拾ったのは、外伝ゲームの主人公でした   作:異星人アリエン

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少人数でアジトに突撃する時は大抵騒ぎになる

 

「何者かは知らないが、我々が『キュクレウスの眼』だとわかっている以上逃す訳にはいかん! 此処で排除させてもらう!」

 

 ニェーニの大声に、警備をしていた『キュクレウスの眼』がオレ達を取り囲もうと動く。

 

「にぇぇっ。ま、まずっ、バレちゃった!?」

 

「捕縛を考えるな! 殺害を前提として行動し、っ!!?」

 

「おらぁぁぁ!」

 

 狼狽えるニェーニとは反対に、瞬時にオレは先んじて突出していた一人の喉を突いた。あまりの展開の速さに、周囲が固まる。戦闘は指揮官から潰すに限るな。

 

「バレちまったなら、仕方ねぇ。このまま真正面からお邪魔するとするか」

 

 即断即決、包囲なんてされちゃ面倒だ。さっさと包囲に穴をあけるか。

 

「な、何だと!?」

 

「悪りぃな、そのまま眠っといてくれや」

 

「ごふっ!?」

 

 仲間がやられた事に動揺した相手を更にもう二人。次いでやっとこそ反撃しようと突き出された剣を、槍の側面にある三日月を模した刃で受け止め、そのまま力を利用して弾き飛ばす。

 

 そのまま槍を回転させ、石突で相手の腹を思い切り突いた。あっという間に、包囲網に穴が出来た。

 

「手強いっ、なんだこいつはっ!?」

 

「いや、待て。あの顔に槍、まさかゲドウ・マルドラークか!?」

 

 オレのことに向こうも気付き始めた。

 

「ぐっ、カエレスティス帝国へと降った恥知らずの裏切り者か! なるほど、それに相応しい賤しい顔をしている!

 

「堕ちる所まで堕ちたな、悪鬼羅刹めがッ

 

人間の屑め! 民族を裏切る恥知らず者め!

 

地獄に堕ちろ!

 

「罵詈雑言の嵐にも程があるだろ!? オメェらとオレ初対面だぞ!? あと、顔が悪いのは関係ねぇだろ!」

 

 泣きそうなんだけど。

 

 なんでオレこんなに罵られなきゃならない訳? 恨むなら帝国だけにして欲しい、こちとら単なる一般兵だぞ。

 

「え、と、ゲドウ。わたし、ゲドウの顔好きだよ」

 

「慰めの言葉ありがとよ!」

 

「……嘘じゃないのに」

 

 メリスにまで気を遣われた。

 そんなにオレの顔悪いか? ……悪いわ、今まで助けた隷属人(イクリプス)もほとんど怯えていたし。

 

「だが、その力は本物だ……仕方ない、先にそっちの弱そうな奴から狙え!」

 

「っと、まじぃ! メリス! そこから離れろ!」

 

 それよりも、奴らオレとの戦闘を避けてメリスの方へと向かって行っている。

 

「女だとしても、悪く思うな!」

 

「大丈夫、こっちも力振るうのに悪く思わないから」

 

「ぐほぉッ!!?」

 

 メリスを人質にすべく動いていた男が、振るわれた槍に当たり凄まじい勢いで壁に吹っ飛ばされた。ありゃ単なる棒部分に当たったな。にも関わらずあの威力かよ。

 

「は、はぇ、な、なにアンタ、力つよ……」

 

 あまりの力にニェーニもドン引きしている。

 

 うん、オレもそう思う。

 これでも完全に《悪魔の心臓/デモゴルゴン》の力を引き出してないってまじ? 輝征装(エアラリス)の中には筋力アップするモノもあるが、完全に上位互換じゃねぇか。格差がひでぇ。

 

 それは『キュクレウスの眼』も同じだが、奴等は元はといえどもオレと同じ軍人。すぐにメリスの弱点に気づく。

 

「何という力だ……! だが……技術は荒いぞ! 付け入る隙はある! 複数で叩きのめせ!」

 

「うぐっ……!」

 

 すぐにその戦法の粗を見つけられてしまう。

 

 複数で囲むように接近し、遠中近距離すべてから攻撃され苦しそうな顔をする。

 

 特に接近戦を仕掛ける相手に苦戦している。振り払おうとするが、それは遠距離から攻撃してくる相手に邪魔されている。

 無理に槍なんか選びやがるからだ。

 

 しゃーねぇ、早く助けに……お?

