拾ったのは、外伝ゲームの主人公でした   作:異星人アリエン

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第二章 雷の正体
新たな日常の中で


 今や世界の三分の一を支配し、多数の統治領(コルニア)と称し支配した土地を抱える自他ともに大国と認めるカエレスティス帝国。

 

 そんなカエレスティス帝国、天都プリマヴィスタ。

 《特務兵装開発部(アルカナム)》の研究室の一室にて。

 

「そんなぁ〜! ボクが作った戦戎具(サテライト)がこんなザマになっているだなんてぇ〜!!?」

 

 大きい嘆く声をあげているのは、紫色の髪をした女性だった。一見すると美人な顔立ちも、目にある深い隈とダボダボな白衣を服の上から着ていることで、だらしないという印象を受ける。

 

 そして何より目立つのは瓶底眼鏡をかけていることだろう。

 

 そんな女性ことトイープ・ホルミスは、粉々となった戦戎具(サテライト)を見て頭を抱えていた。

 

「どうやら中央部に嵌めていた《エーテリアル水晶》を制御する回路が不具合により爆散、使い手であった兵士達もそのまま巻き込まれて死亡。以上が報告となります。尚、この件については抗議が来ています」

 

 トイープの側に居た、無表情で背の高い男性が答える。

 

「うぅ、ボクの可愛い戦戎具(サテライト)がこんな姿になるだなんて……かわいそうに……ぐすっ。これじゃあ、ボクの可愛い子達のお披露目がまた先に伸びてしまうじゃないではないか! 由々しき事態だよこれはぁ!」

 

「いやいや、死んだ兵士達に悼みましょうよ」

 

 あくまで自らが手掛けた戦戎具(サテライト)がこのような有り様になったことを嘆いていることに対して男が指摘するとトイープは悪びれもしない顔で答える。

 

「そうは言ってもだねぇ、モルモットくぅん(・・・・・・・・)

 

ヴェルヌント(・・・・・・)です」

 

「元々、まだ試験中の所を上からの指示で強制的に召し上げられた訳じゃないかぁ。確かに現行の武器よりは優れているけども、その分危険はあるとボクは何度も言ったんだよぉ?」

 

 心底不満そうにトイープは語る。

 

「……確かに上からの指示とはいえ、安全性もクリアしていない試作段階にも関わらず持っていくとは。確かに急ですね。理由は危険な晶獣を退治する為と仰っていましたが、だとしても爆散したのが街中とは……」

 

 腑に落ちない。

 

 ヴェルヌントはそう考える。何故ならば、戦戎具(サテライト)が効力を発揮するには使用者が戦戎具(サテライト)のスイッチを押す必要がある。晶獣退治の名目で持って行ったのに、それが街中で爆散したという事はそこで使用したということだ。

 

 戦戎具(サテライト)は内部に《エーテリアル水晶》が嵌め込まれている。《霊耀晶(マテリアルーツ)》よりもその価値は落ちるものの、貴重であるこの水晶に秘められた力を引き出すことで戦戎具(サテライト)破紋(オーラ)という力を纏うことができ、武器そのものの威力を増せるのだ。

 

 だからこそ、戦闘相手であるはずの晶獣の生息する森林地帯ではなく街中で使用したことが引っかかる。

 

「いくら爆散したとはいえ、そもそも起動しなければ不具合による爆散する余地はない。なら、街中で爆散したということは彼らが武器を抜いたということのはず。なら、その理由は……」

 

「詮索はよしたまえよぉ、ボクは所詮は一構成員に過ぎないんだ。あまりに深入りし過ぎるとぉ、ろくな目にあわないよぉ」

 

「貴方がそれをいいますか。武器密造及び輝征装(エアラリス)の秘匿をしていた犯罪者殿」

 

「おっとぉ、それは過去の話さ。今はこの《特務兵装開発部(アルカナム)》の主任だよぉ? つまぁり! 今ボクがしているのは合法さぁ! 何にも咎められる筋合いはないねぇ!」

 

 悪びれもせずに宣うトイープに、ヴェルヌントはため息を吐く。

 

「確かに《エーテリアル水晶》が爆ぜたのはぁ、間違いない。だけどねぇ、どうにも内部からというよりかは、外部から何かしら干渉を受けたように見受けられるんだよねぇ」

 

