拾ったのは、外伝ゲームの主人公でした   作:異星人アリエン

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初めての変身=暴走はお約束

 

「早速かよ!」

 

 初めての変身ってのは暴走がお約束だが、予想通りにメリスは暴走した。

 

「アァァァァッッッ!!!」

 

 雄叫び、襲い掛かるメリスからの一撃をオレは躱す。力に振り回されているのか、そのまま背後にあった木にぶつかる。

 

 果たしてぶつかったメリスが痛がる事はなくメキメキと、樹木の方が折れた。

 

「ひゅーっ、あれだけ勢いよくぶつかって傷一つつかないか。つくづく、輝征装(エアラリス)ってのはチートだな。オレも欲しいぜ(・・・・・・・)

 

 力に関してはやべぇな。

 

 まともに食らえばオレでも吹き飛ばされかれねぇ。

 メリスはなおも血走った目でオレへと襲い掛かる。ブンブンと振るわれる腕は当たればオレの骨を容易く持っていくだろう。

 

「力も速度も大したものだ、だがなぁ! 力に任せただけの武の心得もねぇ!」

「うがあぁぁぁぁッッッ!」

 

 暴走しているが、それはつまりあり余る力を制御出来ていないと言うことだ。その状態で暴れられようとも、動きが単調でわかりやすい。

 

 オレは余裕を持って、メリスからの攻撃を捌く。

 

「ふく……しゅうを!」

 

「あ?」

 

「ワレを、封じ、こめたッ……! 始皇帝! 裏切りぃ……者! カエレスティスゥッー! あの、黒髪の、男めェッ……!」

 

 メリスが意味不明な言葉を羅列する。だが、その端々に垣間見える言葉の意味はどれもこれも恨みがこもったものだ。

 

 これは、メリスの言葉じゃねぇ。

 

 《悪魔の心臓/デモゴルゴン》に宿っている《嘯き欺く悪魔獣(デミウルゴス)》の怨念、いや意識そのものか。

 

 都度、精神を乗っ取ろうとしている描写はあったが初の変化で此処まで同調しているとは。

 

「思ったよりも共鳴してやがる、手早く終わらせた方が良いな。……そんな《悪魔の心臓(ふう)》になってまで生きようとする執念には脱帽するぜ。だがな、その身体はメリスのもんなんでな。オメェは引っ込んでな! 〝アン・ブレイカー〟ァッ!!!」

 

「あぐあッ!!?」

 

 弱めに、雷撃を喰らわせる。

 

 うーん、やっぱ技名って良いなぁ。

 

 これまでこの力を秘匿してたからこうやって叫ぶ機会がなかったけど、気持ち良ェッ!

 

 メリスはオレの雷撃に耐えられる訳がなく身体が痙攣し、動きを止めた瞬間に背後へ回り、そのまま首を締める。

 

「かッ……、ヒュッ…………ァッ………………」

 

 痙攣で動けないメリスの体から力が抜けていく。

 

 やがて変化した姿形が元の姿に戻っていく。憎しみに染まっていた瞳の色が徐々に元の色に戻っていく。

 

 このくらいか。オレは手を離す。

 メリスはすぐさまむせながらも酸素を取り込んだ。

 

「よう。気分はどうだ?」

 

「さい……あく……。頭には、へんな声が響き渡るし……身体はそこら中痺れるように痛いし……」

 

「わりぃな。それ、オレが電流喰らわせたせいだわ」

 

「さいてい……」

 

「よく言われる」

 

 手荒だとは思う。

 

 正直時間さえあればオレはメリスを《悪魔の心臓/デモゴルゴン》を使わせるよりも先に肉体の方を鍛える方向にしていただろう。

 

 だが《国家機密研究所(ゲマトリア)》からの追手が迫っている以上、メリス自身に力をつけさせるのは急務だった。奴等は、このトリンガース区で追手との連絡が途絶えたのはじきにわかる。

 

 それに備えるにしても、普通にやっては時間がかかりすぎる。リスクを承知で、《悪魔の心臓/デモゴルゴン》を扱えるようにするしかねぇ。

 普通ならしないが、メリスは『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』の主人公。そのポテンシャルに賭ける。

 

「さて、もう一度やってみろ」

 

「はぁ……っ、はぁ……っ! ちょ、ちょっとは休ませてよッ……」

 

「ダメだ。やるんだ。オメェの輝征装(エアラリス)は肉体を変化させる。なら、慣れてねぇと容易く衝動に飲み込まれる。いざという時に、都市で使って破壊を撒き散らすつもりか?」

 

「それは……」

 

 オレの言葉に、メリスは反論の声を止める。

 

「さっきの姿を見て思った。オメェ、そいつに思ったよりも共鳴している。それが復讐っつー負の感情であろうともな。だからこそ、すぐに力を一端とはいえ引き出すことができた」

