拾ったのは、外伝ゲームの主人公でした   作:異星人アリエン

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ケジメをつけるために

 

「やはり、奴を討つことでしか状況を打破出来ないだろう」

 

 幾度も議論を重ねた上で、ウィルディはそう決定づける。

 

「奴の思惑通りに乗るしかないのは、業腹だが我々には活路がそれしかない。ならば、罠だとわかっていても突っ込み、ヤツの喉元を食いちぎる。それで終わりだ」

 

「でもタイチョー、あの性格悪そうな女がどこにいるのかわかるの?」

 

「その通りだ、ルルカ。カヤノスィノ……やつが、この大樹海に潜んでいるのは確かだ。だが、場所がわからん!」

 

 それが問題だった。

 

 あのカンネビュラ大樹海に、カヤノスィノは待ち受けると言った。つまり、大樹海に居るのはわかるが、それをあても無く探す以上、たどり着く前に全滅する危険があった。

 

 故に、それをどうするのかを考えるのだが。

 

「そうでも無さそうだぜ?」

 

「貴様、マルドラーク」

 

 そこに現れたのは、一人の男。

 アスデブリでありながら、極めて高い戦闘能力を持つ男が、何やら覚悟を固めた表情でそこに立っていた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

「何が言いたい?」

 

「言葉通りです。正直奴は此処からそう離れてはいないだろうよ」

 

 俺の言葉に、バレットリガー隊は全員が訝しげな顔をした。まぁ、気持ちはわかる。世迷い言だと思うよな。

 

 だが、オレはそれが正しいと知っている(・・・・・)

 

 此処からは如何にウィルディを納得させるかだ。

 

「奴が本当の意味で大樹海を掌握出来たのなら、その大森林に住まうあらゆる生命を利用すればよかったんだ。そうすりゃ、圧倒的物量によってこっちは砕けただろう」

 

「業腹だが、同意する」

 

「だが、向こうは晶獣や植物を使っては来たがあくまで限定的だった。更には態々、姿を表してきた。つまり、操るにしたって限度があると言うことだ」

 

 これは『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』に登場したカヤノスィウの特徴だ。カヤノスィノの輝征装(エアラリス)は、その力が及ぶ範囲こそ長距離だが、精緻性に関してはあまり高くなかった。

 

 理由は、やっぱり植物を介して操る以上距離が離れ過ぎると、制御が出来なくなるからだ。

 

 あの《純白毛の天角馬(ユニコーン)》が、他の晶獣と違って植物で操られてはいても、襲っては来なかったのも、それが理由だろう。

 

 《純白毛の天角馬(ユニコーン)》はオレたちを駐屯地から離れさせること、それだけのためにしか植物の力を使えなかった。何故なら距離がありすぎたから。

 

 オレの言葉に、ウィルディは考え込む。

 

「……《天都直参防衛軍(カーマンライン)》の一人が持つ《吹奏楽器/エフェクター》であっても、晶獣を操るには音を奏で続ける必要がある。なら、奴が晶獣を自由自在に操れていたのは、あくまで己の輝征装(エアラリス)の力が及ぶ範囲であると考えるなら、奴自身が去ったあとに植物の影響が極端に衰えたと考えても辻褄(つじつま)が合う……か」

 

 どうやら一定の説得力はあったようだ。人知れずほっとする。

 

「だが、こちらが時間をかけるほど、向こうに準備の猶予を与えることになる。オレらの進行路に危険な植物を生やして、あとは放置するだけでオレらは、迂回(うかい)せざるを得なくなる」

 

「なるほどな」

 

 ウィルディは頷く。

 

「しかし、多大な憶測を含んではいる。カヤノスィノの言葉を鵜呑みにすれば、やつはあの木の杖のような輝征装(エアラリス)を作った末裔だ。我々の知らない力を引き出している可能性がある。帝国は全ての輝征装(エアラリス)の特徴を記した《星冠全書(グリモアーツ)》を紛失(・・)している以上、それを知る術もない」

