お嬢様部 〜パクパクですわ!〜【大阪版】   作:R884

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ホルモン、パクパクですわ!

カラカラカラとバイクのチェーンが回っている。

 

「すんませんなぁ、お嬢ちゃん送ってもろて」

 

「いえいえ、困った人を助けるのは当たり前田のクラッカーですわ、おほほほ」

 

「?」

 

エリカの言葉に孫娘ちゃんが首を傾げるがお婆ちゃんはニコニコしている。ギャグは年齢を見て使いましょう。

 

腰が抜けたお婆さんをモンキーのシートを車椅子代わりに乗せて後ろから押す、孫娘はその隣でもうしわけなさそうに、……いや、エリカの美しさに見惚れていた。

お口がポカーンと開いてますわよ、閉じて閉じて、アホの子だと思われてしまいますわ。

 

「それにしても、あの運転手はご自分が悪いのにあんな品のない言葉をお婆さんに、人として許せませんわ」

 

エリカがギュッと拳を握りしめるとポケットに手を伸ばす。

 

ピ、ポ、パッ

 

「ああ、剣持さん、(わたくし)ですわ。ひき逃げの車なんですけど急いで探してくださる、そう、白のワンボックスでナンバーは……」

 

いきなりスマホを取り出して通話を始めたエリカにキョトンとするお婆さんと孫娘ちゃん。

 

ピッ「これで大丈夫ですわ、明日にはご本人に謝罪に行かせますわ」

 

「「はあ?」」

 

本当に翌日には先ほどの暴言を吐いたドライバーが菓子折りを持って謝罪に来てびっくりする事になる。ちなみに剣持さんとは大坂府警本部長、大阪府警で一番偉い人である。

 

後日、孫娘ちゃんがこの話を新聞やSNSに投稿したせいで学園に美談として伝わるのだが、この時のエリカには別に知ったことではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「ここですの?」

 

なんば駅から新世界に向けて歩いて行くと一軒の店先に着く、上を向けばホルモン焼きとらちゃん。

看板にはそう書かれていた。エリカの目がキラキラーンと輝く。

 

 

 

ジジジ、ボウッ

 

孫娘ちゃんがテーブルのガスに火を入れると肉を取りに厨房に引き返す。ちょこんと行儀よく椅子に座っていたエリカが口を開く。

 

「なんか返ってもうしわけないですわ」

 

「いえいえ、こんな事くらいでしかお礼できまへんでな、遠慮せず食べてってくだせぇ」

 

孫娘ちゃんが白モツを持って厨房から出てきて苦笑いする。

 

「でもお婆ちゃん、こんな綺麗なお嬢様にホルモン焼きなんて庶民の食べ物は失礼じゃ…」

 

「あら、ホルモン焼き、美味しくて(わたくし)大好きですわよ」

 

いつのまにか紙エプロンをつけたエリカが食べる気満々で大きな胸を張った。

 

 

 

ジジジ、パチ、パチ、パチリ

 

網の上でパチパチと脂が弾ける、時折下に落ちた脂がジッと音をたてて燃えるたびになんとも言えない良い匂いがしてくる、白モツの色がベージュに変わり綺麗な焦げ目がつけば食べ頃のサイン、カリカリに焼くのが美味いのだ。

テーブルの横にはキンキンに冷えたホッピーが、今か今かと出番を待つように控えている。オヤジかよ。

焼肉はこの焼けるのを待つ時間も楽しい。

 

食べ頃サインにエリカの喉がゴキュリと音を立てる。

 

「……では、いただきますわ」

 

パクッ

 

「ふあぁ〜〜〜〜〜!」

 

「んん〜〜〜〜〜〜〜っ何ですのこれ!何ですのこれ!!クニッとした歯ごたえに口の中いっぱいに広がる脂の暴力的なまでの旨味、まさに至福の瞬間ですわ」

 

エリカはすかさずジョッキに手を伸ばしホッピーを喉に流し込む。

 

ゴクゴクゴキュ

 

ぷはぁ

 

「ああ、最高ですわ……今死んでも悔いはないですわ」

 

「ホルモンとホッピー、この組み合わせは抜け出せない無限ループですわ、パクパクが止まりませんわぁ!」

 

 

そんな爆食いのエリカを見て驚愕するのは孫娘ちゃんだ。

 

「凄!?あんなにパクパクと食べてるのに品を感じるなんて、あれが本物のお嬢様、なんて奥深いの」

 

実に美味しそうにホルモンを食べるエリカをニコニコと笑顔で見つめてるのはお婆さん。

 

 

 

 

 

 

 

回想終了。

 

意識を現在のお嬢様部の部室に戻すと優雅にダージリンを口にした、紅茶の余韻を楽しむようにゆっくりと息を吐く。

 

「あのホルモン焼きは最高でしたわ、おかげでお肌も艶々です、ハッ、今度部活の皆様と…」

 

「絶対におやめください!」

 

すかさず戸田(とだ)がツッコミを入れる。

 

「まだ、なにも言ってませんわ」

 

 

今日もエリカの1日は終わろうとしている。夕飯は料理長が腕を振るったブッフ・ブルギニョン、赤ワインで煮込まれたトロトロの牛肉はまさに絶品の一言だ。

 

エリカにとって食べ物に貴賎はない、三つ星フレンチだろうがB級グルメだろうが美味いものに優劣など存在しないのだ。

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