東京から帰ってきたお兄ぃだが、なぜか白と赤の2本のギターを自分の部屋で並べてニヤニヤ頷いてる。
ご飯冷めちゃうから早く食べてくんないかな。
ガジッ、ゴキュゴキュ
「ぷはぁー、美味っ!」
お兄ぃがアジフライを齧りながら、金麦を流し込むと、ようやく説明を開始した。
良し、聞いてやろうじゃないか。
・・・・。
「で、おニューのギターに浮かれてたらHOTOMIさんに説教くらって、ついでにギター屋さんでギターを1本衝動買いしてきたと」
よくそんなお金有ったな、あぁ、HOTOMIさんに借りたのね、全くあのおっちゃんはお兄ぃを甘やかすな〜、今度会ったら文句言わなきゃ。
「いや、ほら、一応ギタリストじゃん俺、流石にプロが手持ちのギター1本ってカッコつかないかなって」
「シグオネーチャンモデルだかと今まで使ってたのと合わせれば2本あんじゃん、あ、ジャーさんに貰った奴は?3本?」
「いや、本物が欲しいんだって、さっき説明したよね、後、ジャーさんのは勿体無いから保存用で」
チッ、あのおっちゃんめ、余計な入れ知恵を、ちゃんとしたギターって高いんでしょ今使ってる奴だって中古で5万もしたような事言ってたじゃん。せっかく無料で1本手に入ったのに、追加で買ったらお小遣い無くなっちゃうよ。
「で、その衝動買いしたギターってなんぼすんのよ」
「負けてぇ〜な、って腕に抱きついて頼んだら、涙流して15万にしてくれた」
「じゅ、ジュウゴ〜!!」
「ジャーン!Fender Made In Japan Traditional II Late60s Jaguar、テッテレ〜」
お兄ぃが自慢気にさっき並べてた赤いギターを見せて来た。
「またえらく高いの買ったわね」
「ジャガーだけど、日本製だから安いらしいよ、HOTOMIさんの馴染みの店の店長さんにしっかり調整してもらったし、この赤ってのもカート・コバーンみたいでカッコいいしょ」
「誰やねん?カトちゃんケンちゃんて?」
「面白い店長でさ、このフォルムがたまらねえだろう?とかこいつを選ぶとはお目が高い、ククク、こいつを使えばどんな奴もイチコロだぜとか言って勧めてくんの、笑っちゃうだろ」
「怪しい店じゃねえか」
「あ、中山さんに言ったらギター代は、経費で落としてくれるから心配なさらずって春夏にも伝えてって言われた」
「それを先に言えや!だったら2本でも3本でも買うてこい!ボケ」
「春夏、口悪いぞ、母さんにチクるぞ」
「誰のせいよ」
ジャカジャカ♪
お兄ぃが風呂上がり、居間で楽しそうにまだギターをいじっている、コラコラ、その金麦何本目だ。
「いや、お店に行った時はジャガーでもJG66も良いかなって思ってたんだけど、今はこっちの方が質が良いって言われてさ」
「ふ〜ん、HOTOMIさんと一緒に行ったの?」
「うんにゃ、光さんが心配だからって一緒に行ってくれた」
「あぁ、光さんと。綺麗なネーチャンが二人、そりゃ店長さんもまけてくれるわけだ」
「うん、二人で隣に挟むように座って頼んだ」
「そこまでの色仕掛けやって15万って、元はいくらすんのよ」
ジャリン、ジャカジャカ
「このギター、金属的なサウンドですぐハウるんだよね」
「誤魔化したな、でも本当だ、いつものギターと音が違うね」
「今まで1本しか持ってなかったから気にしなかったんだけど、形だけじゃなくて音もひとつひとつ違うんだよな」
「そうなの?全部ジャカジャカにしか聞こえないけど」
キュィィィン
お兄ぃががギターについてる棒 (トレモロアーム)を弄ってビブラートをかける、あぁ、その棒そうやって使うんだ、尻尾かと思ってた。
「ジャガーはネックが短くてショートスケイルで弾きやすいの、テンション緩くてジャリジャリ弾ける、多分ファズかけたら良い感じ、ローカットだとラジオみたいな音がすんだぜ」
「日本語で喋れ」
「日本語だよ、春夏が興味ありそうだから説明してるんだろ」
ガッギャギャ♪
「ストラトはスモールだけどジャガーのラージヘッドも迫力あっていいよね、ストラトのハーフトーン(フロント+センター)の立体感がある色気のある音も良いけど、これはこれで。今度はムスタングも弾かしてもらおうかな」
「全然わからん、もう寝る。お兄ぃも早く寝なよ」
「あ〜い」ジャガジャン
マキュロス関係でアニメ雑誌の取材と撮影を終えて、中山さんと車に乗り込む。
なんかめっちゃ視聴率良いらしいよ、主題歌を歌った者としてはありがたいね。
「ねえ、中山さん、ドームやるまではライブとかはないの?」
「!!」
いや、聞いた私が言うのも何だけど、なんでそんなに驚くのよ。
「いや、失礼。UTUMIさんからそんな前向きな質問を受けたので、ちょっとびっくりしまして」
「おニューのギターが2本あるんで、ちょっと弾きたいなって思ったんですよ」
「素晴らしい!HOTOMIさんには本当に頭が上がりませんね、私もしっかり仕事しないとですね。では、UTUMIさん全国ツアーをやりましょう!」
「えっ、ドームじゃなくて」
「ドームはもちろんやりますよ、それをトリにして47都道府県全部回りましょう」
「うぇ、全部ですか。ってそう言うイベントって会場予約が必要でしょ、そんなにすぐに出来るわけないでしょ」
「ああ、裏技があるんですよ、ウチはこの業界でも大手、しかも多くのタレントを抱えています」
「へぇ、そうなの?(この会社、誰が所属してるかよくわかってないんだよな)」
「だからそいつらが抑えていた会場を私達で使えばいいんですよ、何なら夏元さんに相談すれば」
「は、嫌ですよ、そんな横入りみたいなの、感じ悪い」
「じゃあ、コラボにしちゃえばどうです、それならお互いWINWINの関係ですよ」
「中山さん、もし自分が好きなバンドのライブに余計なのがいきなり登場したらどう思います?」
「UTUMIさんんなら、多分歓迎されますよ」
「多分でしょ!」
「UTUMIさんソロで身軽だし、そいつらのバンドメンバーも使えるから楽でお得ですよ」
「私のメンバーはどうするんです?」
「UTUMIさん業界では人気者だからサポート募集すれば、すぐにワラワラ集まってきますよ、ベースの光さんだって喜んで来てくれますよ」
あ、それはちょっと良いかも、打ち上げで仲良くなった人も何人かいるしな。
「北は札幌から始まって南は沖縄、青森、仙台、あぁ、UTUMIさんの地元長野はどうします?Mウェーブは今から抑えられるかな、後、大阪は外せないんですよね、お好み焼き美味しいですもんね」
「いや待って、ごめん、中山さん私そこまでガチでやる気はないのよ、小さいライブハウスみたいので2、3適当に見繕ってもらえれば」
「……今のUTUMIさんだと、そんな所でやったら確実に暴動起きますよ」
「えっ、私ってそんなにアンチがいるの!」
「違いますよ、会場に入れないお客さんがですよ」
「またまた〜」
「UTUMIさん、長野のライブハウスで自分がやらかした事忘れてますね」
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