【TS】兄だった人は姉になりました。   作:R884

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私の歌を聴けぇ!

「次は飛び入りで参加のお姉さんです。あ、副会長の推薦ですね、それではどうぞ!曲は……」

 

 

体育館のステージにコツコツと歩いてくる女性、その手には黒いエレキギターが握られている。

黒のギブソン・レスポールクラシック、白のワンピースとのコントラストが際立つ。

 

ざわつく会場。

 

「うわぁ、綺麗な人」

「脚、長っ!顔、小さっ!芸能人?」

 

女性がステージ中央に立つとサングラスを外し、スタンドマイクの前に立った。

 

「Aimerで残響散歌、歌います!」

 

カラオケの機械から流れてくるメロディに合わせてギターを構え、ピックを持った右手が振り下ろされる。

 

ジャージャジャッジャ、ジャカジャーーーーッ

 

「「「「「ウワァーーーーーーーーーッ!!」」」」

 

カラオケ大会でエレキギター弾き語り、場違い感はあるが学祭だから許容範囲だ、つかみはOKである、後は歌い出しだ。

 

「だぁ~れ♪ LaLaLaLa〜」

 

少しハスキーで良く通る声が体育館に響き渡る。

 

「「「「「ウオォーーーーーーーーーッ!!」」」」

 

 

いきなり飛び入りで、めっちゃ綺麗な姉ちゃんが弾き語りなんぞしたら、そりゃ大盛り上がりだ。

体育館が歓声でビリビリと揺れる。

 

 

 

 

 

「おいおいお兄ぃよ、いきなりそれはないだろ」

 

クラスのクレープ屋が一段落したので体育館に来てみれば私の兄がやらかしていた、兄とはカラオケにはよく一緒に行った事はあったが、いつもは男性ボーカルの洋楽ロックばかり歌っていたのに、今日はAimerでアニソンか~、そのちょっとハスキーな今の声にはぴったりの曲じゃねえか。

 

「すっげ上手(うま)!」

「誰?プロ?」

「ギターも完璧じゃね、これカラオケの音源じゃないよね」

「うん、原曲とアレンジ違う」

 

ジャージャジャッジャ

 

 

ステージの横ではギターを貸したと思われる軽音部の男子生徒が驚いている、自分が貸したギターと熱唱する兄をじっと見つめていた。

 

「カッコいい……俺のギブソンが輝いている」

 

 

その横では陽子が手を合わせて目を潤ませている。

 

「お姉様、凄い!素敵!」

 

 

ジャカジャン!

 

「サンキュー!チュッ」

 

「「「「「ギャーーーーーーーーーッ!!」」」」

 

おいおい、カラオケ大会で投げキッスはないだろ、ノリノリだなお兄ぃ、この雰囲気どうすんだよ。

 

 

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ

 

鳴り止まぬ拍手と歓声、司会の生徒も会場の雰囲気に呑まれつつながら、自分の役割を思い出したようにマイクを握る。

 

「いやぁ、お姉さんめっちゃ上手かったですね、プロじゃないですよね!」

 

「ただのカラオケ好きお姉さんで~す」ピースピス

 

インタビューを受けながらピースサイン、あのお調子者め、お前はウマ娘のゴルシか。

 

「あ、点数が出ますよ、さぁどうでしょうか~」

 

♪♫79点

 

「「「「「エェーーーーーーーー~ッ!!」」」」

 

「あちゃー、やっぱ初めての曲だとそんなもんよね」

 

アホか、採点カラオケが弾き語りで点数上がるわけないだろ、しかも原曲アレンジしまくってるじゃねぇか。それでその点数なら上出来だっつうの、採点機能舐めんな。

 

「お姉様の歌が100点じゃないなんて機械が壊れてるんじゃないの、アンコールを要求します!」

 

陽子、アンコールは多分ないぞ、後ろに次の生徒が待ってる。

 

 

 

兄は観客に笑顔で手を振りながらステージを去ると、真っ先にステージ奥に立っている男子生徒に駆け寄る。

 

「ギターありがとうね。どうだったお姉さんの歌?」

 

「さ、最高にカッコ良かったっす!!」

 

少年の言葉にニヒッとイタズラっぽく笑うと親指を突き出して陽子の方に行ってしまう。

 

ズキュン!

 

「………………」

 

少年は言葉が出なかった。顔真っ赤だぞ。

きっとこの少年は、一生お姉さんタイプの女性としか付き合えないトラウマに苦しむだろう。

 

 

 

 

 

「お姉様、陽子は感激しました!なんて凛々しいお姿、今度は絶対に私とカラオケに行きましょう!」

 

「はは、この声だと歌いやすかったな、それに声量も思ったよりあったし」

 

「好きな歌だったんですか?」

 

「いや、藤崎がよく裏声で歌ってたから気持ち悪くて逆に覚えちゃったんだよね」

 

ペシィ

 

「お」

 

後ろから頭を軽く叩かれて、振り向けば春夏が腰に手を当てて立っている。

 

「何やってんのよ、ギターまで弾いちゃって!この雰囲気、次に歌う子が可哀想でしょ」

 

「ハハ、悪い、ついノリで」

 

ため息をつく春夏。

 

「後、放送部でさっきのステージ動画で撮ってたからネットに上げられるわよ」

 

「マジで」

 

「あぁ、そう言えば放送部で学園祭の様子をyoutubeでライブ配信してるって言ってました」

 

陽子が思い出したように言う。

 

「あ~もう流れちゃった後かぁ~、会社関係の人が見ない事を祈ろう、恥ずい」

 

 

うん、反省して落ち込んでるようにしてるけど、あれは早く家に帰ってタバコ吸いたいって顔だな、妹の私にはわかるんだぞ。

 

 

 

 

後日、このライブ配信は思いきっりバスった。

 

丸ちゃん先輩からは速攻で電話かかって来たし、陽子の父親からもお褒めのメールが来た、藤崎には何故かダメ出しされて歌唱指導された。

会社関係には結構バレまくった。

 

 

それで事が済めば良かったのだが……。

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