 此処にゲドウが居たならば、「これだけでそんなにわかるの? こわ……」と言ってドン引きしていた。

 

「そんなことはありませんよ。実験のし過ぎて憶測どころか妄想にまで飛躍してるんですか? バカと天才は紙一重と言うのですから、その紙破いてバカにだけはならないでくださいよ」

 

「辛辣にもほどがあるだろうがねぇ、モルモットくぅん」

 

「ヴェルヌントです。良い加減きちんと名前を覚えてください」

 

 ニマニマとしたトイープのからかいに対して、ヴェルヌントは淡々と言葉を返す。

 

「ぶー、からかいがいのないねぇ。ま、確かに此処じゃこれ以上の情報が得られないしねぇ。あまり気が進まないけど、現場に行ってみるしかないねぇ。という訳で、外出届けを頼むよモルモットくぅん」

 

「だから……もういいです。それで、私が行くのは妥当ではないでしょう。《特務兵装開発部(アルカナム)》の主任は貴女ですから、トイープが行くべきですよ」

 

「行ったら絶対戦戎具(サテライト)の件で怒られるじゃないかぁ……」

 

「そっちが本音ですか」

 

 いやそうな顔をするトイープに、ヴェルヌントはため息を吐くがその表情は微塵も変わっていない。

 

「でもまぁ、あそこなら丁度《国家機密研究局(ゲマトリア)》がある。勝手に戦戎具(サテライト)を持って行ったことといい、あのナクアの変態野郎に悪態の100こや200こくらい言っても良いかもしれないねぇ」

 

 トイープは、心底意地が悪く……にちゃついた顔で笑ったのだった。

 

「……なんと醜悪な笑み。見ていて怖気が走りますね」

 

「ほんとうにひどいねモルモットくぅん!? ボクも一応おんなだよぉ!?」

 

「そう言えば、トイープ。件の統治領(コルニア)・Ⅵですが、たしかセレスティアラ第二皇女も同行するそうです」

 

「そうかそうか。殿下も一緒……いっしょ? うぇぇぇぇ〜〜〜!!?」

 

 ヴェルヌントの言葉に、トイープは情けない悲鳴をあげたのだった。

 

 彼女らが向かう先は、統治領(コルニア)・Ⅵのトリンガース区。そこで何が待ち受けるのかを、まだトイープらは知らない。

 

 

◇◇◇

 

 

 統治領(コルニア)・Ⅵ、トリンガース区。

 

 既に此処がカエレスティス帝国の支配地になってから数年が経過している。

 オレとしても赴任してから、それなりに長い年月が経ってすっかりと馴染んだ土地だ。

 

 そんな中で今日もオレは、軍人としての務めを果たしていた。

 

「確かによぉ、軍人として税を公禄に食む以上働かざるもの食うべからずとは言うが、だとしても最近の頻度は異常だろ」

 

「ぐはぁ!?」

 

「治安維持に、晶獣退治。おまけに、要人の護衛だぁ? 手が足りてねぇにも程があんだろ。してきたことがしてきたことだから恨み辛みが多いのは理解できるがよ」

 

「このっ、よくも仲間を。がぁっ!!?」

 

「いけねぇいけねぇ、ひとりごとが多くなっちまった。ったく、これじゃ余計に陰鬱な気分になっちまう。

 

 前までは、バルザックも兵士として働いていた為それなりに兵士として務めつつも楽が出来た。だが、そのバルザックが居なくなり、兵士の方も質の低い奴ばかりでろくに満足に仕事ができない。

 

 え? そのバルザックが討伐部隊をほぼ殲滅したことが人員不足に拍車をかけたんじゃないかって?

 

 うーん、正論。

 

 つまりは、皺寄せが生き残ったオレに来たという訳だ。はっはっは……ちくしょうが!

