銀河全体を危機に陥れる石花病。その治療薬の材料を探すため、私たちは花の惑星ポポ・ロロと、雪山の惑星ルプスの二手に分かれた。
問題はいくつもあったけれど、無事に材料を手に入れ、ラグザにいる人たち全員にワクチンを届けることができたわ。
これで大きな問題は解決したと思っていた。だけど、そこでついに〈ピースメーカー〉の修理が終わったという通信を傍受する。
ラグザのことはソフィアたちに任せ、私たちを始めとする海賊艦隊は〈ピースメーカー〉へ向かう。
銀河の命運を賭けた戦いが、今まさに始まろうとしていた。
〈ピースメーカー〉の元帥執務室に怒鳴り声が響いた。
「いつになったら修理が終わる⁉︎ もう一週間になるぞ!」
「予想外に手間取っている模様です」
顔を赤くしながら喚くモンローに対して、カスムは相変わらず飄々とした表情を変えない。
「なんのための整備だ!」
「閣下の仰る通りかと」
怒鳴っても何も変わらないが、そうしないと気が済まないのだろう。
そして、こういったタイプの人間への対処法を、カスムは心得ていた。
下手に言い返せば火に油を注ぐだけだ。ならば、黙って吐き出させる。それが一番手っ取り早い。
額に血管を浮かばせながら、モンローは意味なく机を叩く。
「ゴルザの件はどうなった!」
「ルプスに到着した後から連絡が取れていません。フローズン・クリスタルの入手でトラブルがあったものかと」
「ならばさっさと確認させろ!」
「ルプスに着けるまでの船は、閣下がすべて出されました。これ以上、〈ピースメーカー〉の人員を割く余裕がありません」
その発言が気に食わなかったのかモンローが机から乗り出す。
「わしの責任と言う気か!」
「そうは言っていません」
水と油のような二人。じつは〈ピースメーカー〉内でも、この二人は派閥争いを起こしていた。旧軍部的なモンローと革新派のカスムで割れつつあった。
なんの生産性も無い会議──一人の将校が入ってきた。
「失礼します! 〈ピースメーカー〉の回路の修理が完了しました」
「結構。私は失礼します」
その報告を受け、あっさりと執務室を出ていくカスム。その態度が気に食わなかったモンローが叫ぶ。
「ギオウ! わしが銀河調和防衛軍総司令官だぞ! 忘れるなぁ!」
「もちろん。私と閣下の二人が、主砲の制御キーを持っていることもお忘れなく」
そう言って微笑むとカスムは部屋を出た。
「あの青二才がっ……!」
修理が完了する前から、食堂は騒がしかった。
兵士たちの笑い声も、食器のぶつかる音も聞こえる。
ただ、一角だけが妙に静かだった。誰も近寄らない隅の席──赤いバイザーを上げたシセルが、一人でドリンクを飲んでいる。その周囲だけ、半径数メートルぽっかりと空席だった。
兵士たちがチラチラとシセルを盗み見る。
「あそこに座る奴なんていねぇよ」
「前に顔を見ようとした奴、首が飛んだもんな」
「やめとけ……」
シセルを見て、そんな囁きが飛び交う。
そこに入口からソーラが入ってきた。トレーを渡され、辺りを見回すが、どこも満席だった。
「……困ったな」
少し歩くと、空いている席はシセルの周りだけなことに気づいた。
ソーラは迷いなく歩いていく。兵士たちがざわめいた。
「おいおい……!」
「ノ、ノックス大佐……」
「気付いてないのか?」
ソーラは、バイザーを上げたシセルの前で足を止めた。
「謹慎中で居場所がなくてな」
トレーを少し持ち上げる。
「ここ、いいか」
返事はない。了承だと受け取ったソーラはそのまま腰を下ろした。
「失礼する」
すでに周囲の空気が凍っていた。誰も食器を動かさない。
シセルは一瞬だけ顔を上げたが、それだけだった。黙って食事を続ける。
ソーラの食器の音だけが辺りに響く。スープを飲みながらシセルを見た。
「貴様」
シセルに遠慮なく話し掛ける。
「細いな」
返事はない。
「ちゃんと食べてるか」
そのやり取りに兵士たちは自分たちの命がかかっているかのように
シセルはゆっくり飲み込むと、ソーラに聞こえる程度の声量でぽつりと言った。
