拾ったのは、外伝ゲームの主人公でした   作:異星人アリエン

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エピローグ 仲間として認めよう

 

 いまだにパイオニア駐屯地の復興は遅々として進まない。

 

 傷が塞がったオレも復興に参加していた。

 

 パイオニア駐屯地に張り巡らせられた植物の撤去は、まだまだ先が見えない。だが、働いているアスデブリたちの表情は明るかった。

 

「──それでニェーニと名乗った人が我々の活躍を報告してくださった。それでウィルディ・バレットリガーが我々に異例の報奨金を出してくださると確約してくれた」

「ほぉ〜ん、そりゃよかったな」

 

 そうオレに語るのはハゲ頭が特徴的な強面、バレルだ。

 普段よりもよく喋っているのは、それだけ興奮している表れだろう。

 

「ニェーニ・フラグラッシャー。あの人は強い。流石は輝征装(エアラリス)を扱える《天刑護騎士(アストロノーツ)》なだけある」

「そう……か? うん、そうだな、うん」

 

 正直、ニェーニが強い印象はあまりないのだが。

 

 けど『キュクレウスの眼』の時もそれなりに活躍してたし、やっぱり強いんだよな。

 

「も〜! ここら辺植物多すぎよぉ! 刈っても刈っても終わらないじゃない! って、にぇ!?」

 

「ニェ、ニェーニさん!?」

 

「大丈夫っすか!?」

 

「あ〜……、放っておいて良いよ。いつものことだから」

 

 視線を向ければ、復興を手伝っていたニェーニが足を取られ、ずっこけたところだった。周囲のアスデブリは心配しているが、メリスは気にも止めていなかった。

 

 なにやってるんだ、アイツら。

 

 とにかく、アスデブリ間に漂う雰囲気は良いものだった。一方で、憂鬱な表情でそれを受け取っている者がいた。

 

 リグだ。

 

 リグは今回の襲撃で亡くなったアスデブリたちの共同墓地の前で、一人佇んでいた。

 

 オレはバレルと目を合わせる。バレルは何も言わずに、他のところに歩いていった。気がきくやつだ。

 

「おう、どうしたんだよ?」

 

「ゲドウのアニキ……」

 

 オレはわざと明るく話しかける。

 リグは隈のある顔でこちらを見てきた。

 

「……いえ、どうして自分なのかと思っていまして」

 

「あん?」

 

「自分よりも、ライフの方が強かったです。本当なら彼こそが、報奨金を受け取るべきでした。なのに、自分を庇って……」

 

 ぐっ、と拳を握りしめる。

 こいつは今、苛まれている。生き残ってしまったことに。なら、オレが言えることは一つだけだ。

 

「忘れてやるな」

 

「え?」

 

「オメェが何を思おうが、もうライフはいねぇ。他の仲間たちもだ。言葉を交わすこともできねぇ。それでもオレらは生きていくしかねぇんだよ」

 

「……」

 

背負うな(・・・・)とも、気負うな(・・・・)ともオレは言わねぇ。ただ、忘れん(・・・)じゃねぇ(・・・・)。アイツが生きた証を受け継げるのはオメェだ。死ぬまで生きて足掻いて……、そしてまた誰かに自分の生きた証を受け継がせていけ。オレらアスデブリは、命が軽いんだからよ」

 

 この戦いでライフを筆頭に多くの顔見知りが死んだ。

 

 カヤノスィノを倒したところで彼らが帰ってくることはない。それでも、オレはケジメをつけた。そして、彼らがここにいたことを忘れずに生きていく。それだけだ。

 

「そう……ですね。ライフを、彼らを覚えておけるのは自分たちだけなのですから。そうしようと思います」

 

「おう、それが良いぜ。少なくとも、報奨金をパーっと使って酒を飲んで騒ごうと話している連中よりは、数段マシだ」

 

「報奨金ですか。そういえば、アニキは、何か使い道を考えたのですか?」

 

「あん? そりゃオメェ、献花を買うんだよ」

 

 正直カヤノスィノのおかげで植物に良い思い出はないが、それでもオレは亡くなったアスデブリ(仲間)に捧げようと思っていた。

 

 それが弔いだからだ。

 

 オレの言葉を聞いたリグはキョトンとし、笑う。

 