 

「待て! やめろよ! お前、アスデブリの軍人だろ!?」

 

 気がつけば、周囲にはオレがのした人々でいっぱいになっていた。

 

 あ、因みにだがオレは今絶賛〝反抗人(ラウディーズ)〟の盗賊退治中である。

 

 〝反抗人(ラウディーズ)〟、それは征服された統治領(コルニア)の人々でありながら、帝国に恭順する隷属人(イクリプス)であることを良しとせず、帝国に抵抗する人々のことだ。

 

 必死になってオレを止めようとする最後の一人。そいつはオレがアスデブリであることを指摘する。

 

「そうだが、それがどうした?」

 

「わかるだろう!? オレ達は、奴等が奪い取っていったものを取り返しただけだ! 向こうが先にやったのだ! やり返して何が悪い!?」

 

「まぁ、その言葉には全面的に同意だけどもよ」

 

「ならば!」

 

「だとしてもなぁ、オレがアンタらを見逃す理由とはなり得ないんだわ。わりぃな」

 

「ぐ、ぐぅぅッ……! この、裏切り者めェッ!」

 

 怒りと悔しさを滲ませながら、突喊してきたこの盗賊を率いていた男を斬り伏せる。

 

 びちゃりと、槍から血が滴り落ちる。

 

 男の剣はオレに届くことなく、喉を貫かれたことで力無く倒れ伏した。

 

「裏切り者、ね。そりゃ、そっちから見りゃそうだよな。だから、オレはお前らのことを何も知らねぇ。知らねぇが、奪われたから奪い返すっていうのには否定はしねぇよ」

 

 オレはそのまま辺りに倒れ伏す反抗人(ラウディーズ)達の死体を側に歩き、やがてとある一室の前に立つ。

 

「反旗を翻したいって気持ちも理解出来る。だがよぉ、そこに堕ちちまった、同じ穴の狢だろうがよ」

 

 反抗人(ラウディーズ)が隠していた部屋。

 

 そこに裸で捕らえられていたカエルム人、隷属人(イクリプス)の女性達を確認してオレはやりきれないため息を吐いた。

 

 

 

 

 そんな慌ただしい日々を過ごし、早いもので《国家機密研究局(ゲマトリア)》との決着から、既に一週間が過ぎた。

 

 その間オレは、晶獣退治、反抗人(ラウディーズ)の鎮圧に精を出しつつ、帰ってからはメリスの療養にあてていた。

 

 メリスは復讐相手であるナクアと決着をつけたばかり。

 《悪魔の心臓/デモゴルゴン》がどこまでメリスの肉体に、変化を与えているか見極めるためだ。

 

 軍人として日中は働き、帰ってはメリスの面倒を見る日々。

 なんか、子どももった親みてぇだな。いや、あながち間違いでもねぇのか?

 

 メリスも身体も、精神も、異常なし。なんなら、オレが気にかけているのが嬉しいのかずっとご機嫌だった。オレがいない間は積極的家の家事だってやってくれた。なんだオメェ、新妻かよ。

 

 ならそろそろ次に向かって良いだろう。

 

 オレはメリスを鍛えることを決めたのだった。

 

「武器を買いに行くぞ」

 

 そんな言葉から始まった一日、この区に幾つかある武器屋の一つへメリスを連れて訪れていた。

 

「いきなりこんな所に連れてくるなんて、ゲドウって強引」

 

「なんかいかがわしい言い方するのやめてくれねぇか。オメェが強くなりたいってつったんだろ」

 

「ふふっ、じょうだんだよ」

 

 こいつ、ナクアとの決着をつけたから年相応の笑みを浮かべることが増えた。それ自体は良いことだが、こうして揶揄ってくることもあって調子がくるう。

 

 しかし、そんなご機嫌も武器屋の対応ですぐに損ねることになった。

 

「なんのようだ。此処にはアスデブリに売るような武器は殆ど置いてないぞ」

 

「オレじゃねぇ。こいつにだ」

 

「……なら向こうにいきな。カエルム人用のはそっちに置いてある」

 

 オレがメリスに連れ立っていることに一瞬瞠目するが、そのまま案内される。

 

「ほぉー、こりゃすげぇ。よりどりみどりってやつだな。……なんだ、難しい顔して」

 

「……あの人、感じ悪かった。明らかにゲドウのこと蔑んでた癖に、わたしのだとわかった時態度がコロッと変わったし」

 

「そりゃ、オレと違ってオメェはカエルム人の血を引くからな。武器の所持許可の方も緩い」

 

「この血のおかげって考えたらすごく不服なんだけど」

 

 さっきの笑みは何処へやら。いやそうな顔をするが、カエレスティス帝国で生きていくのであれば混血とはいえカエルム人の血を引くのは、アドバンテージとなる。純血主義とかには混血であると知られると睨まれるが、それ以外なら多少いやな顔をされても、それだけだしな。

 

 因みに隷属人(イクリプス)なら、憂さ晴らしと称して暴行もしょっちゅうだし、アスデブリでもふつうに見下される。

 

