ソル&ヴァルキリー:かませ騎士に転生した俺、破滅回避のため落ちこぼれヒロインを育成していたらいつの間にか天才と呼ばれてしまう   作:マテリ-AL

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第8話:『天才』に妬みはつきもの

 ゴーレム訓練場で訓練するようになってから数日。放課後にゴーレム訓練場へ行き訓練。帰ってきた後、図書室で情報を集めるという生活が日課になり始めていた。流石に毎日徹夜はしてはいないが。

 

 魂導者(ソル)戦乙女(ヴァルキリー)を導く役割をしている都合上、学内の立場は教員と生徒の境界。魔力測定のような特別な授業でない限り、学園で授業を受けるのは基本的に戦乙女(ヴァルキリー)だけだ。

 

 そういう時は空き時間で俺が弁当を作り、待ち合わせ場所を決めて集合するのがいつもの放課後の流れだ。今日の集合場所は……千と数百年以上前にあらゆる魔を討ち英雄となった騎士の祖、剣聖様の銅像前広間だ。

 

 古風な騎士装束を着た優男の横顔を眺めながらスカイを待つ。

 

 ……風が冷たくて気持ちいい。

 この学園は霊峰の上に建っている都合上、標高が高いことによる負荷を消すために魔法によって快適な気候になっているが、風だけはそのまま残してあるようだ。

 

 …………。

 ……おかしいな。

 

 待ち合わせ時間から結構経ってもスカイが来ない。いつもは時間通りに来るはずなんだが、何かあったか? 周囲を探してみるか。

 

 広間から見える場所にはいない。なら、校舎裏とか……。あ、いた。

 

 ……ん? スカイの周りに赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)とその取り巻きが何人かいるし、スカイは見るからに萎縮している。囲まれてるって感じか。

 

「アンタね。調子に乗るのもいい加減にしなさいよ」

 

「ち、調子に乗ってなんか……」

 

 赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)がスカイに詰め寄る。まあ、あれだけ華々しい才能を見せつけたら、嫉妬の一つぐらいされるか。でも、スカイにはあれくらい撥ねのけられる自信を持って……。

 

「なんでアンタみたいな落ちこぼれが、あんな王子様みたいな魂導者(ソル)に認められるのよ! しかも、認められたらお姫様気取り!? 本当に腹が立つわ!」

 

「た、確かに。ルシアスは王子様みたいにかっこいいけどさ……」

 

 ……いや、何の話してんだ? スカイの才能に嫉妬してるんじゃないのか?

まあいい。とりあえず助けに行くか。

 

「スカイ、探したぞ」

 

「……あっ、ルシアス!」

 

 スカイを後ろに下がらせ、赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)達の前に立ちふさがる。

そんな俺を赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)は舌打ちしながら睨みつけてきた。

 

「アンタも、天才魂導者(ソル)だなんて持て囃されて、随分といい気に……」

 

「なるわけねえだろ。天才なのは俺じゃなくてスカイの方なんだから」

 

「……はぁ!?」

 

 俺の返答に、赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)は、さらに顔を歪める。正直、ここで問答している時間がもったいないし、もう行っちまうか。

 

「……話は終わりか? じゃあ――」

 

「待て!」

 

 赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)が俺達を引きとめる。が、しかし、俺達に足を止める理由はない。

 

「見てなさい。いつか、アンタの化けの皮を剥いで、地に落としてやるから! せいぜいそこの落ちこぼれに足を引っ張られないように気を付けてなさい!」

 

 憎々し気な表情で、こっちに指を指しながらそう宣言する赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)

 ……だが、ちょっと的外れなこと言ってんな。

 

「いや、スカイは本物の天才なんだから、剥ぐ化けの皮がないだろ」

 

「アンタに言ったんだけど!?」

 

「……俺!?」

 

 前々から思ってたんだが、なんで俺がそんな高評価得なくちゃいけないんだ?

