STAR WARS The ONE   作:竜・M・美日

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フー女王の帰還

〈トルクメギア〉は自ら開いた裂け目の中を進む。

 ハイパースペースとは違い、そこに青い光の奔流は無い。黒い空間の壁一面には青白い亀裂が走り、生き物の血管のように脈動していた。

 艦首の穿孔ギアが回転するたび、壁面から火花のような光が散る。鈍い振動が艦全体を揺らした。まるで宇宙そのものを掘り進んでいるようだった。

 裂け目の向こうで、星々や銀河の光景が一瞬だけ現れては消えていく。

 タドラはその異様な景色を一瞥しただけで興味を失ったように踵を返した。ヘイトーも乗員たちも誰一人として驚かない。彼らにとって宇宙を削りながら進むことは、もはや日常だった。

 

 一方、連行されたナーシャは失意の中、〈トルクメギア〉の来賓室で数人の女性従者によってフーの儀礼用ドレスに着替えさせられていた。青く気高い衣装だったが、その首元にはタドラ社の生体管理用首輪が光っている。

「お似合いです、アナスタシア様」

 本心かどうかも分からない言葉に、ナーシャは何も答えなかった。

義妹(いもうと)よ。あまり困らせてやるな」

 タドラがノックもせずに入ってくる。従者たちは(おそ)れるように頭を下げ、足早に部屋を後にした。

「似合っている。我らバレイ=フーの血筋に相応(ふさわ)しい姿になった」

 皮肉とも本音ともつかない口調で言いながら、タドラはソファに腰を下ろし、金色に輝く機械の義手を眺めた。

「ノーフェイの工場を失ったのは痛手だが、お前を捕らえ、エイゾの古代人を始末できたのなら十分な補填になる」

 相変わらずの利益主義的な考え方だが、ナーシャは何の反応も見せない。

「どこに向かっていると思う?」

 ナーシャは答えない。タドラも気にした様子はなく続ける。

「フーだ。今、どうなっているか気になるだろう」

 無表情だったナーシャの肩がわずかに跳ねた。

「殿下、もうすぐフーの宙域に入ります」

 艦内アナウンスのヘイトーの声に、タドラは腰を上げ、ナーシャの前に立つ。

「準備をしろ、アナスタシア。久々の里帰りだ」

 それでもナーシャの瞳は虚空を見つめていた。

 

〈トルクメギア〉がフーの地表に降り立つ。

「ドックを開けろ」

 ナーシャたちと護衛用の数十体のドロイドの前で、大きなドックのハッチが開いた。目に飛び込んだのは、水と緑豊かな故郷ではなく、赤黒い霧が立ち込め、巨大な菌類が胞子を出す異様な光景だった。

