基本的には彩子が指揮する形です。誠◯のリコちゃんみたいな形で!
後日、放課後の体育館に黄瀬の姿はあった。
体育館に集められたバスケ部員の前に監督であり体育教師の田中とマネージャーの彩子と共に選手達の前に並んでいた。
「いきなりだが今日からうちのバスケ部に所属することなった黄瀬涼太くんだ。バスケについては初心者らしいので分からないことも多いだろう。皆で助けて上げて欲しい。」
「「「はい!」」」
「流川が同じクラスだったな。なら指導は流川に任せよう。」
「…え」
「山本も状況を見て色々と教えてあげてくれ」
「はい!」
「それじゃあ練習開始!」
「「「はい!!」」」
いきなり始まった自己紹介から、黄瀬の指導を担当するのが流川に決まった。本人は心底めんどくさそうな顔をしているが…
練習が始まると流川が黄瀬の方に歩いてくる
「おいお前」
「?はい」
「とりあえずアップからだついて来い」
「え?あ!ちょっ!」
有無を言わさず体育館内を走り出す流川と慌ててついて行く黄瀬
体育館内を5周程した後
(…コイツ…俺のペースに着いてきやがる…しかも息切れもしてねぇ)
流川は己のハイペースに余裕を持ちながら着いてくる黄瀬に驚いた
「おい…テメェ前の学校ではなんかやってたのか?」
「ん?あぁーいや特定の部活には所属してなかったっすね。ちょくちょく助っ人に駆り出されてたっすけど」
「…」
走りながら流川も黄瀬が会話する。流川は黄瀬の身体を確認し、
(身長は俺と同じくらいか…制服の上からじゃ分かんなかったが脱いでみると結構筋肉も付いてやがる)
「逆に流川君はいつからバスケやってんの?」
「…覚えてねぇ…そんくらいガキの頃からやってたからな」
「…へぇ」
黄瀬の問いに答えた流川。2人は10週ほど走ったのち、アップを終え次はボールを使った練習に入る。
やる前に軽く説明する流川に対し
「あぁ…多分出来るから大丈夫っすよ。ボール貸してください」
「あ?」
怪訝な表情で渋々ボールを渡す流川と受け取った黄瀬。
ーードン、ドン…とボールを数回ついたのち、流川に対しスピードを出して迫る。
「っ!テメェ!」
「「「なんだなんだ!?」」」
明らかな煽りを含む行動に流川は腹を立て、流川の声に周りのチームメイトも反応する
そして次の瞬間ーー
「っ!?」
再び鋭く一歩目を踏み出し真正面から流川楓へ突っ込む
そして
低く構えた流川の間合いに入った瞬間――
右から左へ、一瞬で重心を揺さぶる鋭いクロスオーバーを見せる。
(こいつ…初心者じゃねぇのか!)
しかし流川も即座に反応し、横にスライドしてコースを潰す。
その内側で、黄瀬の口元がわずかに上がる。
ーードンッ!…と今度は逆に左から右へ――さらに深く踏み込む。
「っ!まだだ」
読んでいた流川が、再び身体を入れる。
その瞬間ーー
背中側でボールが消える。視界から外れた一瞬の“死角”。
流川の足がわずかに止まる。
黄瀬は左手で持っていたボールを自身の膝の裏側から通すバックチェンジで流川を抜き去る
「「「おおっ!?」」」
歓声が上がる中、黄瀬はそのままペイントへ侵入する。
「…っ…野郎!」
背後から再び流川楓が迫るり長い腕がリング前に伸びる。
ーードンッ!と黄瀬と流川が同時に跳躍し
黄瀬は一瞬、ボールを引き、身体を半身に捻る。
流川の腕が届く、そのわずか外側へ逃がし――
そのまま、空中で体勢を戻す。
「……っ!」
(これは昨日俺が見せた…)
滞空の“間”。
そして次の瞬間――
ーードォンッ!!…とリングに叩き込まれる豪快なダンク。
ネットが激しく揺れ、鉄の音が体育館に響き渡る。
「「「うおおおおお!!!」」」
歓声が爆発する。
着地した黄瀬は、何事もなかったかのように振り返る。
その視線の先――
「なんか出来そうな感じがしたんでかましちゃいました!」
「…ちっ」
笑顔で話しかける黄瀬に苛立つ流川
「…おい」
「ん?おっと」
誰もがざわつく中、そのボールを拾い上げたのは
流川楓だった。
周囲の部員たちは自然と円を作り、即席の1on1の空間ができあがる。
――次の瞬間
「っはや!」
ーードンッ!!とさっきとは比べ物にならない加速を見せる流川
まるでスイッチが入ったかのように、流川が一気に間合いを詰める。
咄嗟に構える黄瀬だが流川は止まらない。
低いドリブルで懐に入り込むと――
一瞬のフェイントで肩がわずかに揺れる。それだけで、黄瀬の重心がほんの少し浮く。
(しまっ――)
そしてその隙を、流川は見逃さない。
高速のドライブで一気に抜き去り今度は逆に、黄瀬が追う側に回る
ペイント手前で流川が跳ぶ。
当然、ダンクか――そう思った瞬間。
空中で、流川の体がわずかに後ろへ流れる。
「は?」
ディフェンスの黄瀬の上から、無理やり体勢をずらしながら放つジャンパー。