 

 確かに、ウィルディの懸念もわかるな。

 

 実際にカヤノスィノは『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』における3つのルートの1つ、《改革》ルートで立ちはだかった女だ。その力は計り知れない。

 

 そもそもの話、オレは『三大罪人(シン・トリアス)』は滅霊装(パルバースト)と同等の力を行使できると考えている。

 

 滅霊装(パルバースト)は、輝征装(エアラリス)を改造し、使用者を改造した、より超常の力を解放した超兵器。

 

 数少ない特徴として、作中の滅霊装(パルバースト)の使い手たちは一様に、身体の何処かに滅霊装(パルバースト)と融合した状態になるのだ。

 

 そして『三大罪人(シン・トリアス)』は全員が、途中から姿形が変わり、まさに融合した形態となる。

 

 正直、この憶測が合っているかはわからない。

 

 何故なら『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』の発売日は、『リベリオン/戦禍の夜明け』における一大イベント《天陽祭》が始まった直後。まだウィルディも登場してなかった頃だ。

 

 アニメ会社とゲーム会社で、その辺の設定を共有していたのかは神のみぞ知るのだ。

 

 だが、仮に違ったとしてもこの際関係ない。

 問題は、最低でも『リベリオン/戦禍の夜明け』で登場した滅霊装(パルバースト)を操る《四軸将軍(グランドクロス)》級の相手だということだ。

 

 ……くっそ、もっと輝征装(エアラリス)使いが欲しい!

 

 《四軸将軍(グランドクロス)》でも輝征装(エアラリス)使いが3人(・・)いないと、話にならない強さだぞ!

 輝征装(エアラリス)はウィルディ一人だし、オレも継戦能力に難がある(・・・・・・・・・)。おまけに向こうは晶獣まで使ってくる、ジリ貧だ。……だがやるしかねぇ。

 

「ヤツを討つのに変わりない以上問題は、やつに近づけるかだな。あの植物と晶獣の物量。近づくのは困難だろう」

 

「その点は問題ないでしょうよ」

 

「何を言っている」

 

「ウィルディ隊長、二人きりになれるか?」

 

 オレの言葉に、ウィルディは目を白黒させた。

 

「まさか、告白!? きゃー! ルルカちゃん、初めて見た!」

 

「頭叩くぞ」

 

 きゃーきゃー騒ぐルルカを他所に、オレはウィルディをじっと見つめる。

 

「……総員、一度退室しろ」

 

 ウィルディの言葉に、バレットリガー隊は全員退出した。

 

 本当は使いたくが、これ(・・)の出番が来たようだ。

 セレスティアラからの、身元を保証する書状が。

 

「それで? 態々貴重な時間を割いてまで何が言いたい? くだらない、内容だったら殴るぞ?」

 

 オレは何も言わずに、懐からあるものを取り出してそのままウィルディへと差し出した。最初は怪訝そうな顔をしていたウィルディも、中身を見て目の色を変える。

 

 それはセレスティアラからの書状。

 何かあればオレの身元を保障するという、皇族にしか使えない印を使い、セレスティアラ自身の名で刻まれているものだ。

 

「……な、ぜ、貴様がそんなものを、持っている?」

 

「前に統治領(コルニア)・Ⅵで開かれた大会で縁があってな。オレの同居人も、

そして、オレ自身もこうなっている(・・・・・・・)

 

 ばちばちばち、とオレの腕から発生する静電気。

 それを見たウィルディは言葉を失った。きっと、今彼女の頭の中では色々と考えが浮かんでいるのだろう。

 

「……貴様がやたらと帝国の内情に詳しかったり、戦闘能力が高かったのは、セレスティアラ殿下の秘密部隊だったということか? 第三皇女ルドミラーシャ様の《ゼニスフィア親衛隊》のような」

 

「戦闘が強いのは、単にそうでなきゃ生き残れなかったからだ。それに内情に詳しかったのはオレの……あー……同居人がそこに配属されていてな。《特務兵装開発部(アルカナム)》っつーんだが。おかげで色々と小耳に挟むんだよ」

