拾ったのは、外伝ゲームの主人公でした   作:異星人アリエン

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第50話

「よし、大丈夫ですぜ。周囲には何もいやせん」

 

「ご苦労」

 

 あの後、何とかオレ達は洞窟を脱出することができた。

 入り口から顔を出して、周囲を観察。敵影なし。そのまま出てくる。景色はいつも通りの樹木ばかり。

 

「大樹海だと、どこもおんなじ光景過ぎて分かりづらいな」

 

「だが、我々の所在地がわからなくとも、目指すべき方向はわかっている。見ろ」

 

 ウィルディの指差し方向。

 そこには例の巨大な大樹があった。

 

「場所がわからずとも、目的地がわかっているのならば、問題ない。行くぞ」

 

 ウィルディが先導する。

 

 どうでもいいけど、オレの上着羽織っているがサイズが合ってないせいで、ちらちらと生足が見えるのが妙な気分になる。

 

 おかしいな、男なら彼女とかに自身の上着を着せるとかのシュチュエーションなら憧れたりするはずなのに、オレ全然嬉しくないんだけど。

 

 ウィルディが勇ましすぎるのと、オレが代わりに半裸状態になっているせいだ。

 

《ジリリリリッッッ!!!》

 

 突然けたたましく鳴り響く鳴き声。見れば蝉に似た蟲が、オレたちを発見するなり騒いでいた。

 

 ウィルディがすぐさま《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》で造り上げたナイフを、相手に投げることによって仕留める。

 

 だが、奴は役目を果たしたらしい。

 

 地鳴りが鳴り響き、植物の騒めく音が次第に大きくなる。

 

「ちっ、気付かれたようだな」

 

「そりゃ、植物を支配出来ているんならオレ達を見つけたなら戦力を向けてくるよなッ! おっと!」

 

 やがて草木を掻き分け、追手が現れる。

 

 目の前に現れたのは《灰毛熊(グレーターベア)》、《翼爪蛇(アンピプテラ)》、《大喰い長虫(デス・ウォーム)》、その他諸々屈指の危険度を誇る晶獣の方々。もれなく全員が植物に寄生されている。

 

 ……うん。

 

「いや、明らかに二人に向ける戦力じゃねぇだろォッ!!?」

 

 何だこの物量!?

 

 これだけでトリンガース区の基地くらいなら軽く陥せるぞ!? 二人に向けて良い物量じゃねぇだろ!

 

 だが弱音を言っても仕方がない。

 

「突破するぞ! 着いてこい!」

 

「くそっ、やってやるよ!」

 

 すぐさまオレとウィルディは戦闘に入る。

 

 雷を使っても良いが、まだカヤノスィノの姿が見えない以上手の内を晒すのは避けたい。とはいえ、それで消耗しては元も子もないので見極めが大切だ。

 

 やはり、雷を使うことは視野に入れた方が良いだろう。

 

 そう思っていたんだが……。

 

《ギュオォォッ!?》

 

「ふッ!」

 

《グオォォォッ!!》

 

「おらよ!」

 

 ウィルディが《灰毛熊(グレーターベア)》の喉元を掻っ切り撃破する。その隙を狙った《翼爪蛇(アンピプテラ)》をオレは槍で両断、撃破する。

 

 そしてオレの背後を狙って口を開いた《大喰い長虫(デス・ウォーム)》を、ウィルディが《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》で造り上げた弾を発射し、爆散させる。

 

 別に息を合わせてとかではない。

 

 自然と互いが互いにカバーするような連携になっていた。

 

 今思えば、オレは輝征装(エアラリス)持ちとは戦ってばかりだった。メリスは味方だが、技量はまだまだ荒削り。更にその力は、力押しがメインだ。

 

 対してウィルディは生粋の帝国軍人。《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》も、輝征装(エアラリス)に相応しい無法さを誇るが今は使える量が少ないからこそ、武器も近接用のモノしかほぼ使えない。

 

 そして周りに居るのは敵だけ。それは、この時には優位に働く。

 

「よぉ、ウィルディ隊長よ。オレたちよ」

 

「ふん、言わずともわかっている。目の前に集中しろ!」

 