「……食ってる」
「そうか」
ソーラは満足そうに頷く。
「ならいい」
それ以上は聞かなかった。再び静かな食事が続く。
離れた席から誰かがつぶやいた。
「……喋った」
「初めて聞いたぞ」
「なんでノックス大佐は無事なんだ……?」
誰にも分からなかった。
当のソーラだけは、何事もなかったように食事を続けていた。
「これ、少ししょっぱいな」
シセルは何も答えない。それでも、不思議とその席だけは、これまでとは違う静けさに包まれていた。
それからしばらく、ソーラは誰も近寄らない食堂の隅に通った。
「隣、座るぞ」
シセルはいつも通り無言だった。ソーラは返事を待たず、勝手に座る。しばらく食器の音だけが響く。
「どれだけ強いと言っても、その量だと倒れるぞ。私の肉を食べるか?」
そう言って皿を差し出すと、ドリンクを飲んでいたシセルはゆっくり皿を見る。
「……いらん」
「そうか」
ソーラは気にせず肉を食べ始める。
また別の日のこと。
「今日は野菜もあるぞ」
無言を貫くシセル。
「好き嫌いは良くないぞ」
シセルがため息をつく。
「……俺に構うな」
「野菜が嫌いなのか」
「……お前が将校でなかったら、首を
「将校でなくとも、そういうことはするな。私たちは仲間だぞ」
「……知るか」
ぶっきらぼうに返す。
周囲の兵士たちは驚天動地の眼差しで、その光景を見ていた。
そこでシセルがドリンクを置くとスッと立ち上がる──たちまち空気が凍る。
「どうした?」
ソーラを無視し、無言でバイザーを下ろすと、そのまま食堂から出て行く。
誰かが呼吸をした。その時に自分たちが息をするのも忘れていたことに気づいた。
執務室に一人の将校が入ってくるなり、モンローに耳打ちする。
「元帥……お耳に入れたいことが……!」
「なんだ──何? ギオウが海賊どもに情報を流していただと!」
「……間違いないかと」
その報告を聞いたその口元に、悪意ある笑みが浮かんだ。
「あの青二才め。とうとう馬脚を現したか……!」
モンローは将校に指示を飛ばす。
「兵を集めろ! スパイ狩りだ!」
意気揚々と執務室を出ていくモンロー。
その背中を見送った将校は、ひっそりと笑みを浮かべていた。
「ギオウ!」
ブリッジで指示を出していたカスムの下に、モンローが部下をぞろぞろと引き連れてやってきた。
「おや、どうかしましたか。閣下?」
「貴様、海賊に情報を流したようだな!」
カスムは視線を少し泳がせると、テーブルにタブレットを置いた。眼鏡を外し、少し拭いて掛け直す。
「そうですね」
「なんのつもりだ!」
「もちろん、一網打尽にするためです」
「そんなことは認めとらんぞ!」
「言っていませんから。修理を終えた〈ピースメーカー〉を前にすれば、彼らは自分たちの無力さを痛感します」
「貴様一人で銀河を支配する気か!」
「支配などとんでもない──統治するだけです」
「ギオウ! 貴様を、独断専行及び、反逆罪で拘束する!」
カスムは後ろ手に組まされると拘束具を付けられ、テーブルに押し付けられる。
「……まさか」
そこに食堂からシセルがやってきた。
「シセル、この男を拘束室に放り込んだのち、処刑しろ!」
シセルは指示を聞くと、カスムに向かっていく。
「……ここまでスムーズに進むとは」
カスムは拘束された両手をわずかに動かす──すると、シセルの足が止まった。
「シセル? どうした、おい!」
カスムは体勢を整えると、二人に向き直る。
「やはり、感情的なあなたの下に、シセルを置いておくのは危険すぎる」
カスムの腕から赤いレーザーサイトがモンローの胸に伸びていた。
「貴様、何を……⁉︎」
「私は座して死を待つような、間抜けではありません。すでにシセルの指示権は私に移しました」
腕を見せる。そこにはホログラムの操作装置が浮かんでいる。
「シセル、調和を乱す反逆者です。処刑しなさい」
次の瞬間には、モンローの胸に赤い光刃が貫いていた。
「……なん、だと……⁉」
「あなたのマヌケ面に頭を下げるのはうんざりしていたところです。ご安心ください、私の計画は順調ですよ」
