拾ったのは、外伝ゲームの主人公でした   作:異星人アリエン

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ナクア・メルキオール

 

「はぁッ!」

 

 気合い一閃、わたしは再び拳を振るう。当たれば絶対にナクアを仕留められると確信するくらいに、会心の一撃。

 

「甘いねぇ。そんなんじゃ、僕には届かないよ」

 

「くっ……!」

 

 だけど、いくら攻めてもナクアに拳は届かなかった。あの4本のアーム、《影操八脚/アトラク・アハト》とやらに防がれている。

 

 守りを突破突破できない。何度も見た光景。わたしは歯を噛み締める。

 

「運動なんて出来なさそうなやつのくせに……!」

 

「それは偏見だよ。《影操八脚/アトラク・アハト》の強みは、装着者の意のままに操ることのできる柔軟性さ。きみのことはよぉく知っている。何処を狙ってくるかなんて予想するのは容易いことだ。ほら、またきた」

 

 殴ると見せかけての蹴り。

 殴る段階でアームの一つが防御の為にナクアの顔付近に来て、それで視界を防いだから完全な不意打ちだったのに、それすらも防がれる。逆に鋭い一撃を喰らって吹き飛ばされてしまった。

 

「う、ぐぅう……!」

 

「やはりきみは素晴らしい。まだ《悪魔の心臓/デモゴルゴン》を埋め込んで10日と経っていないのに、そこまで力を引き出せるだなんて」

 

「はぁ、はぁ、皮肉のつもり?」

 

「褒めているのさ! 輝征装(エアラリス)には相性がある。きみに埋め込んだ《悪魔の心臓/デモゴルゴン》のように、適応出来なければ使用者が死ぬモノなんてよくあるのだよ」

 

 さっきから戦ってる最中なのに、ナクアは聞いてもないことをペラペラ喋り出す。

 

「あの日、《悪魔の心臓/デモゴルゴン》を埋め込んだ時! きみは理性を保ったまま力を振るってここから逃げ出した! ぼくはそれに感銘を受けた! きみのようになりたいと! 心からそう思った! だからぼくは保管されていた「《影操八脚/アトラク・アハト》を引っ張り出した!」

 

 瞳に異常なくらいの熱を宿しながら、ナクアは身振り手振り語る。

 

「《影操八脚/アトラク・アハト》は優秀だ。他の輝征装(エアラリス)と比べても使用者に負荷が少なく、適合者も比較的多かった。だが、ぼくはそれに満足できなかった。だから改造し、こうして文字通り手足のように扱えるようにできたのさ!」

 

 ナクアはアームの一つを舌舐めしながら、嬉しそうに語る。まるで本当の手のようにアームが動いていた。

 

「ぼくとこのアームの神経は繋がっている。最早コンマ数秒のズレなく扱えるということさ。……まぁ、神経の接続技術を熟すまでの練習として、ダース単位で人をダメにしてしまったが、仕方ない。これは必要な犠牲という奴さ」

 

「そんなくだらない事のためにそれだけの人を……!」

 

「くだらなくはないさぁ。これも全ては人類の未来のため。彼らは尊い犠牲だよ」

 

 うそだ。その言葉を聞いて確信した。

 

 こいつは単に、自分が輝征装(エアラリス)を使いたかっただけだ。どこまでも自分本位な身勝手さに、反吐が出る。

 

 必ずコイツをぶちのめす。

 強い思いと共に、繰り出すパンチに、蹴り。でも、ナクアはその全てを防いでくる。

 

「そろそろ学習したらどうだい? きみの拳がぼくに届くことはないよ」

 

 拳を防いだ隙に蹴りも振るうけども、またしても防がれる。

 

 ナクアは無駄だというけども、わたしは繰り返される攻防でやつの癖を見抜いていた。

 

 《悪魔の心臓/デモゴルゴン》で強化されたわたしの拳を防ぐとき、ナクアは2本のアームで防いで、もう2本のアームを地面に突き刺さすことで体勢を支えていた。

 

 あいつはわたしの攻撃を完全に受けきれていない!