 

「気付いてたの?」

 

「まぁな」

 

「……悪いけど、こればっかりは譲れない。わたしは、必ずあいつに復讐する」

 

「いや、別に復讐は悪いことじゃねぇだろ」

 

 オレはメリスの言葉を否定しない。

 

 よく復讐してもあーだこーだと言うが、結局は当人の問題だ。外野が口出しするのは筋違いだ。特に明確に被害者なメリスがしたいというなら、それを止める理由がない。

 

 どの道《国家機密研究局(ゲマトリア)》の主任ナクア・メルキオールとの対決は『シャヘル=シャレム/薄明の境界線』でも行われていたからな。

 

「自分の人生が奪われたのなら、取り返す権利がある。だが、その目標を見間違うなよ。オメェがその力を振るうべきはオメェをそんな風にしたクソ野郎に対してであって、関係ない人々に振るうためじゃねぇだろ?」

「そんなの当然だ!」

 

「なら、さっさと制御出来るようになるんだな」

 

「言われなくとも……ッ!」

 

 メリスが再び集中する。

 

 また変化していく身体を見ながらオレは見守る。さてさて、どれぐらいでやれるようになるかな。

 

 

 

「う、ぐぅぅぅッ! き、さまぁ、さっきは良くもぉっ……!」

「〝アン・ブレイカー〟」

「ぎぃやあぁぁぁ!?」

 

 

 

「お、おのれぇ、一度ならず二度も──」

「〝アン・ブレイカー〟ッ」

「ま、たぁぁぁぁ!!?」

 

 

 

「あばばば、すでに身体が痺れっ……、こ、こんな状態でワレを使おうとするとかこの娘も、貴様も頭おかし」

「〝アン・ブレイカー〟ァッ!!!」

「ぬあぁぁぁ!!?」

 

 

 

 そうして繰り返す事数回。

 なんか《嘯き欺く悪魔獣(デミウルゴス)》が後半だんだんと、帝国への恨み言からオレへの恨み言へと変化していったような気がするが気のせいだろう。

 

 流石のメリスも、疲労のあまり最早変化することすらできなくなった。

 

「ここまでだな」

 

「はぁ、ハッ、ハッ、はひっ……!」

 

 身体から汗を流し、仰向けで倒れる。乙女の尊厳もあったものじゃない、舌を突き出して肩で息をする。

 

 だが、それでもメリスは食らいついた。

 それだけじゃない。後半には徐々にだが制御し始めていた。《悪魔の心臓/デモゴルゴン》がオレに顔を見せるのを嫌がったとも言える。

 

 しかし、結果は結果だ。メリスは意識を保ったまま《悪魔の心臓/デモゴルゴン》を扱えるようにはなった。やはりアドベンチャーゲームとはいえ主人公を務めていただけはある。

 

 全くこれが才能……いや、運命(・・)ってやつか。嫌になるぜ。

 

「そろそろ帰るぞ。立てるか?」

 

「無理言わないでよ……」

 

「だろうな。やれやれ仕方ないな」

 

 オレはメリスを肩で背負った。

 お姫様抱っこならぬ、お米様抱っこだ。

 

「うぅ〜、もうちょっと優しく運んでよ」

 

「お姫様抱っこでもしろって? 両手塞がったら、晶獣に対抗出来ないだろ」

 

 不満げに、ぽこっと弱い力でオレの肩を叩く。

 

「因み次からはその状態で戦わせるからな。あと、《悪魔の心臓/デモゴルゴン》がどんな風に話しかけてきたかあとでオレにまとめて紙に書いて寄越せよ」

 

「おに……あくま……」

 

「それくらいの憎まれ口を叩けるなら大丈夫だな。明日はもっと厳しくいくぞ」

 

「外道ぉ……!」

 

「知ってる」

 

 背後から非難するような呻き声があがった。

 

 

 

 

 

 

 こうしてメリスとの修行を行うこと数日。

 

 毎日疲労困憊で動けなくなったメリスを介護しながら、軍人としての勤めを果たすべく駐屯地に向かったオレだがそこで思わぬ光景を目にする。

 

「なんだこの物々しい雰囲気は? バルザックの野郎もいねぇし」

 

 ピリピリとしたただならぬ空気に、思わず気が引き締まる。

 

 何があったのかと、バルザックに聞こうとしたが姿が見当たらねぇ。やがて、この基地で最も偉い基地長が姿を現す。

 

「総員傾聴! バルザック・ダレイオスが、汚職の容疑にて捕えられた! しかし奴はそのことに逆上し、司政官殿及びに上官含む護衛を斬り捨て逃走! これは前代未聞の大事件だ! よって我々は奴の討伐を行う!」

 

 わりぃ、オレ死んだ。

 

 演説を聞き、オレは意識が遠くなるのを感じたのだった。

 

 

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