【TS】兄だった人は姉になりました。   作:R884

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黒ひげ危機一発

「あぁ〜!困ったエンジンがかからない、このままでは遅刻してしまう〜」

 

朝コンビニを出ると若くてカッコよさげな男の子が、車の横で大声で独り言を言っている、え、もしかして俺にアピールしてる?しょうがないなぁ、困ってはいるようだし声くらいかけるか。

 

「エンジン掛からなくなったんですか」

 

「は、はい!コンビニエンスストア寄って出てきたら、エンジンが!すいませんがバイト先に送ってもらえないでしょうか」

 

バイト?こんな高級車に乗ってるのに?車はどうすんの?JAF呼んだ方がいいぞ。

 

「ちょっと見てあげる、ボンネット開けて」

 

「へっ、でも」

 

ガコン

 

「あ〜、イグニッションコードが外れちゃってるわ、よっ!これでかかると思うわよ」

 

キュルル、ガオン!

 

「あっ」

 

「良かったね」ニコリ

 

「は、はい、ありがとうございました、お姉さん凄くカッコいいです!惚れました!」

 

「ハハ、ありがと、でも早く行かないと遅刻しちゃうんでしょ」

 

「いえ、お姉さんには是非お礼を」

 

「あ、ごめんね〜私も仕事があるから、じゃあ気をつけてね」

 

ヴァボボ

 

 

 

ガチャ

 

「すいません、ちょと道を尋ねたいですが」

 

ん、今度はスーツを着た渋いオジサンに道を聞かれる、日本語がちょっと怪しいけど、中国か韓国の人かな、まぁ、長野も外人さんが増えてるしこんな事もあるか。

 

「どこに行きたいんですか?」

 

「ステーションに行きたいです、新幹線の時間が」

 

え、駅って長野駅だよな、ここからだと説明しずらいし、急いでるなら。

 

ピッ

 

「あ、丸ちゃん先輩、ちょっと駅まで人を案内してくるので少し遅れます」

 

「乗ってください、駅まで送りますよ」

 

「へっ、いや、尋ねた私が言うのも何ですが、いいのですか?」

 

「だって途中で迷ったら、新幹線に乗れなくなっちゃいますよ、さぁ、早く」

 

バタン、ヴァボウ!キャラララララ!

 

「大丈夫、車なら5分で行けるから、シートベルトしっかり閉めてね」

 

「は、はい!」

 

「おじさん、もしかして中国の人?」

 

「いえ韓国です、商売で来ました」

 

「そうなんだ、わざわざ大変だね、でも日本語上手いですね」

 

「最近、韓国でも日本語習えます、頑張って覚えました」

 

「へぇ、そうなんだ、私まだ韓国って行った事ないな、えっと、アンニョンハセヨ」

 

「!完璧な発音です、それなら…」

 

「韓流ドラマ、お母さんが一時期見てて、何回か一緒に見てたんですけど、これぐらいしか韓国語しゃべれないんですよ、あ、着きましたよ」

 

「では、良い旅を〜」

 

「カムサハニムダ」

 

オジサンが深く頭を下げた後、駅に入って行くのを見送る、噛むサハに?あぁ、ありがとうか。

お礼を言われるとちょっと良い事をした気になるね、さて会社会社。

 

 

 

 

ジリリリ♪

 

「はい、スタジオエムです♪」

 

「私、ナインエンターテイメントの李と申しますが、UTUMIさんをお願いしたいのですが」

 

「ああ、李さん!私です、内海です、この前はマキュロスのゲネプロご苦労様でした」

 

「UTUMIさんこそ、わざわざすいませんでした」

 

「で、どうしたんですか」

 

「いえ、UTUMIさんに我が社を一度見てもらいたいと思いまして」

 

「我が社、中国のですか?」

 

「韓国です、芸能部門は韓国を拠点にしていますから、どうです旅費も宿泊費も我が社で全部出しますから、一度見学を」

 

