【TS】兄だった人は姉になりました。   作:R884

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決戦は金曜日

金曜日、データを印刷所に送信し無事本日の業務は終了した。

UTUMIの務める会社に詰めていた私は、時計を確認する、時間は19:10、この時間ならまだ大丈夫だろう。

 

「それではUTUMIさん、急いで下さい」

 

「ちょっと待って中山さん、印刷所にデータの確認だけさして、すぐ終わるから」

 

「チッ」

 

ガチャ

 

UTUMIさんを急かして車に乗り込む、衣装やギター前もって郵送してある、後は本体であるUTUMIさんが向かうだけだ、まったく週末しか活動時間がないんだから、金曜日くらい休みにすればいいのに。

 

「ねぇ、中山さんこの赤のインプレッサWRXで東京に向かうの?ドライバーが童顔な外人さんなんだけど、しかもイヤホンしてるし」

 

「ヘイ、ベイビー出してくれ、GO!」

 

ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンのギターがカーステレオから大音量で車内に鳴り響くと、この日の為に雇ったドライバーさんがアクセルを踏み込んだ。ん?イヤホンの意味は?

 

スキャキャキャーーーッ!!

 

「ちょ、速い速い速い、こんな道で何キロ出してるのぉ!!」

 

うるさいなUTUMIさん、走り屋じゃなかったんですかこ、れくらいで騒がないで下さい、新幹線より早く着かないと車で行く意味がないじゃないですか。え、警察ですか、オービスと進行ルートのパトカーの位置は把握してますからご安心ください。

 

「GO!GO!ベイビー!」

 

キャラキャラキャラ、バゥアロロロロロォ!!バラバラバラ!!

 

「ウキャーーーーーー!」

 

スバルの水平対向2.5リッターターボが夜の上信越自動車道にガオーっと吠える。

え、ナイトロ(日本ではニトロと言われる)ですか?それで早く到着するんなら使ってください。

 

バシュゥーーーーーーーーーーーーーッ!!!

 

「「えぐっ!」」

 

 

バラバラバラ

 

「サンキュー、ベイビー!」

 

撮影スタジオを手を振りながら去ってゆく赤のインプレッサを見送る、時間は20:50、流石はプロのドライバーだ、高い料金を払っただけの仕事をこなしてくれた。

 

「マジで凄かった、湾岸ミッドナイトかと思ったらどっちかと言えばワイスピに近かった、このスピード領域は経験した事なかったわ〜、勉強になる」

 

UTUMIさんがなんかブツブツ言ってるが、貴女は安全運転で頼みますよ。

 

 

スタジオの中に入ると川森監督とスタッフ、菅野さんやバンドメンバーがすでに待ち構えていた。

 

「やぁ、UTUMIさん今日はよろしくお願いします」

 

監督が挨拶を終えるとUTUMIさんと一緒に皆さんに頭を下げる、キーボードの菅野さんをはじめドラムは紅白の時にも頼んだ神保さん、ベースは今回H・岡本さんに来てもらった、うん、このメンバーなら間違い無いだろう、私に出来る仕事はここまでだ。

 

「神保さん、久しぶりです」

「UTUMIちゃんもう脚大丈夫、大変だったね」

 

「はじめまして、岡本さんもよろしくお願いします」

「いや、こっちがやらしてってお願いしたから、よろしくです」

 

 

 

UTUMIさんがバンドメンバーの人達と挨拶を交わしている、今回の撮影は臨場感を出す為に生音でやらせてもらう、細い所は別撮りにはなるが。

 

仕事が終わったら直行すると中山さんから連絡をもらっていたが、随分と早かったな、これなら撮影に余裕が持てる。そんな事を考えていると控室に行ったUTUMIさんがヒロインの衣装に着替え、メイクを終え姿を表す。

 

「「「「……………………………………………………」」」」

 

CGかと思った、あまりにもイメージ通りで皆声も出ない。

ピッタリとフィットした衣装に白いギターを手に持った時の存在感ときたら、もう実写でいいんじゃ無いかと思ってしまった。

 

「こんな大勢の前で、この格好はちょっと恥ずかしいですね」

 

「いやぁ、このスタイル見せつけといて恥ずかしいは無いでしょ〜、ねえ監督」

 

謙遜するUTUMIさんに隣に居た菅野さんが突っ込む、うん、どこに出しても恥ずかしくないスタイルだ。

 

「ええ、イメージ通りでびっくりですよ」

 

だってUTUMIのバニーガールですよ!バニーの日は8月2日から今日に変更するべきだ!

 

 

芸術品のような脚を動かしてブルーバックのステージに歩いて行くUTUMI、そのバニー姿に誰もが見惚れてしまう、この手の撮影には慣れてるはずのスタッフにも緊張が走る。

 

「この位置でいいですかぁ!」

 

「OKです!周りでカメラが動き回りますけど、演奏は途中で止めないで下さい、何回か撮って後で繋げますから」

 

今回、UTUMIさんを中心に撮り背景映像とメンバーはCGで合成する、そのためのブルーバックだ。

 

「は〜い、わかりました、じゃテストと慣らしで1曲やってみますね」

 

ジャガ、ギャリギャリ、ガガガガギャ♬

 

LaLaLaLaaa~~~~♪

 

 

ゴクリ

 

「凄っ!いきなりユニバーサル・バニーかよ、UTUMIさん前回のフロンティア見てくれたんだ」

「まんま銀河の歌姫じゃん!」

「監督これ、テストにしちゃうの勿体無いですよ、特典映像作りましょうよ、私背景作りますから!」

「1発目でこれかぁ!今日は何曲こんなの聴けるんだ!」

 

この後UTUMIさんは菅野さんと一緒に、今回用に書き下ろした12曲を歌い上げる、本人達からはリテイクのお願いが何度も入るが、私達にはどれもこれも珠玉の名曲だらけで、スタッフ一同UTUMI WORLDに引き込まれた。

 

撮影は順調に進む。

衣装は6着用意されていたのだが、どれも完璧に着こなしてくれた、着替え終わる度に歓声が上がる、この衣装をUTUMIさんの母親が作ったと言うのだから、この親子どれだけ才能があるんだと驚くしか無い。

撮影が順調だったので、中山さんに頼み込んで宣伝用のスチールも撮らせてもらった、これだけの素材を得たのだ、もう勝ったも同然だろう。

 

 

撮影がアップした日曜の午後。

 

「えぇ〜!帰りはあの車じゃないんですか〜、めっちゃ楽しみにしてたのにぃ〜」

 

「帰りは急ぐ事もないでしょう、はい、これ新幹線のチケットです」

 

「うぅ、赤のインプぅ!」

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