STAR WARS The ONE   作:竜・M・美日

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私はナーシャ。銀河一速い船〈シナトベ〉の船長よ。
娯楽惑星ユヤで気持ちよくサバックをしていたら、元・相棒のアスタラが現れた。一年ぶりの再会だっていうのに、開口一番説教よ。相変わらず生真面目で面白くない奴。
そんなアスタラの故郷エイゾが襲われたと聞いて急行した。エイゾは焼き払われ、一族が守ってきた巨石まで奪われていた。さすがの私も、あの光景には言葉が出なかったわ。
今はアスタラの理力だけを頼りに、その巨石の残滓を追っている。目的地は、星図には何もない宙域。
……経験上、そういう場所ほど碌なことにならないのよね。


第十五話 平和の使者

〈シナトベ〉がハイパースペースから現れた先で、すぐにそれと遭遇した。

「なんて……大きさなの……」

 ナーシャが息を呑んだ。

 眼前に広がるのは、先端が二又に分かれた全長一キロメートルを優に超える巨大な船だった。

 純白の輝きを放ち、本来、艦橋(かんきょう)があるだろう位置には、神殿のような建物が建っている。

 さらに異様なのが、その船のドックにまるで礼拝をするように、無数の小型船が並んでいることだった。

「すごく嫌な予感がする……」

 ナーシャが苦い顔をして被りを振った。アスタラは目を閉じ、右手を船に向ける。

「……間違いない。巨石はあの船の中だ」

「冗談でしょ……⁉ 絶対にいや──!」

 拒否する前に通信が入った。

「こちら銀河調和防衛軍、戦艦〈ピースメーカー〉。不足兵士の志願者なら後方に並ぶか、即刻立ち去れ」

 アスタラとナーシャが顔を見合わせた。

「銀河調和防衛軍……?」

「名前は少し聞いたことあるけど……。どうするのよ」

「入るしかない」

 アスタラの答えに、ナーシャはため息を吐くと応答ボタンに手を伸ばす。

「こちら〈シナトベ〉……志願します」

「〈シナトベ〉、了解した。列に並び、ドックから入り、検閲を受けること」

「了解……」

〈シナトベ〉を一番後列に寄せると、操縦席にもたれかかる。

「……後戻りできないわよ」

「分かってる」

 数百機近い小型船の順番待ちの間、二人は目の前に(たたず)む戦艦を眺める。

「……それにしても変な船ね。まるで神殿だわ」

「そうだな」

「巨石なんか手に入れて何をする気かしら。崇拝するの?」

「そんな崇高(すうこう)な目的なら、戦艦は必要ない」

「じゃあ、なんのためよ?」

「あの巨石は、私のライトセーバーに使っているクリスタルと同じ物だ。ただ、大きさがまるで違う」

 嫌な考えが過ぎるナーシャ。

「そんな物、使うとしたら……」

「兵器に使うつもりだろう」

 ナーシャの顔が強張った。

「また、銀河を救う羽目になるのね……」

 その言葉に返事をすることなく、アスタラはただひたすらに〈ピースメーカー〉を見ていた。

 

