

 

「どうした? なんか気になるもんでもあるか?」

 

「その、なんか、とってもいい匂いがして、気になって……」

 

「……今作ってるのには肉が入っている、が。一口だけでも、頑張ってみるか?」

 

「う……うん。すっごく、美味しそうだし……」

 

 ちょうどいい具合に焼き上がったハンバーグの破片をフォークで突き刺し、スカイの口へ運ぶ。スカイは破片を口へ入れた瞬間――眼を大きく見開き、一気に飲みこんだ。

 

「はふっ……!? な、何これ!? 本当にお肉!? 柔らかくて、香ばしくて……すごくおいしい!」

 

 眼を輝かせながら、すごい勢いで俺に近づいてくるスカイ。それに反応して、ハンバーグを付け合わせが既に置かれている大皿に移し、スカイの前に差し出した。

 

「ハンバーグっていうんだが……もっと食うか?」

 

「うん! 食べる!」

 

 すごい勢いで俺から皿を受け取り、重そうに机へ運ぶスカイ。

 ……そんな美味いのか。俺には作り方の知識だけで味に関しては実感がない。

 ちょっと、もう一つぐらい作ってみるか――。

 

「――おかわり!」

 

「食うの早いなっ!?」

 

 ……あと五つぐらい作るか。

 

 *

 

 楽しい晩餐を終えた翌日、俺たちは学園の屋外訓練場に集められていた。最初の授業は戦乙女(ヴァルキリー)の能力計測。遠くにある魔物を模した的へ向かって自分の属性の初級魔法を全力で放ち、先生が威力を測定して成績をつける。魂導者(ソル)達がどの戦乙女(ヴァルキリー)と契約するかを決める助けをするための授業だ。

 

 魔法学の先生に呼ばれた戦乙女(ヴァルキリー)が所定の場所につく。授業のため、戦乙女(ヴァルキリー)達は皆、制服である純白のケープに着替えており、当然それは、今自分の隣にいるスカイも例外ではない。

 

炎球魔法(ファイアボール)!」

 

 今、とある戦乙女(ヴァルキリー)が初級炎魔法を放った。だが、魔力量が足りなかったのか、小さな炎球は的に当たる前に消えてしまった。

 

「……ランク、E!」

 

 魔法学の先生による無慈悲な宣告が学生皆に聞こえるレベルの大きさで響き渡る。それを見たスカイは自信なさげに縮こまった。

 

「うぅ……ボク、大丈夫かな?」

 

「ああ、いける。そのために、用意したものが――」

 

「無理に決まってるでしょ」

 

「……あぁ?」

 

 生意気な声に反応をして後ろを振り向くと、昨日スカイを詰めていた気の強そうな赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)と、その魂導者(ソル)と思わしき金髪の男が、にやけ面でこっちに近づいてきていた。何をする気か分からないが、とりあえずスカイの前に立って行方を遮る。

 

「……何の用だ?」

 

「見物だよ。恥知らずという名の見世物のね」

 

「……随分な言いぐさじゃねえか。契約して、天才の名に恥じない性能になってるってのによ」

 

「へぇ。で、アンタ魔法使えた?」

 

 金髪の男の脇から赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)が出てきて、嘲笑気味にスカイへ指を突き付けて詰め寄った。突き付けられたスカイは、顔を伏せ、無言の肯定をしてしまっている。

 

 確かに、スカイは、みんなが集まる前で、魔法を使うこともできないという醜態を晒してしまう。

 

 ……()()()()()()

 

「だから言ったでしょ。落ちこぼれ同士地べたを這いずってなさいってね。と、呼ばれたみたいね、行きましょ」

 

「僕達が才能の差を見せつけてやるよ。一生かかっても覆ることがない本物の天才ってものをな」

 

 先生に呼ばれ、歩き出す気の強そうな赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)と、控えるようにそれを少し遠くから眺める金髪の男。赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)は位置に着くと手に魔力を込め、詠唱を唱えた。

 

風刃魔法(ウィンドカッター)!』

 

 そう唱えた瞬間、赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)の手から風の刃が放たれ、的を切り裂いた。風の刃の威力はなかなかのものだったようで、的の半分がえぐれている。それを確認した先生が、はっきりとした言葉で宣言を行った。

 

「……ランク、B!」

 

「おお! 流石、伯爵家コンビ!」

 

「この学校で雷羽冠天使(クラウニエル)の次に羽を生やせるのはあいつらかもな……」

 

「…………」

 

 その宣言を聞いた周囲の生徒から、歓声と拍手が沸き上がる。しかし、俺は息の詰まるような気持ちになっていた。

 

 雷羽冠天使(クラウニエル)は、『ラスボスちゃん』――つまり、俺の破滅の象徴だ。ヒロインだから当然とはいえ、アイツもこの学校にいるのが確定してしまったのだ。

 

 ……会いたくねえなあ。

 

「次、スカイ・ジーニアス!」

 

「う……うぅ……」

 