天才なのはスカイで、俺はその才能に乗っかっているだけのただの凡人(モブ)なんだが。

 

 どういう言葉を返せばいいか分からずに悩んでいると、赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)の取り巻きをしていた内の一人、黄色い髪を三つ編みにした少女が前に出てきて、顔を真っ赤にしながら叫んできた。

 

「ちょっと貴方ねえ! いつまで、そのふざけた態度をとるつもり!? このお方は代々戦乙女(ヴァルキリー)を輩出してきた名門伯爵家の令嬢様なのよ! ちょっとは敬う気持ちとか持てないわけ!?」

 

戦乙女(ヴァルキリー)の価値は家柄じゃなくて強さだろ」

 

「――っ! たかが魂導者(ソル)が、戦乙女(ヴァルキリー)である私達に意見するつもり!?」

 

「その()()()魂導者(ソル)がいないと、戦乙女は空飛べねえんだが?」

 

「あのラーミアみたいに、自力で羽を出してみせるわ!」

 

 ラーミアレベルの才能があったらもう羽出せてんだよ。なんというか、ちょっと勘違いしてるな。こういう子にこそ、いち早く魂導者が必要だと思うんだが……。

 

「今アンタ、私を馬鹿にしたわね!」

 

「いや、そんな……」

 

「そういう目をした! もういい! 分からせてやるわ!」

 

 どうやら顔に出ていたようだ。さらに顔を真っ赤にした取り巻きが、魔法陣を展開し始める。……まさか、ここで魔法使うつもりか? 罰則キツイぞ?

 

「はぁあああああああっ!」

 

 ……魔法展開に時間かかってるな。どんな大型の魔法使うつもりなんだ。

 

衝撃槍魔法(ショックスピア)!』

 

「あ、危ない! ルシアス!」

 

 魔法陣から放たれたのは、実物の騎士槍と同じくらいの大きさをしている、魔力製の長槍だった。速さと魔力量はそこそこあるが、スカイと比べるとどうしても見劣りする上に、射線が明らかにぶれている。

 

 正直、あんな時間をかけて展開する魔法ではないし、このまま立ってても俺達にかすりもしないだろう。

 

 ……だが、困ったな。ちょっと言いたいことができた。

 

 とりあえず、槍は俺がどうにかするか。

 関係ない人に当たったら、それこそ大問題だ。

 

 槍は当たった相手に衝撃波を炸裂させんと空気を切り裂き、あてもない方向へ突撃している。だが、これなら十分掴める範疇なので……掴んで止める。

 

「よっ……と。危ないな、全く」

 

「あ、えっ……!? 私の槍を……素手で受け止めた!?」

 

 改めて、掴んだ槍を見る。……うん。やっぱり魔法自体の出来はかなりいい。

 取り巻きにしておくには惜しいくらいだ。

 

「ちょっといいか?」

 

「ひっ……!? きゃっ……!」

 

 俺が一歩近づくと、取り巻きは体を跳ねさせ、後ろへ跳んだ。

 

「一つ、言いたいことがあるんだが……」

 

 そのまま俺が近づくと、取り巻きはさらに後ずさろうとしてバランスを崩して転び……地面に尻もちをついた。

 

「ご……ごめんなさい! 許してくださいっ……!」

 

……いや、何に怯えてんだ?

 

「ち、ちょっとルシアス!?」

 

スカイもなんか険しい顔してるし。

まあいい。とっとと用件を済ませてしまおう。

 

「いいか。一回しか言わねえから。聞き逃すなよ」

 

「な、なにを……?」

 

「ちゃんと毎食野菜を摂って、1日10分でもいい、瞑想をしろ。今のままだと、いくら強い魔法を習得しても展開中に潰されるか狙いがブレて当たらないかの二択だ」

 

「…………え?」

 

 よし、言いたいこと言えた。行くか。

 

 この取り巻きの子、多分だがステータスの中で『精神』がダントツに低い。

 ゲーム的に『魔法展開速度』と『魔法命中率』は『精神』ステータスで管理されているためだ。恐らく、集中力が足りていないのだろう。短気なところもそこ由来なのかもしれない。