 民族主義とかやーねー。でも、実際カエルム人は輝征装(エアラリス)造ったり、色々問題があっても世界の3分1を占める領土を維持しているから、優秀っちゃ優秀なんだよな。

 

 だからって差別を肯定するつもりはねぇけど。

 

「おいおい、こりゃ随分と良いじゃねぇか。確か最近作られたモデルだっけか? まだオレらですら配備されてねぇのによ。一般向けには売ってるのかよ」

 

 並べられた武器を見て思わず唸る。

 

 アスデブリになろうとも、武器を持つには軍人になるしかない。

 それでもまだ軍に属すれば持てるだけましで、アスデブリにならない隷属人(イクリプス)は武器を持った途端にすぐさま犯罪者として捕まることになる。

 

 対してカエルム人であれば、その規則は緩くなっており自己防衛の為に武器を持つカエルム人は一定数いる。そして、自衛と称して一方的に無関係な隷属人(イクリプス)を痛めつける輩もいる。

 

「ほんと、何処の世界もクソな輩は一定数いるもんだ」

 

「どうしたの? なんのはなし?」

 

「なんでもねぇ。で、だ。メリス、オメェはこれから武器を選べ。そんでその武器を持って鍛えあげることにする」

 

「でもわたしは、輝征装(エアラリス)があるよ。そっちの方が鍛えた方が良いんじゃないの?」

 

「そりゃ、姿形が一つならそうしたんだがな……」

 

 アドベンチャーゲームが元なだけあり、メリスの姿形はルートによって大きく変わる。

 

 本来は、さまざまな相手との模擬戦や晶獣との戦いを得て経験を積んでいくのだが、現にバルザックの一件でムメイとやりやったメリスは、急速に《悪魔の心臓/デモゴルゴン》に侵蝕されつつあった。

 

 正直オレはメリスが《悪魔の心臓/デモゴルゴン》に乗っ取られないか、ヒヤヒヤしていたところもある。

 

 だが、メリスは完全に自我を保ったままナクアに勝利した。

 

 これは恐るべき成長速度だ。

 

 ナクア自身は下から数えた方が早い実力とはいえ、『リベリオン/戦禍の夜明け』開始前の、今の歳のメリスが勝つには厳しい相手だ。それでも勝てたとなるとそれは、《悪魔の心臓/デモゴルゴン》の力を引き出せたということだ。

 

 だがそれは楽観視するわけにはいかない。

 

 『リベリオン/戦禍の夜明け』開始前の今の状態で使わせ続けたら、メリスの方が《悪魔の心臓/デモゴルゴン》に肉体を乗っ取られる可能性は消えていないのだ。

 

 ナクアとの戦いに決着がついたのなら、もう少し肉体が成熟するまでなるべく力を使わせるのは控えたい。

 

輝征装(エアラリス)だけに頼るのも危険だし、別の攻撃手段を会得するに越しておくことはねぇ。それでオメェに合う武器を見繕うつもりなんだが、さてどうするかな」

 

「それならわたしは槍が良い」

 

 メリスは即答する。

 

「あ? オメェの体躯だとそんなのよりも剣とかの方が取り回しも良くてだな」

 

「やだ、槍が良いもん」

 

「もん、ってオメェなぁ」

 

 ぷいっとそっぽを向く。

 

 そっかぁ、槍かぁ。

 

 どう考えてもアドベンチャーゲームの時も使用していた剣の方が良いと思うのだが、これは考えを変えさせるのは難しそうだ。

 

 原作主人公シドウと剣を交えたイベントスチルを見れそうにないことに、僅かにがっかりしながらオレは槍を見繕う。

 

「槍、槍なぁ。そうなるとこの辺りか?」

 

「沢山あるんだね。あっ、これすごい……硬くて大きい……」

 

 メリスが中でも一際太く大きい槍を手に持ち、思わず呟く。

 

 やだ、なんだか卑猥……。

 

 って、冗談言っている場合じゃねぇ。確かにメリスは《悪魔の心臓/デモゴルゴン》のおかげで常人よりも基礎能力が高く、大の大人でも扱うのに苦労するくらいの大きさの槍を持ててはいる。だが、オレは首を横に振る。

 

「ダメだな、こりゃ」

 

「どうして? わたしにだってこのくらいの大きさ問題なく持てるよ?」

 