「……アニキに花とか似合わないですね」

 

「うっせぇ、ほっとけ」

 

「でも、付き合わせてください。自分も、花を捧げたいと思います」

 

 そう言ってリグは、やっと久方ぶりに笑ったのだった。

 

 

 

 アスデブリの仲間が死んだのは、初めてじゃねぇ。

 

 でも、オレはオメェらと一緒にいたことを、馬鹿騒ぎをしたことを忘れねぇよ。

 

 だから……安心して眠れ。

 

 

 

 

 アスデブリたちとの会話はなんとかなった。

 だがオレはいまだに一つだけ、悩みがあった。

 

「どうすっかなぁ……」

 

 ひとり呟く。

 いつかはしなくちゃいけないことだが、オレはずっと避けていた。どうしたものかと、悩む。

 

「此処にいたのか」

 

 そこに話しかけてきたのは、ウィルディ。そしてルルカを筆頭としたその部下達。オレが悩んでいた種の連中がそこにいた。

 

 そうバレットリガー隊の面々は、ウィルディはともかく、全員がいたるところを怪我しているため、包帯が巻かれていた。

 

「随分と探したぞ。まったく、なぜ部下たちから逃げるような真似をする」

 

「そりゃ、あわせる顔がねぇからな。あたりめぇだろ」

 

「犯罪者みたいな顔してるもんね」

 

「………………」

 

「ルルカ、いまはいじってやるな」

 

 いたたまれない空気になるのやめて。

 

「それで? なぜ逃げ回っていた? まぁ、おおよその理由はわかるけどな」

 

 ウィルディがこちらを見てくる。バレットリガー隊の面々もだ。え、オレこの空気の中理由を語らなきゃダメなのか? 恥ずかしいんだが。

 

 仕方ねぇ、話すしかないか。

 

「……オレはアンタ達に、一生消えない傷跡を与えてしまった」

 

 植物によって操られているルルカたちを助けるために、オレは雷撃を放った。

 

 それによって植物の侵食からは解放された。それは良い。だが、その際に人体に迸った雷の傷痕、オレと同じような電紋が身体に刻まれた。それは、今後の人生において大きな影響を及ぼすだろう。

 

 だからオレは顔を合わせることができなかった。恨んでいるだろうと思ったからだ。それが最善だとわかっているが、感情は別だからだ。

 

「あぁ、これか。確かに随分と目立つな」

 

 最初に反応したのは、バレットリガー隊と最初に行動を共にした際に鳥からの糞によって寄生されかけた兵士だった。

 

「だが、そのことは誰も気にしていない」

 

「なに? そんなことは……」

 

「ほんとうさ。我々の顔を見てみろ」

 

 他の面々の顔を見る。

 誰一人としてオレに恨みを抱いているような表情ではなかった。

 

「これはアンタとの友情の証さ」

 

「アンタが雷を放ってくれなきゃ、俺ら死んでいたしな」

 

「だから、感謝こそすれども恨む事はない」

 

「そのとおーり! 助けてくれたお礼に、ルルカちゃんのファン1号の名誉を進呈してしんぜよう!」

 

 一番肌に傷を気にしてきそうなルルカですら、まったく気にした様子はなかった。むしろ、雷の傷痕を誇らしげにこちらに見せてくる。

 

 ……あぁ、そうか。

 どうやらオレの心配は杞憂だったというわけか。

 

 ウィルディはかすかに笑みを浮かべる。

 

「意外と図体の割に、臆病なところがあるな」

 

「うぐっ、そ、そんなことは……あるか」

 

「ふふっ、可愛らしい面だ。それで皆と会話した結果、決めたことがある」

 

 そういってウィルディが取り出したのは、槍の描かれたワッペン。

 

「随分と遅れてしまったが、ゲドウ・マルドラーク。貴様を我々の正式な仲間だと認めよう。これはその証だ」

 

 カエルム人の兵士たちが、アスデブリを認めることは基本的にない。

 

 だがウィルディはオレに部隊章を渡してきた。

 

 それはつまり、最大限の信頼ということだ。こんなこと、『リベリオン/戦禍の夜明け』に転生してからなかった。

 

 不思議と胸が熱くなった。

 

 個人間で認めてくれた人は何人かいるが、部隊そのものに認めてもらったのは初めてのことだ。

 