 

 なら、実質的にあのアームは2本しかわたしに向けることができていない! なら責め続ける!

 

「どうしたの、それだけ輝征装(エアラリス)に執着していざ手に入れたら防ぐだけッ!?」

 

「良いや、それで良いのさ。確かに輝征装(エアラリス)は優れている。でもそれ以上に優れているのが僕の頭脳さ。それが合わされば最強に等しい。だがね、何事にも相性はあるのだよ」

 

 守ることしかできないのに、ナクアは不敵に笑い続ける。

 

輝征装(エアラリス)には、それぞれ特色がある。《悪魔の心臓/デモゴルゴン》の特色は、素体となった《嘯き欺く悪魔獣(デミウルゴス)》の力を引き出すこと。それに適合したきみ相手に、真正面から戦うなんて馬鹿げているじゃないか? だからこうしよう」

 

「ガスッ!?」

 

 突然、ナクア本人が懐から何かをわたしに向かって投げ出した。途中でそれは割れてら気化した空気が漏れ出す。思わず吸ってしまった。そしてすぐに強い脱力感と視界が回るように不安定になる。

 

「これ、は……!」

 

「麻酔ガスさ。晶獣であろうとも、昏睡を免れない……はずなのだがね。まだ意識を保っているのは驚嘆に値するよ」

 

「はぁ、はぁ。このくらいで」

 

「戦意が衰えないのは結構だがね。その状態でさっきと同じように戦えるとでも?」

 

 アームが容赦なく攻め立ててくる。4本全てこちらに向けてくる。チャンスなのに、わたしの身体は思ったように動かない。

 

 その隙をつくように、4つのアームによってわたしの四肢が封じ込められた。

 

「くっ、このぉ〜……ッ!」

 

「無駄だよ。幾ら力を増していようとも、薬で力を衰えさせ、関節を抑えられたら何も出来ない。さて、成長したきみの肉体を見せてもらおうか」

 

「やめっ」

 

 力を込めるが抜けられない。

 

 そうして至近距離まで接近したナクアは、ゲドウが貸してくれていたわたしの衣服を破り捨てる。

 

 曝け出される裸体。

 

 思わず顔を赤くする。胸も、おなかも、すべてが晒される。

 

 そんな中ナクアは、わたしの胸の中心に一体化している《悪魔の心臓/デモゴルゴン》だけに目が釘付けになる。

 

「良いよぉ、良いなぁ。すごく良い! これだけ馴染んでいるのを見るのは初めてだぁ! 理由はなんだ? 体質か? 相性か? 感情か? 調べたいことがたくさんある!」

 

 興奮した様子で、わたしの身体を触りまくる。

 

「きもち、わるいッ……!」

 

 ぞわぞわと肌が粟立つ。殺す気でナクアを睨みつける。

 

「その目、思い出すねぇ、初めてきみが連れてこられたときも、《悪魔の心臓/デモゴルゴン》を埋め込んだ時もそうだった。ぼくはきみを評価しているんだよ。折れることのない精神性。きみは全くもって素晴らしい実験体だ!」

 

「でもあの時とは違う……! わたしは、アンタと戦う力を手に入れた!」

 

「その力が通用しなかったんだろう? 四肢を抑えられ、最早動くこともままなるまい。吼えるのは良いが、それは単なる負け犬の遠吠えに過ぎな、うぎっ!?」

 

 完全に油断していた所に、頭突きを喰らわせる。より観察するために、無意識にわたしに近づいていたから当てることができた。

 

 4つのアームがわたしの四肢を封じるのに使われていたことに加え、元々研究者であり軍人でないナクアにそれを避けることはできなかった。ナクアは額が割れて血を流す。

 

「ひぃ、血だぁ!? 痛いのは嫌なんだよぉ、なんてことするんだ! というか、麻酔ガスはどうなった!?」

 

「そんなの、もう治った!」

 

「はぁ!?」

 

 実際、本当にもう身体のだるさは消えていた。多分、《悪魔の心臓/デモゴルゴン》と混じり合っているから、解毒も早かったのだと思う。

 