モンローからすれば訳が分からないまま、地面に倒れ伏す。
モンローが倒れた瞬間、シセルがセーバーでカスムの拘束具を切り落とした。
「さて」
カスムはモンローの服に手を突っ込む。
何人かの将校が動けずにいたが、この状況の異変に気付き、反射的にブラスターへ手を伸ばす。
それを、シセルは赤いバイザー越しに、ただ見ている。
数秒の沈黙があり、将校たちは、ゆっくりと手を放す。
「ありました。制御キーを身に着けていてもらって助かりました」
ブリッジの静まり返った空気の中で、カスムは周囲を見渡す。
「元帥は、不運にも海賊の攻撃によって亡くなりました。いいですね?」
誰も答えない。シセルが無言で背後に立つ。
「これからは私が全指揮を取ります」
誰も動かない。その中で、カスムだけがゆっくりと元帥席へ歩み寄り、腰を下ろした。
「以後、私を元帥、あるいは閣下と呼ぶように」
誰も祝福しない。命令に従うと決めたのか、逆らう気を失ったのか──ただ、沈黙だけがブリッジを包んでいた。
カスムはモンローの死体を一瞥する。
「誰か、そこの贅肉の塊を捨ててきてください。目障りです」
そこでソーラがドリンクを片手にブリッジに入ってきた。
「見つけたぞ。シセル、食事を残すのは良くない……何が?」
そこで足を止める。目の前を、元帥だった男の死体が将校たちに引きずられていく。
「あぁ、ノックス大佐」
カスムが、まるで何事もなかったかのように声を掛ける。
「見事な立ち回りでしたね。最後までどちらの陣営にもつかなかった」
「はぁ……」
ソーラとしては、ただ軍人として二人からの命令を受け、遂行していただけにすぎない。派閥争いなど、知ったことではなかった。
「将軍、一体何が──」
「元帥です」
現場を見ていなかったソーラには、何が起きたのかさっぱり分からない。だが、有無を言わせぬ空気を感じ取り、少し目を泳がせてから頷いた。
「結構。艦内に至急、戦闘配置の号令を」
カスムが淡々と命じる。直後、艦内にけたたましいサイレンが鳴り響いた。
「戦闘配置? 誰との戦闘ですか?」
「そういえば、大佐にはお伝えしていませんでしたね」
カスムは悪びれる様子もなく、眼鏡を押し上げる。
「もうすぐ、海賊が大挙して押し寄せてきます」
「はい?」
その瞬間、ブリッジ前面のスクリーンが切り替わった。
暗黒の宇宙を埋め尽くすように、次々と宇宙船がハイパースペースから姿を現す。その数は、瞬く間に増えていった。
「……海賊艦隊」
カスムはスクリーンを眺めながら、薄く笑った。
「ええ。予定通りです」
席を回すと、ソーラと向き合う。
「ノックス大佐。現場復帰です。212突撃隊を率いて、コアルームの防衛に当たってください」
その言葉に、ソーラがハッとした。自分が隊長に任命した二人が〈ピースメーカー〉内に侵入してくると、カスムは言っているのだ。
「……まさか、来るとお思いですか? あの二人が」
「来ますよ。あの二人は必ず来る。私が思いもよらない方法で──だから対策する」
ドックのモニターに、〈シナトベ〉が突然映し出された。
「来ましたね。大佐。指示通りに」
ソーラは口をもごもごと動かす。
「……承知しました。元帥」
そう言って、ブリッジを出て行った。
「シセル。侵入者を、抹殺しろ」
淡々と命令を下すと、シセルも頷きもせず、ブリッジを出た。
〈ヒトリガ〉の作戦司令室に頬を赤らめたナーシャと、鼻を抑えたアスタラが入ってくる。
「どうしたんだい?」
「……私にも分からない」
アスタラの返事にドゥルダがキョトンとしていると、ナーシャが少し距離を取った所で腕を組む。
「……まあいい。作戦会議だよ」
〈ピースメーカー〉のホログラムを出す。
「主砲をぶっ壊すのは変わらない。問題は、どうやって中に入るかだね」
「強固なシールドに守られてます」
「シールド発生装置は?」
「外には剥き出しにはなってません」
「ギオウの奴が、そんな分かりやすい弱点は残さないだろ」
