【TS】兄だった人は姉になりました。   作:R884

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藤崎 (じゅん)25歳独身

あれは7年前。

俺が内海の奴に会ったのは大学の入学式の時だった、第一印象はなんだこのイケメン野郎は馴れ馴れしいなと思ったものだ。

最初は馴れ馴れしいと思っていたのだが、それがいつの間にか好意的に捉えていた、それほど裏表のない奴だった。

 

専攻単位も妙に被っていたのも、サークルも一緒だったのもいけなかった、奴の家が大学から少し遠くだった事もあり、よく俺のアパートに泊める事も多かった、そんな時は趣味のギターを奴によく教えてやったものだ、やけに覚えが良くてすぐに弾けるようになったので、一緒に楽器屋に行ってギターを選んでやった。

二人で路上ライブなんかした事もいい思い出だ。

小・中・高と18年生きてきてこれほど気の合う奴は今までいなかった、俺の大学生活はこいつのおかげで充実していた。

 

去年卒業した商業デザインサークルの丸山先輩がいきなりデザイン事務所を立ち上げたので、一緒にやらないかと誘われた。

男にはまるで興味のない変な先輩だったが、凄く男っぽいカッコいいデザインをする先輩だ、顔は幼く可愛いだけに変なギャップを感じさせる人だった。デザイン業界は意外と変人が多い気がする。

 

「内海の奴と一緒ならいいですよ」

 

先輩からの誘いに何故か内海の奴を誘ってしまった、内海には二つ返事でOKされたが、誘っといてなんだが、あまりの即決ぶりにこいつ大丈夫か?と少し心配になった。コンビニ行くの誘ったみたいに「おう、いいよ行く」って、人生少しは考えろよ。

 

「内海くん?あぁ、あのイラスト描ける子かぁ、いいよ即戦力は大歓迎」

 

丸山先輩も内海の事は覚えていて快諾してくれた。

3人体制でデザイン事務所を回した、幸いな事に俺たちの3人の相性は悪くなかった、カッコいい広告を作る丸山先輩、自分で言うのも何だが真面目なお役所に好かれそうなデザインをする俺、イラストを描けて妙に暖かみのあるデザインをする内海、方向性が違うからこその相乗効果、会社はコロナ禍にも関わらず何とか存続することが出来た。給料は高くないがやり甲斐はある仕事だった。

 

 

「藤崎、昨日はどこ走ってきたの?」

 

「ああ、地蔵峠を抜けて佐久まで行ってきた」

 

「地蔵峠か、お前のH2《カワサキ》ならパワーあるし面白いだろうな」

 

「内海もバイクの免許取ればいいだろうが、実家が須坂なら菅平を走るのも面白いぞ」

 

「家賃もあるから無理だよ、セブン買ったから金欠、ローンがぁ!あの車、かっこいいけど燃費悪いぃ」

 

内海はギターは買ったが、バイクには乗らなかった、ヘタレな奴め、男だったらカワサキだろ。

まぁ、俺もセカンドカーはジムニーだから、車じゃあいつのセブンには峠ではとてもついていけないが。

カワサキH2は大学の入学祝いで親にねだったら買ってもらえた、やはりカワサキは良い、だから内海よ“ヤマハって良いよな”なんて軟派なことを言ってんじゃねえ、ヤマハは女子供が乗るものだ!じゃなきゃせめてホンダにしろ。

 

 

 

そんな毎日を送っていたら、内海の奴がいきなり女になりやがった。

 

 

「はぁ!?」

 

びっくりした!なんだTS病って、聞いたことないぞオカルトか、ムーかよ。

声が出なかった、それなのに奴はいつも通りのほほんと自分の胸を揉んで喜んでやがる、お前なぁ、性別が変わるなんて事が起こってるんだぞ、もうちょっとあせろや!どんだけ呑気なんだ。

 

あ、やばいレズビアンの丸山先輩の目が光ってる。もしかして今の内海ってタイプか。

 

女になっても内海は内海だった、相変わらずバカでお人好しで親友だった。そこはちょっと安心。

ただその美貌は世間様が放って置かないほどだった、瞬く間に注目を集め、事もあろうに、俺が大ファンの世界的ギタリストM-HOTOMIさんの書き下ろしデビュー曲をTV番組で歌いやがった。何やねんそれ!

 

「うせやん、あいつこんなに歌うまかったか?声が変わった、いや身体が変わった影響か、妙に音感が良くなってやがる、やっぱオカルトか」

 

おかげで憧れのM-HOTOMIさんと一緒に酒が飲めた幸運は、奴を褒めるのには十分な理由だ、遠慮はしない、良くやった!

 

 

 

おいおい、何でウチのデザイン事務所に菅野(すがの)洋子なんて超有名人が居るんだよ!内海テメェ今度は何やった!

すみません菅野(すがの)さん、俺ベースは弾けるだけでそんなに上手くないですよ、マジですって、いや持ってこいって言われても。強引だな、このおばちゃん。

しっかし、このジャージ姿のおばちゃんとのほほん内海の二人が、世の皆さんを感動させる曲を作ってるかと思うと、思わずため息が出た。

 

 

丸山先輩、そろそろ事務所にコーヒーマシン買いましょうよ、買えるくらいは儲かってるのはわかってますよ。

事務所に来る客層が今までと違って来てるんですよ、いつまでもインスタントじゃカッコつかないでしょ。

 

 

「なにお土産?毛蟹じゃん、北海道に行ったの?あんがと、帰ったら家で茹でるわ」

 

 

内海のお母さんからメールが来た、内海のお母さんは2度ほど会った事があるが超美人なお母さんだ、熟女好きの俺としてはドストライクなのだが不倫はしない主義だ、奴の親父がくたばって未亡人になるまでは待ってやる。待てるか俺。

 

「なになに、写真加工の依頼か、あいつ子供の頃からのほほんとしてんのな、え~っとまずは髪を伸ばして…」

 

 

 

わっはっは!内海の奴今度は金髪になりやがった!アリアンティの影響か?結構似合ってるぞ、丸山先輩が黒髪と金髪どっちが良いかで頭抱えて悩んでやがる。

 

 

とどめは紅白かよ、しかも今度はM-HOTOMIさんだけじゃなくジャーさんともギター弾くだと……。なんて裏山。

 

 

 

あいつどうなっちゃうんだ。

俺の親友が、なんかとんでも無い事になってるんだが……。

 

 

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