【TS】兄だった人は姉になりました。   作:R884

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ギタリズム

ヴァボボ

 

「ん?」

 

外回りから事務所に帰ってくると、駐車場になんか凄い車が停まっていた。

まさか、また中山さんじゃないだろうな、でもハイエースじゃないしな。

おぉ!このエンブレム、アストンマーチン V8ヴァンテージか、かっちょええ!これっていくらするんだっけ。

 

事務所の前では藤崎がタバコを吸いながら体を揺すっていた、何イライラしてんだよ、俺を待っていたのか?

 

「やっと帰って来た!おせえよ、内海!」

 

「むっ、なんだと、せっかく美味しいCMの仕事とってきた者に対して、その口の聞き方はどうかと思うぞ」

 

「いや、CMなんざどうでもいい、いいか、落ち着いて聞けよ、M-HOTOMIさんがいらっしゃっておられる、世界的ギタリストのM-HOTOMIだぞ!しかも本物!」

 

「はぁ?」

 

偽物っているのかな?モノマネ芸人とか。

 

 

 

 

事務所に入れば、確かにソファーに座った背の高い細身の男性が居た、黒のジャケット似合ってるなぁ、カッコいい。

その正面には丸ちゃん先輩がチョコンと座っている、あ、気づいた、こっち来た。

 

「お、お帰りなさい内海くん、ホ、ホトミさんが突然いらして、私インスタントコーヒーなんかお出しちゃったけど、だ、大丈夫かな?」

 

ハハ、テンパってる丸ちゃん先輩を見たら少し落ち着いた。よし。

 

 

 

「お待たせしました、HOTOMIさん。内海です」

 

ソファーに座るHOTOMIさんに挨拶する、あ、ギターケースだ、どれが入ってるんだろう?やっぱフェルナンデスかな。

 

「君がUTUMIちゃんか、初めまして今回君の曲を作曲をさせてもらったHOTOMIです」

 

HOTOMIさんが立ち上がって握手を求めてきた、立ち上がると迫力増すな、うわうわ、指先硬え、この手が数々の名曲を。

 

モニモニ

 

「へぇ、綺麗な手をしているね、とてもあの曲を弾いた手とは思えないな」

 

HOTOMIさんにマジマジと俺の手を見られる。

あ、そうか男の時だったらギターダコの出来たゴツゴツした手だけど、今はまだまっさら状態だもんな。

 

「いや、疑うわけじゃないんだ、実際に弾いてる映像も、音も聴いているからね」

 

「あ、ありがとうございます。そ、それで本日は…」

 

世界的ギタリストが俺を訪ねて来るなんて、やべサイン貰っといた方が良いかな。

 

「大した理由はないんだ、ただこの前の演奏を聴いて君に興味が出てね、会って見たくてロンドンから戻ってきてしまったんだ」

 

「「ま、マジDE!」」

 

おい、藤崎いつの間に隣に来てんだよ。あ、丸ちゃん先輩までいつの間に。

 

 

 

 

 

 

 

アミュズプロダクション喫煙所で、機嫌良さげに紫煙を(くゆ)らす男が居た。

 

「あれ?中山さんどうしたんです、そんな機嫌良さそうにしてニマニマと」

 

「いや何、ちょっと内海ちゃんを口説くのにどうしようかなと思っていたら、今朝HOTOMIさんが私のとこにやって来てねぇ」

 

「えっ、凄いじゃないですか、今ロンドンに住んでるんですよね、戻ってきたんだ」

 

「そう、それが突然やって来てUTUMIの住んでる場所を教えろって、教えたら長野に行って来るって飛び出して行ったよ」

 

「マジっすか、直々にスカウトしに来たンスか」

 

「フフフ、流石にHOTOMIさんに直接スカウトされたら内海ちゃんも断れないでしょう、内海ちゃんギター大好きだしね、フフフフ」

 

「中山さん、悪い顔してますよ」

 

「ハハハ、これでUTUMIを本格的に売り出す事が出来る」

 

中山は吸っていたポールモールを灰皿で揉み消すと、笑いながら自分のデスクに戻って行った。

それを見た部下がそっと呟く。

 

「うわぁ、UTUMIもえらい人達に目つけられちゃったなぁ、南無」

 

 

 

 

 

 

 

 

「60を超えて、こんなカッコいい曲を作れるなんて本当に尊敬します!流石です」

 

「HAHAHA、こう見えて曲を作るのは得意なタイプなんだよ、もちろん弾くのも得意だけどね」

 

「「知ってます!」」

 

あ、藤崎と声かぶった。

しかしHOTOMIさん、イメージと違って話しやすいな。

 

「そう言えば中山さんにUTUMIちゃんはお酒が好きだと聞いたけど、シングルモルトは大丈夫かな」

 

HOTOMIさんが机の上にロゴ入りのシルバーの箱をコトリと置いた。

 

「そ、それは、幻のアバンギャ…」

 

HOTOMIプロデュースで販売したシングモルトウイスキーじゃん、これって凄い高かったよな。しかもオリジナルロックグラス付き!

藤崎の奴、ファンだから凄え飲みたがってたよな、こうしてみんなの前で見せられたら一人じゃ飲めないな、後で何言われるかわかったもんじゃない。

 

「手前味噌で悪いけどね」

 

「いえ、最高です!あ、あの、HOTOMIさんお時間ありましたら、この後私の家で一緒に飲みませんか、まだお話も聞きたいし」

 

「いいね、別にスケジュール空いてるし、UTUMIちゃんのストラトも聴きたいな」

 

隣に座ってる二人も。

 

「藤崎も丸ちゃん先輩も来るでしょ」

 

「内海ぃ、お前実は良いやつだったんだなぁ〜」

 

てめ、何涙流しながらディスってるんだよ、やっぱ誘うの辞めるぞ。

 

「内海くんのお家…」

 

丸ちゃん先輩も何顔赤らめてるの?

4人だから丸ちゃん先輩の軽バンで行けばいいか。部屋はこの前掃除したし綺麗だったよな。

 

 

 

 

あ、春夏にライン入れといた方がいいかな?

 

「う〜ん、やっぱサプライズでいいかな」

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