「やっと来たわ! 天都に来るのは《
やたらとテンションの高いニェーニ。
その横でメリスが難しい顔をしている。
「んー……」
「どうした?」
「うん、世界屈指の帝国の割にはなんか防衛設備があまり厚くないなって。もちろん、あの城壁はすごいけど」
確かにぐるっと囲む堅牢な城壁はすごいが、
「確かに防衛設備はそれなりだけど、それは経済・物流の中枢としての機能を優先したからよ! ここに近づくには数多ある砦や都市を越えなきゃいけないし、いざとなれば《
「《
メリスが疑問符を浮かべる。
それに御者側の窓の隙間から、ヴェルヌントが答えた。
「いわゆる天都防衛の為だけの部隊です。《
「『晶獣使い』、『千里弓』、『一夜城』、『紫天蝶』、そして『天都の旗手』のジャヌ・パタパタね! 若くして
「へー」
「なによぉ! その反応はぁ! なら、あたしの武勇伝聞かせてあげるから聞きなさいよ!」
メリスの薄い反応にニェーニはぷんすこ怒る。アホ毛もピーンと!の形をしていた。そこに、くわぁとあくびをしながら起き上がったトイープが会話に入ってくる。
「パタパタは、初代からずっと代々
「え?
メリスの言葉に、トイープがキュピーンと目を光らせた。
「そう! そこなんだよぉ!
「おい、機密情報漏らし過ぎだろ」
「そうですね。締めましょう」
「きゅっ」
ヴェルヌントにヘッドロックされたトイープが、かくんと気絶する。なんか締められた兎みてーな声出してたな。
「《
「ねぇ、ほんとうに聞いてる? そろそろあたし泣いちゃいそうなんだけど。心にふかい傷ができそうなんだけど」
《
やがて遂にオレたちは天都、その入り口に辿り着いた。
そこは凄まじい人の数だった。城門前で中に入るための検査待ちの人でごった返している。
「止まれ! 何用でここに参られた!?」
「失礼。我々はこういう者です」
「これは……! 失礼致しました! どうぞ、お進みください!」
並ぶ人々を他所に、オレたちは兵士に止められはしたがヴェルヌントが《
改めて第二皇女直轄の組織であるという、特権階級にあることをひしひしと感じる。なんだか遠いところに来たみたいだ。この世界に転生した頃の、死が身近にあった頃とは大違いだぜ。
これも全て外伝ゲームの主人公である、メリスと出会ってからだ。
「なにゲドウ、じっと見て? ……はっ、もしかして見惚れてる? ゲドウが見たいなら、もっと見ても良いよ。それこそ、もっと
「あほか、そんなわけねぇだろ」
「むぅ……」
メリスが顔を不満そうにしかめた。
その間もオレたちは城壁の中を通っていく。
やがて陽の光と共に広がったのはこれまで訪れたどの
色鮮やかな建造物の数々に、豊かさを表すように並ぶ露店。
地面だってきちんと地均しされた上に、白い石畳が敷き詰められている。ここに来るまでは晶獣車は結構揺れたのに、僅かな揺れすらなくなった。
更に目に引くのは、《
当然そこに住んでいるカエルム人の表情は明るい。四方を敵に囲まれているのに、戦争の気配すらこの天都にはない。繁栄を謳歌していた。
……まぁ、その実態は
そして一際目立つのは、天都で最も高い建造物。皇族が住まう
その周りをまるで、惑星の軌道図のように大小様々な円形のレールが伸び、天都の様々なところに突き刺さっている。『リベリオン/戦禍の夜明け』でも見たが、相変わらずデザイン優先でよくわからん造形だな、あれ。
一応、大地に接続することで地に流れる霊脈のエネルギーを
「これが……天都……! うっ……!」
「どうした、大丈夫か?」
「《悪魔の心臓/デモゴルゴン》が痛んで……」
天都を見ていたメリスが、突然胸を抑える。その顔は歪み、額に汗を流している。そしてその理由は《悪魔の心臓/デモゴルゴン》にあるらしい。
「……一応聞くが、制御はできているんだよな?」
『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』で、メリスが天都で《悪魔の心臓/デモゴルゴン》に乗っ取られることはある。ただし、それはBAD END限定で、しかも死ぬのが確定している。