伸ばした黄瀬の指先を、ボールがかすめて――
ーースパッとネットが静かに揺れるフェイダウェイで流川があっさりと決め切る。
一瞬の静寂。
そして――
「「「うおおおおお!!!」」」
再び爆発する歓声が起こる
着地した流川は、表情一つ変えずに黄瀬を見る。
「……借りは返すぜ」
その奥には、はっきりとした“対抗心”が宿っていた。
対する黄瀬は――
一瞬きょとんとした後、ふっと笑う。
「あぁ…なるほど……」
目の色が変わり
「マジで面白いっすね、流川君」
体育館の空気が、さらに熱を帯びていく。
希代の“天才”と“天才”
その衝突は――まだ始まったばかりだった。
◆
アレから一月がたった今日もーー
「だぁ!もう!今日も負け越しっすよ!」
「…ふん…俺に勝とうなんざ自惚れすぎだ」
(こいつ…日に日に伸びてやがる)
黄瀬と流川の1on1は練習後の日課となりつつあった。
「…あいつマジでやべぇなあの流川と1on1でやりあえる奴なんて初めて見たぞ」
「本当に初心者なのか?どっかの強豪チームのスタメンやってましたって言われても納得出来るぞ」
「と言うかアイツらがいるなら行けんじゃねぇか?…全国」
初めは色物で黄瀬のことを見ていたメンバーも毎日流川に挑み、日に日に上達を見せた黄瀬に対し認め始めていた。
「やるじゃない黄瀬!」
「ういっす彩子先輩!」
「とても初心者とは思えないよ!」
そう。初めは彩子本人も黄瀬に対してそこまで期待はしていなかった。体格は良いけど初心者で2年の中期からのスタートということ対しどうしてもネックに思っていたのだ。
しかし
蓋を開けてみたらあの流川と互角に渡り合うセンスと身体能力…
"天才"というのはこういう奴のことを言うのかと思わされた気分だった
「ちなみにアンタはどのポジションやりたいの?」
「え?ポジション?何すかそれ?」
「え?」
(あちゃ〜そう言えばこいつ素人だったわ…)
彩子は黄瀬がバスケに触れたことのない素人と言うのを思い出した
「いい?バスケってのはね大まかに5つのポジションが存在するの」
部室のホワイトボードを使い彩子が説明する
バスケットボールには大きく分けて5つのポジションがあり、それぞれ役割や求められる能力がはっきりと分かれている
まず「ポイントガード(PG)」は、チームの司令塔でありボールを運び、どのように攻めるかを判断する役割を持っている。試合の流れを読む力や、仲間に的確なパスを出す判断力が重要である。
次に「シューティングガード(SG)」は、主に得点を取る役割を担うポジションである。特に外からのシュート(スリーポイントなど)が得意で、チームの得点源になる。ポイントガードほどではありませんが、ボール運びやパスもこなしディフェンスでは相手のエースを止めることも多く、「攻守ともにバランスの良い点取り屋」と言えるだろう。
「スモールフォワード(SF)」は、オールラウンダーなポジションである。シュート、ドリブル、パス、ディフェンスと、すべてを高いレベルでこなす必要があり、状況に応じて得点も狙い、時にはリバウンドや守備でも活躍する。チームの中で最も万能な役割で、「何でもできる選手」が求められる。
「ウチで言えば流川がこのポジションね」
「へぇ〜」
「パワーフォワード(PF)」は、ゴール近くでのプレーを主に担当する。体の強さを活かしてリバウンドを取ったり、相手とぶつかりながらシュートを決めたりと近年では外からシュートを打てる選手も増えていますが、基本はフィジカルの強さが重要となる。まさに「ゴール下の戦いを支える力強い選手」が求められる。
最後に「センター(C)」は、チームの中で最も背が高い選手が務めることが多く、ゴール下の要である。リバウンドやブロックショットで守備を支え、攻撃ではゴール付近で得点を狙う。相手のシュートを止める最後の砦でもあり、「チームの守りの柱」と言える存在である。
「ざっとこんな感じかな」
「どう?やってみたいポジションはある?」
「これSFが2人いてもいいんすか?」
「一応同じチームに2人いても問題はないわよ。チームによっては複数が同じポジションに入るチームもいるからね。なにSFがやりたいの?」
「…まぁ一応…流川っちには負けたくないんで…それにやるからにはエースで華型のポジションをやりたい」
「…ふーん…て言うか流川っちって何!?」
「あぁ〜俺自分が認めた奴には何々っちって付けるんすよ」
「へ、へぇ〜」
黄瀬から流川への呼び名はさておき、黄瀬のポジションについてたが…とりあえず今は保留ということになった。身長的には流川と並んで部内最高であるが、流川並のオフェンススキルとなんでも器用にこなしてしまう才能を留めてしまうのは勿体無いと彩子は感じたからである。