 ようやく〈シナトベ〉の順番が回ってきた。〈ピースメーカー〉のドックは広く、無機質な白光に満ちていた。

「ちょっと待って」

 視線の先には船を固定するためのロック機構がある。

「あんなかぎ爪みたいなので〈シナトベ〉を挟む気? 勘弁して……」

「〈シナトベ〉。ロックの下まで移動しろ」

 案内を受け、配置につくと挟みこまれるように固定された。

「……傷ついたら、容赦しないから……」

「〈シナトベ〉、そのまま待機せよ」

 そこで通信が切れた。ドック内部に目を向けると、すでに数百人以上が列を作っていた。

「……ものすごい数ね」

『みんな、軍隊に入りたいのか?』

「全員、それぞれ理由を抱えているんだろう」

 すると緑色の装甲服を着た兵士たちが、一斉に志願者たちの前へ現れた。

「見ろ。武器を没収している」

 検閲を受け、武器を持っていた者は次々と没収されていくのが見えた。

「嫌よ。愛着あるもの」

 ナーシャが腰のブラスターを強く握る。

「私もだ」

 アスタラも腰のライトセーバーを外し、ダイスへ渡した。

「ダイス預かっててくれ」

『了解』

「私も」

 ナーシャもブラスターをダイスの引き出しに入れていく。

 腰のホルスターから一丁。ジャケットの袖に仕込んだ小型ブラスター二丁。ショルダーホルスターから二丁。ロングブーツの中に隠した小型二丁。

 アスタラが怪訝(けげん)に思うほど異様な数──ナーシャがズボンの後ろ側に手を回す。

「ちょっと待って……」

「……いくつ持ってる?」

 最後に出てきたのは、中型のブラスターだった。

「よし。これで全部よ」

「……何かに狙われているのか?」

「気にしてなくていいの」

 苛立ったように返され、アスタラは被りを振りながら再度外を見る。

 何人か上着を脱がされて、肌着にされていた。

「……派手な服は脱がされているようだ」

「流石に軍ね。ダイス、ジャケットも預かってて」

 ナーシャはジャケットを畳んで渡す。

『分かった』

「……親友からのプレゼントだから」

『分かってるって』

「あんたは?」

「マントは預ける。私は作業服を取られても別に構わない」

 そこで通信が入った。

「〈シナトベ〉の船員に告ぐ。全員下船するように」

「いよいよね」

 二人はハッチを開けて外に出る。

『ちょっと待てよ。オイラは?』

「……タンスとして、じっとしてなさい」

『またタンスかよ……』

 呆れるダイスを置いて、ハッチを閉めた。

 

 その後、無事に検閲を通ったアスタラとナーシャは、同じく集められた千名近い補充要員と共にドックの後方で整列していた。

「注目!」

 白い照明の下で、整列した人員が視線を上げる。号令を出した大柄の軍人が前に出る。

「貴様らは本日より第三部隊に配属となった! 詳細はドロイドより説明する!」

「では、第三部隊の概要を説明します」

 ドロイドの淡々とした音声と共に、ドック前面にホログラムが展開された。

 艦内区画、兵站(へいたん)ライン、戦闘ユニット配置──次々と映る図面を、新兵たちはただ黙って見上げていた。

「要するに、前線の穴を埋める部隊です。生存率に関する質問には回答しません。また欠員が出た場合は、即座に補充されます」

 説明はそこで終わった。

「以上だ!」

「……以上? ……随分とざっくりね」

 ナーシャは軽口を叩き、アスタラは黙って状況を観察している。

 だが、周囲の者たちは誰一人文句を言わない。その無反応さこそが、この船の常識なのだと物語っていた。

 その空気を割るように、ブラスト・ドアが重々しく開いた。硬い軍靴の音だけがドックに響く。

「回れ右!」

 軍人の号令で振り返る。二人の丁度目の前にいたのは、金と黒が混ざる髪が焦茶色の軍帽の下からわずかに覗いた、容姿端麗でアスタラよりも長身の女。軍服も同じく焦茶。装飾は少ないが、無駄のないシルエットが逆に目を引く。

