拾ったのは、外伝ゲームの主人公でした   作:異星人アリエン

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彼シャツにはロマンがある

 

「とりあえず、邪魔ァッ!」

 

 メリスは叫ぶと同時に、〝走行騎ケブラー〟を乗り捨て、そのまま一際大きかった瘤のある樹の根っこを殴った。

 

『んな、あほな!!?』

 

 余裕綽々で煽っていたカヤノスィノが初めて驚いた声をあげた。

 バキバキと、音を立てながら倒れていく様子が今の衝撃を物語る。

 

「マルドラーク、やるぞ!」

 

「わかってる!」

 

 オレとウィルディはすぐさまカヤノスィノの支配下にある残りの木の根っこを斬ったり、雷で焼き尽くした。

 

『ちぃ、小癪な奴らめぇ……!』

 

 忌々しそうなつぶやきと共に、周囲の木々の騒めきが収まっていく。

 

 カヤノスィノだが、どうやら一時引いていったらしい。また逃げられたか。だが、ルルカたちを庇っての戦闘は厳しかったし、助かったな。

 

「ゲドウ!」

 

 ててて、と喜色満面の笑みでメリスがこちらに近寄ってくる。やば、さっき殴り飛ばす様子を見たから同じように迫ってくるの怖いんだが。

 

 そんな内心を露にも出さずに、メリスを歓迎する。

 

「よう、久々だな。早速だが助かったぜ。どうしたんだよ、こんなところまで」

 

「ゲドウに会いに来た」

 

「あぁ? それだけの為に態々こんな東の果てに来たのか?」

 

「寂しかったから」

 

「お、おぉ、そこまで言われると怒りづらくなるじゃねぇか……。って、そうじゃなくてオメェ《特務兵装開発部(アルカナム)》に配属されたはずだろ? 何でこんなところにいやがる?」

 

「知り合いか、マルドラーク」

 

 オレとメリスの会話を聞いていたウィルディが語りかけてくる。

 

「あぁ、ウィルディ隊長。こいつはメリス。前に言っていたオレの同居人です」

 

「なるほど、まさか少女だったとはな。しかも、あの家ほどの大きさの木の根を殴るだけでへし折るとは……。輝征装(エアラリス)持ちか?」

 

「やっぱりわかるよな。その通りだ。メリス、この人はウィルディ・バレットリガー。オレがパイオニア駐屯地に配属になってからの上官だ」

 

ねぇ(・・)

 

 ゾッとするくらい、冷え込んだ声だった。な、なんだ、今の説明に何か怒りに触れるポイントがあったか?

 

「なんであなた、ゲドウの上着着ているの?」

 

 メリスはウィルディの格好を見ていた。あ、あー、確かに今のオレは半裸状態だし、ウィルディが成人男性の衣服を羽織っていたら、オレのだとわかるか。

 

「臭いでわかるよ、それゲドウのでしょ」

 

 ちがった、オレの体臭のせいだったわ。え、オレくさい? 思わず自分の臭いを嗅ぐが全くわからねぇ。

 

 ウィルディはメリスの態度に、鼻で笑い飛ばす。

 

「何を言うかと思えば。我々は先ほどまで洞窟の中にいた。その際にマルドラークから拝借したものだ。私の輝征装(エアラリス)は、使うほど扱える量が少なくなる弱点があるのでな。この下は、ほぼ裸に近いのでな。こうしているわけだ」

 

 ウィルディが裾を捲ると、太ももが露わになる。

 

「なっ、ゲ、ゲドウ! 洞窟にいた時変なことしてないよね! ね!」

 

「してねぇよ。オメェ、オレのことなんだと思ってるんだ」

 

 必死になって問うてくるメリスに、頭を軽くチョップする。確かに顔はいかにも『ぐへへ』とか三下な台詞を吐きそうだが、そんなことしねぇよ。

 

「なら、わたしの服をあげる。同じ女性なんだから、そっちの方が良いでしょ。だから、脱いで!」

 

