拾ったのは、外伝ゲームの主人公でした   作:異星人アリエン

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第63話

 

「やっと来たわ! 天都に来るのは《天刑護騎士(アストロノーツ)》の就任以来だわ!」

 

 やたらとテンションの高いニェーニ。

 その横でメリスが難しい顔をしている。

 

「んー……」

 

「どうした?」

 

「うん、世界屈指の帝国の割にはなんか防衛設備があまり厚くないなって。もちろん、あの城壁はすごいけど」

 

 確かにぐるっと囲む堅牢な城壁はすごいが、

 

「確かに防衛設備はそれなりだけど、それは経済・物流の中枢としての機能を優先したからよ! ここに近づくには数多ある砦や都市を越えなきゃいけないし、いざとなれば《天都直参防衛軍(カーマンライン)》もいるしね!」

 

「《天都直参防衛軍(カーマンライン)》? どこかで聞いたことがあるような……」

 

 メリスが疑問符を浮かべる。

 それに御者側の窓の隙間から、ヴェルヌントが答えた。

 

「いわゆる天都防衛の為だけの部隊です。《四軸将軍(グランドクロス)》のように他国へと侵攻するための組織とは別ですが、その構成員も紛れもない精鋭で、輝征装(エアラリス)を持つ《天刑護騎士(アストロノーツ)》も含まれています」

「『晶獣使い』、『千里弓』、『一夜城』、『紫天蝶』、そして『天都の旗手』のジャヌ・パタパタね! 若くして輝征装(エアラリス)を持つエリートよ! ま、あたしほどじゃないけどね!」

 

「へー」

 

「なによぉ! その反応はぁ! なら、あたしの武勇伝聞かせてあげるから聞きなさいよ!」

 

 メリスの薄い反応にニェーニはぷんすこ怒る。アホ毛もピーンと!の形をしていた。そこに、くわぁとあくびをしながら起き上がったトイープが会話に入ってくる。

 

「パタパタは、初代からずっと代々輝征装(エアラリス)を継ぐ家系だからねぇ。その人気ぶりは押して測るべしだよぉ」

 

「え? 輝征装(エアラリス)って、相性があるのでしょ? 継いでいくことができるの?」

 

 メリスの言葉に、トイープがキュピーンと目を光らせた。

 

「そう! そこなんだよぉ! 輝征装(エアラリス)は人種を問わずして、適合した者のみが使える至高の兵装! だが、それ故に使える人材はバラバラ、まるで傾向がない。しかして、実際にパタパタともう一つの一族(・・・・・・・)は、それぞれ歴代輝征装(エアラリス)を引き継ぎ続けている! これはとても不思議なことで、《特務兵装開発部(アルカナム)》も《国家機密研究局(ゲマトリア)》も《レイ=スペクトル工廠》も、その叡智を結集して解明しようとしてるが出来なくてねぇ。ぼくの中じゃ、輝征装(エアラリス)内部にある《霊耀晶(マテリアルーツ)》が適応者の血筋に反応している説をあげていて──」

 

「おい、機密情報漏らし過ぎだろ」

 

「そうですね。締めましょう」

 

「きゅっ」

 

 ヴェルヌントにヘッドロックされたトイープが、かくんと気絶する。なんか締められた兎みてーな声出してたな。

 

「《国家機密研究局(ゲマトリア)》……」

 

「ねぇ、ほんとうに聞いてる? そろそろあたし泣いちゃいそうなんだけど。心にふかい傷ができそうなんだけど」

 

 《国家機密研究局(ゲマトリア)》の言葉を聞いて、メリスが複雑な表情を浮かべた。その隣でニェーニが涙目になっていた。

 

 やがて遂にオレたちは天都、その入り口に辿り着いた。

 そこは凄まじい人の数だった。城門前で中に入るための検査待ちの人でごった返している。

 

「止まれ! 何用でここに参られた!?」

 

「失礼。我々はこういう者です」

 

「これは……! 失礼致しました! どうぞ、お進みください!」

 

 並ぶ人々を他所に、オレたちは兵士に止められはしたがヴェルヌントが《特務兵装開発部(アルカナム)》の証を見せるとすぐに通してもらえた。すげぇ、中を確認すらしなかったぞ。アスデブリのオレがいるのに。

 