「李さん、お誘いはありがとうございます。でも今は仕事の引き継ぎで忙しいので、ちょっと無理ですね」

 

「引き継ぎですか?」

 

「えぇ、今度正式にアミュズとプロ契約をすることになっちゃいまして」

 

『遅かったか』

 

「へっ、今なんて」

 

李さんが中国語で何か呟く。

 

「いえ、何でもありません。プロ契約おめでとうございます」

 

「ありがとうございます、あ、でも中山さんを通してもらえれば、今度は平日でもお仕事受けられると思うので」

 

「そうですね、UTUMIさんとは是非ご一緒にお仕事したいですね、ではお時間とらせてすみませんでした」

 

「いえ、こちらこそすみませんでした」

 

ガチャ

 

 

 

長野駅に隣接した、ホテルメトロポリタン長野の1室。

 

「李社長、どうでした?」

 

李に尋ねる男の後ろには2人の男性が緊張した様子で立っている、一人は朝コンビニの前にいた若い男、一人は会社前で道を尋ねた男だ、両名ともナインのタレントで俳優をやっている。

UTUMIの好みのタイプを探るため接触を図るも、あっさりと流されてしまった、なんの成果も出せずに、そのせいで李を前に緊張しているのだ。

 

「一歩遅かった、アミュズに先を越された!」

 

「このタイミングでですか!前回の時は全然動きはなかったのに、うちの動きが読まれていたのでしょうか?」

 

「中山め、UTUMIに一体どんな手を使ったのか」

 

中山と言うよりM-HOTOMIの方なんですけどね。むしろ男性の好みを探っても何の意味もなかったんですけどね。

わざわざ、何かあってもすぐ動けるようにと長野まで足を運んでいたのにね。(ちなみにUTUMIはまだパスポート持ってないからな)

李は胸ポケットからスマホを取り出し、おもむろに電話をかけ始める。

 

トゥルルルル♪

 

「はい、中山です」

 

「どうもナインエンターテイメントの李です、突然のお電話失礼します」

 

「ナインの李さん!…そ、それは構いませんが」

 

「この度は、UTUMIとのプロ契約おめでとうございます」

 

「なっ、情報が早いですね、流石ですね」

 

UTUMIとのプロ契約の話は3日前の事だっただけに、中山もびっくりした。

どこだ、どこから情報が漏れた。(本人から)

 

「「…………」」

 

「情報の鮮度はこの世界では重要ですから、しかし敏腕の中山さんがどうやってUTUMIを口説き落としたのか、参考までにお聞きしたいと思いまして、こうしてお電話したのですよ」

 

「私は何も、UTUMIの方からプロになりたいと言ってきたんですよ」

 

「………………そうですか、それは中山さんは実に運がよろしい」

 

「ははは、まったくです」

 

「では、今後アミュズさんとは、色々と協力してこの業界を盛り上げていきたいですね、主にUTUMIさんにはご協力願えれば幸いです」

 

「ええ、私の出来る範囲で頑張らせていただきます」

 

ピッ

 

 

 

「クソッ、あの狸親父め!白々しい!手の内は晒す気はないか!」

 

「李社長…」

 

「アジアの音楽フェスへの参加をアミュズに打診しておけ、中山め、このままあっさり引くと思うなよ」

 

李はそう言うと、部下に撤収を命じた。今は日本に居る意味はカケラも無い。

 

 

 

 

一方、アミュズの中山は自分のデスクにまたしても突っ伏していた。

 

「あっぶねぇ〜、流石ナインの李だな、どんな情報網だよ、UTUMIがあのままだったらどうなっていたか」

 

中山はポケットからタバコを取り出し咥えるが、デスクは禁煙だと思い出し、火のついていないタバコをゴミ箱に投げ入れた。(勿体ねえ)

 

「HOTOMIさんには、大きな借りが出来てしまった。なんかお礼をしなきゃいかんなぁ」

 

 

 





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