 かつては王宮へ続く青い河があった。水面には白い花が浮かび、風が吹けば森の香りが流れてきた──今はその面影すら無い。

 ナーシャは真っ直ぐにそれを見据えるが、何の反応もない。タドラが前に出た。 

「酸素マスクが無ければ、五分と経たずに肺が腐る」

 今も、ドックのバリアによって胞子がバチバチと弾かれる。

「どうだ? これが自然の脆さだ。だから私は焼き払った」

 タドラが延々と自分の偉業を話すが、その瞳に光は戻らない。

「気味悪いぜ……」

 それを横で見ていたヘイトーが思わずつぶやく。

「ブラスターを」

 秘書のプロトコル・ドロイドがナーシャのブラスターをタドラに差し出す。

「女王にこんな物騒な物は不要だ」

 そう言って、ハッチに歩み寄っていく。外に放り捨てる気だ。それでもナーシャの瞳に生気は戻らなかった──その時だった。

 微かな理力の気配が体をかすめた。マーレでも感じたあの感触。忘れるはずのない存在の気配だった。

「……アス、タラ?」

 その瞬間、虚ろだった瞳に光が戻った。

「は? 何か?」

「……なんでもないわ。髭伸びてるわよ剃りなさい」

 そう悪態をつくなりタドラに向かっていく。ヘイトーはさっきまで廃人のようだった姿から、今の変わり身の早さに頭を掻く。

「よく分かんねぇな……」

 タドラに駆け寄るナーシャをドロイドが止めに入った。

「邪魔よ。どきなさい」

 ナーシャからの命令にドロイドたちが困惑したように顔を合わせる。

「聞こえなかった? 通して」

「……ラジャー」

 一喝されたドロイドたちは引き下がると、その間を抜けてタドラに向かっていく。

「ちょっと待ちなさいよ」

 その呼びかけにタドラが足を止める。見れば、その目に生気が戻りかけていた。

「何よ、それ」

 ナーシャは腰に手を当てると鼻で笑った。

「結局、大口叩いても自然を制御できなかったってことじゃない。嫌いだからって森を焼き払っても、水を枯らしても、また新しい自然が生まれただけよ」

 その反論にタドラの目が鋭くなった。

「義兄さん、自然は強いのよ。あんたが思っている以上にね」

 ナーシャの声に活力が戻る。

「勝ったつもりでいるでしょうけど、今見ているその景色が敗北の証拠よ。社長様?」

 タドラの義手がギチギチと音を立てる。

「言いたいことはそれだけか? 女王よ」

「そうね……ブラスターは返してもらうわ!」

 ナーシャはタドラの手元にあったブラスターを爪先で蹴り上げる。宙を舞ったそれを片手で摑む。

「殿下!」

 ヘイトーたちがタドラに集まる中、護衛ドロイドがナーシャに迫る。ブラスターのつまみを弄るとドロイドに放つ。凄まじい反動がナーシャの腕を跳ね上げ、体ごと床を滑った。撃たれたドロイドの上半身は熱で溶け落ちる。

「な、なんちゅう威力だ……!」

 ヘイトーがその威力に驚く中、ナーシャが体を起こす。

「いったー……特殊なパワーセル仕込んどいてよかったわ。よし!」

 立ち上がるとハッチの縁に立った。捕縛しようとするドロイドたちにブラスターを向ける。

下賎(げせん)な者ども控えよ! 我はアナスタシア・ナジカ・バレイ=フー十世! 誇り高き、フーの最後の女王なるぞ! 我の命運を決めたるは、我のみぞ! ……意味わかる?」

「……それでは女王陛下。何をなさるおつもりで?」

 慇懃(いんぎん)無礼な態度のタドラにナーシャは笑みをこぼす。

「見ていろ。こうするのだ」

 ナーシャは目を閉じ手を広げると、ハッチの縁から赤黒い瘴気が渦巻く奈落へとその身を投げた。

 