 オレの言葉にウィルディは鼻を鳴らすが、口元には軽く笑みを浮かべている。

 

 どうやらオレたちは、相性が良いみたいだ。そのまま背中合わせでオレたちは晶獣を撃破し尽くした。

 

『……おやまぁ、驚いたわぁ。消耗しているかと思うたけど、むしろ元気になってるやないの』

 

 声が聞こえてきた。

 カヤノスィノだ。まだ姿は見えないが、奴が近付いてきている。ウィルディが目を向けてくる。

 

 オレは頷いた。姿を見せたら、雷で一気に仕留める。

 

 そう思っていた時、がさりと音が聞こえた。新たな晶獣だ。

 

「ッ、新手か! 直ぐにでも始末してやッ──!!?」

 

 突然、横から何者かに蹴飛ばされた。

 

 音もない、それでいて重い一撃。オレはそのまま晶獣の群れの元に、飛ばされる。

 

「ゲドウ・マルドラーク!」

 

 ウィルディが叫ぶ。一方でオレは顔を歪めていた。

 

 痛みに呻いたわけじゃねぇ。

 

 あぁ、くそ。そうかよ、そういうことかよ。

 

 オレを蹴飛ばした犯人。

 

 その姿を見て、オレは心底カヤノスィノの意地の悪さを見た。

 

「卑怯者めが……!」

 

 身体の至るところに、植物を生やされたルルカ(・・・)が、オレを蹴飛ばしたのだ。

 

 

 

◇◇◇

 

「マルドラーク!」

 

 吹っ飛ばされたアスデブリの名を呼ぶ。死んではいないようだが、ゲドウは晶獣の群れに叩き込まれた。

 

 ウィルディは歯を食いしばり、下手人を睨む。

 

「貴様、何者だ! カヤノスィノの仲間……ッ!!?」

 

 言葉を失う。

 

 何故ならその人影はウィルディもよく知る人物だったからだ。

 

「ルルカ」

 

 自らの副官。

 

 おちゃらけたところはあるが、厳しいウィルディの代わりに人間関係の潤滑油(じゅんかつゆ)となっていてくれた部下。

 

 みんなのアイドルだと事あるごとに言うが、そのために並々ならぬ努力をしていることも知っていた。呆れはするが、それでもルルカだから、と愛嬌があるやつだった。

 

 そして、現れる人影はルルカだけじゃない。

 

 襲い掛かって来ているのは、ウィルディの仲間達であった。

 

「マガジーン、サルト、バズー、タッカー、ピスタ、サレンダー、コルト」

 

 一人一人の名を呼んでいく。

 

 例外なく彼ら彼女らの身体には、花が咲いていた。

 

 カヤノスィノに敗北し、文字通り奴の手足となってしまった。それを理解した。

 

『さぁさぁさぁ、どうしやす? 可愛い部下たちを、殺せますかいなぁ?』

 

 くすくすくす、と悪意に満ちた声が大樹海に響く。

 

 ウィルディとてわかっていた。

 こうなってはもう仲間達を救う術はないと。

 

 だから、為すべきことは仲間ごと撃つこと。それこそが、果たすべき務めだと。

 

「たい、ちょー……! 撃っ……てぇっ……!」

 

「ッ──!」

 

 理解して、彼女は撃てなかった(・・・・・・)

 

 これが数年後のより精神が成熟したウィルディであれば、躊躇せず撃てたであろう。

 

 或いは、本来の歴史通りに進み、滅霊装(パルバースト)に心が壊されたウィルディであっても撃っただろう。

 

 だが、今この場にいるウィルディはエースとなれども今だに日が浅く、何よりも人間味(・・・)を残していた。

 

 だからこそ、植物によって操られている以上、どうすることもできない、殺すべきと分かっていても、引き金を引けなかった。

 

 そんなウィルディの内心など、つゆも知らず。

 

 ウィルディの仲間たちは、凶器を手に持ち殺到する。

 

「〝アン・ブレイカー〟ッ!」

 

 ウィルディを守るように、或いはその迷いを払うように暗い大樹海に雷が迸った。

 

 

 

◇◇◇

 

