〝
それはカヤノスィノの最終形態。
大樹と一体化し、これまで以上に正確かつ強大に植物を操ることができ、『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』を遊んだプレイヤーたちの間で『
よしんば倒すのに時間が掛かればその土地は命を根こそぎ吸い取られ、不毛の大地と化す副次効果を持つ。
最も、これが扱えるのはカヤノスィノが、《息吹ノ杖/アミニズム》の製造した一族の末裔であるからであり、他の適合者では不可能だと語られてはいたが。
くっそ、これが発動される前に決着をつけたかったのによぉ!
「邪魔や!」
「うぐっ!」
「メリス! うぐっ……!」
カヤノスィノが〝
こいつは……ちょっとまずい。
ウィルディの《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》はもうほぼ無い。オレも、雷を使い過ぎかつ腹に穴が空いたせいでガタがきてる。
「案ずるな、兄上」
「だれが兄上だ」
「見ろ、奴の様子を」
「くぅぅ……! 《息吹ノ杖/アミニズム》が破損したせいか……? 動きが、鈍い……! 想定よりも大樹の流れるエネルギーも低い……!」
そこには圧倒的優位になったはずなのに、腹立たしげに必死になって植物を操るカヤノスィノ。
……本領を発揮できていないのか? でも確かに『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』で見た〝
「せやけど、問題ない。このままあんたらも潰してやるさかい!」
俺たちの方にカヤノスィノが敵意を向ける。くっ、たとえ動きが遅くてもこの状況じゃピンチなのは変わりないか……!
「そして流石だ兄上。あなたがかけた
「あぁ? ……そうかッ!」
ウィルディが腕を掲げる。
確信しているかのように。
「〝
「なあぁッ!?」
大樹の根本。
そこから沢山の有刺鉄線が現れ、カヤノスィノの〝
カヤノスィノは、あれだけの力を使うために植物を集めた。そう、あの地下で見た根っこもだ。
そしてあの時、地下洞窟でやっておいた《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》の保険が役に立ったのか!
「とはいえ長くは持たないだろう。一気呵成に攻めて、決着をつける! メリス、まだ動けるな!」
「いつつ……当然。てか、あとでゲドウのこと兄上って言ってること、教えてもらうから!」
「よし、行くぞ!」
そのままウィルディとメリスはカヤノスィノに向けて突貫する。
オレは腹の負傷が大きすぎて、それについていけなかった。……だが、できることはある。
「舐めるなやぁ! こっちに来るというのなら、全部削り切ってやるさかい!」
カヤノスィノが吼える。
〝
「まかせて! 〝
そしてそれをメリスが纏った〝
しかしカヤノスィノは動じない。
「いまや」
二人の周辺から巨大な根っこが現れた。不意を打つように現れた根っこを二人は回避しようとする。だが、それはダメだ。躱す先は、どこも植物だらけ。カヤノスィノのことだ、絶対に罠を仕掛けている。
なら、二人が進めるようにすれば良い。
「構うな、進めェッ! 〝雷導〟ォッ!!!」
「ぎゃあぁぁぁッッッ!!?」
オレは腹の傷も厭わずに雷を放った。
稲妻が迸り、雷がカヤノスィノが生み出した根っこを焼き焦がす。それだけにとどまらず、大樹本体にも直撃した。樹々の至る所から黒煙があがり、焦げ臭い匂いが充満する。
そして二人はオレの言葉を信じて前に進んでいた。おかげでカヤノスィノの大樹の元まで辿り着く。
「はあぁぁッ!」
「うぉぉぉッ!」
メリスは〝
ウィルディは《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》の武装で斬りつけながら。
カヤノスィノの元まで駆け上がっていく。
「まだや! まだ……! 妾は! 先祖の怨みを! 帝国への復讐を! こんなところで、死ねるかぁ!」
パキパキと枯れ木のように〝
そのまま無理矢理身体を動かし、大樹を操作して接近する二人を阻もうとするが、再びオレが雷を放つことでそれを阻害した。
カヤノスィノが忌々しげにオレを睨んだ。
「こ、の猿めぇぇ! この、程度で尊き血を引く妾を殺せると思ったんかぁっ!? 自惚れるなやぁ! このまま巨木で叩き潰してやるさかい!」
「はぁ、はぁ。いいや、アンタにトドメを刺すのはオレじゃねぇ。もっとふさわしい人がいる」
オレは痛みで頭がクラクラし、口から血を流しつつカヤノスィノに向けて中指を立てた。
ウィルディがたどり着いた。
自身の身に纏う《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》全てを使い、銃を造り上げる。普通の銃よりも大きい。そしてそこに込められた弾丸は、これまで弄ばれた自身の怒りと部下の無念を込めたもの。
「〝
放たれた弾丸が、カヤノスィノを貫いた。
だが。
ぼっ、と人体を貫いたとは思えない音が鳴る。
バサバサと、カヤノスィノの姿が葉っぱに変化する。あの時と同じ、擬態だった。
「はぁ、はぁ……! くすくすくす、空中で無防備やなぁ? このまま貫いたる!」
そしてわずかにズレた位置にいたカヤノスィノが嘲笑いながら、ウィルディに向けてトドメを刺そうとする。
ウィルディはかわせない。オレの雷も限界だ。
負ける。
もっとも、それが
「くらえッ!」
カヤノスィノの背後に辿り着いたメリスが〝
〝
「あぁ……」
カヤノスィノが呟く。
無念さを滲ませた吐息だった。
「妾の夢が終わる……、一族の無念も晴らせずに。だが、もう片方の夢は叶う。弱肉強食、自然への回帰……妾の血肉を糧にまた新たな生命が生まれる。なら、これほど嬉しいことはあらへんわ……」
〝
カヤノスィノの身体が燃えていく。黒い炎に包まれて。
やがて杖が堕ちた。
それはさながら彼女の墓標のように地面に突き刺さった。
ここにて『
「よくやってくれた。おかげでカヤノスィノを討つことができた。私一人の力じゃできなかっただろう。改めて礼を言う」
「あ、そうだ! ねぇ、あなた。ゲドウを兄上ってどういう……!?」
「なっ!?」
そう言って戻ってきたウィルディを見て、オレもメリスも絶句する。
さて、思い出してもらいたい。
ウィルディはその身に纏う《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》を、全て一発の弾丸として使い切った。そして、ウィルディの衣装は地下洞窟に落下した際にほぼ衣服を脱ぎ去り、オレの上着と僅かな鎧のみを身に纏っていたこと。
問い:《戦装銃刃/メタリック・アーマメント》を使い切ったウィルディの格好は?
答え:全裸である。
「ん? …………〜〜〜〜ッッッ!!!!?」
声にならない悲鳴がカンネビュラ大樹海に木霊した。