「なっ!、やられた!」
今さっきスマホに表示された文字に中山が舌打ちをする。
「Xnterstellar Music Festival UTUMIが登場!」
参加の了承はしたが現段階では、シークレットゲスト扱いにするようにナインの李には言っておいたはず、それが次の日には大々的に発表されてしまっている。
これでは今後の予定が狂いかねないと思い、中山は慌ててスマホを手にした。
ピッ トゥルル
『はい、李です』
「もしもし、アミュズの中山です、李さんどう言う事ですか!UTUMIは当日までシークレットにするお約束でしたよね」
『あぁ、HPを任せている者が先走ってしまいまして、誠に申し訳ない、私からも良く言って聞かせます』
くっ、いけしゃあしゃあと、口約束だったら破ってもペナルティは無いと思っているのか。
「情報管理がそれでは困りますね、それではUTUMIに出演はさせられませんよ」チクッ
『いや〜、中山さんも手厳しい。しかしこの発表、UTUMIさんにマイナスになる事は無いと思いますよ』
「……ともかく出演の件はもう一度検討させて下さい」
『フフ、良い返事をお待ちしております』
李は一体何を考えている、今回の韓国でのフェス参加はUTUMIにとってギャラも戦略としてもメリットが大きい、もちろんアミュズにもだ、問題はそれを何故ナインの李が後押しするような真似を、考えが読めない。
夏元さんにも一度相談してみるか。
その頃、夏元康も自分の事務所でパソコンを見ていた。
「おいおい、中山さんちょっと動きが早いんじゃないか、ナインの影響力はバカに出来ないぞ」
夏元はこの状況で素早く今後のUTUMIの予定を予想する。
日本の芸能事務所では世界レベルの戦略を立てるのは非常に難しい、だがナインは世界中にネットワークがある、そうなるとUTUMIの手綱を中山がどこまで握っていられるか微妙なところだ。
「ハハ、日本ツアーどころか下手すりゃワールドツアーだぜ」
M-HOTOMIのスマホにも着信が入る。
『ハロー、ロジャー、UTUMI?知っているけど』
『はぁ、何で俺がオファーしなきゃいけないんだ、ロンドンでやれよ』
『いや、そりゃ仲は悪く無いけど、わかった誘ってはみる、あぁ、返事はそれからだ』
「……あいつ今度は何やったんだ」
アメリカ合衆国では。
「フフ、もうパスポートが無いからなんて言い訳は聞かないわよ」
ピッ
『ハイ!ブライアン、今度のフェスなんだけどプロモーターに言って出演枠を1つ空けてくれない、そうね出来れば後半がいいわね、そう、UTUMIよ、あなたもジャパンで彼女の歌を聞いたでしょ』
『リアリィ!そいつは凄い!本当に彼女が出てくれるのか!』
『このアリアンティが引っ張り出して見せるわよ』
インターネットのおかげで世界の情報がタイムラグなく飛び込んでくる現代、UTUMIの情報は中山の想像を遥かに超えて世界中に広まっていた、そして“きかっけ”があればそれは当然のように爆発することになる。
補足するが、HOTOMIのようにすでに世界で活躍しているギタリストの弟子である事も、夏元が調子に乗って洋楽・邦楽含め多くの曲を歌わせて配信した事、有名海外アーティストに酷く気に入られた事、紅白が海外でも放送された事、様々な要因が重なった結果である。
UTUMI本人の預かり知らぬまま事態は急速に動き出す。
ジリッリリ、ジリッリリ、ジリッリリ、ジリッリリ、ジリッリリ、ジリッリリ、ジリッリリ
「はい、アミュズエンターテイメントです、はいUTUMIは当社のアーティストですが」
「えっ、ロシア、少々お待ち下さい」
「は、はい、ありがとうございます、検討の上、後日お返事させていただきます」
「ギャランティ?いえ、今の段階では何とも」
「中山さん、今朝から世界中のフェスやライブの依頼が止まりません、どうしますか」
「……なるほど、こうなるのか」
中山は一瞬呆然とするも、すぐに思い出したように動き出す。
「荒川、UTUMIのパスポートが届くのはいつになる」
「は、はい、9日後には」
「それ、もう少し早くならんかな、ちょっと知り合いのお偉いさんに催促してもらうか」
出来るだけ早くナインとは色々と交渉しておきたい、中山だった。
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