 改めて第二皇女直轄の組織であるという、特権階級にあることをひしひしと感じる。なんだか遠いところに来たみたいだ。この世界に転生した頃の、死が身近にあった頃とは大違いだぜ。

 

 これも全て外伝ゲームの主人公である、メリスと出会ってからだ。

 

「なにゲドウ、じっと見て? ……はっ、もしかして見惚れてる? ゲドウが見たいなら、もっと見ても良いよ。それこそ、もっと深い(・・)ところまで」

 

「あほか、そんなわけねぇだろ」

 

「むぅ……」

 

 メリスが顔を不満そうにしかめた。

 

 その間もオレたちは城壁の中を通っていく。

 

 やがて陽の光と共に広がったのはこれまで訪れたどの統治領(コルニア)よりも……、いや前世を含めてもそう見られることのない光景が広がっていた。

 

 色鮮やかな建造物の数々に、豊かさを表すように並ぶ露店。

 

 地面だってきちんと地均しされた上に、白い石畳が敷き詰められている。ここに来るまでは晶獣車は結構揺れたのに、僅かな揺れすらなくなった。

 

 更に目に引くのは、《霊耀晶(マテリアルーツ)》や《エーテル水晶》を利用した設備だ。統治領(コルニア)では一生目にすることのできねぇ代物ばかりだ。

 

 当然そこに住んでいるカエルム人の表情は明るい。四方を敵に囲まれているのに、戦争の気配すらこの天都にはない。繁栄を謳歌していた。

 

 ……まぁ、その実態は統治領(コルニア)から搾り取ったモノによるものだがな。これを維持するのに、どれだけの血と涙が統治領(コルニア)で流れたことやら。

 

 そして一際目立つのは、天都で最も高い建造物。皇族が住まう天空(ウラノス)城。

 

 その周りをまるで、惑星の軌道図のように大小様々な円形のレールが伸び、天都の様々なところに突き刺さっている。『リベリオン/戦禍の夜明け』でも見たが、相変わらずデザイン優先でよくわからん造形だな、あれ。

 

 一応、大地に接続することで地に流れる霊脈のエネルギーを天空(ウラノス)城に集めるという設定があるが……、いや普通に暮らすとなると怖いわ。折れて頭上から落ちてきそう。てか、実際に決戦時に折られたし。

 

「これが……天都……! うっ……!」

 

「どうした、大丈夫か?」

 

「《悪魔の心臓/デモゴルゴン》が痛んで……」

 

 天都を見ていたメリスが、突然胸を抑える。その顔は歪み、額に汗を流している。そしてその理由は《悪魔の心臓/デモゴルゴン》にあるらしい。

 

「……一応聞くが、制御はできているんだよな?」

 

 『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』で、メリスが天都で《悪魔の心臓/デモゴルゴン》に乗っ取られることはある。ただし、それはBAD END限定で、しかも死ぬのが確定している。

 

 まぁ、こんな敵地のど真ん中で暴走したら輝征装(エアラリス)使いから、袋叩きに合うわな。

 

 唯一天都で《悪魔の心臓/デモゴルゴン》に乗っ取られようと死なないのは、革命軍、帝国を皆殺しにする《人類の悪魔》ルートだけだ。

 

 赤く染まった空で狂気を浮かべながら笑う様子のイベントCGは、怖くもあり美しくもあった。

 

 まぁ、今そんなことになったら洒落にならないが。恐る恐る聞くオレに、メリスは胸元を押さえつつ答える。

 

「うん、大丈夫。疼いているけど……《嘯き欺く悪魔獣(デミウルゴス)》も抑えてくれているから。かなり悪趣味ーだとか、相変わらずあけすけに財を見せつけてきて腹立つー、とかは言ってるけど」

 

「お、おぉ。そうか。なんか、かなり距離が近付いてねぇか?」

 

 どうにもメリスの表情を見るに、制御するための道具ではなく、友達みたいに語っている。オレの疑問が顔に出ていたのか、メリスがわざとらしく自らの唇に人差し指を当てる。

 

「カヤノスィノとの戦いで色々あったの。ゲドウにはまだ秘密ね? 《嘯き欺く悪魔獣(デミウルゴス)》も語って欲しくないっぽいし、そもそもゲドウにおびえ……あついあつい!!? ごめんって!」