 視線は真っ直ぐ。だがその真っ直ぐさに、少しだけ迷いのなさすぎる危うさがあった。

「第三部隊指揮官(コマンダー)、ソーラ・ノックス大佐だ」

 静かで短い自己紹介だが、それだけで空気が少し締まる。

 ソーラの視線が一瞬で全員をなぞった。

「貴様らは戦えるか?」

 千人近い中の誰かが小さく頷く。

「なら問題ない」

 焦茶の軍帽の影で、金と黒の髪がわずかに揺れる。

「第三部隊はこれより稼働する──ただし」

 人差し指を立てた。

「サボったら、ゴミ処理室にいるダイアノーガの口に放り込んでやる」

 何人かが息を呑んだ。

「……ダイアノーガがいるの?」

 ナーシャが思わずつぶやくが、聞こえなかったのか、気にすることなくソーラはブラスト・ドアへ視線を向けた。

「この後は部隊割り当てを行う。以上だ」

 ぞろぞろと志願者たちが移動していく。二人も視線を合わせると、目立たないように顔を伏せて後へ続く。

「待て」

 ソーラが呼び止めた。そこにいた十数人が振り向くと、その視線はアスタラとナーシャに固定されている。

「貴様ら」

 ソーラが二人に一歩近づく。

「こちらへ来い」

 理由は言わない。だが、声には何か確信があった。二人は言われるがまま前に出る。

「貴様らはアベックか?」

「は……?」

「違います」

 アスタラが言葉の意味がわからず困惑し、意味を知っているナーシャが即答する。

「そうか。仲がいいように見えたが」

 ソーラは特に気にした様子もなく、まずアスタラを見る。すると細い指先であごを軽く持ち上げ、うつむいた顔を強制的に自分の方へ向かせた。

「綺麗な瞳だ。まるで曇りのない水晶のようだ」

 その評価に返事するべきか困っていると、アスタラの全身を一瞥する。

「工具を扱うのも慣れているようだ。貴様は機械に強い。なら船を任されているな」

「……えっ?」

 アスタラが一瞬固まる。

「よろしい。貴様は……501整備隊の隊長(キャプテン)に任命する」

「私がですか……?」

 ソーラは次にナーシャを見る。いきなり、その手を握った。

「ちょっと、何──!」

「喋るな。……貴様は手にブラスターのタコができているな」

「まあ、それなりに修羅場は──」

「発言は許可していない。……よし、貴様は212突撃隊の隊長に任命する」

「はい……? どうして?」

 ナーシャは困惑しながら尋ね返す。

「貴様はこの男の用心棒だろう」

「は……? いや、逆──」

「みなまで言うな。私の目に狂いは無い」

 有無を言わせない雰囲気にナーシャが押される。

「だ、だとしても、私は航空部隊があるならそっちが──」

「〈ピースメーカー〉にそんなものはない」

 そう答えると、二人の前を進むソーラ。

「……はい? 戦闘機くらいあるでしょ?」

「小さい戦闘機程度、対空砲が完備された、この艦だけで十分だからだ」

 その一言に二人は、一気に背筋が寒くなる感覚がした。

「……今の意味わかる?」

「……ああ。私たちの想像以上に危険な船らしい」

「おい、貴様ら! まだ話は終わっていないぞ! ついてこい!」

 ソーラはすでにエレベーターに乗り込んでいた。

 

 エレベーターの中で沈黙が広がる。ナーシャがアスタラに囁く。

「……私、用心棒じゃないんだけど」

「……私もパイロットじゃない」

「私語は慎め。軍人として規律を守れないなら、タトゥイーンのデューバックの背中に縛り付けるぞ」

 ソーラの後ろ姿はまったく揺らがない。すでに彼女の中では編成は完了していた。

「貴様らは第三部隊の中核だ。隊長として毅然とした姿を見せる必要がある」

「えーっと……大佐、何故、私たちが?」

「調和のために動ける者。お前たちが適任に見えた。それだけだ」

 二人が顔を合わせる。ナーシャがさりげなく肩をすくめた。

 エレベーターが開き、端末の前に立たされたアスタラとナーシャは簡易的な身元確認を受ける。

「名前は?」

 ソーラの問いは単純だった。

「アナ……バレイ」

 本名を口にしかけ、辛うじて家名の一部に留める。一瞬の間があったがソーラは特に疑問を持たない。

「よろしい。貴様は?」

「アスタ──っ……!」

 本名を言いかけたところで、横からナーシャの足が容赦なく、つま先を踏みつける。

「どうした?」

 心配するソーラにバレないよう、アスタラは歯を食いしばりながら言い直した。

「ア……ステラ……ア=ステラ」

「なるほど。名字は?」

「名字、ですか?」

 思わず聞き返すアスタラ。エイゾでは名字の習慣は無く、修理工の時は名前だけでも困ることは無かった。

「無いのか?」

「……はい」

「気にするな。この艦には銀河中からそういった惑星や文化の無い者が集まる」

 気にしていると勘違いしたソーラは、アスタラの顔を見ると少し黙り込む。

「……ジダイだ」

「は……?」

「私の星の言葉で、夜明け、始まり、を意味する」

「ジダイ……」

 そのまま端末に二つの名前が入力される。アナ・バレイとア=ステラ・ジダイ。

 ソーラは入力を終えると、どこか満足げに頷いた。

「これで貴様らは、正式に第三部隊所属だ」

 