「いらん。そもそもサイズが合わないだろう。多少ブカついているとはいえ、こちらの方が戦闘時にも大丈夫な柔軟性と開放感がある」

 

「ぐぬぬ……!」

 

 ウィルディはメリスの提案を拒否した。そのままオレの服を、グッと自らの胸元に抱き寄せる。

 

 やめろよ、多分ウィルディは真実だけしか言ってないのだろうが、メリスには煽っているようにしか見えねぇよ。

 

 暫し睨みつけたメリスだが、悔しそうに口を開いた。

 

「……わたしのほうがゲドウの上着着たことあるから……!」

 

「何に張り合ってんだよオメェはよ」

 

「匂いだって、もっとゲドウの体臭が染み込んだのを嗅いだことあるもん……!」

 

「オメェそんなことしてたのか!?」

 

 聞きたくもないメリスの行いを聞かされちまった。道理で時折オレの服に無いはずの灰色の髪の毛が付着していたわけかよ……。

 

 ウィルディの呆れた視線が痛い。やめて、オレも知らなかったんです。ちゃんとメリス用には服を買っていたんです。

 

 こいつが着ずに、勝手にしていただけだ。

 

「まぁまぁ、そこまでにして欲しいよぉ」

 

「……どういう状況ですか、これは」

 

 間延びする声。反対に、抑揚のない声。

 そこに現れたのは、もう一台の〝走行騎ケブラー〟。

 

 晶獣蔓延(はびこ)るカンネビュラ大森林に(おもむ)くとも思えない、いつもの研究者の格好をしたトイープとヴェルヌントだった。

 

「誰だ貴様らは」

 

「お初にぃ、お目にかかるねぇ。《特務兵装開発部(アルカナム)》のトイープ・ホルミスだぁよぉ」

 

 あ、やばい。

 その言葉を聞いたウィルディが、ピクっと秀麗の眉を動かした。

 

「《特務兵装開発部(アルカナム)》……もしや、そこの責任者か?」

 

「お? わかるかい? そうだとぉ〜も、天才美少女とはボクのこ」

 

「あぁ、聞いているとも。輝征装(エアラリス)の情報についても、ペラペラしゃべる口の軽い輩だとな!」

 

「うひゃぁぁ!!?」

 

 言葉を遮り、拳骨しかかるウィルディ。

 

 間一髪、それを避けるトイープ。当然、ウィルディは追撃する。

 

「ひぃぃやぁぁぁ!? こ、殺されるぅ!? 助けてくれたまえ、モルモットくんにメリスくぅん!?」

 

「自業自得かと」

 

「偶には痛い目にあったほうが良いと思うよ」

 

「敵しかいないねぇ!」

 

 嘆くように叫ぶけど、そりゃ敵しか生まない立ち回りをしてきたトイープが悪い。

 

「あいたぁ! んぅ……?」

 

「きさま!」

 

 その時倒れ伏すバレットリガー隊の身体に引っかかったトイープがコケた。部下を踏まれ、怒るウィルディだが、トイープはマジマジとバレットリガー隊の容態を見る。

 

「これはこれは。身体に咲いた花の根が人体を操っていたのか。駐屯地でも晶獣が同様の症状に蝕まれていたねぇ。ふむぅ、普通なら取り除くのは厳しいがこれは既に焼き焦げている」

 

「あぁ、それはオレがやったからな」

 

「ほう! ほうほうほう! ちょっとそれ、詳しく教えてくれないかな、あいたぁ!」

 

「バカ言ってないで、周りをきちんと見てください。そんなことしている暇はないでしょう」

 

 バコンッ、とヴェルヌントがトイープの頭を叩いた。痛かったのだろう。うめくトイープに、ウィルディも毒気を抜かれていた。

 

「ウィルディ・バレットリガー殿。あなたの部下を踏んでしまったこと、謝罪します。ですが、安心してください。代わりに我々が責任を持って彼女らを見ます」

 

「っ、ほんとうか?」

 