 

「ちょっとー!? 急に暴れないで、にぇっ!?」

 

 赤く発光した《悪魔の心臓/デモゴルゴン》にメリスが悶え、それに巻き込まれてニェーニが頭を打った。かわいそうに……。

 

 てか、そんなに仲良く……仲良くだよな? 《悪魔の心臓/デモゴルゴン》の素材元である《嘯き欺く悪魔獣(デミウルゴス)》となったのか。

 

 オレ、《嘯き欺く悪魔獣(デミウルゴス)》のことおおまかな内容しか知らないんだよな。

 

 『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』の説明でも、かつて帝国に討ち倒された危険な晶獣で、主人公であるメリスの身体を自らの復活の為の器として、狙っているとしか描かれてなかったし。

 まぁ、害が無いなら良いか。

 

 そしてオレたちは、天空(ウラノス)城に着いたのだが……。

 

「申し訳ないですが、アスデブリを入れるわけにはいきませぬ」

 

 城を守る兵士に止められていた。

 

 ……隣にいるメリスが殺しそうな目で見てるんだが、どうしよう。

 

「いかなる理由があろうとも、我々帝国の象徴である天空(ウラノス)城にアスデブリを入れるなどと、認められません。お引き取りください」

 

 城を守っている衛兵。帝国でも精鋭のカエルム人が、繰り返し言葉を述べる。

 

「我々、《特務兵装開発部(アルカナム)》ですが、セレスティアラ様からの指示で参りました。アスデブリであるゲドウ氏も、その対象に入られております。彼を連れていかねば、セレスティアラ様からの命に背くこととなります」

 

「第二皇女セレスティアラ様であろうとも、《天帝》オブビリオン様が許可されていない以上、認めることはできません」

 

 ヴェルヌントの言葉にも、にべもない返答。

 この城に勤める衛兵は、第三皇女ルドミラーシャの《ゼニスフィア親衛隊》以外は全て《天帝》を頂点とした組織体制なので、第二皇女セレスティアラであろうとも、おいそれと命令できない。

 

 なので、衛兵からの言葉も当然である。だが、それに納得できるかと言えばそうでもないわけで。

 

「あいつら、百発殴っても良い?」

 

「殺す気かよ」

 

「うん」

 

「即答すんじゃねぇよ」

 

 そこは否定する流れだっただろ。

 やめろよ、実力的には余裕だろうけどそれをしたらBAD END一直線だわ。

 

「ま、道理だな。アスデブリのオレが入れるはずがねぇ。オレは外で待ってるぜ」

 

 メリスは憤っていたが、オレとしては願ったり叶ったりだ。

 

 よっしゃ、これで城に入らないですむ理由ができた! 入った所で、嫌な思いしかしないだろうから万々歳だ。特に他の皇族……第三皇子ヌービルムか第五皇子シャヨウに会おうものなら、どんな目に合うかわかったもんじゃねぇしな。

 

「あぁ、いたいた。予定より遅刻ですよ」

 

 そこに現れたのはセレスティアラの側近、サラだった。

 

 相変わらず、首元からポニーテールが犬の尻尾のように歩くたびに揺れている。

 

「《特務兵装開発部(アルカナム)》の皆さん、はやくこっちに来てください」

 

「そうは言われてもねぇ。見ての通り止められてるのだよぉ?」

 

「なに言ってるんですか?」

 

 トイープの言葉にサラが呆れた顔をする。

 

「殿下は今、離宮にいます。そう、たまたま(・・・・)外せない仕事があったので。なので、そちらから離宮に来るようにとのことです」

 

 サボれると思ったが、そうは問屋がおろさないですよね。

 

 わかってたよ、くそが!

 

 元々これを狙っていやがったな。確かにそれなら、他のカエルム人の顰蹙を買い辛いわ。相変わらず知恵が回ってやがる。

 

「ねぇ、殿下って?」

 

「第二皇女セレスティアラだよ。さっきから言ってたけど、今から会いに行くの」

 

「にぇっ!!? あ、あたし輝征装(エアラリス)の護送としか聞いていないんだけど!!? 会うの!? 皇族に!? うそでしょ!?」

 

 そしてニェーニは何も聞かされていなかったらしい。メリスの言葉に、わたわたと慌て始めるのだった。

 

 

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