 アイツは痛みを知らない。だから、痛かったらその部位を庇おうとする。神経を接続したとか言ってたけど、それってつまりは反射的に行動しちゃうってこと。熱いヤカンに触ったら手を引っ込めるみたいに。

 

 だからアイツは、わたしの四肢を拘束していたのに離してしまう。拳を振り上げたわたしに慌てて、アームで頭を庇おうとする。

 

 その時、わたしは殴るんじゃなくてアームの一本掴んだ。

 

「このアームが硬いのはわかった。だから、壊すのが無理なら」

 

「……まて、何をするつもりだい!? やめたまえ!!?」

 

「引っこ抜く!」

 

 そのまま力任せに引っ張った。

 

「ぎぃああぁぁぁあぁぁぁぁッッッ!!!!?」

 

 絶叫。おおよそ人が出したとは思えぬほどに悲痛な声。ナクアの肩の肉がアームごともぎ取られた。《影操八脚/アトラク・アハト》のアームが、手の中でびちびちと動く。

 

「きもっ、虫の脚みたい」

 

「あぁ、もう最悪だ最悪だぁ。痛いし、アームは一つ破壊されるし、こんなのぼくのデータにはない! くそっ、くそ……くひっ、くひひっ、ああ、良いな! 良いなぁ! 予想を上回る現実! 君の異常なまでの成長性! これは検証のしがいがある!」

 

「うわぁ……」

 

 痛がったと思ったら、恍惚と語り出す。きもちわるい。思わずドン引きしたけども、すぐに追撃しようと気を引き締める。

 

「だが、それに僕自身が相手取る必要はないね」

 

「待て! 逃げるの!?」

 

 残ったアームを駆使し、ナクアは本当の蜘蛛のように壁を這い回り、そして跳びはねてわたしから距離をとった。

 

「逃げる? いいや、勘違いしちゃいけないね。物事には適材適所がある。戦闘は、戦闘に向いた者に任せるのさ」

 

「またあの武器の兵士を使うつもり? あんなのが、何人もいたって」

 

「あぁ、知っているよ。所詮は、武器を与えられたに過ぎない軍人が何人いようとも輝征装(エアラリス)には届かない。なら、肉体的に優れていたならばどうだ?」

 

 意地悪くナクアが笑う。

 

輝征装(エアラリス)は確かに強力さ! だけどこれからの時代に必要なのは強力な一点物の兵器じゃない! 量産に優れ、数で圧倒することこそ最も安上がりなんだよぉ! あのいけすかない女は輝征装(エアラリス)の力の一端を出力した戦戎具(サテライト)を作るのが精一杯だったが、ボクは違う! きみのおかげで変化型の輝征装(エアラリス)の力の一端を再現することができた!」

 

 壁に備え付けられた赤いボタンを押すと同時に、けたたましくサイレンが鳴った。

 

「キミの身体に埋めたのは、かつては帝国を震撼させた最強の怪物《嘯き欺く悪魔獣(デミウルゴス)》! その力は軽く他の輝征装(エアラリス)を凌駕する! そしてその力の一端を引き出した、ぼくの《恵まれた子ども達(アパスマーラ)》よ! 彼女を捕らえるのだ!」

 

 扉が開かれる。

 

 その先にいる、ナクアのいう《恵まれた子ども達(アパスマーラ)》とやらに向けて警戒をする。どれだけの存在だろうと、その全てを倒す。

 

 そうして扉が開き切ったその先で現れたのは異形な姿のこどもたち──その全員が倒れ伏していた。

 

「は? ぶべらあぁぁぁ!!?」

 

「くたっ、ばれぇぇぇッッッ!!!」

 

 唖然とするナクア。

 

 その隙を見逃さず、わたしは接近して顔面に拳を叩きつけた。

 

 油断とあまりの威力に壁に叩きつけられたナクアはぐったりと動かなくなった。ふぅ、と息を吐く。

 

「でも、なんで敵が全員倒れて……」

 

