【TS】兄だった人は姉になりました。   作:R884

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童夢

ピンポン、ピンポン、ピンポーン!

 

お兄ぃがライブハウスでやらかした次の日の夜、朝っぱらからアパートのチャイムを勢い良く鳴らされた。

 

「うっさいな、もう〜誰よ」

 

めざましテレビを見ながらトーストを齧っていた春夏が面倒くさそうに腰を上げた。

 

「はいは〜い、ちょっとお待ちください、ってなんだ中山さんですか」

 

「どうも春夏さん、こんな朝早くからすいません、UTUMIはまだいますよね」

 

あぁ、昨日のライブの件かぁ!顔はニコニコしてるけど、眉間に皺が寄ってる、これは絶対に怒ってるぞ〜こう言うタイプの人が一番怖いんだ。

 

「ふあぁ〜春夏ぁ、誰だった?あれ、中山さんどうしたんです、こんな朝から?」

 

うん、お兄ぃは中山さんがなんで来たのかまるっきり分かってないね。通常運転だ。

あと、ノーブラ Tシャツでお客様の前に出てくるな!竜太だったら鼻血出してるぞ、こんにゃろう。

ケツをかくな、ケツを。

 

 

 

さて、お話しが終わったらすぐに会社に行けるよう、お兄ぃはスーツに着替えて正座している、あぁ、その座り方だとシワついちゃうから女らしく横座りしてね。うん、そうじっとしてて、メイクもやっちゃうから、あ、ウィッグどこ置いた?台所、なんでそんな所に。

 

「UTUMIさん、前に私言いましたよね、もう無料で気軽に歌わないようにって!貴女はもう日本中誰もが知ってる紅白アーティストなんですよ」

 

「いや、無料って言っても友情出演ですよ、ねぇ春夏」

 

コラ!私は別にギブソン君の友達じゃないんだから、こっちに振るなや、中山さんの目が怖いやん。

いやホンマに私関係ないです、そんなジトーっと見んといてください、私はお兄ぃの保護者じゃありません。

 

「ほ〜友情ですか、映画やドラマでも友情出演でも当然お金は発生しますよ、どこの世界に紅白出場のアーティストが無料でホイホイ小さなライブハウスに出演するんですか!」

 

「……む、無料じゃないもん、お酒奢ってもらったし」

 

「ほぉ~〜〜〜~〜〜〜、じゃあ、今度は私がこのお酒を奢りますから是非ドームでライブをやってもらいましょうか」

 

ドンっと一升瓶をお兄ぃの前に置く中山さん。えっ、今どっから出したんその一升瓶?

この私の可愛いおメ目を持ってしても見えなかったぞ。

 

「こ、これは、幻の日本酒、高木酒造の「十四代」!! へ、平日は会社あるからダメですよ、土日なら、か、考えてあげても良いんだから」

 

一升瓶を抱きしめながら中山さんと交渉し始めるが、すでに術中にハマってるよお兄ぃ。チョロすぎでしょ。

と言うか、お兄ぃにとっては田舎の小さなライブハウスもドームでライブもお酒1本でなんとかなるんだ、妹として凄く不安になったよ。そりゃ中山さんにお小言言われるのもわかるわぁ。

 

「へっ、そのお酒5万以上すんの!お姉ちゃんのお小遣いじゃ買えないじゃん!」

 

この日、お兄ぃの東京ドームのライブが決定した。本当になんだかなぁ〜。

 

 

 

 

 

 

ジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカカ♪

ジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカカ♪

 

歌関係のお仕事の打ち合わせ、東京のHOTOMIさんのスタジオに来て、何故か二人でギターをかき鳴らしてる。

HOTOMIさんやっぱ良い機材使ってるな、スピーカーの音が凄えクリアだ。

やっぱMarshallって良いよね。

 

ジャカジャカジャカ

 

ギターを弾いてるると非常に落ち着く、嫌な事も忘れられるな、まさに無我の境地。

こう言うのを仏教で悟りと言うのではないだろうか。(違う)

 

ジャカジャカジャカ

 

「ねぇ、HOTOMIさん、私のギターって下手くそかな?」

「ん、まぁ、俺よりは下手だな」

「ごめん、聞く人間違えた」

 

世界のHOTOMIよりギターが上手い奴なんか、……あ〜世界レベルで考えれば結構いるか。

ジミ・ヘンドリックス、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジにキース・リチャーズ、生きてる死んでる合わせればいくらでも思いつく、上には上がいるものだ。

あ、けど俺エリック・クラプトンに褒められた事あったぞ、凄えじゃん。

 

「何、誰かに下手って言われたのか?」

「夏元のおっちゃんに、お前のギターはブルースがたらねぇんだよって、怒鳴られた」

「あぁ、そういう」

 

ジャカジャカジャカジャカジャカ

 

「?、どういう意味?」

「お前のギターは楽しく弾きすぎんだよ、喜怒哀楽の哀が抜けてるんだ」

「愛?」

「哀だよ哀、切なさや悲しさ、だから悲しい曲もお前が弾くと悲しく聞こえない」

 

ジャカジャカジャカジャカジャカ

 

「えぇ〜、そうかなぁ?音は合ってるよね」

「上手いけど感情が乗ってないんだよ、だってお前いっつもニコニコ弾いてんだもん、音はあってるけど確かにブルースは足んないかもな」

 

「…………」

 

ジャカジャカカ♪

 

黙ってしまった俺にHOTOMIさんが慌てて声をかける。

 

「いや、別にそれが悪い訳じゃなんだぜ、そういう楽しいギターも俺は嫌いじゃない」

 

ジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカカ♪

 

「じゃあいいか!」

「やっぱ良くねえよ、練習しろ!」

 

 

ジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカカ♪

 

なんかめっちゃ楽しかった。

 

 

 

ジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカカ♪

 

「そう言えば、中山さんが言ってたけど、お前ドームやるの?」

 

ジャカカ♪

 

「いやいや、お酒の誘惑に負けたわけじゃないですよ!本当ですよ!」

 

「何じゃそれ?」

 

 

 




※飲んでみたいな十四代。
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