拾ったのは、外伝ゲームの主人公でした   作:異星人アリエン

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エピローグ それでも明日に

 

 そわそわ、そわそわ。

 

 落ち着かねぇ。浮き足立つような気分だ。理由はわかっている。

 

 セレスティアラのせいだ。あれから一日、一応夜に奇襲が来る可能性も予期して徹夜をしたのだが何事も起きなかった。それでもまだ何かあるんじゃないかと不安でしょうがねぇ。

 

 セレスティアラに約束を違えればペナルティが発生する証を刻んだが、それすらもなにかしら抜け道があって利用してくる気がしてならねぇ。

 

 だめだ、疑心暗鬼になっている。

 

「ゲドウ、大丈夫? すごく調子悪そうだよ」

 

 メリスが心配そうに話しかけくる。

 

 ちょうど良い、尋ねてぇことがあった。

 

「なぁ、メリス、重要な話だ。オメェ、何があってもオレについて来る気はあるか?」

 

「え?」

 

 オレの言葉に意味がわからないという顔をする。そりゃそうだよな。

 

「理由はまだ言えねぇ。だが、もし仮に帝国が敵に回ったとしても。それでも、オレと共にある気はあるか?」

 

 やはり武闘大会にメリスを出させたのは失敗だった。

 

 だが、セレスティアラやトイープがいるとわかっている時点でメリスを止めなかったオレの責任だ。だから、その責任は取らなきゃならねぇ。

 

 最悪逃避行になっても、コイツを守らなくては。外伝ゲームの主人公だろうが、コイツはまだ若い一人の少女だ。なら、大人のオレがなんとかすべきだ。

 

 メリスの肩に手を置き、真剣に問いかける。

 

「は、はい。末永くいっしょにいさせてください……っ」

 

 何故かオレの手を自らの頬に持ってきて重ね合わせてくる。

 

 なんか、すげぇじっとりとした空気というか。ねっとりした湿気を感じる。

 空気がすごい重いんだが? ちょっと返答に困って、しばしその状態で膠着する。

 

「あ?」

 

「……むぅ」

 

 そこに割り込むように呼び鈴が鳴る。

 そそくさと離れ、扉を開けてみる。

 

「やぁ〜、お邪魔するよぉ〜」

 

「突然の訪問、失礼致します」

 

 我が家のように不躾に家にあがるトイープと、慇懃に礼を尽くすヴェルヌント。対照的な二人がオレの家にやってきた。警戒するも、二人には敵意のかけらもない。

 

「いやぁ〜、きみの家遠すぎだよぉ。もっと基地の近くにしておくれよ。ボクも暇じゃないんだからさぁ」

 

「アスデブリのオレがそんなことできるわけないだろ。それで? 忙しい時間を縫ってまで此処まで来たのはどういった理由だ?」

 

「そうだねぇ。まどろっこしいのは嫌いだから、早速告げようかぁ」

 

「……え、わたし?」

 

 トイープは、メリスへと向き直る。当の本人は困惑している。

 

「おめでとぉ〜! 武闘大会の優勝者であるき〜みは、カエレスティス帝国の誇る機関、《特務兵装開発部(アルカナム)》所属することになったんだ〜よ! どんどんぱふぱふ〜」

 

 態とらしく拍手をしながら、トイープはメリスに対して袖から一枚の書状を取り出した。

 対してメリスは眉を顰める。

 

「いや、優勝してないけど」

 

「貴方の決勝相手であるカネイジーが暴れたことにより、決勝はお流れとなってしまいました。その繰り上げとなり、貴方様が選ばれたのです」

 

「そうなの? 知らないのだけども」

 

「そりゃ今初めて言ったからねぇ〜。そんなこともわからないのかい? 全く困るよぉ〜」

 

「……」

 

 メリスの心情がすげぇわかる。ありゃ、かなりイラッとしてるな。

 それよりも《特務兵装開発部(アルカナム)》への所属だと?