 チャンスだったから思わず後先考えずに殴り飛ばしたけども、よく考えたらおかしい。疑問に思っていると、

 

「なんだ? もう終わったのか?」

 

「ゲドウ!?」

 

 扉の奥から何故そこにゲドウがいた。そして自らが黙って抜け出してきたという気まずさから身構えた。

 

「おぉ、メリス。元気そう……、いや元気すぎだろなんつー格好してんだ」 

 

「なに言って……はっ!?」

 

 わたしは今自身がほぼ全裸であることに気付いた。

 ゲドウは「あちゃー」という顔をしながら目を背けていた。そのせいで余計に顔から火が出るくらい熱くなる。

 

 は、はずかしいっ。な、なんでこんなことにっ……!

 

 

 

 

◇◇◇

 

 あの後、メリスを追いかけたオレだが既に《国家機密研究局(ゲマトリア)》は襲われた後だった。戦闘の痕跡から、まだ戦いが始まったばかりだと察したオレは標的を変えた。

 

 メリスはナクアを必ず倒すだろう。

 

 そこに心配はねぇ。ならオレは一つ別のことを対処することにした。

 

 ナクアとの戦いの際に挟まれるトラウマシーン。

 

 《恵まれた子ども達(アパスマーラ)》と呼ばれる改造人間との戦い。ある意味で兄妹ともいえる存在のこどもたちは、メリスにトラウマを埋め込んだ。オレはこの戦いを起こさせないように、行動した。

 

 雷で無理やり壁を破壊し、探し回る。

 

 そして遂に見つけることが出来、先んじてオレは奴らを始末した。ナクアからの指示がなかったからか、

 

 そのタイミングで扉が開き、メリスと再会した。……なぜか全裸に近しい姿だったが。角と尻尾も相まって創作でよく見るサキュバスみたいだった。

 

 まぁ、格好はあれだが元気そうでよかったよかった。

 

「う、ぐ、お、ぉぉ、な、なぜなんだ……」

 

「あん?」

 

「ぼ、ぼくの愛しい《恵まれた子どもたち(アパスマーラ)》はどうしたぁ!? どうして、こんな品の無い男の方が出てくるんだぁ!」

 

 鼻が折れて、血をダラダラ流しながらナクアが指摘する。まだ生きてるのかよ。

 

「悪かったな、むさ苦しい男でよ! あぁ、オメェのいう奴等なら全員のしちまったよ。……くそ、胸糞悪いぜ。全員、自由意志を奪われて廃人と化してるから、こっちとしても皆殺しにするしかなかったじゃねぇか」

 

「ば、ばかな!? 僕の造り上げた《恵まれた子ども達(アパスマーラ)》は、あの第三皇女の率いる《近衛兵団》にだって匹敵する強さなんだぞ!?」

 

「まさかオメェからその言葉が出るとは思わなかったが、そりゃ驕りだろ。あの女傑皇女が鍛え上げた精鋭に届く訳がねぇ。力はあっても技術がねぇからな。それよりも、良いのか? こっちばかり見ていて」

 

「何を言って……はっ!」

 

 メリスがナクアへと飛び乗った。

 

 両足と尻尾で残ったアームを抑えている。輝征装(エアラリス)を抑えられれば単なる人の力で、ナクアはメリスに勝てない。つまり、ナクアに拳を防ぐ手段はない。

 

「やめッ──」

 

「死ね!」

 

 《影操八脚/アトラク・アハト》による防御も出来ず、思わず出した自身の両手ごとそのまま顔面を潰された。わーお、えげつねぇ死に方。

 

 まぁ、『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』だとどれもこれもメリスによって施設を破壊された際に、火災が起きたことによって生きたまま丸焼きにされるが。これもこれでえげつねぇな。

 

「ざまぁみろ! 人を虫けらみたいに扱った罰だ。お前に弄ばれてきた人々の痛みがわかったか! 悪い奴は、カエルム人なんかこうして苦しむべきなんだ!」

 

「お、おぉ、メリスその辺に」

 

 思想も過激というか、よくない方向にいきそうな感じだったので流石に宥めようかとすると、

 

