拾ったのは、外伝ゲームの主人公でした   作:異星人アリエン

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地下洞窟

 

 焚き火の弾ける音がする。

 

 オレはウィルディに何故こうなったのかを説明する。

 

「……結果、部隊は散り散りだ。まぁ、ウィルディ隊長の鍛え上げた精鋭達だからな。五体満足……かはわからねぇが、生きているでしょうぜ」

 

 最後にそう締めくくると、ウィルディは深く、それは深くため息を吐いた。自分への憤懣やる方なさを含んだため息だった。

 

「そうか。作戦は失敗だ。我々は、カヤノスィノの罠に嵌った。奴の思惑にまんまと引っかかり、部下を危険に晒した。それが不甲斐ない」

 

「いや、あれは仕方ないだろ。奴の方が上手だっただけだ」

 

「仕方ない、気付かなかった──そんな言葉で許されるほど、軍人は甘くはないのだ。奴の思惑を読めなかった時点で私自身の責任だ。悔やんでも悔やみきれん。……姉上なら、きっとこんな風にはならなかっただろうな」

 

 自嘲するように笑うウィルディ。

 確かに向こうからしたらそう思っても仕方ないかもな。だが、それは違う。

 

「そんなことはねぇよ」

 

「なに?」

 

「オレも、ルルカも、他のバレットリガー隊の面々もディグルじゃねぇ。あんただから命を賭けたんだ。確かに、罠に嵌められたのは事実だ。悔しがるのは良い。だけど自分を卑下するな。それは信頼をよこした奴らへの侮辱となるぜ」

 

 オレの言葉に、ウィルディは虚を突かれたような顔をする。

 そのまま微かに笑みを浮かべた。

 

「……そうか、自分への嘲りならばいくらでもするが、それが部下を侮辱するとなればやめないわけにはいかないな。ならばカヤノスィノの元に戻り、奴を討って汚名を返上せねばな。早急に地上に戻るぞ」

 

「とはいえ上は完全に塞がれていますぜ」

 

 見上げても真っ暗で何も見えない。

 

 もっとも、既にオレが一度雷で辺りを照らした際に完全に根っこによって塞がれているのを確認できた。ここから地上に登るのは至難の技だろう。

 

「風が吹いている。なら、必ず何処かに出口がある。一先ず、それを目指す」

 

 ウィルディは、自らの指を舐め、しばし指を立てる。

 

「風はこっちか。行くぞ」

 

「了解です。長い旅になりそうですぜ」

 

 オレは焚き火から火を拝借する。

 その間になんとウィルディは自らの服を脱ぎ始めた。

 

「お、おい」

 

「乾かしている暇すら惜しい。乾かない分はここに置いていく」

 

 そのまま《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》の鎧ばかりを残して、自らの軍服のほとんどを脱ぎ捨てた。

 

 羞恥心0かよ!

 

 今は光源が松明しかないが良いが、お日様の元でその格好だと痴女待った無しだぞ。

 

 いや、元の格好でも変わらないか。内腿丸出しだし。

 

「さっさと急ぐぞ、駆け足!」

 

「こんな時まで教官みたいにしなくて良いだろうがよ!」

 

 もんもんとした気持ちで、オレたちは走り出した。

 

 

 

 地下洞窟はかなり視界が悪かった。

 

 急ぐとはいえ、足場も視界も悪い中での速度はたかが知れている。おまけに風の流れはわかっても、その先が人の通れる幅かもわからない。

 

 実際何度か、人の通れない狭さの通路だったことがあった。

 

「ここもか。ぐっ、また戻るしかないか」

 

 そしてまたもあまりにも狭い、頭すら入れられないほどの狭さの通路に行き止まり、ウィルディは舌打ちする。

 

 実際、オレも辟易していた。

 

 それでも出口を目指していると、ふと先が仄かに明るく見えた。

 

 ここは地下洞窟だ。

 光源なんてあるはずがない。だが、現実として、オレたちの視界には灯りがあった。

 

 それに誘われるように、オレたちは歩みを進める。

 

「おいおい、こりゃすげぇな。夜空みてぇに煌めいてやがる」

 

 やがて進んだ先の洞窟は、天井が星空のように輝いていた。

 

「すげぇな、これ。見たことねぇぞ」

 

 見上げれば光源なんてあるはずのない洞窟を照らす、仄かに青く光る鉱石の数々。まるで満天の星のようで、思わずここが地下だと言うことを忘れちまう。

 

「《霊耀晶(マテリアルーツ)》……いや、そのなりかけか。だとしてもこれだけの量が眠っていたとは……これはもしかして霊脈(・・)が流れているのかもしれん」

 

霊脈(・・)?」

 

「この星を流れる生命の源、あるいは人体であらわすと血液といったものだ。得てしてそういう所には、貴重な鉱石だったり、先程言った《霊耀晶(マテリアルーツ)》が生成されたりする」

 

 はぁ〜、そうだったのか。

 

 輝征装(エアラリス)に《霊耀晶(マテリアルーツ)》が使われているのは知っていたが、その生成過程にまでは『リベリオン/戦禍の夜明け』でも触れてこられなかったから知らなかったぜ。

 

 そもそも、《霊耀晶(・・・)の存(・・)在自体が(・・・・)輝征装は(・・・・)(|霊耀晶《・・・)だけ(・・)によって造られ(・・・・・・・)ているという(・・・・・・)ブラフだったし(・・・・・・・)

 

「元々この大陸から見ても抜きん出る程の大樹に、自然の豊かさは群を抜いていた。その根源が、霊脈によるモノだとすれば納得がいく」

 