 

「待て待て、そもそもこいつは軍属じゃねぇぞ」

 

「それはそうだけどぉ、彼女は輝征装(エアラリス)を持っている。つまりは《天刑護騎士(アストロノーツ)》の資格を有しているからねぇ。そんな強者を野放しにするはずがないだろぉ? 取り囲もうとするのは当然のことさぁ」

 

輝征装(エアラリス)を持つことが、強者の証ってのは早計だろ。ニェーニを見やがれ。偶々相手が良かっただけで、普通ならもう殺されて【五罰一誅/スタウロス】を奪われてんぞ」

 

「あぁ、そのニェーニ・フラグラッシャーもだけど、彼女も《特務兵装開発部(アルカナム)》のメンバーに選ばれたよぉ」

 

「は?」

 

 え、《特務兵装開発部(アルカナム)》に?

 

 ニェーニが?

 

 《サイデリアル》じゃなくてか!!?

 

 しかし、トイープはそのことを別の意味で捉えたらしい。

 

「驚くのも無理は〜ないね〜。まぁ、彼女は確かに些か思慮に欠け……いや、お馬鹿だがその悪運とでもいうべきか、そういった目に見えない流れがあるからねぇ。非常に興味があるねぇ」

 

「おばか」

 

「おばかだねぇ。まぁ、ボクと比べたら大抵の人はみぃーんなおばかなんだけどねぇ! はぁーはっはっー!」

 

「叩いて良い?」

 

「どうぞ」

 

「止めてくれないのかい、モルモットくぅん!? あ、やめてやめて! おしゃかになる! ボクの虹色の頭脳がおしゃかになるぅー!」

 

 ヴェルヌントの許可を得たメリスが、普通にトイープの頭をぽかぽか叩く。その光景を傍らにオレは思考を巡らせる。

 

 いや、まじなんでニェーニが《特務兵装開発部(アルカナム)》に配属されてるんだ? 変なところで原作崩壊起こすなよ! ニェーニが《サイデリアル》にいないと、いないと……。

 

 

 とくに問題なかったわ。

 

 

 だって、ほとんど《エニアグラム》と《サイデリアル》の戦況に影響与えてなかったしな。そりゃ、《天帝》の目的に気付いちまうとか、ニェーニを発端とする細かなフラグは色々あるが、別にそれが《サイデリアル》じゃなければいけない理由がない。どうせどっからかフラグを立ててくる、それがニェーニだ。

 

「そもそも、わたし帝国に仕える気なんてないよ」

 

「いてて、なら受けないのかい? 言っとくけど、これは他ならぬセレスティアラ殿下直々の褒美。当然、これほどの好待遇は滅多にないことだよぉ」

 

「でも……」

 

 メリスがこっちを見る。

 

「ゲドウ、どうしたら良い?」

 

「それを決めるのはオメェだろうに、ったく。まぁ、普通に考えたら栄転なのは間違いない。何せ、皇族直属の組織の一員になるんだしな」

 

 実際、《特務兵装開発部(アルカナム)》に所属するルートは『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』でもあった。《改革ルート》では、目の前のトイープらと同僚になるのだ。

 

 帝国のカエルム人がくそな割合は高いが、トイープらに関しては差別がかなり低い。

 

 そしてトイープという補佐がいると、安全に《悪魔の心臓/デモゴルゴン》の力を使えるようになる。それを踏まえると悪い選択肢ではないのだ。

 

「そうだよぉ? ボクと同じ組織に入れるのだから喜んで欲しいねぇ」

 

「あなたが上司? えぇ〜……」

 

「おやぁ? 不満かねぇ?」

 

「うん」

 

「は〜は〜はぁ〜! ……ちょっと傷付いたよ。よよよ」

 

 トイープは、袖を目元に持って来て泣き出す。庇護欲を掻き立てるだろうな仕草だが、メリスの顔は渋い。

 

「そういう所が、気に食わない。全然傷付いてないのに、そう振る舞う所が」

 

「……へぇ」

 

 ずいっと、嘘泣きをやめ、メリスへと顔を近付ける。

 

「きみ、やっぱり人の本質を見抜くのに長けているねぇ。いや、違うねぇ。勘が鋭いというのかな? うんうん、良いねぇ。ますます気に入ったよぉ、あの輝征装(エアラリス)といい、どうやってぶぅっ!?」

 

「近い!」

 

「あばばばばっ、やめてくれぇ〜!」

 

「はぁ。トイープ、貴方本当に学習しませんね」

 

「あれでも一応帝国の誇る研究所の主任なんだろ?」

 

「えぇ、誠に遺憾ながら」

 

 ため息を吐くヴェルヌント。顔は微塵も表情が変わっていないが。

 

