【TS】兄だった人は姉になりました。   作:R884

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後の祭り

ミュージックセッションの収録が終わりゾロゾロと観客がスタジオから出てくる。

出てくる観客らは皆、満面の笑みを浮かべながらUTUMIの話題で盛り上がっていた、今日は10組の出演があったにも関わらずトップバッターのUTUMIの話で持ちきりだった。

それほどのインパクトをUTUMIは与えたのだ。

 

「……最高だった」

「UTUMI良かったなぁ、凄えカッコいい」

「あの会場中に響く歌声、痺れたわぁ」

「あの網タイツの長いおみ足で踏まれてぇ!」

「ギターも超上手かったよな、ソロパート完璧だった」

「ギターも良いけど、圧倒的なのはあの迫力ある声でしょ」

「私、涙が止まらないんですけど」

「あぁ、お姉様♡今度はいつお会いできるのかしら」

「スラリと高い身長にあのちょっとハスキーなお声、きっと男装してもカッコいいわ!」

 

「て言うか、検索かけてもうつみ宮土理しか出ないんだけど、ケロンパ?」

「本当だ、ダウンロードにも見当たらない」

「MVとかYouTubeに上がってないの?」

「えっ、あれ?……UTUMIってどこの事務所?」

「?????」

 

「「「「「どう言う事?」」」」」

 

 

 

 

 

兄達が収録を終えて楽屋に戻ってくる。

 

「お姉ちゃんお疲れ!結構カッコよかったよ」イエ〜イ

 

パチンと兄とハイタッチ。

頑張ったんだからこれぐらいは褒めてあげないと可哀想だよね。

 

「そうだろそうだろ、ちゃんとミスなく最後まで弾き切ったからな!」

 

「「ワハハハハ」」

 

「いや、あの歌を聴いての感想がそれ」

 

光さんが呆れたように呟く、光さんもベンベン大っきい音出しててカッコ良かったよ。

あ、穂奈さんもお疲れ様で~す。太鼓叩くの上手いっすね。

 

穂奈さんと光さんが近寄って来る。

 

「やるわね貴女、私もドラム叩いていて楽しかったわ」

 

穂奈さんが兄の肩をポンと叩いて褒める、光さんもそれに続く。

 

「私も凄く燃えたわ!ツアーがあるからいつでもって訳にはいかないけど、都合がつくときはまた一緒にI演《や》りましょうよ」

 

「そうですね、私も普段は仕事がありますから、時間が取れた時は是非」

 

「え、UTUMI。貴女もどこかのグループを掛け持ちでやってるの?デビューしたんでしょ」

 

「私、今日はお試し体験の仮デビューで、普段は別の仕事で広告業やってるんですよ」

 

「「はぁぁ〜!!」」

 

穂奈さんも光さんも揃って大声を上げる、あぁ、中山さん、皆さんに色々話してないんだな、そう言えばどこ行った?

 

カチャ

 

「やぁ、内海さん素晴らしいライブでした!穂奈さんも光さんも今日はサポートありがとうございました」

 

あ、中山さん来た。

 

「で、どうでした内海さん、ライブをやってみて楽しかったでしょ」

 

「はい!凄く楽しかったです、貴重な体験でした」

 

「それでは、お約束通り!」

 

「はい、でもしばらくは今のデザイン会社と兼業でやりたいと思います」

 

「兼業…………そうですか、内海さんならこれ1本でも十分食べていけるんですけどね」

 

やっぱりね、兄はギターも好きだけどデザインの仕事も好きなんだよね、じゃあアーティスト業はアルバイトか、時給はいくらだろ?

 

「ちょ、中山さん!それって、UTUMIちゃんなら絶対売れるって、もったいないよ!」

 

光さんが兄の会話に割り込んでくる、え、売れるっていくらくらい儲かりますか?

 

「そうね、私もUTUMIさんはアーティストで十分いけると思うわ」

 

あら、穂奈まで。

あ、中山さん、悪い顔してる、こうなる状況を読んでたな。お二人を巻き込んで説得するつもりか。

 

「いや~光さん達にそんなに褒められると悪い気はしないですね、でも私程度で売れる、そんな簡単な世界とは思ってませんよ〜」

 

最近のアイドルは皆んな10代でデビューだし、お兄ぃはもう25歳だしね。

ん、そう言えば兄は男の時の常識で言ってるんだよね、男の時はカラオケとギターが好きな一般人だもんな、でも女になった今の状況ならワンチャン…。

この前の学祭も今日のライブも凄い盛り上がってたもんな。

 

「「「…………」」」

 

兄が笑顔でそう言うもんだから、3人とも黙っちゃった、あぁ、複雑な顔してる。

 

「まぁ、その話はこの後の打ち上げの時にでもしましょうか」

 

お、中山さん仕切り直すつもりだね、でもね。

 

「ああ、中山さん、私も明日は会社あるし、春夏も学校なんですよ。もう5時過ぎだしすみませんが、今日はこれで長野に帰ります」

 

「そんな〜、今日は銀座の美味しい寿司屋に招待しようと思ってたのに」

 

「えっ、お寿司」ゴクリ

 

「お姉ちゃん、ダメだよ、私まだ家に帰って宿題しなきゃいけないんだから」

 

「は〜い、わかったぁ〜」

 

これ以上ここにいたらどう言う話になるかわからないね、陽子のアドバイス通りさっさとずらかるに限る。

私は兄の腕をさっさと掴んで、中山さんに別れを告げる。

 

「じゃあ、皆さん今日はこれで失礼しま~す、あ、帰りはタクシー使うんで大丈夫ですよ」

 

 

バタン

 

「「「…………」」」

 

 

残された中山と光と穂奈の3人はお互い見つめ合う。

 

「私達だけでお寿司食べに行きますか?奢りますよ」

 

「「ゴチになりま〜す」」

 

 

 

 

後日、兄の口座に振り込まれたギャラに二人して気絶しそうになる。

 

「ボ、ボーナスどころの金額じゃないぞ……」

 

「ねえ、お兄ぃ、私欲しい靴があるんだけど……」

 

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