拾ったのは、外伝ゲームの主人公でした   作:異星人アリエン

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アニキって呼ばせてもらいます!

 

「おい、ここ字が間違っているぞ。キチンと跳ねをするのだ。あとここも、止めが甘い。それとこっちははらいがおかしい。やり直しだ」

 

 めんどくさっっっ!!!

 

 オレはウィルディに連れられて、個室で顛末書を書かされていた。それだけならまだしも、オレの文字を見るたびにウィルディが指摘してくる。

 

「上官に提出する書類なのだぞ。綺麗なのは至極当然だ。それとも貴様は、それだけの齢を重ねて、人にガタガタの字を見せるというのか?」

 

「ぐうの音もでねぇ……」

 

 実際前世含めて、自らよりも一回り以上下の子に常識を説かれるというのは、なかなか心にくるものがある。

 

 この『リベリオン/戦禍の夜明け』(せかい)に転生して、アスデブリとなってからプライドなんてとうに捨てたが、それでも歳下に指摘されるのは堪えるものがあるので必死に書く。

 

「まぁ、これで良いだろう」

 

「だぁー! つかれた……」

 

 ようやく認められた。

 

 いや、ほんとうにカエルム人兵士との決闘よりも疲れた。

 

「……先の兵士との戦い。やろうと思えば貴様、もっと早くねじ伏せられただろう。何故煽るような真似をした?」

 

 周囲に誰もいないからこそだろうか。ウィルディは問いかけてきた。

 

「そりゃ、そうしなきゃあちらさんが意地でも降参しないと思ったからだ……じゃなくて、です。奴らはプライ……矜持が高いので」

 

「私怨か? まぁ、貴様らアスデブリからすれば、私達はいけすかない存在ではあるからな」

 

「そんなんじゃないですよ。あぁすりゃ、奴等の憎悪はオレだけに向くでしょう?」

 

「まさか、他のアスデブリから目を逸らさせるために?」

 

「自慢じゃないですが、オレはそこそこやります。あの程度の連中が手を出してこようとも、どうとでもなる」

 

 実際、あの程度の連中なら睡眠中を不意をつかれるとかじゃない限り、オレの命に関わるほどの手傷を負わせることはできねぇ。

 

 オレの言葉にウィルディは、軽く笑う。

 

「ふっ、随分と自らの強さに驕っているようだな」

 

「あっ、申し訳ございません」

 

「別に責めている訳ではない。事実、模擬とはいえ貴様はあいつ相手に勝利を収めた。奴は性格こそ難ありだが、この駐屯地の兵士ではできる方だった。強さとは、強者の証であり正義である。オブリビオン陛下の聖句だ。どれだけ言葉を連ねようとも力がない言葉に意味はない。……その点貴様は合格だ」

 

「それはありがてぇことですね」

 

 強さ=正義か。

 

 前世であれば到底受け入れられぬ言葉だ。だって、そうだろう? その言葉を言うのはいつだって強者側(・・・)じゃねぇか。向こうが己の行いを正当化する為にでっち上げた戯言に過ぎねぇ。

 

 だが、この世界では正しく真理だ。

 

 強くなければ、死ぬだけだ。転生してからオレは、嫌というほど強さが必要だというのを叩き込まれた。

 

 だからオレはその言葉を受け入れる。

 

 

 たとえそれが帝国が自らの行いを正当化するための、でっちあげだとしても。オレはそれをおかしいと言える人物(ディグル)にはなれない。

 

 

 ポイっと何かを投げ出された。

 

 慌てて受け取れば、それは携帯食の一種だった。

 

「くれてやる。食事を邪魔した詫びだ。誰かに見られんうちにさっさと食っておけ」

 

 それだけ言ってウィルディは先に部屋を出て行った。

 

「……やっぱそういうところは、姉妹似て真面目なんだよな。あまっ」

 

 食べた携帯食は、良い物だったのか普段オレが食う物よりも上等だった。

 

 

 

 

 

「おっ、戻って来た。おーい、い、いててててっ!!?」

 

「オメェ、おら。よくもやってくれたな、こら」

 

「やめてくれぇ! 俺のイケメンフェイスが潰れてちまう! わ、悪かったとは思ってる! まじごめん! せめて、見えないところにしてくれぇ!」

 

 呑気に手を振ってきたライフの頭をそのまま手で鷲掴み、締め上げる。

 

 因縁ふっかけてきたのは向こうのカエルム人だが、それを煽り立ててオレを矢面に立たせたのはコイツだ。容赦なく制裁する。

 

「あぁ、戻ってきたのですね! 無事でよかったです、アニキ(・・・)

 

「おぉー、リグ。悪りぃな、遅くなっ……アニキ?」

 

 なんだそれは。

 

 安堵して語りかけてきたリグの言葉に、オレは固まる。

 

 そして騒ぎを聞きつけたのだろう、アスデブリが集まってきた。

 

「さっきの勝負、痛快だったぜ!」

 

「まさか、ほんとうに勝利を収めるとは……! 