 

「んもー! 隙を晒すだなんてまだまだ未熟ね!」

 

「あなたっ」 

 

「ぐっ、おのれ小娘邪魔をするな!」

 

「甘いわね! このニェーニ・フラグラッシャーにそんな攻撃は当たらないわ!」

 

 ニェーニが割り込み、相手の攻撃を受け流す。そしてそのまま相手を倒した。

 

「別に気付いてたし。それに元々バレたのはそっちの所為なんだけども……!」

 

「にぇっ!? う、うるさいわね! 勝てば良いのよ、勝てば! 勝てば正義! 夜空輝く一等星よ! そういうわけで貴方達もさっさと倒れなさい!」

 

「おのれぇっ、何も知らない小娘達が……!」

 

 慣れた様子で敵からの攻撃を捌くニェーニ。そこに先ほどまでのドジは一切ない。少なくとも、メリスよりは場慣れはしているように見えた。

 

 やがてオレたちは『キュクレウスの眼』のメンバーを、全て打ちのめした。戦闘を終えて、ニェーニの方を見ているメリスがぽつりと呟く。

 

「……強いって嘘じゃなかったんだ」

 

「まぁ、気持ちはわかるがな」

 

「どういう意味!? ふんっ、疑うだなんて不敬だけど許してあげるわ。さぁ、このニェーニ・フラグラッシャーの活躍を目に焼き付けたかしら! 焼き付けたなら、これからはニェーニさんと慕って」

 

「ぐっ、隙ありィッ!」

 

「にぇっ!?」

 

 ぷりぷりと憤るニェーニが無防備を晒す。

 どうやらやられたフリをしていた構成員が居たらしい。ニェーニに、凶器を振るおうとする。

 

「だから油断すんなっての!」

 

「ぐあぁぁぁっっっ!!?」

 

 やられたフリをし、ニェーニに剣を振るおうとした相手を薙ぎ払う。

 

 本当にドジだな、ニェーニの奴は。こんなんでよく今まで無事に生きてたものだ。

 

「はっ! ふ、ふんっ、助けなくてもあれくらいでこのニェーニがやられる訳がないんだから! でも、お礼は言うわ。ありがとう!」

 

「そりゃどうも。どちらにせよ、オレ達の潜入はバレた。奴等のリーダー格に伝わるのも時間の問題だろう。どうします?」

 

「あっ、えっと、そ、そうね。えーと、こんなときは……」

 

 ニェーニに指示を仰ぐも、しどろもどろになる。

 

 まさか何も考えてなかったのか? 考えの浅さに、ため息が出そうになるのをグッと堪える。

 

「……とりあえず見つかった以上、時間との戦いだ。此処が奴等のアジトである以上、見つかった時の脱出口の一つや二つあるはずだ。逃げられる前に決着をつけるべきだろう。ただ」

 

「そうね! 取り逃したら元も子もないもの! 二人とも! このニェーニ・フラグラッシャーに続きなさい!」

 

「待て待て待て!? アジトってことは罠もあるに違いねぇだろうが!? 一人で突っ込むのは止しやがれ! おいっ!?」

 

 オレの制止を気にも止めず、真正面から突っ込んでいった。

 

 行動力だけは一丁前だな。

 

「はぁ、メリス。オメェはオレから離れるんじゃねぇぞ」

 

「当然、ずっとそばにいるよ(・・・・・・・・・)。わたしを信用してないの?」

 

「《国家機密研究局(ゲマトリア)》に突っ込む際に、置いて出たのを忘れてねぇからな」

 

「……過去のことを掘り返すのは卑怯」

 

 バツの悪そうな顔をする。

 

 おいこら、目を逸らすな。こっちを見ろ。メリスをこっちに向かせようとするが、散歩帰りを嫌がる拒否柴みてぇな顔で抵抗しやがる。

 

「にぇぇぇっ!!!? い、いきなり壁から矢がぁぁ!!? ふにゃふっ!?」

 

「やばっ。ゲドウ、早く行かないと多分あの娘死ぬと思う」

 

「世話が焼けるなぁ、ったくよぉ!!」

 

 秘密基地の中から、聞こえてくる悲鳴にオレは慌てながらも内部へと突入した。

 

 

 

 『キュクレウスの眼』の秘密基地に突入すると、進むごとに出るわ出るわ、構成員達が。なんだここは、エンカウント率高過ぎだろ。そりゃ、敵のアジトなんだから当然か。

 