 

 ステータスに穴があると埋めたくなるのが前世の俺から続くオタク心。『精神』に穴があるなら、野菜食わせて瞑想させるのが先で命中訓練等はその後だ。

 

「な、なに……? なんで……」

 

()()()魂導者(ソル)の勝手な戯言だ。聞くも聞かないもそちらの自由。ただ、もしアンタが魔法をまともに使えるようになりたいと思ってるのなら、試してみてもいいと思うぜ?」

 

「……っ」

 

 取り巻きは押し黙ってしまった。やっぱり彼女にも、自分の魔法に思うところはあったようだ。

 

 ……と、そろそろ魔法が使われたのを感知した先生が叱りに来る頃か。正直、巻き込まれて時間を使わされるの嫌だし……逃げるか。

 

「悪いなスカイ、余計な時間取って。行こうぜ」

 

「……え、あ、うん」

 

 槍を地面に捨て、スカイを引き連れて校舎裏を出る。取り巻きは、もう、俺達を引き留めようとはしなかった。

 

 

「ちょっといい魂導者(ソル)を手に入れたぐらいで。調子に乗りやがって……っ!」

 

 

 赤髪の戦乙女(ヴァルキリー)が何やら呟いたが、俺達に届く前に冷たい風に流れて消えた。

 

 *

 

 校舎裏から出た俺とスカイは、元々の集合場所、剣聖の銅像の前に来ていた。

 

「びっくりしたよ! 掴んだ槍を持ちながら近づくものだから、てっきり刺しちゃうのかと……」

 

「……ああ、なるほど。あの取り巻きの子はそれで怯えてたのか」

 

 いや、流石にそれは発想が物騒すぎないか? もしくは、それくらい俺の人相が怖かったか。……後者だろうな。俺の配役、かませ系ボスだし。

 

「でも、ありがとね。ルシアス。ボクを助けに来てくれて。……嬉しかった」

 

「ああ、いつでも助けてやる……と、言いたいところだが」

 

「……が?」

 

「いつかは、スカイ自身で撥ねのけて欲しいという気持ちもある。その力もスカイは持ってると思うしな」

 

「うぅん……それは、どうなんだろう」

 

 俺の言葉に対するスカイの反応は芳しくない。……こういう不必要に自己評価が低い所は直してほしいが、すぐに直るものでもない。あと、単純にスカイの気が弱くて悪意への対処が得意じゃない部分もある。

 

「……まあ、ゆっくりとできるようになってくれればそれでいい。スカイは天才だし、すぐにできるようになるだろ。それまでは俺が守れる分は守っといてやるよ」

 

「うん、ありがとう。……。……ねえ、ルシアス。いつから話聞いてた?」

 

「いつからって、いつだ?」

 

「えっと……おーじ様がどうとか、おひめ様がどうとか……」

 

 さっきの御伽噺の王子様がどうとかいった、よく分からん話のことか。

 

「ああ、なんか俺が王子様に例えられてたが、俺って別に王子様ってタイプでもねえだろ。どっちかといえば悪人面だし」

 

「いや、ルシアスはかっこいいと思うよ! ほ、ほら! 剣聖様に似ている部分があるし!」

 

「お、おう……? とりあえず落ち着け」

 

 顔を真っ赤にし、剣聖様の銅像を指さしながら力説するスカイ。

 ……自分が何を言っているのか理解しているのだろうか。

 

「……それに、ルシアスはボクを置いて行ったりしない王子様だから」

 

「……? なんか言ったか?」

 

「な、なんでもないよ! ほら、そろそろ訓練場行こ!」

 

 顔をブンブンと振り、俺を置いて突き進むスカイ。

 なんか最近、聞こえないぐらいの声量で言葉をつぶやくのが流行ってんのか?

 

 ……それにしても、俺と剣聖様が少し似てる、ねえ。

 

 

 鋭いな、スカイは。

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