お嬢様部 〜パクパクですわ!〜【大阪版】   作:R884

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1日7食は普通ですわ!

ちゅるりん♪

 

「なるほど、この喉越しはやられましたわ」

 

兵庫の姫路駅で天ぷらえきそば(390円)を(すす)る縦ロール髪のエリカお嬢様、短いスカートから伸びるスラリとした脚に黒ストッキングがよく似合っている、明らかに浮いた存在なのだが本人はそんな事はまったく気にしないのがタチが悪い。ちょっとは空気読め。

兵庫でえきそばと言えば和風出汁に中華麺、小エビだけの薄いデロデロの天ぷらがスタンダードだ、中華麺?蕎麦処である信州では考えられないえきそばである、立ち食い蕎麦を愛するうる星やつらのメガネさんが怒りそうだ。日本、中国、ポルトガル (天ぷらってポルトガルじゃないか?)と和漢洋(わかんよう)の極みと言えよう。

 

エリカは食べ終わった食器をカウンターに持って行くと、厨房に笑顔で声をかける。

 

「叔父様、大変美味しかったですわ!」

 

「「「あ、あ、ありがとうございます」」」

 

店内、厨房も含めて視線を集めまくっていたエリカの言葉だっただけにとっさに反応に困ったらしい、呆然と見送る。

 

ガラッ、パタン

 

チュルン

「何あれ?本物のお嬢様だよな?なんで一人でえきそばなんて食ってるの…」

「うわぁ!超可愛かったんだけど!」

「バカ!三つ星学園の子だぞ、お前みたいな野球バカなんぞ釣り合わねえよ」

「あぁ!麺が伸びてる!」

 

 

 

 

駅のホームに出ると熱くなった頬に冷たい風が当たる、横のベンチに目を移せば首にマフラーを巻いた戸田が文庫本を熱心に読んでいるのが見えた、吐いた息が白く流れる。スマホでカシャリと1枚、一見文学少女に見えなくもない。

 

「何を勝手に撮ってるんですか」

 

「一緒に食べていれば、こんな寒い所で本を読まなくて済むのですわ」

 

「いや、流石に制服で立ち喰い蕎麦は、花も恥じらう女子高生にはハードル高いですよ」

 

「そうなのですの?」

 

心底不思議そうに頭を傾げるエリカ。

 

「男性にじろじろ見られるじゃないですか、お嬢様くらい綺麗なら怖気付いて目を合わせようとしないかもですけど」

 

「見せておけばいいじゃありませんの」

 

害があるわけじゃなし、とぶつぶつ言葉を続けるエリカに感心する戸田、やっぱり上に立つ者はこれぐらい心が強くなきゃ務まらないのだと思った。

 

「ではおそばも食べましたし、お屋敷に帰りますか?瀬場州さんを呼びますよ」

 

車で送迎が基本のエリカ達だが、今日はわざわざ姫路駅まで来ているのだ。寄り道の多いエリカのスマホには密かに位置確認のアプリが入れられている。

 

「お待ちなさい。戸田、マクドに寄りますわよ」

 

「はぁ?今、おそば食べたばっかりですよね」

 

「いやですわ、おそば1杯じゃ夕飯まで持たないじゃないの」

 

「エンゲル係数高い女だな」ボソッ

 

「何か言いまして?」

 

「いえいえ、けど私はコーヒーだけでいいですからね、今日はお昼にローストビーフにデザートのチーズケーキまで食べてしまいましたし、これ以上は」

 

「あら、あいかわらず少食ですわね」

 

 

 

「この女ぁ!自分はいくら食べても体型変わらないからってぇ〜」

 

ぐぬぬ、デブになる呪いをかけてやるぅ!

 

 

 

 

 

テロリ〜テロリ〜♪

 

ポテトが揚がる音をバックにレジに並ぶ。

 

「お支払いは?」

 

「まとめてICOCAでお願いしますわ」

 

「ごちそうさまです、お嬢様」

 

 

 

パクッ

 

マクドでダブルチーズバーガーにかぶりつくエリカお嬢様。

 

「う~んこの火の通り過ぎた薄いパテがいかにもマクドですわ」

 

褒めてるんだか貶しているんだか、ぶつぶつ言いながらセットで頼んだコーラをチュルルと飲む。

 

「それにしてもマクドの欠点はカウンター注文で並んでると子供が私の縦ロールの髪を指差してゲラゲラと笑うことですわ?親はちゃんと注意してほしいですわ、ドリルで貫きますわよ」

 

それは痛そうだからやめてあげて。

 

エリカは数有るハンバーガーチェーン店のなかではマクドを選択する、バーガーだけならモスの方が好きなのだが決定的なのはフライドポテトだ、一時期コロナ禍のせいでじゃがいもが不足した時など禁断症状が出たほどマクドのポテトが大好きなのだ。

 

ポテトをつまみながら満足気なエリカの前の席では、戸田がぷるぷると震えていた。

 

「うぅ、つられてビーフシチューパイを頼んでしまった…今日は夕食減らさないと体重計に乗れない」

 

「何を震えてますの、あら、やっぱりビーフシチューパイも美味しそうですわね、(わたくし)も頼んできますわ」

 

ガタッ

 

「あっ、でしたら半分…って早っ!」

 

止める間も無く素早くレジに並んでしまうエリカ、こう言う時は行動力があるのだ。

 

 

 

サクリ

 

「う~ん、料理長の作るビーフシチューと比べるといまいちですわ」

 

実は戸田もイマイチだったと思っていた、これなら三角チョコパイの方が美味しかったと思う。

 

「それ、料理長に言っちゃダメな奴ですからね」

 

TV番組のジョブチューンじゃあるまいし、プロが作る料理とチェーン店では比べる意味もない、闘うステージが違うのだから嬉しくもなんとないないだろう。

 

 

 

ウィーン

 

自動ドアが開けて外に出れば、すっかり夕空のオレンジに染まっていた、冬の陽は短い。

戸田はマフラーを巻き直す。

 

「ふうっ、満足ですわ」

 

「では今度こそ瀬場州さん呼びますね」

 

私がスマホをバッグから取り出していると、お嬢さまが駅の向かいに停まってる屋台をジーーッと見つめている。

 

 

 

「戸田、たこ焼き食べたくありません?」

 

「絶対に食べませんよ!!」

 

これ以上付き合えるか!!私は素早く瀬場州さんに向けて通話ボタンを押した。

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