「あっ!」

 流石のヘイトーですら驚きで手を伸ばすのに対して、タドラはため息吐く。

「……愚かな選択だ」

 その時だった。ドックの真下から銀色に輝く機体が姿を現した。

「何……⁉」

 タドラたちが驚愕する。

 瘴気を切り裂いて現れた〈シナトベ〉の上で、ナーシャが不敵な笑みを浮かべている。飛び降りた彼女を受け止めていたのだ。

〈シナトベ〉はゆっくりと浮遊するようにドックに入ると着地した。全員が呆気に取られている隙にナーシャが大きく息を吸った後、ハッチを叩く。

「お待たせ。出番よ」

 その一言と同時に〈シナトベ〉のハッチが開いた──白い光刃が閃く。ナーシャの首輪が断ち切られ、金属片が床を跳ねる。

「なっ……⁉」

 タドラが目を見開く。次の瞬間、アスタラが船内から飛び出した。そのままの勢いで、ドックに降り立つとドロイド軍をなぎ倒していく。

「野郎、あの状況からどうやって⁉︎」

 ヘイトーが戦慄する中、ナーシャがアスタラと入れ替わるようにコックピットに滑り込む。

「本当、どうやったの!」

『アスタラの力のお陰だ!』

 ダイスが誇らしげに答えた。

『クレバスに落ちた瞬間、アスタラが理力で落下を食い止めてくれたんだ!』

「あの崩落の中で⁉︎」

『どうにか落下の勢いを殺してくれた。そのまま〈トルクメギア〉が離陸するのを待って、船底に着陸脚を引っかけた!』

「やるじゃない!」

 賞賛しながらナーシャが操縦席に飛び込む──そして固まった。

「嘘でしょ……全部切ったの⁉︎」

 コックピットは真っ暗だった。隠密性を高めるため、電源系統はすべてコールドスタート状態に落とされていた。

『いや、気づかれそうだ、ってアスタラが言うから……』

 ダイスが申し訳なさそうに答えた。漆黒のパネル。反応のない操縦桿。ナーシャは顔を引きつらせる。

「つまり全部立ち上げ直し……」

『うん……』

「最悪!」

 窓の外ではアスタラが鬼神の如く戦いを繰り広げているのが見える。

 ナーシャはそれを横目にスイッチを入れ直す──(そで)が視界と操作の邪魔になった。

「ああもう、袖邪魔!」

 ためらいなく高級仕立てのドレスの袖を引き裂くと、飛行に必要なスイッチを入れていく。

 一方のアスタラは、その奮闘によりドロイドを十数体にまで数を減らしていた。

「殿下!」

「焦るなヘイトー。想定内だ」

 タドラが薄ら笑いを浮かべる。天井からベチョリと、あの液体金属ドロイド十体が姿を現した。

「今度こそ、首を撥ねてやる」

 液体金属ドロイドに囲まれてじりじりと後ろに下がる中、アスタラの視界にある物が映る。「取扱注意! 液体窒素」と書かれたボンベ。そこから猛烈な冷気を感じた。

 アスタラは後退しながらボンベを背にした。次の瞬間、素早く身をよじりセーバーでボンベを切り裂く。切り裂かれた隙間から冷却ガスが噴き出し、液体金属ドロイドたちを包み込む。瞬く間に凍り付くドロイドたち。

「なっ⁉ この野郎!」

 アスタラはブラスターを向けてきたヘイトーに、凍り付いたドロイドを理力で押し付けた。

「うわぁ⁉」

 そのまま押し倒されるヘイトー。その隙を突き、一直線にタドラの下へ向かう。義手でかばうがセーバーの敵ではない。それごと胸元にセーバーが突き立ち、倒れ伏すタドラ。

 手応えは確かにあった。だが、アスタラの胸には勝利の確信ではなく、凄まじい違和感があった。まるで硬質な金属で止められたような感触だった。

 その瞬間、〈シナトベ〉のメインブースターが唸りを上げた。

「動いた! アスタラ、早く乗って!!」

 そのナーシャの呼びかけで、アスタラは理力で自らを弾き飛ばすようにして機体に飛び移り、コックピットに入る。そのまま瘴気渦巻くフーの空へと出た。

「タドラを倒したの⁉」

 笑顔で問いかけるナーシャに、アスタラは静かにつぶやいた。

「……分からない」

〈シナトベ〉が出たことで静まり返るドック。ドロイドの下からヘイトーが這いずり出る。

「……ひでぇ目に遭った……」

 立ち上がると辺りを見回す。

「なんて野郎だ。全部バラしやがった……」

 そこで刺されたタドラがうめき声を上げた。

「殿下! ご無事ですか!」

 返事はない。ヘイトーが駆け寄ったその時だった。

「……あの男。躊躇なく殺しに来たな」

 低い声と共に、タドラが咳き込みながら身を起こす。ヘイトーは胸元を見て目を見開いた。

「まさか……」

 タドラがジャケットを開く。貫かれた鉄板の奥で、鈍い銀色の金属板が光っていた。

「用心のために仕込んでいて正解だった。……マンダロアの鉄か」

 その一枚が、わずか数ミリの差でアスタラの光剣を止めていた。薄ら笑いを浮かべながら、飛び去る〈シナトベ〉を見据える。

「撃墜しろ」

「ラジャー」

 残っていたドロイドが戦闘機に変形して、次々にドックから出撃していく。

「……ヘイトー。お前も出撃しろ」

 タドラの冷徹な声に、いつもは気の抜けた顔をしているヘイトーの目が鋭く細まる。

「了解しました!」

 その声には珍しく戦意が宿っていた。スーツとマントを脱ぎ捨てると中からフライト・スーツが出てくる。

「おい、お前らはついてこい。編隊を組め」

 ヘイトーは数体のドロイドを引き連れ、最新鋭の高速戦闘機〈タドラ・インターセプター〉へと乗り込んでいく。

「追え。今度こそ逃がすな」

 