 

「アニキはおれ達にとって希望の星だ!」

 

 気付けばオレの周囲をアスデブリの奴らが取り囲む。全員、いかつい顔してるくせに一様にオレを褒め称える。

 

 褒められるのは悪い気はしねぇ。

 だけど、なんだその呼び方は?

 

「ふっ、良い呼び名だろ? アンタの強さをこれでもかと言うくらいみんなに教えてやったんだ」

 

「オメェやっぱ反省してねぇだろ」

 

ライフの野郎、オメェが原因か。

 何良い仕事したみたいな感じで鼻の下を擦ってやがる。

 

 その間にも周囲はどんどんヒートアップする。

 

「「「アニキッ! アニキッ! アニキッ!」」」

 

「その呼び方やめてくんねぇかなぁ!?」

 

 オレにとってのアニキという呼び名は、バルザックのイメージが強い。オレはあいつほど面倒見は良くないし、外面だって悪い。それとそっちの気もない(・・・・・・・・)

 

 そしてオレをアニキと呼ぶコイツらも、身体の至る所に生傷が絶えない環境にいるせいか、どいつもこいつも人相が悪い。

 

 何というか、非合法な悪い方面の兄貴みたいになっちまう。こちとら堅気だぞ! そう思っていると、ポンっとバレルが肩に手を置いた。

 

「……許してやってくれ。皆、あんたの強さに惚れ込んだんだ」

 

「そりゃ理解してるがよぉ。そんな風に呼ばれる程、上等な人間じゃねぇぞオレはよ」

 

「……それでも、希望が必要なのだ。このような地ならば特に。だからよろしく頼む、アニキ(・・・)

 

「オメェもそう呼ぶのかよ!」

 

 バレルの野郎、やっとしゃべったかと思えば逃げ道塞いできやがった!

 

 結局、オレはコイツらにアニキと呼ばれることになった。なんで配属されて初日でこうなんだよ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふあぁぁ……あー、昨日はひどい目にあった……」

 

 次の日、外で稽古を積む野太い野郎どもの声を聞いて目覚める。

 

 今日は所謂楽な日だ。

 

 軍人とはいえ日夜晶獣と戦えば損耗はバカにならないし、体力ももたない。なのでいくつか部隊をわけて、ローテーションを組んで交代で行う。

 

 オレの仕事は午後からで、それに駐屯地の設備点検に回された日だから比較的ラクだ。昨日はどっと疲れたからな。ありがてぇ。肉体的にじゃなくて、精神的にだが。

 

 そんな面持ちで部屋の外に出る。

 

「おー、きみがタイチョーが言っていたすっごく強いって言う人だねー」

 

「あん? 誰だあんた」

 

 なんか客人がいた。小さい……メリスのやつよりも小さい少女だ。背丈だけならニェーニとどっこいだ。

 

 こちらを見上げるのは、くりっとした目にホワイトピンクな髪色。

 

 ウィルディも中々に規律を重んじている割に、はっちゃけた格好しているが、こいつもこいつで白いシャツに短パン。とてもおよそ厳格な軍人とは思えない格好をしてやがる。

 

「あたし、ルルカ。つよーいアスデブリの軍人がいるって聞いたけど、確かにあなた只者じゃない。風格ってやつを感じる。特に顔から」

 

「顔の悪さはわかってるっつーの。というか、ルルカ……?」

 

 その名前聞き覚えがあるような……。

 

「もしかして、あのルルカか?」

 

「うむうむ、そうだよ。そのスーパーでキュートでプリティーなアイドル、ルルカちゃんなのだ。褒めて、崇めて、可愛がるがよろし」

 

 『リベリオン/戦禍の夜明け』に登場時、すでに《四軸将軍(グランドクロス)》となっていたウィルディ。ルルカは、バレルと並ぶウィルディの副官として登場するキャラクターだ。目立った活躍は、主に索敵を担当し、奇襲を得意としていたはずだ。

 

 確か遠距離からのクロエからの狙撃を躱していたはずだ。

 

 バレルと違ってキチンと名有りだったから、すぐ気付くことができた。

 

 しかし、何か違うような……。

 

 あ、わかった。

 

 原作開始時の頃と同じなのになんかすごく頭が寂しいと思ったら、ウサ耳がねぇからだ!