「私は貴方が何か理由があって所属しないとするならば、それもまた良いかと思います。とはいえ、強さを求めるのであればトイープは必ず貴女の力となってくれるでしょう」

 

「……でも、……ゲドウ」

 

「悪いがオレは何も言わねぇぞ。これはオメェ自身が決めなきゃならねぇからな」

 

 まだ縋り付くような視線をオレへと向けるが、それをバッサリと切り捨てる。

 

「幸運の女神に後ろ髪はないっつな。オレが言うことは一つだけだ。オメェがどんな判断をしようとも、オレはオメェの味方だ」

 

 正直、あの第二皇女が何考えているか今でも訳わからん。

 

 流れ自体は『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』のストーリーからあった流れだ。些か展開が巻きにはなっているがメリスは《改革》ルートだと必ず《特務兵装開発部(アルカナム)》に一度は配属される。

 

 なら、メリスが《特務兵装開発部(アルカナム)》に所属出来るのは良いことだが、それをオレの言葉で決めるのはあっちゃならねぇ。

 

 前に言ったことと矛盾するが、オレはメリスが《人類の天敵》ルートに入らないように尽力はする。それとなく誘導だってするし、悪いところがあれば諫めるつもりだ。

 

 だが、オレ自身がメリスにあぁしろと指示する気はない。

 

 そりゃ、朝の時はオレと来る気があるか問いかけたが、あれはあくまで

 

 そうなれば、こいつはオレに依存する。何もかも、オレの指示を仰ぐようになる。そんな精神じゃ《悪魔の心臓/デモゴルゴン》の付け入る隙となっちまう。

 

 トイープも論理感についてはアレな所があるが、本人も自覚しているのでナクアみたいにメリスを人体実験に使おうとはしない。検証実験には容赦なく使うが。

 

 そして『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』でも屈指の聖人……聖人? なヴェルヌントもいる。

 

 あとニェーニも。あいつあれでも面倒見は良いから、メリスにとっては良い刺激になるだろう。同世代の友達少ねぇし。

 

「まぁまぁ、とにかくきみの配属はもう決まったことなんだよぉ。それでボクの用事はもう一件あってだね、ほい」

 

「あん? オレにか?」

 

 ぽいっと投げ飛ばされる丸い筒。

 まさか、オレも《特務兵装開発部(アルカナム)》に配属されるのか? 確かにカネイジーにトドメこそ刺したが、あれはヴァンサンが奴の体力を削っていてくれたおかげと報告したのだが。

 

「あ、それ一応セレスティアラ殿下からの書状だから大切に扱ってくれたまえよ?」

 

「それを先に言えよ!!?」

 

 いや、そんな放り投げるような代物じゃねぇだろ!?

 

 慌ててオレは丁重に中身を確認する。

 

 アスデブリが触ることのない、上等な紙に書かれた内容に目を走らせた。

 

「マジか、こいつ」

 

 内容は要約するとこの間のことへの改めての謝罪。

 

 セレスティアラの前での無礼についても一切合切、罪に問わないとの明言があった。これはかなり安心した。幾らセレスティアラが理性的で、貴重な輝征装(エアラリス)持ちを処罰することはないのは原作からして知っているとはいえ、ここまで高待遇にされるとは思ってもみなかった。

 

 こんな弱みにもなるような物を残すような性格ではないと、理解しているだけにこのことは衝撃だった。

 

 そしてその下に書かれている内容。

 

 オレに何があった際には、第二皇女セレスティアラの名を持ってして身分を保障するとのことだった。ご丁寧に皇族にしか使えない印を使い、セレスティアラ自身の名で刻まれている。

 

 問題は、セレスティアラ本人の指示やオレの命の危機がない限り雷を扱うのを禁ずるとあることか。

 

 そもそも、禁止するだけで所持については認めるとあった。いや、オレの場合仮に没収と言われてもどうしようもないんだが。オレの身体そのものが、輝征装(エアラリス)というか人間離れしている訳だし。

 

 てか、ナクアはオレの輝征装(エアラリス)と誤認されている《天鼓雷鳴/バルレウス》が既に存在しないことを把握していたが、セレスティアラは違うのか?