 一人一人はオレより格下だが、カエレスティス帝国との戦争による建物が半壊し、入り組んだ地形を利用して巧みにこちらを攻めてきやがる。

 

 流石元軍人達によって構成された反帝国組織だ。

 

「ぐっ、これだけ居て何故押される!?」

 

「相手はあのゲドウ・マルドラークだ。あの《99人斬り》のバルザック・ダレイオスとタメを張った怪物だ。数だけ優っても有利にはならんぞ!」

 

「ならば差し違えても仕留めるだけだ! 続け!」

 

 怖ぇ〜。死なば諸共、覚悟がガンギマってやがる。

 

 だが、それだけだ。

 

 数は多くともバルザックに遠く及ばない連中じゃあ、オレは止められねぇ。

 

 メリスもオレ程じゃねぇが、戦えていた。

 

「がぁぁぁ!」

 

「また一人やられたぞ!」

 

「ぐっ、見かけは少女なのになんだこのパワーはッ!」

 

「だれがゴリラよ!」

 

「言ってないが!? ぐわっ」

 

 メリスがゴリラ扱いにすっげぇキレてた。因みに、この世界ゴリラはいる。ご存知の通り、森の賢者と名高いあのゴリラだ。まぁ、人が存在する以上進化の過程で必ず同じ祖先を持つしな。

 

 ……持つよな?

 

 やべぇ、そこらへん同じかわからねぇ。今度、この世界での人類の進化の過程について記された本でも探すか。気になってきた。

 

 てか、メリスの腕前だが最初と違い徐々に槍を扱えていた。

 

 まだまだオレの目から見れば荒いが、とても持ってすぐとは思えない戦い振りだ。オメェさっき武器買ったばかりなのに、もう慣れて扱えてるのかよ。この短時間になんて成長っぶりだ。

 

 才能マンだ。いや、才能ウーマンか。

 

 巧みに槍を振るい、相手していた『キュクレウスの眼』のメンバーの首へ突きつける。

 

「早く武器を捨てて、そうすれば命は奪わない」

 

「……ちっ」

 

 ポイっと、手に持つ武器を捨てる。

 メリスがそれを見て、ほんの少しだけ張り詰めた糸を弛ませる。

 

 それがいけなかった。

 

「フッ……!」

 

「なっ!? 何してるのっ!?」

 

「負ける訳には……終わる訳にはいかんのだ……ッ! 国をっ、誇りを奪われたままでは死んでも死に切れないのだ……ッ! おれごとやれぇッ!」

 

「ぐ……わかったッ! すまんッ!」

 

 なんと相手は槍を掴み、自らの腹にメリスの槍を突き刺した。

 

 あれは自らの身体を鞘にすることでメリスの槍を封じやがった。

 

 普通に考えれば《悪魔の心臓/デモゴルゴン》を埋め込まれたメリスなら振り払うことも容易いのだが、どうやら気迫に気圧されたのか動きが一瞬鈍る。

 

 そのまま仲間ごと、ぶった斬ろうとする他の構成員。オレは直ぐに割ってはいる。

 

「悪りぃが、それを見過ごす訳にゃいかねぇな」

 

「がっ!?」

 

「なぁっ!? く、くそぉぉッ……!」

 

 槍で弧を描き、先に味方ごとメリスを斬ろうとした相手を打ち倒す。翻り、メリスの槍を腹に刺していた奴をそのまま蹴り飛ばす。

 

 一連の流れについていけていなかったメリスは、離された後尻餅をついた。

 

「油断すんな。こっちが躊躇しようが、向こうは文字通り死ぬ気で抵抗してくるぞ。戸惑えば食われるのはこっちだ」

 

「う、うん。ごめん……」

 

 オレの指摘に、メリスは素直に謝る。そして、自らの腹に槍を刺してメリスの動きを封じた男を見た。ドクドクと、止まることなく溢れ出る血。

 

「ソイツはもう助からねぇな。余程自らに深く刺したのか。抜けたせいで大量出血してやがる」

 

「っ、そう、だよね……」

 

「オメェが殺した訳じゃねぇさ。向こうが、それだけオメェを脅威に感じたからこそとった行動だ。つまり、こいつ自身が死を選んだんだ」

 

「うん……」

 

 明らかに気落ちしてやがる。顔も青い。

 

 しまったな。

 