「お前なんかっ、お前なんかぁ! ……お前なんかどうでも良いから……おかあさんと会いたい……あの家に返してよぉ……」

 

「メリス!?」

 

 癇癪を起こしたように騒いでいたが、やがてぽろぽろと涙を流す。初めて見た幼い表情。そのまま力尽きたように倒れ伏す。

 

 どうやら気絶したらしい。まぁ、《悪魔の心臓/デモゴルゴン》の力も無理に引き出していたようだから、仕方ないだろう。

 

「かえりたい、か」

 

 復讐心は確かにあったのだろう。

 

 だが、今のメリスは『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』の開始時期よりも幼い。つまりは、まだ精神的に未熟だ。だからこそ、あの言葉なのだろう。

 

「母親か。親不孝なのはオレも同じか」

 

 前世ではろくに親孝行する前にオレ自身が死んでしまい、今世でも戦乱のせいで母親の方が先に死んじまった。更にはオレは生きる為とはいえ人殺しにも手を染めている。

 

 悪人面なのを嘆いていたが、どっからどう見てもオレは悪人だな。バルザックに人のこといえねぇや。

 

 いけね、今はセンチメンタルに浸っている場合じゃなかった。

 

 オレは破壊され尽くしている《国家機密研究局(ゲマトリア)》、そして《恵まれた子ども達(アパスマーラ)》を見た。

 

「……わりぃな、オレにはオメェらを救ってやれねぇ」

 

 ……彼らを救うことはできねぇ。《悪魔の心臓/デモゴルゴン》の力を引き出すために無理に改造されたこのこどもたちは、どの道長く生きられない存在だ。

 

 メリスが気絶したのは幸いか。

 

 これからオレがする酷い行いを見ずに済む。

 

「オレらがいた痕跡を残す訳にも、こんな胸糞悪い研究成果を世にも残しておく訳にもいかねぇよな。徹底的に、破壊し尽くすか。〝アン・ブレイカー〟」

 

 触れるだけで全てを焼き尽くす雷の力。ムメイのように手加減のない、圧倒的な火力。

 

 胸糞悪い研究所を、そして『恵まれた子ども達(アパスマーラ)』たちの亡骸がまた使われないように破壊すべく、オレのその力を振るった。

 

 何度も雷が迸り、瞬く間に周囲が火の海になった。

 

 さて、さっさと逃げるか。

 

「なぁ、んだぁ、それ、はぁ……」

 

「は? まだ生きてるのかよ」

 

 顔の半分を潰されながらも、まだ息があったナクア。しぶといな、ゴキブリかよ。

 

「見ての通りオレの輝征装(エアラリス)だ。よかったな、オメェに使われなくてよ」

 

「ちがう……そんなわけあるかぁ……!」

 

 ナクアは残った片目でこちらを見る。

 浮かんでいるのは、恐怖と化け物(・・・)を見るような瞳。

 

「唯一雷を扱える輝征装(エアラリス)……《天鼓雷鳴/バルレウス》は既にこの世に(・・・・・・)存在しない!(・・・・・・) きみは、何者なんだ……!?」

 

「……」

 

 へぇ。

 

 腐ってもカエレスティス帝国の重鎮か。そのことを知っているだなんてな。

 

「答える義理はねぇな。じゃあな、残り少ない人生、悔いて死にな」

 

「なにを……はっ!?」

 

 オレは背を向ける。メリスを両手で抱え、ナクアを置いて燃え盛る研究所を後にする。

 

「あぁぁあぁぁぁッ!!? こんな、こんな結末なんてぇ!? まだ、ぼくには試したいこともやりたい実験が、たくさん、たくさん……! あ、あ、ひぃぎゃあぁぁ熱、あつぅぅぅ!!?」

 

 背後からの絶叫は、やがて炎に包まれて消えた。

 

 

 

 ナクアも、胸糞悪い研究も、可哀想な犠牲者たちも炎が平等に包み込んでゆく。

 

 

 

 《国家機密研究局(ゲマトリア)》は、その日壊滅した。

 

 

 

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