【TS】兄だった人は姉になりました。   作:R884

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そうは言っても

ミュージックセッションの放送から3日後、スタジオエムの事務所にて。

 

「ねぇねぇ、内海くん、今日は飲みに行ってカラオケに行こか!そしてミュージックセッションでやったの歌って!」

 

「丸ちゃん先輩、抱き付かないで、それにあの曲まだカラオケになってないから!」

 

「そうなんだ。じゃあいつカラオケに入るの?」

 

そんな可愛い感じで首を傾げるな、ドキっとするやろ。

 

「さぁ?カラオケの仕事って歌ってる本人がやるのかな?」

 

「それにしても内海、お前あんなにギター上手かったっけ?」

 

丸ちゃん先輩に抱きつかれてると、藤崎がモニターを見ながらマウスをカチカチさせながら聞いてくる。

飲みに行くならお前も絶対付き合えよ、今の丸ちゃん先輩と二人きりじゃ身の危険を感じる。

 

「あぁ、なんか女になったら上手くなった、体質改善?こう、聞こえる音が自然とわかるって言うの?」

 

藤崎がポンと手を叩いて俺の方に向いた。

 

「絶対音感!」

 

「それだ!HOTOMIさんのデモ音源も何回か聴いたら、タブ見なくても弾けたのよ、凄くない?」

 

「へぇ、広告作るのにはまったく意味ない才能だけどな…………女体化で脳の構造に影響が……」

 

藤崎が呆れたような顔をする、俺のギターの師匠のくせに何言ってんだコイツ。

あ、そこのタイトル文字もちょっと小さい方がオシャレでカッコ良いいぞ。

 

「いや、しばらくはこの仕事と歌手の両方やる予定だから、絶対音感あれば便利ちゃあ便利だぞ」

 

「両方って、休みなくなるぞ、大丈夫か」

 

「中山さんから毎日電話やメール来るんだもん、仕方なくね、まぁ週末だけだしちょっと頑張ってみるわ、あ、そうなったらバイト代の確定申告って中山さんに相談すればいいのかな?」

 

「もう歌手の方が儲かるんじゃないのか?」

 

「だって俺、じゃない私この仕事も好きだし」

 

「フ、ま、無理はすんなよ」

 

なんだよ藤崎、その笑みは。ちょ、丸ちゃん先輩まで、馬鹿にしてんのか。

ちくしょう、外回り行ってこよ。

 

 

 

ヴァボボボ

 

「あ、UTUMI。じゃなくて内海さん!!」

 

外回りで諸橋(もろはし)さんの会社に来ると、何故かビックリした顔をされた?

 

「あ、諸橋さん、おはようございます、今日もお綺麗ですね、輝いてます」

 

「ありがとうございます、でもUTUMIさんの方が…ってあれ?」

 

「?」

 

「あの、今日は何の誤用で?」

 

諸橋さんが首を傾げると、そんな事を聞いてくる、え、会いに来ちゃ駄目ですか?ショックだなぁ。

 

「え、前回打ち合わせしたチラシのラフ案が出来たので、お持ちしたんですけど」

 

ピラピラとプリントした紙を諸橋さんに見せる。

 

「まだお仕事を続けるんですか!!」

 

「あ〜、もしかして諸橋さんもミュージックセッション見てくれたんですね、ちょっと恥ずかしいなぁ」

 

諸橋さんは、おそらくこの前のTV出演で、エムを辞めたと誤解したのだろう。今時TVに1回出たぐらいで会社を辞める博打のような軽率な事はしませんよ。

 

「そんな!UTUMIさん、凄くカッコ良かったです!」

 

諸橋さんが顔を赤らめて力説してくれる、お気に入りの社員さんに、褒められただけでもTVに出た甲斐があったってものだ。

良きかな、良きかな。

 

 

 

 

 

ヴァボボ

 

次に行ったのは桐山部長の所だったのだが、行った早々に変な話になった。

 

「CM出演ですか?」

 

「どうだろうか、プランニングとコンテ、それと内海さんの出演込みでエムさんで受けてくれないか」

 

「う〜ん、CMコンテは何回かやってるからいいですけど、私の出演って要ります?」

 

う〜ん、別に1回TVに出ただけで、俺はタレントではない、女性のモデルだったら普通に紹介出来るのだが。

 

「もちろん!市内のワイン工場のCMなんだが、やはり絵的に華が欲しくてね、内海さんならちょうどいい年齢だしね」

 

ま、ワインのCMとなれば未成年と言うわけにもいかないしね、俺の歳ならちょうど使いやすいか。

 

「ちょっと、待ってくださいね」

 

ポチ

 

「あ、社長、CMのお仕事なんですけど受けちゃって大丈夫です?」

 

いけね、流石にこれだけじゃどうこう判断できないか、スケジュールは聞かないと。

 

「桐山部長、スケジュールは?」

 

桐山部長が電話の邪魔にならないようにメモにスケジュールと予算を書いて見せる、えっ、そんなに予算あるの?多くない?

 

 

「そうです、4月から流すそうです、撮影は信濃映像さんで、コンテは私が来週までに描きますから」

 

ポチ

 

「大丈夫そうです、桐山部長は何かイメージしてるものはありますか?」

 

「そうだね、なるべく背景はシンプルに、UTUMIさんが優雅にグラスを持って微笑むみたいな感じで、BGMはUTUMIさんが歌ってもいいですよ」

 

「なんかそれだと絵的に私のイメージしか残らないような…」

 

とりあえず、それでコンテ描くけど、大丈夫?スポンサーさん文句言わない?

CMなんて滅多に関わる仕事じゃないから、緊張するな。

 

ヴァボボ

 

 

 

 

 

内海が帰った後の社内にて、桐山部長が窓の外を見ながら呟く。

 

「ふむ、陽子から聞いてはいたが、内海さんは本当にこっちの仕事も続けるんだな」

 

応接室に部下の藤野が慌てた様子で飛び込んでくる。

 

「桐山部長、内海さんってあのUTUMIなんですよね!CMに使えるんですか!」

 

「ダメもとで言ってみたんだが、すんなりOKしてもらえたよ、こっちがビックリだ」

 

「マジですか!で、ギャラは?」

 

「芸能タレント使う時の5分の1の金額を提示したんだが、やっぱマズイよな〜」

 

桐山も地方のモデル派遣よりは高い額を出していたが、全国区の知名度を誇る人材を使うCMとなると桁が違うのだ。

 

「うわぁ、バレた時の事考えれば、一応半額くらいにはしといた方が良いと思いますよ、絶対!後で揉めますよ」

 

「そうだよな〜、スポンサーを説得してくる」

 

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