ソル&ヴァルキリー:かませ騎士に転生した俺、破滅回避のため落ちこぼれヒロインを育成していたらいつの間にか天才と呼ばれてしまう   作:マテリ-AL

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第50話:『天才』と『ご褒美』と『お仕置き』

 決闘祭とその後始末が終了したある朝、俺とスカイ、イリスとミタマは俺の部屋の共同居間に集まっていた。共同居間は今、色とりどりに装飾され、机の上には俺が作った豪華な料理が並べられている。

 

 準備が整ったため皆で机の上のグラスを取ると、ミタマは快活に宣言を始めた。

 

「えー、あー。では、せんえつながら……で、言葉の使い方、合ってる? イリー」

 

「ええ、合ってるわ」

 

「ありがと! では、僭越ながら、このわたしミタマが、乾杯の音頭をとらせていただきます!」

 

 ミタマがグラスを天に掲げ、身体を僅かに反らせて声を張る。

 

「二人の決闘祭優勝と、スカイちゃんの退学撤回を祝して――かんぱい!!」

「乾杯!」

「乾杯」

 

 ミタマの号令に合わせて、スカイとイリスが乾杯を行う。三人がそれぞれのグラスを合わせて甲高い音を響かせると俺へグラスを向けた。それは、ヒロイン二人と主人公が俺へ向けた祝福で……。

 

「ほら、ルシアスも!」

 

「ああ、乾杯」

 

 その祝福を受け入れるかのように、俺ははにかむスカイのグラスへ自分のグラスを当てた。

 

 *

 

 優勝記念パーティは和やかに進んだ。ソファーに座り、美味しそうに料理(主にハンバーグ)を食べているスカイをぼーっと眺めていると、いつの間にかイリスが俺のすぐ右隣に座っていた。

 

「どうした? イリス」

 

「いや、本当に退学を覆せたのねって。感慨深くなっちゃって……」

 

 そう呟くイリスの顔はこれまで見たことがないほど優しく、よく見ると目尻に水滴が溜まっている。イリスがスカイを見てきた期間は俺よりも何倍も長い。多分、想像もつかないほどの感慨が内側で渦巻いているのだろう。

 

 ただ、まだ心配もある。

 

「ここからもう一度覆ることはねえよな?」

 

「流石にないと思うわよ。学園長が言うには、王女様の口添えと全く新しい闘装を作り出した実績があったから、誰も文句が言えず完勝だったらしいわ。……逆に言えば、片方だけだったら少し怪しかったのかもね」

 

 そこまで言い切ったところで、イリスは手に持っていたグラスのコーヒーをぐいっと飲み干した。ふぅと息を吐くイリスの顔は、先程までとは少し違う感情を湛えていて……ほんのわずかだが、自分へ怒っているようにも見えた。

 

「つまり、決勝の相手がラーミアじゃなければ、スカイの退学は覆せなかった。相手が私だったら、スカイが覚醒する前に負けて……退学させられてた可能性があった。少し、悔しいわ」

 

 イリスはぐっと口の端を結んで、グラスを割れんばかりに強く握っている。ただ……俺は、そう思っていない。というわけで、その気持ちを伝えよう。

 

「そうか? イリスがいなければ俺達は勝てなかった。だからそんな、気にしなくていいんじゃねえか」

 

「……慰めのつもり?」

 

「いいや、本心だ。イリスとミタマでラーミアの手札を全部出させてくれなければ、俺達はラーミアに勝てなかった。まずは、それについて感謝をさせてくれ」

 

 これは本当にそうで、場合によってはラーミアが決勝でいきなり原作知識にない剣聖道を使ってきただろう。事前知識があったから対応できたが、情報がなかったら割とどうしようもない初見殺しだったぞ、アレ。

 

 もっと言うと、イリスは……。

 

「それに、ミタマの支援で空を飛んだのだから、イリス自身はまだ羽を出していないだろ? なのにあれだけ食らいつけたんだ、自分の羽を出せばもっと、強くなれる。今から楽しみだよ。イリスの羽の美しさを、この眼で確かめられる時がな」

 

 羽の形自体は前世の知識で知っているが……その眼で見る実物はそれよりも何百倍も美しいことを、俺は知っている。スカイに、ラーミアに、教えてもらったんだ。

 