 『シャヘル=シャレム/黄昏の境界線』では、メリスは人殺しに関しては生きていく上で割り切っていたが、こっちだとオレが拾ったせいでその過程がなくなり、今回初めての殺人にえらく動揺してやがる。

 

 ナクアや《国家機密研究局(ゲマトリア)》の面々と違って、『キュクレウスの眼』はメリスに何の関わりもなかったしな。

 

 仕事と割り切っているオレと違って、まだその辺の覚悟がなかったか。

 

「ここの人達は自分の故郷を取り返す為に、戦っているんだよね。帝国によって奪われた国を取り返す為に……」

 

「戦い辛いか? 気が重いならオメェは帰っておけ」

 

「ううん。私も戦うよ。きっと、この人にも譲れない思いがあったのだと思う。でも……それでも、無関係な人を狙ってるのは間違っていると思うから」

 

 メリスの言葉は何かを噛み締めるようであった。

 

 帝国に良い思いなどないだろうに、そこに住む無関係な人を巻き込むのは間違っている、か。国と人の区別を出来てるのはかなりの前進だ。

 

 『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』では、初期の頃は帝国憎しで戦おうとするあまり、無関係な一般人まで巻き込みかねていたからな。

 

 因みにそこで止めるかどうかが『革命軍』ルートと『人類の天敵』ルートの最初の分岐点となる。

 

 ぐしゃぐしゃと撫でてやる。

 

 髪が乱れるからやめて、と直ぐに言われるかと思ったがメリスはされるがままだった。

 

「メリス、あんまり無茶するなよ」

 

「大丈夫。ゲドウは心配し過ぎだよ。私だって、既に5人倒したんだから」

 

「意気込みは買うが、お前にとってあの出来事以来の実戦だ。特に得物を持った初めてのな。倒せたのも、あくまで《悪魔の心臓/デモゴルゴン》があってのことだ。それを忘れるな」

 

「子ども扱いしないでよ」

 

 不服そうに口を尖らすメリスを、鼻で笑う。

 

「そういうところが子どもなんだよ。大人扱いして欲しけりゃ、もっと成長してから言うんだな」

 

「私だってもう少し成長したら、もっと魅力的に……お尻や胸だって育つ」

 

「そっちの成長の意味じゃねぇよ」

 

 オメェ別に自身の色気について気にしない性格だったろ。急に何言い出してんだ?

 

「む! ここは怪しい気がするわ! とう! ……あれ、誰もいない? って、あっ!? 足場が悪いっ……、にぇぇ!? く、崩れたぁっ!」

 

 ……どうでも良いけど、ニェーニがうるせぇ。さっさといくか。

 

 

 

 

 

「此処が最深部ね!」

 

 ニェーニの言葉通り、湧き出る敵を相手取り続けた先に遂に最深部らしき場所に着いた。

 

「後詰めはいねぇのか。流石に兵も打ち止めみたいだな」

 

「長かったわ……! 此処に来るまでに随分と手間取らせられたものね」

 

「一番罠にハマってたの、貴女だけだけど」

 

「そ、そんなことないわよ!?」

 

 実際、傷らしい傷がないオレ達に対してニェーニはズタボロだった。仕掛けられた罠に悉くハマったからだ。それでも5体満足で生きてるの意味わからん。開けたら矢が飛び出てきたり、足元崩壊したら槍が仕込まれてたりしたんだぞ?

 

 それらを転んで回避したり、槍の隙間に入って当たらなかったとか、運が良いとかそういうレベルじゃないぞ。

 

「とにかく、あとは此処にいる奴等を捕らえれば『キュクレウスの眼』は終わりよ!」

 

「待ち構えている可能性もありますがね。開けた途端に、ズドンだ。……メリス、聞こえるか?」

 

「……ううん、奥からは何の音も気配もしない」

 

「なに?」

 

 罠の可能性を考慮し、《悪魔の心臓/デモゴルゴン》で変身こそしていないが、素の状態でも常人よりも五感に優れたメリスに尋ねるもこの扉の先に人がいないと語る。

 

 こりゃ、もしかしてしてやられたか?