 

 くそっ、『リベリオン/戦禍の夜明け』でそこらへんの描写がなかったからセレスティアラが知っているのか判別つかねぇ。

 

 そもそも……とちらり、とトイープを見る。

 

「んん? なんだい? 何かボクの顔についているのかい?」

 

 こいつが、もしオレの身体に、あるいは輝征装(エアラリス)について知っているのならもっとオレに詰め寄ってくるはずだ。だが、トイープの興味は依然としてメリスに向いている。好奇心を隠すことの出来るような性格でないことは重々承知。

 

 なら、やっぱり知らない可能性が高い。

 

 それ自体は喜ばしいことだ。だが、肝心の目的が見えてこねぇ。なんで直属の部下にまで黙っているんだ。

 

 セレスティアラの狙いが読めねぇ。助かったという安堵と得体の知れない思惑に巻き込まれているという不安感が入り混じっている。

 

「確かに受け取ったぜ。ご苦労だったな」

 

「まぁ、きみのはついでだからねぇ。そ、れ、よ、り、も。メリスくぅ〜ん、きみの輝征装(エアラリス)についてもっと教えておくれよぉ〜。武闘大会じゃ、遠目からしか見えなかったんだからさぁ」

 

「だからちかいって……!」

 

 ぐいぐいと迫るトイープを、辟易とした顔で止めるメリス。

 

 まぁ、これでほぼ《改革》ルートになったといって良いだろう。

 

 《特務兵装開発部(アルカナム)》はその特色から、トイープの作り上げた武器の実験隊を担うことになる。

 そのおかげですぐに頭角を現して、メリスは短期間で精鋭揃いの《エニアグラム》と渡り合えるほどに強くなったのだ。

 

 ……正直帝国の為に働くってのは癪な部分もあるが、それでも実戦を踏むっていう点ならば、十全なバックアップもある《特務兵装開発部(アルカナム)》の方が良いだろう。

 

 《革命軍》ルートは、紛れもなく善人の仲間に囲まれるが敵がどいつもこいつも強すぎる。実際、選択肢による死亡分岐は一番多い。

 

 これはゲームじゃねぇ。現実だ。

 

 なら、こいつが少しでも安全に強くなれるように計らうのがオレの役目だろう。

 

「まぁー、そぉーゆー訳でこれから君たちはボクらの同僚となる訳だぁ。よろしく頼むよぉ〜」

 

「では、我々はこれにて失礼致します」

 

 やがて二人は去っていった。

 

「嵐のような奴らだったな」

 

「そうだね」

 

「ま、良かったんじゃねぇか? 《特務兵装開発部(アルカナム)》に配属されたんなら、強くなる為に武術大会に出たオメェとしちゃ、これ以上に適した環境はねぇだろうさ」

 

「うん……」

 

 メリスは俯きながら、何かを考える。

 

「ねぇ、ゲドウ」

 

「何だ?」

 

「今はまだ、届かないけども……でもいずれは追いついて見せるから」

 

「……はっ、言ってろ」

 

 コイツがこの先どのように歩むかはまだわからねぇ。

 

 その道は幸福に満ちているかもしれないし、荊棘で出来ているかもしれねぇ。或いは、血に濡れた道かもしれない。

 

 それでも出来る限り見届けてぇと思った。

 

「大丈夫。ゲドウを一人にしないよ。もしゲドウが化け物になった時は、わたしも同じように化け物になるから」

 

「なんか言ったか?」

 

「ううん、なにも」

 

「そうか。ならさっさと飯食うか。安心したら腹減ってきた」

 

「うん! この後鍛錬する予定だから、肉まんね!」

 

「朝から肉まんってめちゃくちゃ重いんだが……」

 

 色々あったが、とりあえずこれからのために食事を取ることを決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「あん? またか?」

 

「どうしたんだろうね」

 

 再び鳴るチャイム。

 トイープたちが何か忘れたのかと思い、扉を開ける。

 

「やぁ、我が生涯の友ゲドウ。実は良い奇食を見つけてね。孵化直前の卵を茹でたものなんだが。どうだい? メリス氏も一緒に食事でも」

 

「帰れ」

 

 包帯で頭を巻いていたヴァンサン。

 

 もちろん、容赦なく扉を閉めた。

 




現時点でゲドウに好意を抱いている人物↓
メリス、バルザック、ヴァンサン、セレスティアラ

おかしいな、執着してくるやつの半分が男だぞ?
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