 というわけで、俺の本心をまだ慣れていない笑顔と共にイリスへ伝える。笑顔が慣れないせいで、変顔とかに見えてたら嫌だな。

 

 そんな不安と共にイリスの様子を観察すると、イリスの頬がみるみるうちに朱に染まっていった。俺と視線が合ったイリスはそっぽを向いて顔を……というより口元を隠し、ごにょごにょと何かを呟いている。

 

「…………っ!? な、なによ、その優しい笑顔はっ! それに、そんな言葉で褒めてきて……これ以上あなたのことを好きにさせて、何をさせるつもりなのよっ!?」

 

「ど、どうした、イリス……?」

 

「なんでもないっ! なんっ、でもっ、ないからっ! 気にしないでっ!」

 

「お、おう……?」

 

 イリスは真っ赤な顔をぶんぶんと振り、必死に俺を拒絶しようとしてくる。何か癪に障ることを言ってしまったのだろうか。自分の言動を振り返っていると……ミタマが俺へ飛びついてきた。

 

「ししょーーッ!!」

 

「おわっ!」

 

「……ミタマ、いきなり抱き着くのはやめなさい。危ないわよ」

 

「師匠なら大丈夫でしょ!」

 

 ミタマは全く悪びれもせず、俺の背中に手を回して身体を密着させてきた。正直、こういう事されると困る。前に抱き締められた時もそうだったんだが、ミタマの身体って全部柔らかくて、どこに触れても……なんかいけないことをしている感じがする。

 

 そんなこんなでどうにもできずにいると、上目づかいのミタマが声をかけてきた。

 

「ねえ、ししょー! わたしも、頑張ったよね?」

 

「あ、ああ。本当によく頑張ったよ」

 

「じゃ、褒めて! ご褒美に頭撫でてよ、頭!」

 

「お、おう……」

 

 ミタマの押しに負けて、抱き寄せた状態でミタマの頭を撫でる。ミタマの墨で描いたかのように美しい黒髪はよく整えられており、それを自らの手で乱すのはちょっと罪悪感が湧いてきてしまう。

 

 ……おっと、頭撫でてるだけじゃだめだ。ちゃんと褒めなければ。

 

「ありがとな、ミタマもイリスも。二人がいなかったら、俺達は奇跡を起こすための第一歩にも立てなかった。本当に、感謝してる」

 

 頭を撫でながら二人を褒めていると、ミタマの眼がとろんとした熱を帯びてきた。

 

「にひひ……。師匠に撫でられると、体がぽかぽかして、なんか……ふわふわってなって……幸せになっちゃってるなあ……!」

 

 ミタマは俺を強く抱きしめ、堪えきれない感情を全身で表現してくる。なんか、ここまで喜ばれるとは思ってなかったから、むしろ戸惑ってしまう。

 

 だが、ここでミタマは……イリスへ顔を向けた。

 

「あ、イリーも師匠に撫でてもらう? だったら代わるけど……」

 

「えぇ?」

 

 ミタマの意外な提案に、イリスが生返事を返す。そのままミタマは俺から離れ、両手を使って俺とイリスを指し示した。

 

「だってほら、前にイリーが師匠にご褒美提案した時、わたしの分も考えてくれたじゃん。じゃあ、わたしが貰ったご褒美はイリーも受け取るべきかなって」

 

「わ、私が、ミタマみたいに、ルシアスと……?」

 

 ミタマが邪気の無い瞳をイリスへ向けるのと同時に、俺もイリスの方を向く。すると何故か、イリスの白い顔がすごい勢いで紅潮していった。ただ、正直……イリスってそういうことするタイプじゃなくないか?

