【TS】兄だった人は姉になりました。   作:R884

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セッション3

朝一の新幹線、デビュー以来もう何度も訪れた東京駅、いい加減自分で道を覚えろってもんだが、どうにも覚えられない謎。ここが8番出口か。

 

「案内は私に全てお任せくださいお客様!どうぞお荷物を」ニコリ

 

うん、覚えられないのはこいつのせいだな、ホームを降りるといつもいるんだよなこの駅員さん、初めて来た時も案内してくれて、それから俺が土曜日に東京に来るたびにこうして丸の内口まで案内してくれるのだ、そりゃ迷うことも無いが構内を色々見る事も出来ないやん。

 

「この東京駅はですね……」

 

しかし、案内してる時に東京駅の雑学を話してくれるのが面白くて断れないんだよな。

 

「駅員さん、今日もありがとうございました」ペコリ

 

「いえ、またのお越しをお待ちしております!」

 

旅館かよ!

 

 

 

プップー

 

「UTUMI、こっちぃ!」

 

あ、HOTOMIさんのアストンマーチン、かっちょいい〜。

 

グワォオオオオオ

 

「すみませんね、HOTOMIさんにお迎えなんてしてもらって」

 

「個人で借りてるスタジオだから、UTUMIには分かりづらいと思ってね」

 

今日は飲料メーカーのCMタイアップで、HOTOMIさんが書き下ろした曲のロングバージョンを収録するために東京に来ている、最初はロンドンでなんて言われたのだが、ロンドンは飛行機乗らなきゃ行けないので遠いのだ、せめて東京でとなった。

 

「中山さんに今日中に録音しろって言われてるから、今日は助っ人も頼んであるんだよ」

 

「へ、でもあの曲ってツインギターの曲ですよね?」

 

「大丈夫、腕は確かな人だから安心して」

 

「はぁ?」

 

バタン

 

「えっ、ここ?個人で借りてると言ってたから、小ぢんまりしたスタジオかと思えば、この建物丸ごとスタジオなの!」

 

「置いてくぞ〜」

 

勝手知ったるで、ツカツカと建物に入って行くHOTOMIさんを慌てて追いかける。

で、その先に進むと部屋からギターの音がキロキロと聞こえて来た、あ、この音ストラトキャスターだ。

 

「お待たせ」

 

「おう、で後ろの綺麗なお姉ちゃんがUTUMIちゃん」

 

「じゃ、じゃ、ジャーさん!!」

 

HOTOMIさんの後から部屋に入ってみれば、そこに居たのは日本のロックギタリスト憧れのジャーさん(70)だった。

日本のロックを牽引してきたと言っていい人物、トレードマークのテンガロンハットに革のブーツ、本物だぁ、渋い超カッコいい。

 

「う、UTUMIです、お会い出来て光栄です」

 

「ちょっと、僕の時より緊張してない?」

 

緊張してる俺にHOTOMIさんが突っ込む、いや、だって、ねぇ。

 

「HOTOMIは背が高くて顔が怖いだけで、貫禄がないんだよ。よろしくねUTUMIちゃん」

 

ジャーさんから握手を求められる、やばい手汗とかかいてないよね、うわうわ、凄いギターダコ、ゴツゴツしてる。

 

「聴いてた通り、綺麗な手をしてるんだね、これであのギターとは」

 

ニギニギと手を触られる、そう言えばHOTOMIさんも同じような事を言ってたかも、すみませんねギターダコも無いスベスベで。

 

 

3人でコーヒーを飲みながら今日のスケジュールを話すんだけど、私のレコーディングの助っ人が豪華過ぎるんですけど!

ラックに掛かった3本のギターを見ると自然と顔がニヤけてしまう。

 

「やっぱギターが3枚あった方が音に厚みが出るでしょ、そこでこの暇してるおじさんに声かけたら喜んじゃって」

 

「だって、こんな綺麗なお姉ちゃんをお前に独占されるの悔しいだろ、あのデビュー曲を聴いたら尚更だ」

 

「わ、私、お二人で弾いてるダブルキャスターとかカッコよくて大好きです!」

 

「「嬉しいね〜」」

 

「よし!時間が勿体無い、早速1回やってみようか!」

 

「ハハ、おじさん喜んじゃってるよ」

 

「うるさいよ」

 

 

ジャリ、ガッ、ガッ、ガッ、ジャガジャガジャガジャガジャガジャガ、キロキロキロ♪

 

うわ、楽しーっ!3本のギターの音色が重なってとんでもない事になってる、やっぱりセッションは面白い、どんどんイメージが膨らむ。

ジャーさんと目が合う、良ぉし!

 

LaLaLa~~~~~~~~~~♪

 

「「!!」」

 

俺が歌い始めると、それに寄り添うようにストラトとテレキャス、2本のギターの音が丁寧に重ねられる、凄え音圧、でもとても歌いやすい、これならば。

 

LaLaLa~~~~~~~~~~~~~~~~~~♪

 

ジャーーガッガガ!

 

「ヒューー!」

「良いね」

「……ハァ、ハァ」

 

心地良い余韻、これ凄い曲になる予感がした。

 

 

 

「お疲れ〜」

「おじさん、こだわり過ぎでしょ、もう1時ですよ」

 

「でも、とても良くなりましたよね!!最後なんかもう3人の音が溶け合うみたいで!」フンス!

 

思わず拳を強く握る。レコーディングは深夜まで続いてようやく3人で納得するものに仕上がった、やっぱり相乗効果なんだろうな、CMの時より格段に音が良くなった。これには俺も大満足ですよ、苦労が報われる瞬間はたまりませんな。

 

「今日は本当楽しかった、今度はHOTOMIからじゃなく最初からおじさんと遊んでね、UTUMIちゃん」

 

「はい!是非!」

 

「おじさん、セクハラ」

 

長時間のレコーディングでジャーさんとは随分と打ち解けた感がある、でも意外とボディタッチが多いんだよなジャーさん。

ツアーゲストに誘われても恐れ多くて、即答なんか出来ませんよ。

 

 

 

 

 

この収録の様子、後日HOTOMIさんが自分のYouTubeチャンネルで流したら、とんでもない再生数を叩き出したらしい。

そりゃ、2大ギタリストの共演だもんね〜、俺邪魔とか思われてたら悲しくなるわぁ。

 

けど、ジャーさんに俺のギターベタ褒められたのはめっちゃ嬉しかったから、良いか。

 

 

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