 

「……それはそれで情報漏洩だろう。口が軽い者を配属させるなど言語道断だ! 早急に上に話して然るべき対処をすべきだろうが!」

 

「いや、確かに同居人は《特務兵装開発部(アルカナム)》に配属されたけど、オレに直接そのこと話してるの、そこの一番偉い主任だから」

 

「は?」

 

 憤っていたウィルディが、困惑したような表情を浮かべた。

 

 本当、トイープって頭は良いが口は軽いよな。

 

 実際は、態と漏らして良い情報を漏らして、核心的な情報は口にはせず、煙に巻いているのだろうがそれでも機密と軍機を重んじるウィルディからすれば、許し難い暴挙だろうなぁ。

 

 だけど、そのトイープの上があの第二皇女であり、宰相でもあるセレスティアラだから言った所で意味がない。

 

「……まぁ、良い。色々とつめたいところはあるがわかった。それで? 何故今それを話す気になった? その力に関してもだ」

 

ケジメ(・・・)だよ。仲間(アスデブリ)が殺された。カヤノスィノには、その責任をとってもらう」

 

「……そうか。それは、大事だな。ならば、マルドラーク。貴様に言っておくことがある」

 

「なんです?」

 

死ぬ気(・・・)で戦うのは良い、だが死ぬな(・・・)。……わたしはもう、部下を弔うのには飽きているのだ」

 

 その言葉の真意は言わずともわかった。

 

 オレはただ、敬礼を持ってして答えを返した。

 

「それともうひとつだが」

 

 ウィルディはオレに近づいてくる。

 

 敬礼したオレの腕をとる。にっこりと、かつてアイス屋で見たこどもにアイスを渡していた時のような、笑顔を浮かべる。

 

「せめて上官にはもっと早く言わないかッ!!!」

 

「ぐあぁぁぁあぁぁぁぁッッッ!!?」

 

 オレを巴投げし、そのまま腕を自分の両足で挟んで固定し、肘関節を固める。いわゆる、腕ひしぎ十字固めをしてきた。

 

 痛い痛い痛い!!? 腕が悲鳴をあげてる!

 

「し、仕方ないだろ!? オレだって、無闇やたらに正体バラしたくなかったし!」

 

「貴様がそれを言っていたら、先のカヤノスィノも取り逃すことがなかったかも知れないだろ!」

 

「狙ってたよ! でも、隙がなかった! それに、どの道あそこでオレが力使ってたら、駐屯地が火の海になっていたって!」

 

「ぬぅ……!」

 

 唸りながらも、ウィルディは締め上げてくる。

 

 まじ痛い! 涙が出てくる。

 

 だが、それ以外にもある感覚があった。

 

 思い出して欲しい。ウィルディの衣装は、なぜか太ももの内側部分に大きくスリットが入っていることを。

 

 つまり、ダイレクトにオレはウィルディのムチムチな太ももに密着している。なんなら、肌の温かな感触もわかる。

 

 まぁ、それ以上に痛みの方が強いんだがな!

 

「それにどの道、あんた以外の上官は信用できるか! あんただから、今明かしたんだ!」

 

「……」

 

 解放されたい一心で叫ぶと、ウィルディは何も言わずに解放してくれた。

 

「これで黙っていたことについては不問にしてやる」

 

「いや、ぜんっぜん不問にしてくれてねぇんだがっ……! ぐおぉぉぉ、いてぇぇぇ……!」

 

「ふんっ、隠し事をしていた奴に背中を預けられるか。今のは、お前を完全に信用してやると言ったのだ」

 

 うぐぐ、ならその代償としてこの痛みは受け入れるしかねぇか。

 

「外の部隊を入れて作戦を詰めるぞ。流石にセレスティアラ殿下の書状については言えんが、貴様が動きやすいようには整えてやる」

 

 ウィルディは最後に、そんな頼もしい言葉を言ったのだった。

 

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