 

「…………っ!」

 

 どうやら俺の困惑が顔に出てしまっていたのか、イリスがむっと口の端を歪める。少しの間、イリスは無言で俺をじっと睨みつけていたが、やがて、意を決した表情をすると……。

 

「わ、私だって……!」

 

 腕を広げて俺の方へ一歩、踏み出した――。

 

 ――瞬間、轟音を立てて共同居間の扉が吹っ飛ばされた。

 

「――っ!」

 

 刺客の可能性を考えて俺が入り口とスカイの間に割って入ると、イリスも臨戦態勢に入り、ミタマの前に立ちふさがった。

 

「くくっ、どうした? せっかくのパーティなのに、そんな剣吞な顔をして」

 

 開いた扉から現れたのは刺客等ではなかった。ウェーブがかった金髪に、豊満な胸を隠しきれていない黄金の鎧を着た……ラスボスこと、ラーミアだった。

 

 ……アイツ、やっと事情聴取終わったのか。フギンがベラベラと自分の手柄をしゃべってくれて、それを王女様が上手いことやってくれたお陰で、被害者ってことになったんだが……それはそれとして、ここ数日は大変だっただろう。

 

 何か労いが必要じゃないかと俺が考えている間に、ずけずけと部屋へ入ってきたラーミアは机の上にあったグラスにジュースを注ぎ、スカイへ差し出していた。

 

「ほいカイちゃん。退学阻止おめでとう。かんぱーい」

 

「あ、うん! 乾杯、らーちゃん!」

 

 怒涛の勢いでスカイと乾杯をしてジュースを一気飲みしたラーミアは、机の上に置かれていたハンバーグを指で摘まんで口へ入れた。咀嚼するラーミアの眼が、僅かに見開かれる。

 

「お、旨い。誰が作ったんだコレ?」

 

「俺だよ、つーか何しに来たラーミア」

 

 俺の問いかけに対し、ラーミアは肩をすくめた。

 この様子……真面目に答える気ないな?

 

「何って、カイちゃんのお祝いだよ。(ワタシ)が来ちゃ不満か?」

 

「不満ってわけじゃねえが……本当にそれだけか?」

 

「あと、部屋にゴミが溢れて、今日の寝る場所が無くなってな。一晩でいいから、ここで寝かせてくれないか?」

 

「本当の理由それだろ!」

「せめて足の踏み場が無くなる前に掃除しようよ、らーちゃん!」

 

 俺とスカイが口々にラーミアへ突っ込みを入れると、ラーミアは口に手を当てて、いたずらが成功した子供のように笑い出した。

 

「ふふっ。冗談だよ」

 

「……で、部屋は綺麗なのか?」

 

「…………」

 

 俺の突っ込みに押し黙ったラーミアは、つかつかとソファーに座る俺の方へ歩み寄ってきて……ついには、胸が俺に当たるほどの至近距離にまで近づいた。

 

「……どうした、ラーミア」

 

 正直どうすればいいかわからず、重心を後ろに倒しながら真意を聞くと、ラーミアはにっと、優しい笑顔を見せ、愛を囁くように俺の耳元で話し始めた。

 

(ワタシ)がここに来た本当の理由はな……ルシアス、貴様のモノになりに来たんだ」

 

「……は!?」

 

「ルシアスの……もの!?」

 

 俺とスカイがそれぞれ発した驚きの言葉が聞こえていないかのように、ラーミアは俺の手をとって……自分の首に当てた。

 

「忘れたとは言わせんぞ、ルシアス。貴様と(ワタシ)は互いに存在を賭けた決闘をする約束をし、その決闘に、(ワタシ)は負けた。つまり(ワタシ)は、貴様のものになったんだよ」

 

「……その約束に魔術的制約は何もねえ。俺は負けたら逃げる気だったんだが?」

 

「そんなの、勝った身からすればいくらでも言えるだろうに」

 

「…………」

 

 こうして話している間も、俺の手は猛獣を縛りつける首輪のようにラーミアの首にかけられている。手に伝わるラーミアの首の骨の感触は細い花の茎のようで、完全にラーミアが俺へ命を預けてるのがありありと分かり、つい身震いしてしまう。

 

「……本当に、何をしたっていいんだぞ? 貴様が(ワタシ)にくれたものは、それだけの価値があるんだ。だから(ワタシ)は、貴様に、何もかも捧げてしまっていいんだ」

 

 ラーミアが俺の耳へ口を近づけて、熱のこもった言葉と共にそう囁く。ラーミアの瞳に浮かぶ熱情の中には間違いなく期待が混ざっており、俺が本当に何を命令しても応えてくれるのだろう。

 

 ……正直、ずっとこんなことされたら心が持たない。この辺で俺とラーミアの関係を一度ハッキリさせておいたほうがよさそうだ。

 

