「内海ちょっと良いか」
昼休み、陽子と生徒会室にお昼に行こうと教室を出ようとしているとクラスの男子に呼び止められる。
サッカー部の武田か、妹さんは元気にしてる。
「悪りぃ、内海。お姉さんのサインもらって来てくんない、妹が欲しいってうるさいんだ」
「それ、武田が変な自慢するからだよ」
「しょうがないだろ嬉しかったんだから、反省はしてるんだ、頼む今回だけ!お願い!」
拝むなよ、私が偉そうに見られるだろうが。
「もう、仕方ないな、貰ってきて…………ん、あれ?」
「どうした?」
「いや、お姉ちゃんのサインってそう言えば見た事ないぞ、陽子は持ってる?」
「私はいつでも会えるもの、サインはもらってないわよ、ラブラブツーショットなら有るわよ!見る見る!!」
「あ、俺もお姉さんとのラブラブツーショットあるぜ、ホラ」
パシィ
「あ」
いつの間にか隣に居た竜太のスマホを素早く奪う、なんで竜太がお兄ぃとツーショット撮ってるのよ、何このデレデレした顔、削除!
ポチッ
「あぁ~、消したぁ!!」
「「「ざまぁ!」」」
3人で足元で膝をつく竜太を冷ややかに見下す、彼女がいるんだからちったぁ反省しろ。
一仕事終え、武田に向き直る。
「武田ごめん、頼んではみるけど……」
「お、おう、頼むわ。一応これ色紙、書いてくれるなら
パクっ
「う~ん、意外な盲点だったな、お姉ちゃんどんなサインしてるんだろ?」
生徒会室でタコさんウインナーを食べながら考える、うん、今日の塩加減丁度いいよお兄ぃ。
女になってからは前より料理を手伝ってくれるようになったのだ。あ、コラ陽子その卵焼きはとっといたんだ、勝手に食うな。
う〜ん、多分ファンの前には出てるからサインは求められるとは思うんだよね。
「春夏が知らないとなると、なんか貴重な物な感じがしますね、私も欲しくなってきたかも」
お宝鑑定団に出せるかな?
今のお兄ぃの人気ならヤフオクで1,000円ぐらいの値がつくかも。
キンコ〜ン、カランコロ〜ン♪
「で、陽子ちゃんと二人でわざわざ会社に押しかけたと、私今忙しいんだけど、ちょっと待ってね」
カチカチ、トタタタ
パソコンに向かう金髪眼鏡のお兄ぃ、随分金髪も馴染んできたな、でも本当に忙しそうだ。悪いねお兄ぃ、今日の夕飯は私が作るから。
あ、丸山さんご無沙汰です。
「春夏ちゃん、おひさぁ、元気だった」ダキッ、クンクン
「こらビッチ、私のいる前で春夏に抱きつくな!」
「あら、気づかなかったわ~陽子ちゃんまた来たのぉ〜」
「ケッ白々しい、お姉様にチクるわよ」
陽子と丸山さんがバチバチ見つめ合う、そうだ。
「あ、丸山さんはお姉ちゃんのサイン持ってます?」
「私はいつでも会えるもの、サインはないわよ、ラブラブツーショットは有るわよ!見る見る!」
「ちょっとぉ!私に見せなさいよ」
「ほら~~♪」
「ぐぬぬ、こっちのお姉さまもお綺麗です」
あぁ、駄目な人達ダァ。
「何してんのお前ら?」
「あぁ、藤崎、この女がお姉様とぉ~」
藤崎さんが何か書類のコピー取って戻って来た、陽子、あんた凄くこの会社に馴染んでるわね。藤崎さんを呼び捨てかよ。
藤崎さんにも一応聞いておくか。
「藤崎さんはお兄ぃのサイン持ってます?」
「は?なんで俺が、こいつのサインなんか欲しがるわけないだろ」
「ですよね~」
ズズッ
仕事が一段落したお兄ぃにコーヒーを淹れたげる、相変わらずゴールドブレンドだなここ、儲かってんならコーヒーメーカー買えばいいのに。
「サインねぇ、してるけど数は少ないよ、書いたのなんか10枚もない」
「少ないな、なんで?」
「だって1枚書くのに時間かかるし、顔見ないと描けないぞ」
「「「「????」」」」
「あ、陽子ちゃんや丸ちゃん先輩だったらちょっと早いよ、いつも見てるし」
「「あら♡」」
多分そういう意味ではないぞ、二人とも。
「ほら、私字汚いから、似顔絵描いて誤魔化してるから、でも描いてあげた
そりゃ、じっと見つめられて自分の似顔絵描かれたらなぁ、ファンなら嬉しいでしょうけど。
お前はサイン会の漫画家か!!
忘れてたけどお兄ぃはイラストも描けるデザイナーだ、試しに陽子と丸山さんのサイン色紙書いてもらった。
カキカキ
お〜っ、流石はデザイナーだな、上手いもんだ。
「はい、どうぞ」
「お姉様、家宝にします!!」
「内海くん、私の事こんなに可愛く見てくれてたのね♡」
漫画タッチでディフォルメされて描かれた陽子と丸山さんの顔の隣に小さくUTUMIと書かれてる、確かにイラストは可愛いが字は汚ねぇな、ちょっと納得したわ。
最終的には武田にラインして妹ちゃんの写真を送ってもらい、お兄ぃに描いてもらった。
サイン色紙を貰った武田の妹ちゃんは凄く喜んだそうだが、それ、音楽アーティストのサインだからな、UTUMIは漫画家じゃないぞ。