拾ったのは、外伝ゲームの主人公でした   作:異星人アリエン

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張り巡らせられた罠

 

 作戦はすぐに決行された。

 

 バレットリガー隊は負傷者を除き、全てがカンネビュラ大樹海に突入する。傷を負って参加できない者も、駐屯地でカエルム人兵士の指揮をとることになる。

 

「聞いていたぞ、貴様が狼狽えるパイオニア駐屯地でもっとも冷静に対応していたと。カエルム人兵士は私の部下が指揮を取る。残ったアスデブリは、貴様が指揮を取れ」

 

「……承知」

 

 その中で生き残ったアスデブリの指揮を、バレルが任されていた。てか、よく考えたら原作じゃバレルはウィルディの副官だが、今初めて接触したことになるのか。

 

 すまねぇ、バレル。オメェの出番を奪っちまったようだ。

 

 ……いや、別に謝ることじゃねぇな。代わりにオレが死地に放り込まれてるだけじゃねぇか!

 

 なんて、現実逃避はここまでにしよう。

 

 オレたちはパイオニア駐屯地を出発し、カヤノスィノを目指してカンネビュラ大樹海へと足を踏み入れる。

 

 いくらカヤノスィノの輝征装(エアラリス)の射程がそう長くはないとは言え、視認性の悪い樹海での捜索だ。当然、難航すると思われていたが。

 

「ここまでわかりやすいと、呆れてものも言えないな」

 

 それは視界の悪い大樹海であっても見ることの出来る、巨大な大樹。

 これまでなかった大樹の存在に、あれがカヤノスィノの居城だと誰もがわかった。

 

「奴め、あけすけにあのような大樹を咲かせて、己は此処だと誇示しているな」

 

「こっちに来いって誘われてるの」

 

「同感だ。で、どうするんですか?」

 

 ルルカがほへー、と口を開けながら見上げる横で、オレは問いかける。

 

「決まっている。向こうからあけすけに存在を露わにしてくれたのだ。かえって居場所を探す手間が省けた」

 

 獰猛な笑みを、ウィルディは浮かべた。うーむ脳筋。

 

 だが、罠を警戒して悪戯に時間を浪費するのでは、本末転倒なのも事実だ。

 

「奴はあそこにいるのであろう。数多の罠? 幾重の障害? そんなのは関係ない。そこに目標があると言うのであれば、全てを薙ぎ倒して前進するのみ」

 

 ウィルディが片手を地面に置くと同時に、《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》が鎧から変形し、彼女の背中に空へと聳える巨大な砲が造られた。

 

「〝徹甲槍弾砲(バースト・カノン)〟ッ!!!」

 

 轟音と共に射出される砲弾。

 

 遮ろうとする樹木を全て貫き、やがて地面へと着弾。

 

 そこでまたもや姿を変え、巨大なサボテンの如く鋭い針が射出されあたり一帯の植物、そして巨木すらもズタズタに引き裂いた。それをウィルディは都合3発、道を地均すために使った。

 

 いや、どう見てもカノン砲じゃねぇか。しかも砲弾の凶悪さが増している。ウィルディだけやっぱり戦闘能力がおかしいんだよな。《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》の使い方が卓越してる。

 

 しかしその効果はあり、大樹までの道が開けた。

 

「吶喊せよ!」

「「「イエス・マイロード!!!」」」

 

 ウィルディの掛け声と共に一斉に動き出す。

 

 そしてあれだけの威力を生み出すために、ウィルディは《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》の約半分の体積を使用していた。

 

 まぁ、あの着弾地点まで進めれば使用した分は回収出来るんだが、思い切ったことをするぜ。ほとんど、鎧が無くなりヘソ丸出しだ。鎧の意味を成してない。

 

 でもおかげさまで、周辺の植物は既にウィルディによって引き裂かれた。おかげで妨害が少ない。一気に部隊が浸透する。

 

「おんやまぁ、おもてたんよりも速い侵攻やねぇ。びっくりしたわぁ」

 

 響き渡る声。声の方向はやはり、大樹のある方からだ。

 

 誰だなんて考える必要もない。カヤノスィノだ。だが、その姿は見えない。

 

「ひどいわぁ。折角おもてなししてあげよう思たんのに、ズタズタに花の道引き裂いてもろてぇ」

 

「はっ、何が花の道だ。獲物を前に口を広げていた食虫植物だろうが」

 

「せやなぁ。だから、これならどうや?」

 

 オレの挑発に、木々が騒めく。

 

 現れたのは晶獣。それも全てが危険度の高いやつらばかり。表情は虚ろで、身体に荊を巻かれていた。

 

 明らかにカヤノスィノに使役されている。すぐさま部隊は戦闘に入る。

 

「ずらぁぁぁッッッ!」

 

≪グオォォッ!?≫

 

 オレも晶獣と対峙し、熊に似た晶獣を〝肉体超化(スパーリング)〟で強化した肉体で首を刎ねる。

 他のバレットリガー隊も、善戦しているようだった。

 

「よっ、はっ、ほっ」

 

 中でも動きがすごかったのはルルカだった。

 

 すれ違った晶獣達を、正確無比に首や関節を掻っ切る。やっば、なんて技量だ。《首刈り兎》の異名の由来を見たぜ。

 

「ふふん、ルルカちゃんの華麗なステップ如何だったかな?」

 

≪グ、ゴォォォォッッッ!≫

 

「おぉー、熱烈な挨拶ありがとう! でもね、ルルカちゃんは粗相の悪いファンに差し出す()はないのです。代わりに、足蹴り(・・・)をくれてあげます!」

 

 迫り来る晶獣相手に、最小限の動きで対峙していく。その様子は、《エニアグラム》のムメイを彷彿とさせた。そういや、『リベリオン/戦禍の夜明け』でも互いに相手していたな。

 

「強ぉ、全部正確に急所だけ狙ってやがるぜ」

 

「当然だ。もし、貴様が何かしらの抗命行為をした際に、いざという時の鎮圧も任せていた」

 

「え、待ってくれ。つまり、あいつがやたらとオレに肩車せがんでた理由は、何かあったらすぐに首刈れるようにしていたってことか!?」

 

 こわ!

