拾ったのは、外伝ゲームの主人公でした   作:異星人アリエン

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第57話

 

 一連の騒動の決着はついた。

 

 だが、その後の後始末はどれもこれも大変だった。

 

 まず最初に、カヤノスィノに囚われていた人々のことだ。

 

 肉体的に傷はなかったのだが、幻覚作用のある植物でも嗅がされたせいか虚脱症状に悩まされていた。中には、もう一度見せられていた世界(げんかく)に戻せと騒ぐ者もいた。そのため、治療も手間取っているらしい。

 

 更には回収した《息吹ノ杖/アニミズム》の管理。

 

 半壊してしまったが、それでもカエレスティス帝国の誇る至高の武具、輝征装(エアラリス)である。

 

 悩んでいた所、メリスの所属する《特務兵装開発部(アルカナム)》に一先ず送ることに決めた。一部の兵士を割き、護衛にする。無論、それにはメリスも一緒となった。

 メリスは『折角来たのにもう帰れって酷い。ゲドウにとってわたしは都合の良い女なんだ』と文句を言われた。なんでそんな言葉知ってるんだよオメェ。

 とりあえず、〝走行騎ケブラー〟でセレスティアラに向けて先ぶれを出すらしい。あ、そうそうメリスは本格的な移送が始まるまでの間に、〝走行騎ケブラー〟を壊したことについて反省文を書かされていた。

 

 まぁ、戦闘でならともかくメリスが途中空中で乗り捨てたせいだしな……。

 

 あとは亡くなった兵士達の埋葬や負傷者の手当て。

 因みにカヤノスィノが〝森羅の母樹(ヤマツミノミコト)〟で大地の栄養を根こそぎ土地吸い尽くしたせいで、今カンネビュラ大樹海では樹々が枯れ果てた大きな空白地帯が出来てしまった。

 

 そのせいで晶獣も縄張りが変動し、パイオニア駐屯地に攻めてくる割合が増えた。当然、それを迎撃しなければならねぇ。

 

 なんだったら、カヤノスィノの件が解決した後の方が面倒だった。

 

 そしてそれらの責任者は無論、全てウィルディである。

 

 まぁガメツイ将軍含めて、上層部軒並み壊滅したから仕方ないのだがそれにしたって過重労働にもほどがある。しかし、ウィルディはその全ての指揮をとった。

 本人だって負傷をしていたり、ルルカたち部下の様子が気がかりだろうに。責任感が強い人だ。

 

 とはいえである。

 

 人間である以上、気を張り詰め続けるのは不可能だ。ずっとそのままでは必ずどこかで綻びが出る。ウィルディが倒れれば今度こそパイオニア駐屯地は機能不全に陥る。

 

 なので意図的に気を抜く時間がわずかでも必要だ。

 

 で、だ。本人にとってそんな時間だってのが……。

 

「もう疲れたよ〜、兄上。どいつもこいつも騒ぐだけのボンクラばっかり。そんな相手に気を遣わなきゃいけないし、残っている兵士はアスデブリの方が戦えるのに文句を言う連中ばっかりだし、もうやだよぉ」

「お、おぉ、それでも放り出さないんだろ? ならやっぱり、ウィルディ隊長は真面目で素晴らしい人間だと思うぜ」

「ウィルディで良いの! 前にそう言ったでしょう? はい復唱!」

「ウィ、ウィルディ……」

「んふふ、兄上〜。褒めて〜、よしよしして〜」

 

 なぜかオレの部屋に来てオレと戯れることだった。

 

 今もウィルディはオレの膝元ですっぽり収まるように座っている上に、頭を撫でてくるのを要求してくる。そして撫でると嬉しそうに微笑む。

 

 なんかすごい幼児退行している。

 

 あの厳正で皆の憧れていたウィルディ・バレットリガーはどこへ? そもそも、兄上ってなんだよ。

 

「あの、ウィルディ。オレが兄上って言うのは……」

「ん? 兄上は兄上なのだから何も問題ないだろう?」

 

 大アリだよ。

 

 アスデブリを兄と慕う様子を見られたら、ウィルディのキャリアが一瞬で崩れ去るわ。

 

 オレが口元をモゴモゴしているのを見ると、ウィルディはふと何かに気付いたようにこちらを見上げ──

 

「それともこう言った方が好みかな? おにいちゃん」

 

 瞬間、オレの脳内が弾けた。

 

 そこにいたのはオレの後をついて回るウィルディの姿。

 

 このクソッタレな『リベリオン/戦禍の夜明け』の世界。いつとも気が抜けぬ日々を、癒してくれていた清涼剤、それがウィルディだ。

 

 そうか。

 

 そうだったのか。

 