「あぁ、ありがたく受け取るぜ」

 

「お? 照れてる? 照れてるよね? ゲドくんの照れ顔だ〜、わぁ、まったく可愛くないね!」

 

「うるせぇよ」

 

 オレはそれを受け取った。

 むず痒さが身体を包む。オレが照れているのがわかったルルカがいじってくる。バレットリガーの面々はそれを見て笑ったのだった。

 

「此処におられましたか」

 

 そこにひとり現れる来客者。ヴェルヌントだ。

 

 相変わらず、無表情でこちらを見ている。手には何か書状らしきものが握られていた。

 

 ……あれ、待って。

 

 すげぇ嫌な予感がする。此処に送られる時にも、ヴェルヌントから通達を渡されたのがきっかけだった。その時とまったく同じ光景な気がする。

 

「失礼。〝走行騎ケブラー〟にてセレスティアラ殿下に伝令を出したところ、返答がすぐに来ましたので伝えに参りました」

 

 ヴェルヌントが書状を広げる。

 

「第二皇女セレスティアラ様より通達です。あの、此度の件についての詳細な報告を求む。よってゲドウ・マルドラークは速やかに天都(・・)に戻るべしと」

 

 あの性悪宰相めー!!?

 

 その通告に、周囲が騒つく。流石に帝国の第二皇女、《帝国宰相》が一アスデブリにこのようなことを言ってくるとは思わなかったのだろう。

 

 それはウィルディも同じなようで、珍しく目を丸くしていた。

 

「セレスティアラ殿下の指示ならば仕方ない。帝国において皇族の命は絶対だ。従うほかないだろう」

 

「えー、もうお別れー? まだ、ルルカちゃんを可愛いってその口で言わせてないのにー!」

 

 不貞腐れるルルカとは裏腹に、ウィルディは静かに受け止めていた。

 

 意外だ。

 

 オレのことを勝手に兄上とか呼ぶから動揺するかと思ったが。他人がいる前だと以前のウィルディのままなのが、逆にこわいな。

 

「忘れるな。例えどれだけ離れようとも、お前と我々は戦友だ。次会う時を楽しみにしている」

 

「ウィルディ隊長……」

 

「総員、我らが戦友に敬礼ッ!」

 

 ウィルディの言葉に、バレットリガー隊は一糸乱れぬ敬礼をしてきた。

 

「餞別だ。もう一つの我々の部隊の証であるこの軍帽をくれてやる。かがめ」

 

 ウィルディの言葉通り、軽く屈む。彼女はオレの頭に自らの軍帽を被せると同時に、オレにだけ聞こえるように近づく。

 

「またね、兄上。また会ったらウィルディのことを甘やかせてね」

 

 耳元でそう囁いた。

 

 それは、エースオブエースのウィルディ・バレットリガーではなくオレの妹を自称する女の顔だった。

 

 こわい。

 

 ねっとりと、纏わりつくような視線でオレを見てくる。

 

 側から見れば理想の上官なのに、他の部下の面々が見えない箇所でこうしたことをしてくるの、正気と狂気がコインの裏表みたいにひっくり返るみたいですごくこわい。

 

 でも、断るのも怖かったオレは怯えをおくびにも出さずに頷いた。それを見てウィルディは嬉しそうに頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ、結局オレも一緒にオメェらと戻ることになったわ」

 

「あら、そうなの? ふっふーん、ならこのニェーニの活躍を聞かせてあげるわ! 光栄に思いなさい!」

 

 そのままヴェルヌントと一緒に《特務兵装開発部(アルカナム)》の面々と合流すると、ニェーニがドヤ顔でそう宣ってきた。相変わらず変わらないやつだな。

 

 そのままつらつらと自らの活躍を語り出すニェーニの言葉を右から左に流しつつ、オレはもらったワッペンを見る。

 

 ……新しい居場所ができたな。

 

「……ゲドウ、すごく嬉しそうな顔してる。その軍帽も、あの人の匂いがする。どういうこと?」

 

 途中、合流してきたメリスにジト目で見られつつも、オレは短くも太い経験を過ごしたパイオニア駐屯地を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 向かう先は、天都。

 

 カエレスティス帝国の中枢。

 

 

 

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