「アスタラ。あんた、理力でトラクタービームを切ったでしょ、シールドも切れない?」
ナーシャがアスタラの顔を見ずに尋ねる。
「その前に集中砲火されなければな」
全員が侵入方法に頭を抱える。
「隙間でもあればねぇ……」
「……隙間? アスタラ」
ナーシャが声を掛け、二人が顔を合わせる。
「カーティスでのこと、覚えてる? ポッドレース。二人乗りのポッドレーサーで、廃工場がレース場。勝手に動くマシンに、開閉するシャッター」
「……猛スピードで中に飛び込む気か?」
「正確には、ハイパースペースを利用してシールドをすり抜ける」
「少しでもズレたら、〈ピースメーカー〉のどこかと正面衝突だぞ」
「だから、あんたの力がいる」
「目の前の障害物を避けるのと、突然現れる空間では
「巨石の反応が追える、あんたにしかできない」
アスタラは難しい顔をして頭を押さえる
「ダイス。ハイパースペースの計算、頼むわよ」
『はあ? 冗談だよな?』
「たかだか幅六百メートル、高さ三百メートルの隙間に入るだけよ」
『離れてる相手に、それがどんだけ難しいことか分かってんのか⁉︎ オイラ、嫌だぞ!』
「泣き言言わない。あんたがいないとハイパードライブが動かないの。縛り付けてでも繋ぐから」
『おいー!』
両腕のアームを振って拒否するダイスを無視し、ドゥルダに顔を向ける。
「船長。〈ピースメーカー〉を可能な限り動かないように足止めして」
「……分かったよ。任せな」
「あとは……私のセンスでどうにかする」
〈シナトベ〉のコックピットに座る二人。後ろには縛りつけられたダイスと、破壊工作要員としてパドゥが控える。
〈ヒトリガ〉のドックから出ると、海賊艦隊の中で小さな〈シナトベ〉が並ぶ。
「幸運を祈るよ」
「そっちもね、船長」
ナーシャがハイパードライブ・レバーに手を掛ける。
「……死ぬかもしれないぞ」
「その時は、その時」
前を見たまま答えた。
「作戦開始!」
通信機から声が聞こえると同時に、〈シナトベ〉はハイパースペースへ跳び込んだ。
ドゥルダは青白いハイパースペースを見つめながら、ふと、あることを思い返していた。
「ドゥルダ!」
〈ヒトリガ〉に乗り込む直前、アスタラとナーシャを予言したミリアランの老婆が歩いてきた。
「予言狂いじゃないか。まだお迎えが来ないのかい」
「どうとでも言いな。勝敗を占ったよ」
「頼んでもないのにやるんじゃないよ、クソババア。……勝つのかい?」
「……勝つ」
だが、老婆の顔色は優れないまま続けた。
「ただし、大きな代償を払うことになる」
「戦いってのはそういうもんさね」
「気を付けな。あんたが、とは言ってない」
その言葉に引っ掛かりを覚えつつ〈ヒトリガ〉に乗り込んだ。
〈ママ! もうすぐ、目的地に着くよ!〉
ビッキーの言葉に我に返り、前を向く。
「……お前さんたち、やるよ! 気合い入れな!」
ハイパースペースから飛び出した先には、遥かに巨大な戦艦が浮かんでいた。
アスタラは目を閉じ、理力を集中させる。ハイパースペースの向こう側にある〈ピースメーカー〉の構造を感じ取り始めていた。
巨大な艦体に、無数の海賊船。その奥にあるドック。〈シナトベ〉の速度、進行方向、復帰する位置。ほんのわずかな誤差が、死に繋がる。
ナーシャがハイパードライブ・レバーに手をかけた──その手に、アスタラが手を重ねた。
「……今だ!」
二人でレバーを倒す。視界が一瞬で反転した。
〈シナトベ〉がハイパースペースから通常空間へ復帰する。
目の前に現れたのは、〈ピースメーカー〉の巨大なドックだった。
「入った!」
ナーシャが叫ぶ。
〈シナトベ〉がドックの床を掠め、激しい火花を散らしながら滑走する。そのまま大きく跳ねた。
「っ……!」
ナーシャが操縦桿を引く。
機体が激しく揺れるが、〈シナトベ〉は姿勢を立て直し、ドックの中を滑っていく。やがて、轟音とともに停止した。
しばしの沈黙のあと、ナーシャがゆっくりと息を吐く。
「……どう?」
アスタラは窓の外を見る。ドックのど真ん中に着地していた。
「……成功した」