「おかしいわ……」

「どうした?」

「スピードが出ない」

 スロットルを開けたり緩めたりを繰り返すが、〈シナトベ〉は無機質な振動を返すだけで加速しない。

「ダイス、原因分かる⁉」

『燃料パイプが焼き付いてる』

「嘘でしょ⁉」

『あの訳の分からないエネルギーを突っ込むからだ! それより敵が来てるぞ!』

 二十機近いドロイド機。さらにヘイトーの戦闘機も後ろから迫ってきている。

「ヘイトーも出たのね……」

 ナーシャが苦虫を嚙み潰したような顔をする。

「厳しいのか?」

「義兄さんの側近だけじゃなくて、元フーのエースパイロット。よその惑星のポッドレースで何度も優勝してる実力者よ」

 それを聞いた、アスタラが席を立つ。

「後ろは私が引き受ける」

「えっ……機銃使えるの⁉︎」

「ダイスから教わった」

 後部に向かうアスタラを驚きながら目で追うナーシャ。前を向くと笑みを見せた。

「よし、私も!」

 スロットルを下げると足で操縦桿を挟み込み、スラスター用のレバーに手を置いた。

『おい、まさか制御用のスラスターだけで飛ばす気か⁉︎』

「仕方ないでしょ!」

 銃座に座ったアスタラは理力を集中させる。敵の軌道を予見しながら機銃を放ち、一機、また一機とドロイド機が爆散する。だが数が多く、新たな機影が胞子の霧の向こうから現れた。

 一方でナーシャは厳しい状況だ。不気味な蛍光色の胞子が霧のように漂い、視界は最悪。そのうえ、メインエンジンは使い物にならない。

『嫌な予感が……!』

「なんとかしてみせる!」

 前方に現れたのは、巨大な菌類の幹が複雑に絡み、もはや壁としか呼べないような超狭小のクランク地帯。

『無茶だ! 二十三メートルある翼じゃ、通れな──』

「黙って摑まってなさい!」

 ナーシャが操縦桿を一気に横に倒す。瞬間、〈シナトベ〉は独楽(こま)のように回転し、翼を垂直に立った姿勢で迷路へと飛び込む。腐海の湿った大気を切り裂き、クロミウムの翼端から白い糸のような飛行機雲が走る。

 

 数機のドロイドが経路が読めず何機かぶつかり合い墜落する。その間をヘイトーの戦闘機が抜ける。

「雲引きやがった……!」

 ナーシャの腕前に冷や汗をかきながら薄ら笑いを浮かべた。

「流石だぜ。伊達(だて)にフー王家の血筋は引いてねぇ……だが!」

 ヘイトーの精密射撃が〈シナトベ〉の機銃座を直撃。唯一の反撃手段である銃座が火を吹き、ひしゃげて沈黙した。

「アスタラ、無事⁉」

「ああ! だが、機銃をやられた!」

『ヤバイ。挟まれたぞ!』

 ダイスの叫び通りに、両端からヘイトーと編隊を組んでいた敵機に挟まれたのが見える。レーザー砲が〈シナトベ〉に向いた。すると、ナーシャはシールド発生装置を切り、両翼にクロミウムの輝きを集中させる。