「艦を案内する」

 二人は端末から離れ、ソーラについていく。

 ソーラにバレないようにナーシャがアスタラを小突く。

「……敵陣のど真ん中で本名名乗る奴がどこにいんのよ……!」

「すまない……癖で」

 小さく掛け合いをしながら二人は〈ピースメーカー〉の内部を案内される。

「貴様らも部隊隊員に案内できるように頭に叩き込め。私でさえ、たまに迷うからな」

「指揮官が迷う艦なんて初めて聞いたわ……」

 そう言って先に進むソーラを見て、ナーシャが苦笑した。

〈ピースメーカー〉の居住区画やドック、訓練室、操縦室などを、ソーラは地図を見ながら案内していく。そのうちに機関室前のブラスト・ドアに着いた。

「ジダイ隊長」

 アスタラが反応しない──ナーシャが肘を入れた。

「あっ……はい」

「貴様は501整備隊隊長だ。特にここでの仕事を覚えてもらうぞ」

 ブラスト・ドアが開くと中はまるで迷路のようだった。配線や機関や回路が壁や地面の至る所に走っていた。

「ここの整備だ。できるな?」

 アスタラは周囲を見回すと頷いた。

「はい。できます」

 アスタラの理力をもってすれば、どこに問題があるかはすぐに分かる──その逆にどこを壊せば機関を止められるかも、だが。

「頼もしい限りだ。バレイ隊長」

「はい」

 ナーシャがそれらしく背筋を伸ばす。

「突撃隊の訓練は任せるぞ。地上の鎮圧の要だ」

「……頑張ります」

 ソーラは人差し指を立てるとビシッとナーシャを指す。

「頑張ります、では困る。被害を最小限にする。それが貴様の役目だ」

「……大佐はお優しいんですね」

「優しくなどない。無用な被害は避けたいだけだ。建物と人がいない場所をどう統治する? ……上層部はある程度の被害は仕方ないと言うが……」

 ソーラがどこか悔しそうにつぶやく。二人がさりげなく目線を合わせる。

「いや、言葉が過ぎたな。私たちは兵士だ。今のは聞き流せ」

 

「最後は、この艦の一番重要な部屋、コアルームだ」

 これまでにないほどに強硬なブラスト・ドアが開いた。その部屋の中央にある物が置かれていた。アスタラの目が見開かれる。

「巨石……!」

「そうだ、よく知っているな。カイバー・クリスタルと呼ばれる物だ。最近、ある惑星から手に入れた」

 ソーラの説明をそっちのけで、我を忘れているアスタラが近づいていく。

「ここのメンテナンスも、貴様の部隊の担当だ──」

「あの、大佐!」

「なんだ?」

 気づかれないようにナーシャが話しかけて気を引く。

 一方でアスタラは巨石へ近づくにつれ、エイゾでの日々が脳裏に蘇る。そのまま巨石に触れようとした瞬間──放送が入った。

「ただいまより発射テストを行う。コアルーム周辺にいる者は即刻退避せよ」

「発射……テスト?」

「離れるぞ。黒焦げになりたくなかったらな」

 コアルームを警報音と赤いランプが照らす。ナーシャは巨石の前で立ち尽くしたままのアスタラを外に引っ張り出す。

「絶好のチャンスだったのに……!」

「急げ! 発射時の放出エネルギーで消し炭になるぞ!」

 ナーシャは悔しそうに舌打ちすると、アスタラを引きずるようにしてソーラの後へ続いた。

 コアルームからある程度離れた所でアスタラを揺り動かす。

「しっかりしなさい……!」

 アスタラが我に返った様子だが、まだぼんやりとしたままナーシャに目を向けた。

「たっく、どうするの?」

「……何をだ?」

「壊すのよね?」

 その言葉にアスタラは視線を迷わせる。

「……じゃあ、どうするのよ? 持って帰るの?」

「……まだ決められない」

「はい? この戦艦に入るって言ったのはそっちでしょ……!」

「私の一族はあの巨石を信仰してきた。それを私の手で……壊していいのか?」

「生き残ったあんたにしかできないことじゃないの?」

 曖昧な返事にナーシャが苛立ち始めた。

「フィーマ様は悪用するのを止めろ、と仰った」

「今更、長老の言うことなんて知ったこっちゃないわよ! 悪用されないことと、壊すことに大差ないでしょ!」

「巨石を壊せば私は……本当にエイゾの民ではなくなる」

 ナーシャは遠い目をするアスタラの顔を無理矢理、自分に向かせる。

「私を見なさい。私はフーを失った。でも誇りを持って生きてるわ」

「……私とお前は違う」

 その返事にナーシャは目を見開き、すぐに目つきを鋭くした。

「それ、どういう意味──」

「早く来い。貴様たちも主砲の威力を見ておけ」

 ナーシャは真一文字に口を閉ざし、横目でアスタラを睨んだままソーラについて行った。

「……私はお前ほど勇気はない……」

 その言葉がナーシャに届くことは無かった。

 

