【TS】兄だった人は姉になりました。   作:R884

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私の歌を聞けぇ!パート2

東京都練馬区に立つ建物の1室から今日のお話は始まる。

 

「うわ、本物だ!」

 

自分の前でソファーに座る二人の女性に思わず出た声がコレだった。

 

一人、菅野(すがの)洋子さんはアニメーターと言う職業柄よ〜く存じ上げてる、世界中に多くのファンを持つ超有名な作曲家だ、前作では大ヒットに繋がる非常に良い楽曲を数多く作っていただいた。この人無くしてあのアニメの大ヒットは無かったであろう恩人とも言える人だ。

 

二人、そしてその横で興味深そうにスタジオ内をキョロキョロと見ている、超綺麗なお姉さん。

年末の紅白歌合戦で日本中、いや世界中をその歌声で魅了したアーティスト、UTUMI!!

録画した紅白はもう何度観ていることか、いい歳こいてすっかりファンになってしまった。

 

その本物のUTUMIが俺の目の前に!やば、緊張してきた。

生UTUMI、かっこいい、顔チッちぇ!

 

その生UTUMIの綺麗なピンク色の唇が動く。

 

「すっごいなぁ、私も職業柄イラストとか描くんですけど、今のアニメスタジオってこんななんですね」

 

制作スタジオのフロアを見渡してUTUMIがアーティストらしからぬ事を言う。

確かに今のアニメショーンはコンピュータの作業が多く、スタジオには多くの大型モニターが並んでいる、昔のようにセル画が氾濫するような現場ではない。が。

 

「へっ、UTUMIさんはイラストとか描かれるんですか?」

 

「ええ、チラシとかでワンポイントで良く描きますよ、でも紙面広告メインで動画とかはウチの会社であまりやらないからアニメーションスタジオとか興味深いですね」

 

「UTUMIちゃん絵上手いもんね」

 

菅野(すがの)洋子さんが笑いながら同意するように言った。

 

「????、絵がご趣味なんですか?」

 

「いや、本職ですよ。グラフィックデザイナーやってますから」

 

「はいぃ〜?」

 

こっちの名刺も渡しておきますねと言って渡された名刺には、確かにグラフィックデザイナーと書かれていた。あれ?アミュズじゃなくスタジオエム?子会社?

 

 

 

 

 

マキュロス・ファイナルステージ

 

マキュロスは日本のアニメではガンダムと並ぶ人気シリーズだ、ヒロイン達の歌と変形ロボのアクションが売りで、フロンティア編では菅野(すがの)洋子さんの作るヒロインの歌が爆発的にファンを作った。

その成功にあやかって今回のファイナルステージでもと作曲を菅野(すがの)に依頼することにした。

 

そしたらUTUMIが一緒にスタジオに来た!!ま、まさか、主題歌を歌ってもらえるのか。ゴクリと唾を飲み込む。

 

「いや、川森監督。今度のヒロインさぁ、UTUMIに歌わせていいかな?」

 

菅野(すがの)洋子さんがいきなりそうのたまったーーーーーーーーーッ!!

 

「実はもう何曲か書いたんだけど、川森監督の意見も聞きたくてさ」

 

そう言って菅野(すがの)さんがスマホを机の上に置くと、画面をタップした。

 

ディスプレイにはイメージロック、クラシック、オペラ、R&B、ソウル、バラード、ブルースと数々のジャンルが表示された、ん、どの曲を聞かされるんだ?

 

「つい調子に乗っちゃてさぁ、もう10曲以上あるんだよハハハ」

 

「?」

 

「本当に菅野(すがの)さんは強引だよね、入院中までデモデータ送って来て、挙げ句に退院後も実家まで押しかけて来てめっちゃ歌わされたんですよぉ」

 

ああ、そう言えばUTUMIは紅白の後に骨折して入院してたんだっけ、一時期ニュースで毎日やっていた。

 

 

とりあえず順番に聴き始める、スマホをブルートゥースでスピーカーに繋いで流す。

その間UTUMIと菅野(すがの)さんはスタジオの見学をしてもらうことに、UTUMIがすごく楽しそうに女性スタッフと話しているのが見える。スタッフ顔真っ赤だけど何話してんだ?

 

 

 

「………………………………………………ハッ」

 

ま、マジでぇーーーーーーーーーーーーーーーーー!!この歌声を使えるのか!やベェ、絶対に人気出るぞコレ。

何、このどのジャンルでも完璧に歌えちゃう声は、まさに銀河の女王に相応しい歌唱力、すげえぇ!

それに全体にジャズを感じさせるメロディラインは流石菅野(すがの)さんの作品だ。

 

 

「ヨシャーーーーーーーーーッ!!」

 

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!

 

最後の曲が終わりガタンと立ち上がって大声を上げた俺に、スタジオスタッフが大きな拍手で迎えてくれた、お前ら聞き耳立ててたな。まぁ、UTUMIが来てるんだ、仕方ないか。

 

「良し!キャラデザインやり直しだ、ヒロインは黒髪ロングにしてギター持たせよう!弾き語りシーン入れて、うわっイメージ湧いてキタァーー!!」

 

席に戻って来た菅野(すがの)洋子さんがさらに言い放つ。

 

「それで、ツインヒロインなんだよね、もう一人は夏元っちから椿坂46の松田って娘を推薦されてんだけどどうかな?こっちは歌パートだけじゃなく声優もやっても良いって言われてるけど」

 

なんと!夏元さんとはakbのアニメで何度か話した事がある、紅白ではUTUMIと仲良くしているakbのメンバーも映っていた、繋がりがあるのか?何だかんだ言っても現役アイドルの知名度は使える!宣伝が楽になる。

 

「はい!喜んでぇ!!」

 

 

「えっ、アニメってこんなノリなの」

 

UTUMIが隣で驚いてるが、こっちの方がもっと驚いてるんだからお相子だ。

 

川森昌治65歳、こんな奴だが日本アニメーション界の重鎮である。いや本当に凄い人なんだよ。

 

 

 

 

 

その頃、夏元康事務所。

事務所の録音ブースを夏元が腕組みしながら真剣に見つめている。ブースの中ではマイクに向かってボイストレーニングをしている女の子が一人。

 

「フフ、今や日本アニメは世界的なコンテンツだ、しかもあの菅野(すがの)とUTUMIのコンビに川森監督の作品となれば大ヒット間違いなしだろ、これはウチも1枚噛ませてもらおうじゃないか、なぁ、松田」

 

「はいっ!!任せてください!UTUMIお姉様とのデュエットなんて夢のようです!もう死んでも良い!」

 

「いや、気合い入ってるのはいいが、鼻血出てるぞ大丈夫か?」

 

人選を間違えたかと、密かに夏元は思った。

 

椿坂46 松田由莉奈(まつだゆりな)こんな奴だがグループの絶対的エースである。

もうじき20歳になるのでUTUMIと一緒に早くお酒を飲みたがっている(紅白後の居酒屋動画をヘビロテ中)。

 

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