「スケールがでっけぇ話だな」

 

 そんな設定があったのか。

 

 元々アライアンス同盟や異民族(ハイライダー)からの侵攻を跳ね除けていた西方と東方の《四軸将軍(グランドクロス)》とは違って、南方のカンネビュラ大樹海の方はあまり触れられていなかった。

 

 つーか、大樹海自体も設定だけで作中では既に《四軸将軍(グランドクロス)》だったウィルディが、最早南方関係なく現れたりしたから、南方担当であったというのは最早フレーバーテキスト以外の役割果たしてなかったし。

 

「こんな時じゃなきゃ、素直に楽しめたんだがな」

 

「まったくだ。だが今は出口を探すのが先決だ。行くぞ」

 

 星空のような煌めく洞窟。

 だが生憎と観光してる暇はない。ウィルディも同意見だったのだろう。

 

 そのまま歩き出す。

 

 すると青白い灯りに、黒い影ができた。なんだと思って見上げると。

 

「なんだ、ただの大樹の根っこ(・・・)か。こんな所にまであるとはなぁ」

 

 元々パイオニア駐屯地からも見えるくらいに巨大な大樹が何本か見えていたが、なるほど、あれだけの成長エネルギーを担っていたのがこの霊脈ってわけか。

 

 で、だ。

 

 果たしてカヤノスィノのこの存在に気付いているのか?

 

 なぜオレがそんなことを思ったかと言うと、この根っこ、動いてやがる(・・・・・・)

 

 杞憂(きゆう)なら良い。

 

 だが、何故『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』で登場するはずのカヤノスィノがこのタイミングでこの場に現れたのか。それをまだ解明出来てねぇ。

 

 この世界は確かに『リベリオン/戦禍の夜明け』なのは間違いない。

 

 だけど一人一人は生きている。生きてるからこそ、その行動には意味がある、意志がある。それをオレはメリスと会ったことでひしひしと感じた。

 

 なら、この場にカヤノスィノが現れたのは必ず何か目的がある。本当に恨みからか、駐屯地を攻めたのか、あるいは実験(・・)か。

 

 オレの唯一のアドバンテージ。

 

 それは知っているキャラクターならば大まかな背景と使用する輝征装(エアラリス)を知れているということ。そして《改革》ルートでのカヤノスィノの言動と輝征装(エアラリス)の力を考えると……。

 

「ウィルディ隊長」

 

「なんだ?」

 

「ちと意見具申があるんだが、この根っこ。全部たたっ切らないか?」

 

 やるだけのことはやっとかねぇとな。

 

 オレの言葉に、ウィルディ隊長は難しい顔をする。

 

「なぜそのようなことを? 今する話でもあるまい」

 

「パイオニア駐屯地の襲撃から一夜立たず、カンネビュラ大樹海にこれまでみたことのない大樹が出現した。なら、それだけのエネルギーをどこから(まかな)った? オレはその答えが、今目の前にあるこれだと思っている」

 

「……確かに可能性はないとは言い切れんが、奴の輝征装(エアラリス)の性能がどこまではわかっていない。貴様の考えには、多大に憶測を含んでいると思うが」

 

「だが元を辿れば植物だ。あれだけ大規模に動かすには相応のエネルギーが必要だ。確かにカヤノスィノの輝征装(エアラリス)は植物を操れるのだろうよ。だが、成長するとなると別だ。輝征装(エアラリス)とはいえ無尽蔵に操れる訳がねぇ」

 

「むぅ……」

 

 オレの言葉にウィルディが考え込む。我ながら原作知識ありきの結構な暴論だとは思うが、それでもオレより賢いウィルディが考え込むあたり、向こうもオレの

 

「なんなら、オレの方で雷で焼き払っても良いが」

 

「いや、もし仮にこの根っこがカヤノスィノに通じていたらまずい。所在地が割れる。要は、この根っこがこれ以上この《霊耀晶(マテリアルーツ)》のなりかけから、養分を吸わないようにすれば良いのだろう」

 

 ウィルディが腕を掲げるとともに、《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》がバシャリと音を立てて液体となる。やがて巨大な根っこを、コーティングするようにまとわり付いた。

 

「これで一先ずは保険をかけておく。……何だその顔は」

 

 いや、だってそんな顔にもなるだろう。

 

 だってウィルディの格好は、元々乾いてないからとほとんど置いてきた。更に《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》の鎧も今のでまた面積が減ってしまい、最早ビキニアーマーなんだが!?

 

 あの防御力0、もはや鎧の体をなしていない非合理の塊の防具だ。

 

 せめて服着ろよ!

 

 いや、さっき落下した際にびしょびしょになったから捨てたんだったわ!

 

「心配せずとも、武器の分は確保しているぞ」

 

「い、いや、そうじゃなくてだな。ぶっちゃけて言うぞ、恥ずかしくないのか?」

 

「ふん、舐められたモノだな。この程度、《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》を自由に動かせることを加味すれば何の問題もない。むしろ、機動力があがっているくらいだ」

 

 確かに『リベリオン/戦禍の夜明け』じゃ、そもそも防具をまともに着ているやつの方が少数派だった。なら、ウィルディの言葉にも一家言を持つというものだ。

 

 本人が言うのなら間違い無いだろう。

 

 そのまま進もうとした時。

 

「ひゃんっ」

 

 ぴちょり、と水滴が落ちるような音と可愛らしい艶のある声。

 

 というか、明らかに背後から聞こえたような。

 

「……」

 

「……」

 

「……マルドラーク、命令だ。貴様の上着を寄越せ」

 

 身包み剥がされた。

 

 

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