「……ああ、そうかい。ラーミアが本気で俺のものになるってんなら、俺だって好きに()()してやるよ」

 

「……ほう! (ワタシ)は一体、何をされてしまうのだろうな?」

 

 俺の言葉に対し、ラーミアは嬉しそうに笑みを深めた。

 よく見ると、僅かに額に汗が滲んでいる。

 

「えぇっ!? ちょ、なにする気なのルシアス!?」

 

「ま、待ちなさい! こんなところでそんなことはさせないわよ!」

 

「師匠、何命令するんだろ……!」

 

 その後ろで、スカイは眼を剝いてどうすればいいか分からずあたふたし、イリスは俺を止めようと駆け寄ってきており、ミタマは俺がラーミアへ何を命令するか純粋に気になっているようで、両手を構えて眼を輝かせている。

 

 首から手を離し、俺はラーミアへ命令をする。それは……。

 

「これまで通り、その黄金の羽で自由に世界を飛び回っててくれ。お前には、それがお似合いだ」

 

 ラーミアの眼を見て、真っ直ぐにそう言い切る。正直、ラーミアが関わると感情が制御できなくなるからあまり近づけたくないのだが、スカイのことを考えて譲歩すると現状維持くらいが丁度いい。

 

 俺の言葉に、初めはぽかんとあっけにとられていたラーミアだったが、俺の言葉を咀嚼し終えたかと思うと……まるで動物の愛情表現かのように、俺へ頭を擦りつけてきた。

 

 ……なんで?

 

「くくっ。要するに、(ワタシ)の黄金の羽を見ていたいってことだろ? まったく、ルシアスは素直じゃないなぁ!」

 

「……違えよ。勝手に解釈すんな」

 

 俺はそんなつもりで言っていない。自由に生きてほしいのを、ラーミアが誤解しているだけ……の、はずだ。どうやってその誤解を解くか考えていると、イリスとスカイの手によってラーミアが俺から引き剥がされた。

 

「あなたねえ、いい加減にしなさい! くっつきすぎよ!」

 

「そ、そうだよ! らーちゃんだけ……その、ズルい!」

 

 俺から離れたラーミアは、不機嫌そうにイリスとスカイの胸をちらりと見ると……軽く鼻で笑い、顎を前へ突き出しながら口を開いた。

 

「別に、貴様らもくっつきたければいいだろう。ただ……」

 

「ただ?」

 

 

「――貧相な身体の貴様らより(ワタシ)がくっついたほうが、ルシアスも嬉しいんじゃないか?」

 

 

 カチッ、という音がした。何か、地雷でも踏んづけたかのような、致命的な音。

 

 俺ではなかった。ラーミアでも、ミタマでも……イリスでもなかった。いや、厳密に言えばイリスの額にも青筋が入っていたのだが、より強い怒りの炎を浴びたことで逆に冷静になってしまっていた。

 

 だとすると、候補は残り一人……スカイだ。

 

 見ると、スカイが笑っていた。いや、この表現は正確ではない。確かにスカイの口角は上がっているが、眼が全く笑っていない。それどころか、額に青筋が目に見えるほどはっきり浮かんでいるし、魔法を展開していないはずなのにスカイの後ろで燃え上がる炎が見える。

 

 正直、こんなスカイ見たことないし……相当怖い。

 スカイはまるで散歩でもするかのように悠々と、何も気づいていないラーミアへ近づいていき、声をかけた。

 

「らーちゃん」

 

「うん? どうした――おわっ!?」

 

 スカイが服を掴み、ラーミアをソファーに引き倒す。すると、丁度俺の膝の上でラーミアが腹ばいになった。スカイは俺の左隣に座ると……ラーミアのズボンを容赦なくずり下げる。面積の少ない黒色の布で覆われた尻が、明るい照明の下に露わになった……ので、全力で目をそらす。……なんでそんなセクシーな下着履いてんだコイツ。

 

「ひゃっ!? な、なにするんだカイちゃん!」

 

「ねえ。らーちゃんさ、いっぱい悪いことしたのにあんまり反省してないよね。ボクがちゃんと、お仕置きとかしとかないとなって。イリス。頭の方抑えて」

 