 

「何をしているの? 行くわよ! 例え罠があろうとも、このニェーニの相手ではないわ!」

 

「なんでそんな自信満々なんだよ!」

 

 ニェーニはすぐに奥へと飛び込んだ。

 

 其処に罠があるかもという考えは微塵も見当たらず、そして事実何もなかった。

 

 

 

 罠どころか、誰も(・・)いなかった。

 

 

 

「もぬけの殻だな」

 

「あ、あら? はっ! ふっふーん、このニェーニ様に恐れをなして逃げ出したのね! 当然ね!」

 

「いや、逃げられたら目的達成できないでしょう」

 

「はっ!? そうだった! 早く何処に逃げたか見つけなきゃ! 他に出口とかはないの!?」

 

「ないなぁ」

 

 慌てたニェーニが辺りを探索するも、錯乱した書類や割れた食糧などがあるだけでオレ達が入って来た出入口以外は見当たらない。

 

 まぁ、そんな簡単に見つかるようでは秘密の脱出口とはならねぇか。

 

「オメェの聴覚でどうにかなんないのか?」

 

「無理だよ。既に遠く離れたのか、足音一つ聞こえない」

 

「そうか。まぁ、誰もいないことにすぐ気付けただけでも大したモンだ」

 

「あんた達! ぼーっと突っ立ってないで探しにぇっ!?」

 

 足元に乱雑に置かれた物に引っかかり、コケる。

 

「おいおい、そんな風に慌てるな。もし罠があったらどうする……ん?」

 

「何か音がする」

 

 その際に何処かのスイッチを押したのか、壁が動き出す。

 

 やがて現れたのは、まさに隠し通路とも言える場所であった。

 

「見つけたわ! 奴等が使ったに違いない脱出口よ! ここから追えば逃げて行った連中を見つけられるわね! あたしってやっぱり天才よ!」

 

「マジで……? えぇ……」

 

「運だけで生きてるみたい」

 

 まさかのニェーニが、秘密の脱出口を発見した。

 

 いや、悪運の強さは知っていたが豪運の加護もあるのかよ。

 

「さぁ、行くわよ! 足止めされちゃったんだから、きびきび走りなさい! 直ぐに追いつくのだから!」

 

「まぁ、その通りだな。了解です」

 

「わかった」

 

 追うことに対しては異論はない。

 

 オレ達はそのままニェーニを先頭に、脱出口から逃げた『キュクレウスの眼』のメンバーを追う。

 

 カビ臭く埃っぽい通路だ。

 こりゃ長いこと使われてねーな。それだけに、非常口であるというのを裏付ける。このまま追いかけりゃ、追いつけるだろうが途中罠を張られてる可能性もある。

 

 十分に注意しねぇとな。

 

「この臭いっ……!」

 

 やがて中ほどぐらいにまで進んだ辺りで何かに気づいたメリスが足を止める。

 

「どうした? メリス」

 

「血の臭い……! それもかなり濃い……っ!」

 

「何?」

 

 険しいメリスの表情に、血の臭いという言葉にオレは警戒する。

 

「おい! 一旦止まった方が良い! 何か妙だ!」

 

「何言っているの? 今は一分一秒を争うんだから! あにぇっ!!?」

 

 先に進んでいたニェーニが、突然突っ込んできた……いや、飛ばされてきた? 人影にぶつかってそのままゴロゴロと一緒に壁へとぶつかった。

 

「おい、大丈夫か!?」

 

「にぇ……」

 

「よし、生きてはいるな」

 

 雑だって?

 

 このくらいへーきへーき。死にやしねぇよ。このくらいニェーニにはよくある不運(こと)だ。

 

「ねぇ、ゲドウ。変だよ、こっちの人……!」

 

 ニェーニは気絶しているが生きてはいる。問題は、飛ばされて来た方の人影。

 

 メリスの言う通り奇妙であった。

 

 倒れ伏す『キュクレウスの眼』のメンバーは、水分を抜かれたかのように干からびていた。

 

 カツンと、足音が鳴る。

 

 『キュクレウスの眼』が投げ飛ばされた方からだ。オレは警戒し、メリスを庇うように前に立つ。

 

「ふむ? 下賎な反抗人(ラウディーズ)退治に赴き、これで終わりかと思えば……まだいましたか。ドリンク(・・・・)のおかわりは頼んでいないのだがね」

 

 こんな場所に似つかわしくない上質な衣服に身を纏い、純白の礼服に身を包んだ一人の男。腰には、細剣を携え甘い雰囲気で話しかけて来るが、決して目は笑っていない。

 

 その男の正体を、オレは知っている。

 

 《サイデリアル》、ヴァンサン・フーディ。

 

 『リベリオン/戦禍の夜明け』でも登場する、ニェーニとは別の《サイデリアル》。その中でとびっきりのど変態(・・・)がそこにいた。

 

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