【TS】兄だった人は姉になりました。   作:R884

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信じるか、信じないかは貴女次第です。

内海(うつみ)秋江(あきえ)は本日のパート業務を終え、夫である内海(うつみ)敏夫(としお)の待つ自宅へ帰るところだ。

 

「あら、この車って」

 

自宅の駐車場に停まっている白い車で息子が来ている事を察した、もしかしたら妹の春夏も一緒かもしれない。

前回来た時から半年は経っている、そんなに遠くに住んでるわけでもないのだから、もう少し頻繁に顔を見せればいいのにと親心で思いながら玄関を開けた。

 

「ワハハ、そりゃあ大変だったな」

 

玄関には二人分の靴が並んでいる、どうやら春夏も一緒らしい、居間からは夫の楽しげな声が聞こえて来る、自分を差し置いて何を喋っているのやら。

 

カラ

 

居間の襖を開けばテーブルを挟んで夫と二人の女、一人は娘の春夏、はて?もう一人の女性は?

てっきり兄妹で来たのかと思っていたので少し驚いてしまった。

 

「春夏、お帰りなさい。今日はお兄ちゃんと一緒じゃないの?」

 

私は春夏の隣に座る綺麗な女性を見ながら聞いてみた。

 

「あ、お母さんただいま、今お父さんにも話してたんだけど、まぁ、立ち話もなんだから座って」

 

春夏の言葉に夫の隣に腰を下ろす、どうしたのかしら、さっきまで楽しげに話してたみたいなのに静まり返る、夫も向かいの綺麗な女性も凄く緊張しているようだ、膝に置いた手に力が入っているのが見えた。

 

あ、もしかして。

 

「もしかして、お兄ちゃんの彼女さん♪」

 

私の問いにビクリと身体を揺らす美人さん、やっぱり、あの子があんなに大事にしている車を貸すぐらいだもの彼女さんよね、でもなんで春夏と?

 

「いや、母さん、実は…」

 

夫が何か話そうとするが、それを遮るように向かいの彼女さんが立ち上がり声を上げた。

 

「母さん、俺、この度女になりました!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

私は彼女が何を言っているのか理解出来ずに固まってしまった。宇宙が見えた気がするわ。

いやね~、最近は歳のせいか脳の処理能力が落ちてきた気がするわ。

 

え、俺?今の若い女のコは自分の事を俺って言うの?それに女になった?

 

「お兄ちゃん、いきなり過ぎだって!お母さん固まっちゃったじゃない」

 

「いや、だって」

 

「そうだぞ、父さんに言った時みたいに、もっと可愛く言わなきゃ」

 

3人して何か言っている、春夏、お兄ちゃんはそんな美人さんじゃないでしょ、間違えちゃ失礼よ。

あなた、若い美人さんに何を鼻の下伸ばしているのかしら、後でお話があります。

で、最後、美人の彼女さんを見る、うん、やっぱり綺麗な娘だわ、この娘が私の息子のお嫁さんにでもなったらご近所さんに自慢出来るわね。

 

「で、貴女、誰?」

 

 

 

 

兄が前置きなく話を切り出すものだから、説明がめんどくさくなった、考えてみたらこれが普通の反応よね、兄やお父さんがあんまりにもすんなり受け入れちゃうから錯覚してたわ。

 

「お母さん、この人は本当にお兄ぃなの、病気で女性になっちゃっただけなの」

 

「そうだぞ、母さんだってもう一人くらい娘が欲しかったって言ってたじゃないか」

 

「そうなの?じゃあ父さんが頑張らなきゃじゃん」

 

「お兄ぃ、お父さんは今からなんて言ってないよ」

 

 

 

 

「病気?春夏、お母さんそう言う冗談は好きじゃないわ」

 

「本当だって、ほら、お医者さんの診断書だってあるんだ」

 

お兄ぃの見せた診断書をお母さんが見て呟く。

 

「こんなものまで作って、お母さんにこんなドッキリ仕掛けてどうするの?あの子は隠れてるの、カメラはどこなの?」

 

違~う!ドッキリGPでもモニタリングでもないよ!

考えてみれば、私はなんであんなに簡単に納得したんだろう、私よくお父さん似って言われるからそのせいかな。

う~んとお兄ぃだけが知ってる事は……。

私が考え込んでいると、兄が話し出した。

 

「母さん、ベットの下に隠しているキムタクのグッズは増えた?それと冷蔵庫の一番上の棚の奥に隠すようにスイーツ置かなくても父さんは甘いの好きじゃないから大丈夫、食べられないよ」

 

お兄ぃの言葉にビックリするお母さん、お母さんまだキムタクグッズ集めてたんだ、それに冷蔵庫の一番上にスイーツね、覚えたぞ。

 

「な、なんで貴女がそれを、ほ、本当にお兄ちゃんなの……」

 

「だからそうだって言ってるじゃん」

 

「女装?でも顔も声も体付きも女、手術したとしても半年でそこまでは……」

 

「トランスなんとかって病気なんだって、一晩で女になっちゃったんだよ、信じろよ」

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

ガ~~~~~~ン。私の息子がどうやら娘になったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母、秋江(あきえ)が帰宅する1時間前。

 

「そう言えば、お父さんはすぐにお兄ぃの言葉を信じたよね」

 

「父さん、二十歳超えた息子より綺麗な娘の方が一緒に酒飲んでて楽しいからな」

 

「息子はキャバ嬢じゃねえぞ」

 

「ふ~ん、私じゃヤダかったんだ」

 

「は、春夏はまだ高校生だからお酒飲めないだろ、まぁ、男だろうが女だろうが俺の子供に違いはねえ」

 

「なるほど、お兄ぃも、お父さん似だね」

 

「にしてもお前、胸デカいな、触ってみてもいいか?」

 

「「……」」

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