 先生がその流れのままスカイの名を呼ぶ。

 しかし、スカイはさらに表情を曇らせたまま、俺の影に隠れて震えている。

 

 ……これからスカイが天才であることをこの学園にいる全戦乙女(ヴァルキリー)に知らしめるんだから、そんな自信のない様子では困るんだがな。仕方ない。仕込みついでに元気づけとくか。

 

「スカイ、これ持っとけ」

 

 スカイに、昨日購買で買っておいたスカイが魔法を使うための必須アイテム、『守護の宝珠』を渡す。杖などを媒介として魔法を使っている戦乙女(ヴァルキリー)のため、魔法計測の場であっても一つだけ、補助の魔法道具を使うのを許可されているのだ。

 

「ん? ……これは、宝石? なんか、高そうだけど……」

 

 スカイは琥珀色のそれを受け取ると、不思議そうに撫でまわした。そんなスカイの背中を軽く押し、励ましの言葉を贈る。

 

「俺からスカイへ送る、ラッキーアイテムだ。これさえ持ってりゃ万事うまくいくから、胸張って行ってこい」

 

「え? で、でも。今まで色んな魔法道具使っても駄目だったのに……」

 

「確かに、このアイテムへの信頼はねえかもしれねえな。じゃあ、魂導者(ソル)である俺を信じてくれ。あとは、天才であるスカイの思う通りにやってくれりゃいい。……できるか?」

 

「う、うん……! ルシアスが、ボクを天才って信じてくれたから! ……その分だけでも、頑張ってみる!」

 

 スカイは僅かながらに自信が湧いて来たのか、拳を握りしめ、前を向いて歩きだした。

 

 ……右手と右足が両方同時に動いているのが気になるところだが、まあ大丈夫だろう。所定の位置にスカイが到着すると……周りからヒソヒソ話が聞こえてきた。

 

「おいおい。次はあの落ちこぼれ戦乙女(ヴァルキリー)かよ」

「どうせ退学するのに。学園長も、なんであんなのをこの学園に入れたのかしら」

「あの魂導者(ソル)も可哀想に、自分は天才だなんて噓にきっと騙されたのね。誰か、早く契約切っちゃった方がいいって言ってあげた方が……」

「いえ、あんなのに騙されるなんてどうせ碌な魂導者(ソル)ではありませんし、両方とも消えるのが、一番皆様のためになりますわ」

 

 ……凡人(モブ)な俺に対する悪口はまあいいとして。それ、スカイに聞こえる声量で言ったら承知しないからな?

 

 そんな心無い陰口を背に、赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)とその魂導者(ソル)が余裕そうな表情をしながら俺へ近づいてきているのが、横目に見える。

 

「――魔法展開!」

 

 だが、それより先に先生の声が辺りに響き渡り、俺は視線をスカイへ移した。そんな俺の耳に、赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)の嘲笑が聞こえてくる。

 

「無駄よ。あの落ちこぼれに、攻撃魔法は使えない。神様に見捨てられてるのよ、あの落ちこぼれは――」

 

 

「悪い。ちょっと黙っててくれるか? 竜が飛翔()ぶのを、見逃したくない」

 

 

「……は?」

 

 これからスカイの魔法を見るのに、これ以上余計な情報を脳に入れたくないため、赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)の嘲りを手のひらを向けて制止する。すると、彼女は見るからに不快感をあらわにしてきた。

 

 赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)が何かを言おうとした瞬間、スカイは『守護の宝珠』を持った方、右手を前へ突き出し、時間をかけて魔力をこれ以上ないほどに練り上げ、魔法の詠唱を始めた。

 

 

『――竜炎球魔法(ファイアボール)!!』

 

 

 スカイがそう唱えた瞬間、『守護の宝珠』が赤く発光し、竜が描かれた魔法陣が展開される。同時に、太陽と見まごうほどの輝きを持った大火球が的へ向かって剛速球で放たれた。

 

「…………えっ?」

「はぁっ……!?」

 

 その大火球は貴族二人が素っ頓狂な声を出している間に的へ直撃し――。

 

 ドゴォオオオオンッ! という爆発音が耳をつんざいた。

 

 地面がわずかに揺れ、熱気が訓練場全体を覆う。爆炎は球形を維持したまま的を覆い、燃やし尽くし始めた。

 

「……おお。すげえな」

 

 その魔法のあまりの強大さに、つい口から感嘆が漏れてしまう。なんというか、記憶にあるのとこうして直接近くで見るのとでは、迫力に天と地程の差があるな。

 

「そんな、そんなっ……!」

 

 あまりに信じられないものを見たのか、赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)は眼をかっぴらいて灰と化す的を呆然と見続けている。

 

「――そんなわけない! きっとアレは幻覚よ! そうに違いないわ!」

 

 取り乱した彼女は、冷や汗をまき散らしながら炎の方へ走り出そうとした。

 ……いや、待て。まだ、()()()()()()()()()()()()