「ええ、わかったわ」

 

「きっ、貴様も敵に回るのか!」

 

「当然でしょう。小馬鹿にされてなにもしないほど温厚じゃないのよ、私は」

 

 スカイの命じる通り、イリスが俺の右隣に座り、ラーミアの肩から上を腕で押さえつける。すると、ラーミアがみじろぎしながらさらに大きな声量で叫んだ。

 

「わ、(ワタシ)は、何も悪いことなど――」

 

「器物損壊」

 

「……スゥーッ」

 

 イリスがラーミアの罪状(学内設備の破壊)を呟くと、図星を突かれたようで、ラーミアの口から空気が漏れたような音がした。が、すぐにはっと眼を見開くと、スカイへ言い返しを始めた。

 

「そもそも、カイちゃんに本気で(ワタシ)を裁く気なんてないだろう!? これは、胸の小ささを揶揄われた仕返し……」

 

「うるさいよらーちゃん。下着も脱がされたい?」

 

「う……」

 

 あ、スカイの圧でラーミアが押し黙った。いや、仕方ない。正直、今の殺気を放つスカイには俺もあんまり勝てる気がしない。

 

「た、助けてくれ、ルシアス。カイちゃんをこんな怒らせたのは、孤児院時代。泥だんごをうっかりカイちゃんの部屋にぶちまけ、逃げた時以来だ!」

 

「じゃあお前が悪いな。ちょっとは痛い目見とけ」

 

「もう、お尻をぺんぺんは嫌だ……!」

 

 半泣きのラーミアが俺へすがりつく。正直、情けなく命乞いをするラーミアなんて見たくなかったが……こうなった原因は一から十までラーミアの自業自得だ。助ける気は起きん。

 

 俺が頼れないと悟ったラーミアは、ターゲットをミタマへ変更した。

 

「そこの黒髪、ミタマと言ったな……」

 

「ミタマ、こんな奴の言うことを聞いてやる必要はないわよ」

 

 ラーミアの懇願を一刀両断するイリスだったが、それが分かっていたかのようにラーミアは言葉を続ける。

 

「いや、分かってる。助けろとは言わん。ただ……ルシアスの目を塞いでくれないか? その、痴態をルシアスに見せたくないんだ。……恥ずかしい、から」

 

「は? そんなおっぱい丸出しの服着といて?」

 

「この胸も、その……ルシアスに、喜んでほしくて。慣れるまで、結構大変だったんだぞ?」

 

「あなたにそんな乙女な感性あったの?」

 

「あって悪いか!」

 

 言い争いをするイリスとラーミアを尻目に、ミタマはソファーに座る俺の後ろに回り、俺の顔にぽかぽかと温かい手を当ててきた。

 

「頼まれちゃったから、ごめんね師匠」

 

 少し申し訳なさそうに俺の耳元で囁くミタマだったが……正直に言おう、ミタマの手は俺の眼をぜんっぜん隠せていない。それどころか背中に押し当てられている、このたぷたぷと柔らかく、ずっしり重い感触は……多分、ミタマの豊満な胸だよな。なんか、余計状況が悪くなった気がする。

 

 ここで改めて、今の俺の状態を確認してみよう。両隣にはスカイとイリスがぴっちりくっついて、膝の上にはラーミアが腹ばいで乗っている上に、後ろからミタマが抱きつき、その双丘を押し付けてきている。なんか、意図せずに役得を得ているように見えるかもしれないが……正直、隣にいるスカイが怖くてそれどころではない。

 

 せめてミタマに全く意味のない目隠しをやめるようお願い……するより先に、額に青筋を立てたスカイが平手を振りかぶり始める。命乞いかと思うほどに必死なラーミアの懇願は一切聞き入れられる様子がなく。腕は限界まで引き絞られ――。

 

「じゃ、行くよ」

 

「なあカイちゃん! やっぱり! もう少しだけ話し合わないか――!!」

 

「問答無用!」

 

 ついに、スカイの平手がラーミアの丸尻へ振り下ろされた。

 

 

 

「――きゃいんっ!!!!」

 

 大きく丸い黄金の月が照らす白銀の校舎に。

 破裂音と、一匹の獣が去勢されるような嬌声が轟いた。

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