「オレには妹がいたのか……!」

 

「何バカなこと言っているの」

 

 こちらを心底呆れた声色でツッコミを入れてくるのはメリスだった。

 

 メリスは扉をきちんと閉めると、つかつかとウィルディの元にやってくる。

 

「はい、これ! ちゃんと書き終えたから見て!」

 

「む? あぁ、反省文か。確認しよう」

 

 〝走行騎ケブラー〟破壊の件について、メリスは反省文を書かされていたが何度もウィルディに書き直しを命じられていた。字が汚いとか、文章が変だとかで。

 

 わかる、わかるよ。オレも同じ目にあったことあるし。

 

 はたして、今回の反省文はお眼鏡にかなったらしい。

 

「……よし、良いだろう。問題無しだ」

 

「よしおわった! やっとおわった! なら、ゲドウから離れて! さっきから一人占めとかズルい!」

 

「言われずとも、もう休憩時間は終わりだ。私には他にやるべきことがたくさんあるからな。……それじゃあね、兄上。またあとで」

 

「お、おう」

 

 いつもの軍人口調に戻ったウィルディは、そのまま入れ替わりで部屋を出て行った。

 変わり身が早すぎて混乱するわ。正気なのが尚更こわい。

 

 そして入れ替わるようにメリスのやつ、ウィルディがさっきまで座っていた場所に当然のように占領してきた。

 

 なに? オレの膝元人気スポットか何かなの?

 

 てか、メリスはウィルディと違いオレの方を向いて座っている。ちょ、ちょっと待て。

 

「まて、この体勢は色々とまずい。反対向け反対」

 

「なにが? それよりも、傷大丈夫なの?」

 

 晶獣が晶獣が襲ってくるくらい忙しいのに、オレがこうしているのは何も暇だからじゃねぇ。カヤノスィノとの戦いでウィルディを庇い、オレが傷を負ったからだ。

 

「問題ねぇよ、だいぶ塞がっちまった」

 

 服を捲り上げる。

 脇腹には傷跡こそ残っているものの、穴はすでに塞がっていた。

 

 しかし、メリスは沈痛そうにオレの傷跡を触れる。

 

「…………雷の痕、増えてる」

 

「しょうがねぇだろ、あそこでは無茶するしかなかったんだからよ」

 

 雷の力を使えば使うほど星晶霊にオレの身体は近づいていく。

 かつて語った内容を、メリスは覚えていたからこそオレの現状を理解して苦しそうな顔をしたのだ。

 

 オレは安心させるために、メリスの頭に手を置く。

 

「心配すんな、オレはまだここに居る。まだ消える予定はねぇよ」

 

「ん……、こんなので誤魔化されないよ。そもそもこれ、さっきウィルディさんにもしたでしょ。慰めるなら、もっとちゃんとして」

 

「あぁ? どうしろってんだ?」

 

「ん」

 

 メリスが手を広げてくる。

 

 抱きつけってか!? うそだろ、おい。てか、オレが心配されていたはずなのに、なんでオレが慰める側になってんだよ。

 

 だが、メリスに心配かけたのも、そして彼女が来てくれたからこそカヤノスィノを倒せたのも事実だ。なら、褒美をやらねぇとダメか。こんな顔の悪い男に抱きつかれることの、何が褒美になるのかわからんが。

 

「ほらよ、これで満足か?」

 

 オレは軽くメリスの肩を抱きしめる。

 メリスは何も言わずに、オレの背中に手を回してきた。……小さくて細い身体だ。こんな華奢な少女なのに、『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』のルートによっては帝国を滅ぼすとか信じられねぇよな。

 

 とりあえず、今はメリスの成長を見守ろう。

 〝不滅の魔焔(アグリアル)〟を使えるようになった以上、これまで以上に《悪魔の心臓/デモゴルゴン》に馴染んだはずだ。何が起きてからじゃ、遅い。

 

 だから……ん? なんかメリスの身体が震えてないか? 鼻息も荒い気が……。

 

「ふ、ふふ、ふひ。ゲドウが、あのゲドウがわたしを抱き寄せた。ねぇ、これってもう良いってことだよね? ねぇ、ゲドウ。わたし強くなったよ。ゲドウに追いつけるように。だから、だからさ、もう良いよね? ね?」

 

「あ、ちょ、メ、メリス? メリスさん!!? い、いやあぁぁぁぁ!!!」

 

「おい、よく見たらこれ《特務兵装開発部(アルカナム)》からの承認の判子をもらってないではないか。いますぐに……貴様ァッ! 兄上になにをしている!!?」

 

 その後、戻ってきたウィルディと共にキャットファイトが繰り広げられるのだった。オレの貞操は、守られたのだ。

 

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