「持てると扱うは違うんだ。この大きさだと、攻撃にしろ回避にしろ槍の大きさのせいで振り回される。それは致命的な隙になる」

 

 そもそもの話、槍の利点をあげるとなると真っ先に上がるのはそのリーチの差だ。特に剣と比べたら圧倒的に長い。反面、取り回しが難しいので乱戦や閉所での戦いは厳しい。

 

「オメェ、見た目に反して扱いが大雑把だからな。この大きさだとあちこちぶつけそうだ」

 

「うぐっ、そ、そんなことない。すぐに慣れる……はず」

 

「いや、無理だな。力任せにぶん回してすぐにおしゃかにする。それか、ぶつかった方が壊れるな」

 

 実際、単純な得物を持っての技量だと如何に『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』の主人公であるメリスだろうとも、『リベリオン/戦禍の夜明け』本編の主人公であるシドウ・皇・オリエントには到底及ばない。これはメリスの適合する《悪魔の心臓/デモゴルゴン》が、素材となった《嘯き欺く悪魔獣(デミウルゴス)》の力を呼び起こす、変身型の輝征装(エアラリス)のせいだな。

 

 対してシドウの方は、装備型の輝征装(エアラリス)だし、そもそもシドウ本人が、輝征装(エアラリス)自体が無くとも作中最上位の剣の使い手だから比べるのも悪いがな。

 

 なので、ゲーム版でもメリスのステータスを幾らあげようとも技術でシドウを上回ることはできない。これは絶対だ。

 

 だがそれは武器をもたない理由にはならない。

 

 そんな訳でオレはメリスにあった武器を物色する。

 

「お、良いものあるじゃねぇか」

 

 オレは積まれた武器から一つ選ぶ。

 

「ほれ、これにしろ」

 

「……むぅ、全然可愛くない」

 

「なんで武器に可愛さ求めてるんだよオメェは」

 

 大層不服そうだが、オレはメリスでも扱える程度の槍を渡す。値段もお手頃だ。頑張ればもうちょい高いのを買えるが、ぜってぇすぐに壊す予感がするから慣れるまでは安上がりので良いだろ。

 

「もう! さっきから言っているでしょう! 一番良い防具を用意しなさいと言っているのよ!」

 

「おいおい無茶言うなよ。嬢ちゃんの背丈じゃ、此処らの防具じゃサイズがあわねぇよ」

 

「背は関係ないでしょう! これから伸びるのよ!」

 

「あん?」

 

 大声が響き渡る。

 

 棚から顔を出して覗くと、店の店主と何やら小柄な少女が揉めているところだった。

 

「どれもこれも無骨なモノばかりでこれからのあたしの栄光に相応しくないわ! ……あら良いのがあるじゃない! そうよ、これよこれ! これならあたしには相応しいわ!」

 

「あっ、よせ! そっちは成人男性用の防具だ! 勝手に触るんじゃない!」

 

「にぇぇぇっっっ!!?」

 

 少女は明らかに背丈以上の鎧を手に取るが、重かったのか重心がズレる。そのまま倒れて、どんがらがっしゃーんと、武器や防具の雪崩に巻き込まれた。

 

「ほらな、見ろよ。身の程を弁えない武器を持つとあぁなるんだ」

 

「それよりも、あの娘大丈夫なの?」

 

「それもそうだ。おい、アンタ無事か!」

 

 声をかけるが、あれだけの量だ。もしかしなくても重傷だろう。

 

「ぷはっ! 何なのよもう!」

 

 そう思っていると、倒れた武器や防具の山から、ぴょこん! とアホ毛が出てくる。次いで、顔が出てきた。見る限りかすり傷すらない。

 

 マジか、あの武器の雪崩れに巻き込まれて無傷とかどんな運してんだ。

 

 そう思い、まじまじと武器の山から顔を出した少女の顔をじっくり見て、オレはすぐ正体に勘付いた。

 

「《サイデリアル》、ニェーニ・フラグラッシャー!?」

 

 帝国の誇る輝征装(エアラリス)使いの《天刑護騎士(アストロノーツ)》。その中でも最精鋭によって構成された対輝征装(エアラリス)組織《サイデリアル》。

 

 革命軍の暗殺組織《エニアグラム》のライバル組織とも言えるメンバーの一人に、オレは思わず声を上げた。

 

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