まぁ、こんな敵地のど真ん中で暴走したら
唯一天都で《悪魔の心臓/デモゴルゴン》に乗っ取られようと死なないのは、革命軍、帝国を皆殺しにする《人類の悪魔》ルートだけだ。
赤く染まった空で狂気を浮かべながら笑う様子のイベントCGは、怖くもあり美しくもあった。
まぁ、今そんなことになったら洒落にならないが。恐る恐る聞くオレに、メリスは胸元を押さえつつ答える。
「うん、大丈夫。疼いているけど……《
「お、おぉ。そうか。なんか、かなり距離が近付いてねぇか?」
どうにもメリスの表情を見るに、制御するための道具ではなく、友達みたいに語っている。オレの疑問が顔に出ていたのか、メリスがわざとらしく自らの唇に人差し指を当てる。
「カヤノスィノとの戦いで色々あったの。ゲドウにはまだ秘密ね? 《
「ちょっとー!? 急に暴れないで、にぇっ!?」
赤く発光した《悪魔の心臓/デモゴルゴン》にメリスが悶え、それに巻き込まれてニェーニが頭を打った。かわいそうに……。
てか、そんなに仲良く……仲良くだよな? 《悪魔の心臓/デモゴルゴン》の素材元である《
オレ、《
『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』の説明でも、かつて帝国に討ち倒された危険な晶獣で、主人公であるメリスの身体を自らの復活の為の器として、狙っているとしか描かれてなかったし。
まぁ、害が無いなら良いか。
そしてオレたちは、
「申し訳ないですが、アスデブリを入れるわけにはいきませぬ」
城を守る兵士に止められていた。
……隣にいるメリスが殺しそうな目で見てるんだが、どうしよう。
「いかなる理由があろうとも、我々帝国の象徴である
城を守っている衛兵。帝国でも精鋭のカエルム人が、繰り返し言葉を述べる。
「我々、《
「第二皇女セレスティアラ様であろうとも、《天帝》オブビリオン様が許可されていない以上、認めることはできません」
ヴェルヌントの言葉にも、にべもない返答。
この城に勤める衛兵は、第三皇女ルドミラーシャの《ゼニスフィア親衛隊》以外は全て《天帝》を頂点とした組織体制なので、第二皇女セレスティアラであろうとも、おいそれと命令できない。
なので、衛兵からの言葉も当然である。だが、それに納得できるかと言えばそうでもないわけで。
「あいつら、百発殴っても良い?」
「殺す気かよ」
「うん」
「即答すんじゃねぇよ」
そこは否定する流れだっただろ。
やめろよ、実力的には余裕だろうけどそれをしたらBAD END一直線だわ。
「ま、道理だな。アスデブリのオレが入れるはずがねぇ。オレは外で待ってるぜ」
メリスは憤っていたが、オレとしては願ったり叶ったりだ。
よっしゃ、これで城に入らないですむ理由ができた! 入った所で、嫌な思いしかしないだろうから万々歳だ。特に他の皇族……第三皇子ヌービルムか第五皇子シャヨウに会おうものなら、どんな目に合うかわかったもんじゃねぇしな。
「あぁ、いたいた。予定より遅刻ですよ」
そこに現れたのはセレスティアラの側近、サラだった。
相変わらず、首元からポニーテールが犬の尻尾のように歩くたびに揺れている。
「《
「そうは言われてもねぇ。見ての通り止められてるのだよぉ?」
「なに言ってるんですか?」
トイープの言葉にサラが呆れた顔をする。
「殿下は今、離宮にいます。そう、
サボれると思ったが、そうは問屋がおろさないですよね。
わかってたよ、くそが!
元々これを狙っていやがったな。確かにそれなら、他のカエルム人の顰蹙を買い辛いわ。相変わらず知恵が回ってやがる。
「ねぇ、殿下って?」
「第二皇女セレスティアラだよ。さっきから言ってたけど、今から会いに行くの」
「にぇっ!!? あ、あたし
そしてニェーニは何も聞かされていなかったらしい。メリスの言葉に、わたわたと慌て始めるのだった。