拾ったのは、外伝ゲームの主人公でした   作:異星人アリエン

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木を隠すなら森の中

 

「ほな、はじめようかぁ」

 

 ざわざわとカンネビュラ大樹海が騒めく。

 にょきにょきと緩慢に、枝木が伸びてオレたちの方へと向かって来る。

 

「さがってな、ウィルディ隊長! 〝アン・ブレイカー〟ァッ!」

 

 オレはすぐさま身体から雷を発生させ、迫り来る植物を焼き尽くす。すぐに再生されるのは織り込み済みだ。

 此処はカヤノスィノの独壇場(フィールド)、とにかく囲まれようにしなければなあっという間にオレたちはすり潰される。植物が一掃され、空いた隙を縫うようにウィルディが駆け出す。

 

 そのまま《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》で造り上げた銃を構えた。まるで《エニアグラム》のクロエの輝征装(エアラリス)、《双挺拳銃/ケルベロス》に似た形状だ。

 

「そこだ!」

 

 そのまま発砲音。

 

 カヤノスィノの額に向けて撃たれた弾が直進する。このままいけば当たる。だが。

 

「〝(あく)帝冠(たいかん)〟」

 

 ガメツイ将軍の声。

 

 地面が槍のように盛り上がり、ウィルディの一撃が防がれる。それだけじゃなく、次々とオレの足元から石の槍が突き出て来る。

 

 それらを走りながら躱す。それだけじゃなく、またも植物がゆっくりと襲いかかってくる。オレとウィルディはいつのまにか背中合わせのような体勢で、攻撃を捌いていた。

 

「キリがないな。やはり、先にガメツイ将軍をなんとかせねばならんか」

 

「だな。それにしたって、すげぇ疲弊しているのに動かされるのは悲惨だな」

 

 ガメツイ将軍はすげぇ荒い息と汗を大量に流していた。

 見た目通り、運動をしてないようだ。それでもこれだけの攻撃を絶え間なく行えるのはそれだけ輝征装(エアラリス)の性能が高いということだ。

 

 いや、ほんとに普通に強い。

 

 多分、オレとウィルディを地下洞窟に落としたのもガメツイ将軍の輝征装(エアラリス)だ。とんでもない性能だ。もし滅霊装(パルバースト)化して『リベリオン/戦禍の夜明け』に出てきたらと思うと、ゾッとする。

 

 とはいえ、今オレたちに立ちはだかっているのには違いないわけで。

 

「ウィルディ隊長、近付けさえ出来ればアンタはガメツイ将軍を始末できるか?」

 

「愚問だな、だが策はあるのか?」

 

 オレは簡潔にウィルディに策を伝えた。

 

「……良いだろう、ならばやれ。ガメツイ将軍は私が仕留める」

 

 そう言ってウィルディはオレから離れ、そのまま森の茂みに消えていく。

 

「あらぁ? もしかして逃げる気甲斐なぁ? くすくす、哀れやなぁ、あんさん。ひとり残されて」

 

「いいや、違ぇよ。これからオレが全力で雷を放つのに巻き込まれるから離れてもらっただけだ」

 

「なんやと……?」

 

 ばちばちとオレの身体中から、静電気が発生し始める。

 

 真夜中なのに、ここだけ日中のように次第に明るくなっていく。オレの言葉に、ハッタリじゃないと気付いたカヤノスィノは、顔を引き攣らせた。

 

「あんさん、はよやりぃ!」

 

「が、が、が、ずおぉぉぉぉッッッ!」

 

 焦ったカヤノスィノが指示を出し、ガメツイ将軍が四股を踏む。

 するとオレから射線を隠すように、カヤノスィノとガメツイ将軍の前に大地が隆起した。

 

 そのままオレは雷を放ち、あたりは一面轟音と真っ白の光に包まれた。

 

「なんてな」

 

 ──なんてこと(・・・・・)はない(・・・)

 

 舌を出す。

 

 確かに俺の力は、雷そのもの。破壊力に目がいきがちだが、そもそも雷を放つ際に大きく閃光が迸る。

 

 それを利用して、目眩しをしただけだ。

 

 案の定、雷が来ると思ったカヤノスィノはガメツイ将軍に指示を出して、正面に土を集中させた。

 

 そう、自らの視線を切った。

 

 オレは一人じゃない(・・・・・・)

 

「ふッ!」

 

「ごあぁっっっ!!?」

 

 その隙にガメツイ将軍に近付いたウィルディが、ガメツイ将軍の心臓を剣で貫いた。しかし、倒れない。

 

 カヤノスィノの〝寄生種〟のせいか、あれでも死ねないようだった。

 

「こ、こ、こここ、こんなところ、死ね、るか。まだ、まだ、まだぁぁぁ!」

 

