「すみません、ウチのUTUMI見ませんでしたか?」
「あぁ、中山さん。UTUMIさんなら外の喫煙所にいましたよ」
「ありがとうございます」
ふむ、正式にプロになった以上UTUMIにはそろそろ禁煙してもらいたいものだ、休憩のたびに喫煙所に行くものだから、呼びに行くのが面倒くさい。
「ハハハ、そうブラジャーってこの時期は結構蒸れるのよ」
「そ、そうなんですか……おっきいもんなぁ」
「でもスカートは短いから股間はズボンより涼しいのよ」ヒラヒラ
「「ゴクリ」」
「UTUMIさん!」
喫煙所でスタッフの人達と談笑しながら、タバコを吸ってるUTUMIさんに声をかける。
「あ、中山さん、もう本番の時間ですか?じゃあ、皆さん今日はよろしくお願いします」
「はい!任せてください!」
「頑張れよ!」
「は〜い♪」
喫煙所を後に中山さんと収録スタジオに向かう。
「UTUMIさんって禁煙する気はあります?」
「えっ、私に死ねと」
「吸わない方が長生きしますよ」
「中山さんだって吸ってるじゃないですか、それに私の知ってる人に90歳でタバコ吸ってる元気なおばあちゃんいますよ」
「UTUMIさんもアイドルなんだから、今の時代、喫煙はイメージ悪いですよ」
「イメージって、私ってギタリストですよ?ロックには酒とタバコは切り離せないでしょ、そんなにヘビースモーカーじゃないし、歯磨きだって何回もするから大丈夫ですよ」
確かにUTUMIは喫煙者のくせに歯は驚くほど白い、まぁ、ロックをやってる人はステージに灰皿を持ち込むヘビースモーカーも居るから、それに比べれば…。
いやいや、しかし酒とタバコのイメージは芸能人としてマイナス要素が、今はSNSでなんでも叩かれる時代だしな。
「でも私テレビ局って喫煙者が多いイメージあったんですけど、館内禁煙な所多いし、喫煙所が外なのはかわいそうですよね、病院みたい」
「喫煙は悪のイメージですからね、むしろUTUMIさんの歳で良く吸い始めましたね」
5年前ならもう世間では禁煙が当たり前だったはず。
「私昔の映画とか好きだから、出てる役者さんが皆んな普通に吸ってたのよね、あぶない刑事とかもかっちょいいですよね」
「柴田恭兵も館ひろしも禁煙しましたよ、でも女の子があれ見てタバコに憧れますか?」
「関係ないね」
似てねぇ!全く、この容姿で酒とタバコに目がないと言うのは、?…………なぜか違和感がない、むしろサマになってる。
う〜ん、不思議な人だ。
テレビ朝日ミュージックセッションの収録スタジオ、なんだかんだ言ってこの番組が一番出演しているUTUMIだ、初めてのTV出演もここだった。
カカンッとステージにスポットライトが当たる。
ウギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!
観客がその姿をその目に捉えると悲鳴のような歓声が会場を埋め尽くした。
今日はなぜかポツンと一人でステージに立たされている。
中山さんに言わせるとプロになった俺の顔を売るための演出らしい、まぁ、一人の方が視線は集中するかもだけど、それって俺のハードルめっちゃ上がってない?ダンスなんかやんないぞ。
今日の衣装はマキュロスのオープニングでヒロインが着ている、軍服を模したものだ。
でも母さんや、あの時よりスカート短くしやがったな、前列の人にパンツ見えるぞコレ、後ろはコートで隠れてるから大丈夫よ、じゃねえよ。
ステージ先端に置かれたスタンドマイク、スポットライトに照らされながらゆっくりと歩いて行く、その間もうるさいまでの歓声が飛んで来る、やっぱ一人だと皆んなが俺を見ているのが良くわかる。
「マキュロスはもう見てくれたかなぁ〜!今日は銀河の歌姫として歌います、聴いてください」
俺がギターを構えると、一瞬も見逃すものかと会場が静まり返る、お、良いね、じゃあ行こうか!!
ギャァーーーーーーン!キャリキャリ、ギャガ、ジャ♪
A a aーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
ドワァーーーーーーッ!!
LaLaLaLaLa♪
ギャガジャガジャン!
エレキギター1本、誤魔化しの効かないステージ、緊張感はあるけど不思議と楽しかった、前にもアコギでアンプラウドで歌わされた事はあったけど、あの時はサポートは有った、けど今日は規模が大きいし完璧に一人舞台だ、来ているお客さんが全員俺だけのギターを聴いてくれてると思うと嬉しくなる。
こう言うステージも悪くないね。
ギターの弦に指を滑らせる、コードもミス無し、うん、今日の演奏は完璧じゃね。
ケーブルが届く限りステージを歩きまくって弾きまくる、マイクは無いけどこのまま歌っちゃえ。
薄暗いステージ、スポットライトがUTUMIを追いかけるように照らす、まるで私だけを見ろと言わんばかりに。
「凄っ!銀河の女神の歌声、凄っ!」
「やばい、眩しくて涙出てくるぅ、UTUMIお姉様が滲んで見えない」
「ヒロインがそのまんま3次元化してる、アニメ超えてるじゃん」
「圧倒的な歌唱力で殴りにくるなぁ」
「紅白の時より歌凄くなってる、貫禄出てきた!」
「ギター弾きながら歌ってるだけなのに、存在感が…」
「マイクなしの生声かよ、本当にUTUMIの生声は凄まじいな」
「おパンツ見えてるぅ!紫のレース!」
オープニングとエンディングの2曲続けて完璧に歌い上げ、歓声に応える。
手を振りながら投げキッスをすれば色々な所で黄色い悲鳴が聞こえて面白い、ついでだから帽子も投げちゃおうか、ソレ〜ッ。
キャアーーー!!
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!
鳴り止まぬ拍手をバックに司会のヤモリさんの所に戻る。
会場は暖めておきましたよとばかりに、ヤモリさんにドヤ顔してみる。
「いや、どうすんのUTUMIちゃん、やり過ぎでしょコレ!」
「アハハ、いやいや、今日は気分も乗ってたので良く指が動きました、自分でも会心のブルースでしたね」
「こんなの番組始まって以来だよ」
ヤモリさんの横で更に調子に乗って観客席に手を振る。
ドワァーーーーーーッ!!
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!
一向におさまる様子のない拍手にヤモリさんもちょっと焦っている、アンコールは無しでいいんだよね、まだ収録だから良かったけど生放送だったらやばかったな。しかし、これじゃ次の人が流石に歌いづらいか。
次の人は、あ、紅白でも俺らの次に歌った白組のグループの男の子達かぁ、ごめんね。
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