 他の部隊の隊長であろう十数人と、アスタラたち三人が立つ司令室の下の艦橋部分に、数千人近い兵士がまるで見物人のように集められていた。

〈ピースメーカー〉の目前には荒れ果てた惑星があった。雰囲気からして生命体の存在は感じられない。

「あれが目標だ」

 ソーラが静かに言った。

「集光レンズ開放!」

「エネルギー充填良し!」

「主砲開け!」

 スピーカーから主砲発射の手順が整えられていくのが聞こえる。

「発射準備完了しました!」

 兵士からの報告に、アスタラたちのさらに上の制御端末にいた、ソーラと同じ軍服姿の眼鏡の男が頷く。細身で、慇懃な笑みを浮かべているが、目には冷たさが宿っていた。

 隣にいた太った体躯を軍服がきつく包む男に声を掛ける。

「閣下、準備完了しました」

「うむ!」

 二人は懐から制御キーを取り出すとコンソールに差し、同時に回した。

「集光ビーム、撃てェッ!」

 唾を飛ばす勢いで恰幅のいい男が叫ぶ──ピースメーカーの開かれたレンズ部分にレーザーが集まると、白い光は一直線に宇宙を貫き、惑星へ突き刺さった。着弾と同時に惑星表面を白い閃光が走り、球体の半分を覆うほどの光が一瞬で広がっていく。

 艦橋のあちこちから歓声とどよめきが上がった。兵士たちはその圧倒的な威力に目を奪われ、誰も言葉を失っていた。

 一方で、二人もそれを見て背筋を凍らせていた。ナーシャがつぶやく。

「……あんなの、生命体がいる星に撃たせちゃ駄目だわ……」

 アスタラは右腕を押さえた。照射の瞬間、巨石から発せられる理力が悲鳴のように揺らいだ気がした。

 

 主砲披露後は解散となって、二人はあてがわれた部屋に向かう。

「この船、絶対に壊さないと!」

 意気込むナーシャの後ろで、アスタラは目線を落とし頭を抱えていた。

「躊躇ってる場合……⁉」

「分かっている……」

「分かってない!」

 アスタラの胸を指で突く。

「想像、以上の、人が、死ぬの!」

 ナーシャは一歩下がり、壁にもたれて腕を組んだ。

「壊すわよ……それしかない」

 そう言って廊下を進む。その後ろをアスタラは力なくついていく。

「……いい加減にして」

「……ナーシャ」

「あんたね……女子部屋に入る気?」

 怒った顔で振り返ったナーシャに指を差されて見ると、女子寮区画の文字。男子区画をとうに過ぎていた。

「あっ、いや……」

「とにかく今日は休んで、また今度、作戦会議。おやすみ」

 ナーシャは部屋に入っていく。アスタラも一つ息を吐くと部屋に向かっていった。

 

 

「こちらが501整備隊と212突撃隊の隊長二名です。将軍」

 将軍と呼ばれた眼鏡の男はソーラからタブレットを受け取ると、そこに表示された二人の情報へ目を通した。

「アナ・バレイとア=ステラ・ジダイ……なるほど。ノックス大佐」

「はっ」

 将軍は笑みを浮かべながらタブレットを返す。

「結構です。第三部隊の正式稼働を許可します」

「ありがとうございます!」

「素晴らしい働きを期待しています」

「はっ!」

「下がってよろしい」

「失礼します!」

 ソーラは敬礼すると外していた軍帽を被り直し、下がっていった。

 将軍はその後ろ姿を見送る──笑顔から一転、無表情になる。スイッチを押し、ドロイドを呼び出す。

「将軍、いかがしましたか?」

「……ここ数年の賞金首リストを用意してください。照合します」

 将軍はそれだけを言うと、部屋の隅に目を向ける。

 そこにはエイゾを襲った黒い戦士が静かに立っていた。





【挿絵表示】

ソーラ・ノックス CVイメージ 皆川純子氏
※本作の挿絵は、著者の指示・監修のもとAIを使用して生成した「イメージボード」です。
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