「ガメツイ将軍、あなたのことは嫌いだった。だが、敵に操られ生き恥を晒すのを看過するほど、私は落ちぶれてはいない」

 

「が、ががが、金、わた、わた、わたしの金、地位を、もっと、もっと、もっとおぉぉぉぉっ!」

 

「もう眠れ」

 

 銀光一閃。

 《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》で作り上げた剣で、ウィルディはガメツイ将軍の首を刎ねた。

 

 あれはウィルディの慈悲だ。

 

 カヤノスィノに操られ、手先としてしか生きられないガメツイ将軍を解放するための。

 

 そしてガメツイ将軍が討たれたということは、奴の輝征装(エアラリス)である《奈落纏褌/フンドジオ》が機能しなくなったということ。

 

 ボロボロと、土の壁が崩れていく。

 

 その先にいるカヤノスィノを、オレは捉えた。

 

「〝雷導〟ォッ!!!」

 

 ただただ一直線に、それだけを目的に、雷を束ねた一撃。

 

「くすっ、あぁ、やるやないの(・・・・・・)

 

 なぜか褒めるような言葉の後、カヤノスィノは雷に貫かれた。

 

「っつあ、はぁ、はぁ……!」

 

 強力な雷を行使してしまったために、オレはズキズキと痛む身体に息を荒くする。汗がポタポタと地面に滴る。無茶をし過ぎた。

 

 だがその甲斐はあった。

 

 終わりだ。

 

 ガメツイ将軍は討たれ、カヤノスィノもパラパラと、枯れ葉のように崩れ(・・・・・・・・・)──

 

「擬態!!?」

 

「なんだと!?」

 

 本人じゃねぇ!

 凄まじいまでの精巧な人形だ。オレの雷によって焼き焦げた枯れ葉が散っていく。

 

 ばかな、いつから変わっていた!?

 

 だが、確かに今考えればカヤノスィノは積極的に攻撃を仕掛けて来なかった。もっぱら仕掛けてきたのはガメツイ将軍の方だ。ガメツイ将軍を操るのに力を使っていたということか?

 

 いや待て、今考えるのはそっちじゃねぇ。

 

 カヤノスィノが此処に居ないとなれば、居るとすれば1箇所しかない。

 

 あの大樹だ。

 

 あそこにカヤノスィノはいる。そして、そこに向かったのは。

 

「メリス……!」

 

 

 

 

 

sideメリス

 

 ゲドウに会いに、帝国南方にあるカンネビュラ大樹海とやらにやってきた。

 

 でもそこでは植物が蔓延っていて壊滅状態だった。バレルって人から、ゲドウはバレットリガー隊という部隊と共に、元凶のいる大樹海に向かったと聞いた。

 

『もぉ〜しょうがないわねぇ。駐屯地はわたしが守っておいてあげるわ! 感謝しなさい!』

 

 むふー! と鼻息を荒くし、アホ毛をぴんと立てながらニェーニが留まったのを尻目に、わたしは大樹海を〝走行騎ケブラー〟で疾走、ゲドウと会うことができた。

 

 そこに一緒にいたウィルディさんという人。真面目そうな人だったけど、ゲドウの上着を着ていた。

 

 それだけを見た瞬間、脳が焼けたみたいな衝撃が走った。ゲドウを問い詰め、なんとか脱がせようとしたけど無理だった。

 

 わたしの勘が言っている。

 放っておいたら、いやな予感がすると。けれど、切迫する状況でこれ以上時間をかけられず、泣く泣く諦めた。

 

 その後、わたしたちはカヤノスィノという元凶がいるであろう大樹に向かって突き進んだ。

 

 途中、振り落とされたゲドウとウィルディさんが心配だったけど、わたしに任された仕事を全うすべく大樹に向かった。

 

 その先で見た光景、その異様さに息を呑む。

 

「うわ……」

 

 そこにあったのは、宙吊りになっている人々。

 まるで食虫植物みたいに、頭だけを花の蕾で覆われて全員そのまま。すごく不気味、そして首に悪そう。

 

「わははははっ! すごいすごいぞぉ! これでわたしは大金持ちだ!」

 

「欲しかったモノがぜ〜んぶある! やったわぁ!」

 

「この俺は偉大なんだ……、もっとだ! もっと讃えろぉ!」

 

 しかも全員、なぜか恍惚とした様子で受け入れている。

 意味がわからない。

 

《はっ、これを見てもそんな感想しか抱かんとは。相変わらず、鈍い娘だな》

 

 《悪魔の心臓/デモゴルゴン》の声が頭に響く。

 その言葉にむっ、として問い詰めようとしたとき。

 

「その人たちはなぁ。幻覚を見てはりますのよ」

 

「誰!?」

 

 突然大樹海に響いた声に、警戒する。

 

 いつから咲いていたのか、巨大な花の蕾が開くと同時に中に居たのはほぼ全裸の女だった。

 