『何してんだ⁉︎』

「〈シナトベ〉の本領、見せてやる」

 ナーシャの瞳が鋭く細まり、操縦桿を限界まで倒した。

「まとめて、お引取り願うわ!」

 砲口から赤い光が離れた瞬間、〈シナトベ〉が軸のブレない完璧な回転を決める。翼が巨大な鏡と化し、左右から迫る光弾を捉える。命中した光弾はクロミウムの翼で弾かれた。

 次の瞬間、放ったドロイド機の機首が赤熱する。コックピットが爆ぜ、炎を噴きながら菌類の森へと墜落した。

「言ったでしょ。ブラスターなら弾くって!」

〈シナトベ〉はかつて川が流れていた細い渓谷に入る。

「……ヘイトーは?」

 ナーシャが異変に気付く──先回りしていたヘイトーの船が渓谷の出口を塞ぐように現れた。

『嘘だろっ⁉』

 それでもナーシャはどこか冷静に周囲を分析していた。ヘイトーが塞ぐ道とは別にもう一本、道があった。

「……こっち!」

 操縦桿を倒す。直角に近い角度で曲がる。その先には、川が干上がらなければ姿を現さなかった鍾乳洞(しょうにゅうどう)が見えた。

 ナーシャは巨大な鍾乳洞の入り口へと〈シナトベ〉を滑り込ませた。

「アスタラ、後ろは!」

「一機残った!」

 続けて入ったヘイトーのエンジン音が、複雑な洞窟内で反響し不気味な咆哮として重なる。

「出口があるかもわからねぇ所に突っ込むとは……面白れぇ」

 ヘイトーの長く錆びついていたパイロット魂が疼くのを感じた。

『ロックオンされたぞ!』

 光が届かないほど暗く、擦りそうなほど狭い中を〈シナトベ〉は進む。

『どうするんだ! 下手したら行き止まりだぞ!』

「……ダイス、着陸脚下ろして」

 一呼吸置いた後、ナーシャは前を見据えたままつぶやく。

『はあ⁉︎ こんな時に、どこに着陸する気だよ⁉」

「いいから! 昔、思いついた秘策がある」

 すると口角が上がる。こうなる時は無茶する時だとダイスは知っていた。仕方なく着陸脚を下ろす。

「思いついただけで……一回も、試したことないけど!」

 操縦桿を限界まで倒し、鍾乳洞の狭い岩肌に機体を急接近させる。ガリガリと凄まじい火花を散らせながら、〈シナトベ〉の着陸脚が鍾乳石に激しく接触した。

『自分が何やってるのか分かってるのか!』

「直す! 後で直すから!」

 岩にぶつけ、引きちぎれるまで負荷をかけた三脚の着陸脚。ついに折れた鉄の塊は弾丸のような速度で後方へと弾け飛ぶ。追撃に集中していたヘイトーは、まさか自分の船の部品を投げてくるとは予想もしていなかった。

「何っ……ぐああっ⁉︎」

 着陸脚の破片が回転しながら飛ぶ。回避しようと機首を振ったヘイトーだったが遅い。金属塊が翼を貫く。そのまま機体はバランスを崩すと、火を噴きながら洞窟の底へと墜落していった。

「落としたぞ!」

「よし!」

『よし、じゃない! 着陸はどうする気だ!』

 ダイスがナーシャを叱りつけるが、どこ吹く風だ。そこにアスタラが戻ってくる。

「これで、しばらくタドラも立て直せないでしょ」

「そうだといいが」

「ともかく安く船の修理が出来て、たくさんの部品と優秀なメカニックがいる所はないかしら……」

『そんな都合のいい所あるか!』

 その会話にアスタラがあごに手を当てた。

「……私に心当たりがある」

「嘘ぉっ⁉︎」

「ダイス、今から言う星に進路を向けてくれ」

 アスタラの進言で、着陸脚を失った〈シナトベ〉はフーの引力圏を脱し、ハイパースペースへと飛び込んだ。

 

 

「副社長機との通信途絶。随伴戦闘機も全機喪失しました」

 秘書ドロイドの報告にタドラは眉一つ動かさない。

「……ヘイトーを落とすとは、悪運が強い奴らだ」

「社長。副社長の捜索部隊は──」

「不要だ」

 その提言を遮り指示を出す。

「これより我々はマンダロアへ向かう」

 胸ポケットに仕込んでいた金属板を渡す。

「大至急、これを全力で掘り出すよう指令を出せ。腕のいい鍛冶職人も呼び寄せろ」

「承知しました」

 秘書ドロイドはそれを受け取るとそそくさと命令の実行にかかった。

「次こそ……奴との決着の時だ」

 タドラの顔に笑みが浮かんだ。





【挿絵表示】

ヘイトー CVイメージ 中村悠一氏
※本作の挿絵は、著者の指示・監修のもとAIを使用して生成した「イメージボード」です。
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