ナーシャがニヤリと笑う。
「当たり前でしょ」
背後のハイパードライブが、まだ低く唸っていた。
〈シナトベ〉から三人が降りる。
ドックの外では、海賊艦隊と〈ピースメーカー〉が激しい砲撃戦を繰り広げている。レーザー砲の光が、次々と暗闇を切り裂いていた。
「急がないと、あまりもちません!」
「そうね。……ダイス!」
ナーシャがコックピットへ声を掛ける。
『なんだ!』
「銃後は頼んだわよ!」
『お、おう?』
「行きましょう」
パドゥがタブレットを手に先導し、三人は艦内を走り始める。
かつて一時的に滞在した場所とはいえ、三人にとって〈ピースメーカー〉の艦内は久しぶりに見る光景だった。
「コアルームはこっちです!」
近道になるブラスト・ドアが開く──赤いバイザーの黒い戦士が待ち構えていた。
「……シセルだ」
〈ピースメーカー〉一の戦士の姿に、パドゥが唇を震わせながらつぶやく。
「先に行け」
邪魔になるマントをパドゥに渡すと、アスタラが前に出た。
「でも……!」
「この戦士とは因縁がある。私が引き受ける」
「……行くわよ! 別の道はない?」
パドゥの手を引き、ナーシャが別の通路に走っていく。
シセルを見据えながら、セーバーを起動するアスタラ。青い光が通路を照らす。
「……お前が私の故郷を滅ぼしたのか」
シセルは答えることなく、長い柄のセーバーを抜く。赤い光が通路に重なった。
パドゥの案内で迷路のような〈ピースメーカー〉の中を走る二人。
「こっちです!」
ある曲がり角を曲がる。金髪の将校と出くわした。
「ソーラ⁉」
向こうも驚いた表情を浮かべる。
「……バレイ? 貴様、本当にここまで……」
「どういう意味──」
そこにかつてナーシャが率いた212突撃隊の部隊が現れる。ナーシャは咄嗟にソーラを人質に取り、その頭にブラスターを突きつけた。
「動くな!」
「えっ、隊長⁉」
「元よ!」
ナーシャが言い返す。隊員たちはブラスター・ライフルを構えた。
「パドゥ、私たちの後ろに……!」
ソーラを盾にして、三人はじりじりと後ろに下がる。ソーラは抵抗する意思を見せない。
「大佐、ブラスターはどうされたのです⁉︎」
「……おいてきた」
「え?」
そこにいた全員が動きを止め、聞き返す。
「携帯するには重いから部屋に置いてきた」
「ええっ⁉︎」
ナーシャを含む全員が驚愕の声を上げる。
「艦内で前線に立って撃ち合うことは、想定していなかった」
そんなやり取りをしている内に、コアルームに続くブラスト・ドアが見えてきた。
「……ナーシャさん、行き止まりです!」
「開けて」
パドゥがブラスト・ドアに走っていく──ソーラが手を広げた。
「な、何してんの……?」
「撃て。私は軍人として死ぬ」
「はい⁉」
慌てるナーシャに対し、隊員たちは目配せすると、ブラスターを構える。
「ちょっと待って! あんたたち、司令官撃つ気⁉︎」
時間稼ぎをしたいだけのナーシャだが、隊員たちからすれば、人質を取っている相手からの発言に困惑する。
「構うな。撃て」
「撃っちゃダメ!」
二人から正反対の指示を受けるたび、ブラスターの銃口が上がったり下がったりする。
「駄目です! プロテクトが硬くて……!」
「開け方を教えて!」
「敵同士だぞ。答えられるわけないだろう」
手の打ちようがない。ナーシャはそう思いながらも、ソーラを盾にしたまま、少しずつ後ろへ下がる。
「やめろ。あまりドアに近づくな」
「なんで──」
ソーラが答えるより先に、艦内アナウンスが響いた。
「ソーラ・ノックス大佐を確認。ブラスト・ドア、解放」
重い音を立てて、ブラスト・ドアが開く。
「……生体認証式なんだ」
「……パドゥ、入って!」
三人がコアルームへと滑り込む。ナーシャはソーラを隊員たちへ押し返すと、そのまま制御端末を撃ち抜く。直後、ブラスト・ドアが閉じた。
「なんとかなりましたね……」
「そうね……でもここからが本番よ」
二人が振り向く。そこには──主砲のエネルギー増幅器に設置された巨石が、まばゆい光を放っていた。