 

 ムメイといい、この世界の触れ合う女子ら、みんなオレの命を狙ってくるのなんなの!? 男は男でオレの身体(・・)を狙って来るし、いやなモテ期すぎるんだが!?

 

「隊長! ルルカ副官のおかげで晶獣の被害も抑え込めています!」

 

「よし、わかった。総員、突撃せよ! 植物が再生する前に、一気に奴の根城まで行き、その首を食い千切る!」 

 

 勝機を逃さず、バレットリガー隊はウィルディを筆頭に一気呵成に攻め立てる。

 

 その勢いは止まらない。阻む植物を、襲いくる晶獣を切り捨て、槍のような陣形で突き進む。

 その甲斐あってか、次第に大樹へと距離が縮まっていく。

 

 すると進路上に大きな花が咲いた。

 その花には見覚えがあった。咲いて現れたのは、杖を片手に握りしめた全裸に近い女。

 

「カヤノスィノッ!」

 

「くすくすくす、早いなぁ。こんなに早く来るとは思うてへんかったわぁ」

 

 あとはヤツを仕留める。それだけなんだが……。

 

 

 

 順調過ぎやしねぇか?

 

 

 

 確かにウィルディの〝徹甲槍弾砲(バースト・カノン)〟によって罠はズタズタにされたのだろう。

 

 晶獣を利用した攻勢にだって驚いた。

 

 だが、それだけだ。

 

 悪意は感じるが、意地の悪さ(・・・・・)を感じない。

 

 カヤノスィノの性格についてはよく知っている。

 

 享楽的でありながらも冷徹な思考、そしてその狡賢さも、悪辣さも。

 

 何せ、奴は《改革》ルートにて落とした統治領(コルニア)の住民を、植物で操り私兵(・・)へとした存在。それほどまでに、性格が悪い。

 

 そんな奴が、ここまで順調に接近を許すか?

 

 ウィルディのような強者ならまだしも、他の軍人たちまで此処へ辿り着けるほど、奴の策は甘かったか?

 

「あんさんなら、この隙を見逃さへんと思うたわぁ。だから、土台からひっくり返させてもらいんす」

 

 魔女が笑う。何処までも、歪み、蔑んだ笑みを。

 

 嫌な予感がした時には、遅かった。

 

「なッ……!?」

 

「わぁッ!?」

 

「なんだと!?」

 

 地面が揺れると同時に割れた(・・・)

 

 先ず戦闘を走っていた、オレらが巻き込まれた。ルルカだけは晶獣の対処に先頭の集団から若干離れていたから、運良く巻き込まれなかったがウィルディや他の兵士はそうではない。

 

 彼女はすぐさま、網目状に《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》を広範囲に広げ、落下していく兵士たちを救助する

 

「狼狽えるな! すぐに体勢を整え……ッ!?」

 

「タイチョー!?」

 

 部隊の指揮に気を取られたウィルディが、横穴から射出された何かに頭を撃たれた。あれはどんぐりか!? 危険な植物はいろいろあるが、あんなのもあるのか……!

 

 当たりどころが悪かったのか、そのまま気を失った。

 

「ちぃ!」

 

「ゲドくん!?」

 

 《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》の弱点がもろに出たか!

 

 〝徹甲槍弾砲(バースト・カノン)〟のせいでウィルディは、鎧の半数を失っていた。しかも、残った面積も部下を救うのに使い、ウィルディ自身の身を守る鎧が少なくなってしまっていた。

 

 ルルカの叫び声を背に、、オレはそのまま落下していくウィルディを追い、その身体を抱える。

 

 舐めんじゃねぇ。

 

 このまま槍を突き刺して足場にして、すぐに戻……ッ!?

 

「塞がれてやがるッ……!」

 

 巨大な木の根っこが、上部を塞いでいた。

 

 雷撃で風穴をッ、いやだめだ。ウィルディを抱えてるんだ、このまま放てばウィルディが感電死する。

 

「くそったれが……!」

 

 戻ることも、空中で体勢を立て直すことも出来ずにオレはそのまま、ウィルディ共々地下水脈に落下したのだった。

 

 くすくすくす、と嘲笑うカヤノスィノの声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

「ぷはぁ!」

 

 そのまましばらく流されたオレは、水面から顔を出す。真っ暗だ。ウィルディを置いて、軽く雷を使って、周囲を照らす。

 

「完全に塞がれてやがる。こりゃ、完璧に分断が目的だったな」

 

 流された上に、天井はゴツゴツとした岩と樹木の根っこしか見えねぇ。

 

 せめてルルカが《聴き耳兎/アリウス・バニー》を持っていたんなら話は別だったんだが。あれさえあれば1キロ先の音まで事細かく聴き分けることが出来るし、地下に張り巡らされた根っこなんて、すぐに気付くことができただろう。

 

「肝心の上官殿も目覚めねぇし、どうしたもんかねぇ」

 

 オレの横では、気を失ったウィルディがいる。

 

 呼吸を確認するが、生きてはいる。

 だがいつ目を覚ますかがわからない。

 

「へっくしょん! ……とりあえず火を起こすか。何か、燃えるもんあったか……?」

 

 とりあえず、低体温症にならないようにオレは火を起こし始めるのだった。

 

 

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