 

「危ないから近づくんじゃねえよ。つーか、現実見てくれ。熱気がある時点で幻覚の線は薄いだろ」

 

 肩を掴んで、彼女の動きを制止させる。すると彼女は、原型がないほど歪ませた顔を俺へ向けてきた。

 

「なんで止めるの!? やっぱりあれは幻覚で、それがバレたくないから……!」

 

「違う。()()()()んだよ」

 

 俺がそう告げた瞬間、的を焼いていた炎球が割れ、永遠に消えない炉心のような眼と輝ける灼熱の翼を持った炎の竜が中から飛び出し――咆哮した。

 

 

「――オオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

 

 周囲の空気が熱されたことで発生した上昇気流が、髪を巻き上げる。

 炎竜の体からまき散らされた鱗が、赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)の目の前に落ち、鼓膜が破れそうな轟音と共に爆散した。

 

「ひ、ひぃっ……!?」

「うわあああああああああっ!?」

 

 そのあまりの迫力に、尻もちをついて地面にへたり込む赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)と絶叫と共に白目をむいて気絶する金髪の魂導者(ソル)。危ない危ない。俺が制止してなければこいつらがアレに巻き込まれるところだった。

 

 正直こいつらは多少痛い目に合った方がいいと思っているが、大怪我するとなると話は別。スカイは善性が強いため、メンタルにダメージが入ってしまう。

 

 ……しかし、改めて現物を見るとすごい迫力だな。

 スカイの持つ特異性の一つ、『竜魔法』は。

 

「オオオオオオオオオオオアッ!!」

 

「うおっと……」

 

 ようやっと出てこれたことを歓喜するかのように、炎竜が首を天に向け、紅蓮の(ブレス)を吐き出す。真夏の嵐のような熱波がグラウンド中を駆け巡り、その熱が皮膚に染み込んでいく。

 

 『竜魔法』。竜の血が魔力に呼応し、魔法が竜化する現象。

 スカイに流れる最高位の竜――聖竜の血は、ただの炎球魔法を天へ咆哮する炎竜の卵にまで進化させるほどの、強大な力を有している。

 

 だが、実はこれが、スカイが魔法を使えなかった原因でもある。

 強力な魔法を放つ際には、反動で肉体に強い負荷がかかる。それを受け止められる器がないスカイは、どれだけ強く願っても身体が魔法を拒絶してしまっていたのだ。

 

 俺が渡した『守護の宝珠』は、市販品の中で、反動を吸収する力が一番強い宝珠。その力のお陰でスカイはこうして、攻撃魔法を解き放つことができるようになったわけだ。

 

 だが、『守護の宝珠』でも、中級竜魔法以上の反動は耐えきれない。だから、スカイに肉料理(ハンバーグ)を食わせまくった上で鍛錬を行い、肉体を育てる。

 

 ――魔法の天才に肉体という器を伴わせる。

 それが、凡人(モブ)でもできる『天才ちゃん』の育成プランだ。

 

 ちなみにだが、『スカイが竜種の血を引いている』以外のここまで説明した事はゲーム中全てノーヒント。前世の俺が万を超える回数の検証を重ねて編み出した育成論だ。

 

 それはつまり、途轍もないスカイの屍の上に成り立っている育成論というわけで……やっぱ、『ソルキリー』って鬼畜ゲーだわ。気を抜いちゃダメだな、こりゃ。

 

「……え? なに、コレ。ボク、こんなこと、できたの……?」

 

 魔力が切れ、消滅し始めた炎の竜を見上げながら気合を入れなおしていると、スカイから空気が漏れ出したような、呆然とした声が聞こえてきた。いや、天才が自分の力に慄いてちゃダメだろ。まずは、誇ってもらわねえと。

 

 そのために、スカイにはまず、自分の持つ強大な力。つまり、天才性を客観的に評価してもらう経験を積ませねえとな。

 

「先生、ランクをお願いします」

 

「えっ!? あ、あぁ! ……ら、ランク、S!」

 

「いやこれ、Sどころじゃないでしょ……」

「あんな規模の魔法を使えるなんて、一線級の戦乙女(ヴァルキリー)でも何人いるか……」

 

 俺が促したことで正気を取り戻した先生が取り繕うように凛と宣言する。しかし、周囲から歓声や拍手はなく、ただ、ざわめきや恐怖の声があるだけだった。

 

 ククッ……。まあ、仕方ないか。本物の天才を見ちまったんだからな。

 

「やべえよ……。落ちこぼれのスカイをあんな魔法が使えるまでにするなんて、何をしたんだ……?」

「あの魂導者(ソル)、まったく動揺してないし。こうなることが分かってたってこと……!?」

「私も、あんな天才魂導者(ソル)と契約したかったな……」

 

……? なんか、周囲からの目線が俺にも集中している気がするが……。

 

 ま、気のせいだろ。

 俺は天才の力に寄りかかってるだけの、ただの凡人(モブ)なんだから。

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