 

 輝征装(エアラリス)、《聴き兎耳/アウリス・バニー》。

 

 正にウサギの耳といったこの輝征装(エアラリス)は、聴覚が格段に上がり数キロ先に渡る先にまで、音を聴き分けることができる。

 

 ルルカ自身も、戦闘向けではないこの輝征装(エアラリス)でありながら身軽な身体を駆使して、相手の肉体の動く音を聴いて先読みするだなんて、人間離れ業を披露していた。

 

 その容姿と足に仕込ませた刃で相手の首を掻っ切る様子から、ついたあだ名が《首刈り兎》。なんかどっかで聞いた事あるな。

 

 《エニアグラム》とも良い勝負してた実力者だ。

 

「どしたん、人の頭をじろじろ見て」

 

「いや、人は見かけによらないなと思ってな。あのエースオブエースであるウィルディの副官なんてな。余程優秀なんだな」

 

「ほうほう、このルルカちゃんの魅力に気付くとはお目が高い。でも、残念。ルルカちゃんは、みんなのアイドルなのです。惚れるなよ?」

 

「生憎とガキに興味はわかねぇな」

 

 オレの言葉に、ルルカはむっとした顔をする。

 

「それはいけない。ルルカちゃんの魅力は、全人類が魅了されるべきなのです。はやく、ファンになるのです。今なら握手もしてあげるよ」

 

「おいおい、子どもが無理すんなよ。その歳でその地位にいる腕前には敬意を表すが、あいにくとオレの好みはもっと落ち着いて抱擁力のある女だ」

 

「むむむ、ますますもって不敬。ならばルルカちゃんの必殺悩殺ポーズを受けるが良いのです」

 

「なにっ」

 

 ゴゴゴと、小さい身体からとは思えぬ気迫が溢れ出す。

 

 何をするつもりだと、思わずオレも身構える。

 

「ぴょん」

 

 自身の手を頭上に持ってきて、うさ耳ポーズと共に珍妙な声を出した。

 

 ……。

 

 …………。

 

 ……………………。

 

「……惚れないの?」

 

「むしろ引いてる」

 

 こてん、と首を傾げられる。

 

 オレの返答にルルカはひどくショックを受けたようで、地に手をつけて項垂れた。

 

「そんな……3割の確率でルルカちゃんに惚れる、ウサちゃんポーズが効かないだなんて……」

 

「絶妙に低くて何とも言えねぇよ」

 

 3割って、一撃必殺技か何か?

 

「それよりも、何か用があったんじゃねぇのか?」

 

「はっ! そうだったそうだった。タイチョーに、きみをはやく連れてくるように言われてたん。急がなくちゃ! 時間取っちゃった」

 

「いや、時間食ったのはあんたの所為、うお!?」

 

 身軽な動きでオレの肩にルルカがまたがる。

 

 え、やめて!

 

 オメェのその体勢、初登場時敵の首を刈った時と同じで肝が冷えるんだが!?

 

「よし、それじゃしゅっぱつー!」

 

「よしじゃねぇよ! 自分で走れよ!」

 

「心に傷を負ったルルカちゃんのため、走るのです若者よ。じゃないと命令不服従としてタイチョーに言っちゃうよ」

 

「ぐっ、オメェやっぱ図太いな。あと若者はオメェだろ」

 

「はやくしないと怒られちゃうよ?」

 

「くっそ! 咎める時間もねぇ!」

 

 そのままルルカの指し示すがまま、走り出す。

 

「おー、アニキ。そんなに急いでどうし……誰か乗ってる!?」

 

「え、誘拐ですか? まさか本当に悪行に手を染めたのですか?」

 

「……なるほど」

 

 そしたらいつもの三人組(バカ)に見られた。いや、ばかなのはライフだけだけど。

 くっそ、風評被害! バレルもなるほどってなんだなるほどって!

 

 すれ違う奴らみんな、ギョッとした顔で見てくる。なんだこの羞恥プレイは!?

 

「よーし、とうちゃーく」

 

「すげぇ疲れた……」

 

 ルルカの案内の元、ウィルディのいる作戦室前までに到着する。

 

 そのままノックをし、入室を許可する言葉をもらって中へと入る。

 

「ルルカちゃん、ただいま戻りましたー」

 

「来たか」

 

 そこには、ウィルディの率いる面々も勢揃いしていた。

 

 ……圧がやべぇ。全員がオレのこと、ジッと見てくる。そりゃ、アスデブリが自分達の作戦室に、しかも遅れてやって来たんじゃ良い気はしないよな。

 

「ルルカ、貴様何故そいつの上に乗っている」

 

 違った。

 

 ルルカをオレが肩車しているせいだった。

 

「ごめんなさーい、こっちの方がはやいかなーって」

 

「あと言葉使いはきちんとしろといつも言っているだろう。気の抜けた返事をするな」

 

「あいあいさー」

 

「ふんッ」

 

「アッ」

 

 ルルカが頭に拳骨食らって、なっちゃいけない音が鳴った。

 

 やべぇ、ルルカがぴくりとも動かねぇ!

 

「さて、ゲドウ・マルドラーク。貴様を呼んだ訳だが」

 

「い、遺書を書く時間くれませんかね……?」

 

「何を言っている?」

 

 オレの言葉に、ウィルディは半目になって呆れる。

 

「ゲドウ・マルドラーク。指令だ。貴様は今日、我々と同行しカンネビュラ大樹海の調査に赴いてもらうぞ」

 

「はい?」

 

 そして、当然とばかりにそんな指令を出してくるのだった。

 

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