 痴女……じゃなかった。ゲドウから聞いていたパイオニア駐屯地を襲ったというカヤノスィノに違いない。

 

 だって手に持つ木の杖を見た瞬間、わたしの《悪魔の心臓/デモゴルゴン》がひどく痛んだから。あれは、輝征装(エアラリス)だ。

 

 カヤノスィノは目を細めてわたしを見る。

 

「実はなぁ、最初見た時驚きはしたけども同時にあんさんに惹かれたんよぉ」

 

「何を」

 

「あんさんとは他人の気がしぃひんわぁ。その瞳の奥底にある全てを焼き尽くさんとする炎……、見覚えがあるわ。カエルム人への嫌悪や」

 

 その言葉に、わたしは身体を強張(こわば)らせた。

 

「図星みたいやねぇ。なんでそんなカエルム人を助けようとするんやぁ?」

 

「うるさい……!」

 

「ええやないの。ムカつくやつをのしたって。ええやないの、邪魔するやつを殺したって。妾らにはそれが許される。許されるだけの力があるんやから」

 

 歌うように、祈るようにカヤノスィノは言葉を紡ぐ。

 

「妾には使命がある。先祖の恨みを晴らす使命がなぁ。あんさんも、なにかカエルム人にされたんやろぉ? なら、妾と一緒に晴らそうやないの」

 

 染み渡るような言葉。

 

 わたしは振り払うように頭を振る。するとその時、大きく地面が揺れた。

 

「ちっ、あの顔の悪い男め。抵抗してからに」

 

 忌々しげに呟く内容に、わたしの心の乱れはすぐに治った。

 

 ゲドウ。ゲドウが戦っている。

 

 なら、わたしのすべきことをする。

 

「わたしはあんたとは違う。先祖の恨みだのなんだの言って、関係ない人を巻き込んだあんたとは。だから、その提案はお断りよ」

 

 にべもないわたしの返答。カヤノスィノは当てが外れたような顔をする。

 

「気があうおもたんになぁ。ほなら、もう加減せぇへんで」

 

「わたしも最初はそう思ったんだけどね。でも違ったわ。貴方とわたしとじゃ、決定的に違うことがある」

 

「へぇ? 言うてみぃや」

 

 興味深げに見てくるカヤノスィノに自信満々に、胸を張って答えた。

 

「貴方、友達いないでしょ? 性格悪いし」

 

「殺す」

 

 優雅さも品格もかなぐり捨て、カヤノスィノは周辺の植物を差し向けてきた。

 

「〝森羅万植穿〟」

 

「くっ!」

 

 大小様々な植物の根や枝が、雨霰のように襲いかかってくる。

 

 太かったらわたしの力で殴り飛ばしたけど、細いのは難しい。必然避けることになるけども、避けた先にも植物がある。

 

「あんさんは楽には殺さへん。じわじわと、身体の奥に種を植え込んでやるわ」

 

「なんでどいつもこいつも私を捉えてから嬲ろうとするの……!」

 

 辟易する。

 

 ナクアといい、どうしてわたしの相手はこうねちっこい相手ばかりなのよ。

 

 とりあえず、今は避け続けて隙を窺う。周辺植物だらけだけども、《悪魔の心臓/デモゴルゴン》で強化されたわたしの肉体なら、避けられる。

 

 このままカヤノスィノの隙を。

 

「わぁ〜、すごぉ〜い! お人形がいっぱいだぁ!」

 

 無邪気な声。

 なにが、と思えばそこに居たのは周りの大人と同じように頭を植物で覆われたこどもが。

 

 なんで、と思って気付く。駐屯地を襲われた際に、きっと親に連れられたんだ。

 

「ようやく隙を見せてくれはったなぁ?」

 

 樹々が迫る。

 

 躱すのは難しくない。でも、躱したらこの子が犠牲になる。

 

「はあぁぁぁッッッ!」

 

 だからわたしはその場で踏ん張り、迎撃した。拳で殴り、樹々を粉砕する。細かな枝が身体に刺さるけども、痛みに耐える。

 

 でもそれを見透かしていたように、樹々の残骸に隠れて、側まで接近してきたカヤノスィノがいた。

 

 やばっ……!?

 

「〝揺蕩う花園《ドリーミング・ガーデン》〟」

 

 身体を植物で抑えられ、花粉がばら撒かれた。急激に、わたしの力が抜けていく。瞼が重くなっていく。

 

「くすくすくす、良い夢を。次目が覚めた時あんさんは妾の仲間……いや、下僕や」

 

 誰がそんなこと、と声をあげることすらできずに。

 

 わたしの意識はそのまま落ちていった。

 

《ふん、情けない。あれだけ啖呵を切ってこのザマか》

 

 最後に《悪魔の心臓/デモゴルゴン》のそんな声が聞こえた気がした。

 

 

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