「えぇ、誠に遺憾で認めたくはないですがトイープは天才です。人の治療もすることができます」

 

「その言葉は大いに不満だがその通り!  あーんしんしたまーえ。この天才美女のトイープにかかればこの程度の怪我、治療なんて造作もないことさぁ!」

 

 自信満々に言い放つトイープ。

 

 正直不安だが、怪我人を受け持ってくれるのは助かるな。ここじゃいつ晶獣に襲われるかわかったもんじゃねぇし。

 

「とはいえ、こんな所で落ち着いて治療もできやしないねぇ。そういう訳で頼めるかい、モルモットくぅん?」

 

「ヴェルヌントです。しかし、この数は流石に多いですね。ふむ……、このくらいの大きさなら丁度良いですね」

 

 ヴェルヌントが側に落ちていた例の根っこを持ち上げると同時に、そのまま上空に投げる。そのまま自身も跳躍、手刀で割る。

 

 そこに被害者達を乗せていき、そのまま抱える。

 

「元々ボクらが駐屯地に留まらず、ここまで来たのは例のパイオニア駐屯地を襲った輝征装(エアラリス)、それについて加勢するつもりだったんだ。もっとも、ボクらはここまでみたいだね。それできみはどうするんだい、メリスくん」

 

「わたしはゲドウと一緒にいるよ」

 

「ま、そうだよねぇ。折角愛しい彼に会えたんだから側に居たいよねぇ」

 

「そうだよ」

 

「おぉ……見たまえ、モルモットくん。惚気ってやつだよ。いやぁ、照れるねぇ」

 

「楽しそうですね。それでは、メリス殿、ゲドウ殿、ウィルディ・バレットリガー殿、武運を祈ります。〝走行騎ケブラー〟ですが、自由にお使いください。私はこの人数を抱えては、運転できませんので」

 

 そうして二人は去っていった。

 じゃーねーっと、同じように木に乗せられて運ばれたトイープが去り際に手を振っていた。

 

「……わたしも、あれくらいできるようにならなきゃダメなのかな」

 

「アホか。ありゃ、人間技(・・・)じゃねぇよ」

 

「何という膂力、とても戦闘を行う人物とは思えないのにあそこまで力を有するのか」

 

 今の光景に、敵地であることも忘れてオレ達は呆気に取られた。

 

「それで、負傷者を離脱させられたのは良いがこれからどうします?」

 

「無論、カヤノスィノへ追撃を仕掛ける。此処で奴を逃せば、もうこの広い大樹海から探し出すのは困難だ。それに囚われた者達のこともある」

 

 カヤノスィノに囚われた商人達はいまだ解放されていない。

 本来の目的である生存者の救出が出来ていない時点で、まだ退くことができないのだ。

 

「戦える者は三人か。最早、軍と言えるかもあやしいな」

 

「けど、全員が輝征装(エアラリス)持ちだよ」

 

「その通りだ。輝征装(エアラリス)を扱いし者は一騎当千。つまり、我々は三千人に匹敵する軍団という訳だ。対して向こうはただ一人。数の上では同等だ」

 

「物は言いようだな」

 

「真実だ」

 

 ウィルディが断言する。

 

「これより先はより苛烈な戦場となるだろう。これまでは奴は私達をおちょくるように、いたぶるように時間をかけて小賢しい手を使ってきた。しかし、流石の奴とて己と同じ輝征装(エアラリス)使いが複数いるとわかれば死に物狂いで反撃してくるだろう。だからこそ、一つだけ命ずる。……死ぬなよ」

 

 オレとメリスは頷いた。

 

 その言葉にウィルディは軽く微笑む。

 

「ならば作戦会議だ。5分で済ませるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういや、メリス。《特務兵装開発部(アルカナム)》が来てるならニェーニはどうしたんだ?」

 

「一緒にきたけど、トイープに秘密兵器って煽てられて駐屯地に残されたよ」

 

 どうやらまたもニェーニの出番はないようだ。

 

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