『なんや、今のはッ……!?』

 

 カヤノスィノの驚いた声が響く。

 

 俺の雷を浴びたルルカたちは全身が痺れ、植物が焼き焦げて倒れた。

 

 俺はすぐさま周辺の樹木も雷で焼き払う。更地とはいかないが、それでも整地することはできた。

 

 しかし、カヤノスィノの悲鳴は聞こえてこない。

 

 まったく何処から見てやがるんだ。だが、これで周囲の敵は全ていなくなった。植物はいずれカヤノスィノによって生み出されるだろうが、手駒がいなければ奴の力は小回りが効かない。

 

「すまん、マルドラーク」

 

「いや、俺も不覚をとりました。すいません」

 

「お互いに失態を犯したというわけだな。情けない話だ。……弔ってやることが出来なくてすまない」

 

 鎮痛そうな顔で、ウィルディが倒れ伏すルルカたちを見つめる。

 

「いや、もう大丈夫だぜ」

 

「なに?」

 

「オレの〝アン・ブレイカー〟は内部深くに雷を貫き通すのを目的とした技だが加減した。まぁ……傷跡は残っちまうが……身体が動かないし、気絶しているのは単純に電気を浴びたショックだろう」

 

 こちとら前世は雷に巻き込まれて死んだんだぞ。

 

 どれくらいの力ではなてば死ぬか気絶するかわかっているわ。

 

「そうか。……そうか、皆、助かるのだな……よかった」

 

 ウィルディは俺の言葉にこれ以上ないほどに安堵した表情を浮かべた。

 

『安堵するにはまだはやいんとちゃいますぅ?』

 

 嘲るように暗い森林に響く声。地響きと同時に、周囲から木の根っこが出現する。一際大きい瘤を中心に、オレたちを囲む。

 

 またか。

 

 さっきから植物はともかく、この地響き(・・・)揺れ(・・)はなんだ? 明らかにカヤノスィノの輝征装(エアラリス)によるものとは思えない衝撃だ。

 

「カヤノスィノ! いい加減姿を表せ卑怯者が!」

 

『おーおー、声に怒りが乗ってはりますわぁ。そないに怒鳴らなくとも、ちゃんと伝わっておりますよ。うちからの贈り物は気に入ってくれたかなぁ?』

 

「貴様ァッ!」

 

『くすくすくす。本当、あんさんええ反応するわ。それよりも、や。あんた、本当にやってくれたなぁ。頭まで脳筋そうな顔やなのに、中々頭が回るやないの』

 

 忌々しげな声が響く。

 

 オレの雷はカヤノスィノに知られちまった。ここまで徹底してカヤノスィノが姿を現さないのは、こちらとしても予想外だった。

 

 最悪、カンネビュラ大樹海を丸ごと雷で火の海に沈める覚悟をしなきゃならねぇな。

 

 …………問題はオレの身体がどこまで持つか、だな。

 

『でも判断を間違うたんちゃいます? そんな気絶した足手纏いを庇いながら、妾と戦えるとでも? そんなたったふたりで……っ』

 

 不意に、カヤノスィノの言葉が止まった。

 

『なんや? この反応? 妾の張り巡らされた花園が、えらい勢いで荒らされとるやと?』

 

「なに?」

 

 予想外と言いたげな反応。それはこっちも同じだった。

 

 木々の騒めきを切り裂くように、キィィィィン──と甲高い音が聞こえてくる。

 

 聞いたことのない音に警戒する。

 

 やがて木々を飛び越え、その音の主が姿を現した。

 

「〝走行騎ケブラー〟!?」

 

「なんだと!?」

 

 それは『リベリオン/戦禍の夜明け』において、カエレスティス帝国のメジャーな移動手段として使われていた、走行騎ケブラー。

 

 《天刑護騎士(アストロノーツ)》が現れる際には、必ず使われていた機体が姿を現した。

 

 そしてそれに乗っているのは……!

 

「見つけた! ゲドウ、久しぶり! 会いたかった!」

 

 大樹海の上空を疾走し、現れたのは《特務兵装開発部(アルカナム)》に配属となって一旦オレの元から離れたはずのメリスであった。

 

 

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