お嬢様部 〜パクパクですわ!〜【大阪版】   作:R884

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2023年のお正月ですわ!

ガタンガタン

 

年末の臨時ダイヤ、紅白歌合戦を観ることなく、すし詰めの路面電車に揺られ阪堺線の住吉鳥居前駅を降りる、大社前の反橋の向こうに大きな鳥居が見える、ふむ、最近ではスマートおみくじなどと言う便利なスマートフォンに連動したくじもあるが、何故実際に現場に来てまでそんな情緒の無い事をせにゃならんのだ、通りに貼ってあるQRコードを睨む。

 

住吉大社の初詣は約234万人と全国でもトップ10の参拝者数を誇る、大阪の初詣のメッカだ。ここ数年はコロナ禍の影響で多少減少したがそれでもかなり、いやめっちゃ多い人出となる。その中の一人としてエリカお嬢様と私がいた、お嬢様に夕食の後に突然連れ出されたのだ。

 

ピタッ

 

太鼓橋の手前の参道、エリカお嬢様は呆然として立ち止まった。後ろから次々と抜かれるがそんな事には気づきもしない。

参道の上には謹賀新年の提灯の光が(とも)り人波を優しく照らしている。

 

「え、エリカお嬢様、どうしました?」

 

「戸田」

 

「はい?」

 

「やはり、屋台がないですわ。もう日本は終わりですわ!」

 

「ちょ、お嬢様そんな物騒な事をこの場所で言わないでくださいよ、だから来る前に言ったじゃないですか、今年も屋台は出てませんて」

 

「ガセネタだと思いましたわ!だって今年は行動制限がないってニュースで言ってましたわよ」

 

「なんでそこだけは自己中なんです?」

 

 

「……帰ります」

 

「えっ、ここまで来て!せめてお詣りくらいしましょうよぉ」

 

「屋台も出さないような神に何がお詣りですか、お賽銭がもったいないですわ!こんな事なら昼間に来て山本の大人のモンブランが食べたかったですわ!」

 

「うわぁ、最低だこの人」

 

なんとかお嬢様を宥めすかして社を目指す、お嬢様から近寄りがたい黒いオーラが出てるのか、皆道を譲るように避けてくれるので混雑してる割に非常に歩きやすいのが救いだ。

 

お嬢様は本殿の奥をキッと睨みつけるとパンパンと不機嫌に手を打ち鳴らして踵を返した、それは決して神様に対してしていい態度ではなかったが、私もお嬢様の無礼を謝るようにお詣りを済ますとお嬢様の後を追う。

 

「ふん、ここまで来た以上おみくじくらい引いていきますか」

 

「あ、いいですね1年の運試しですね」

 

 

 

「あ、大吉ですわ」

 

「うわっ!大凶って!」

 

なんであれだけ無礼な態度のお嬢様が大吉で私が大凶なの!世の中にはびこる格差社会の理不尽を嘆く、所詮お金や運なんてずっと同じ所をグルグル回っているんだ、なにが金は天下の回りものだ。この分だと年末ジャンボ宝くじも望み薄だな。

 

「戸田、こんなのいちいち気にする必要ありませんわ、(わたくし)大吉しか出た事がありませんわよ、インチキですわ」

 

「いや、私も大吉が出たなら気にしませんけどね」

 

「それよりお腹が空きましたわ、寒いからお鍋でも食べたいですわね」

 

「こんな時間に鍋なんて食べたら太りますよ」

 

(わたくし)食べても太りませんけど」

 

「くそっ、憎しみで人が殺せたなら…」

 

 

 

「あら、オリオン座」

 

エリカお嬢様が頬を赤く染めながら夜空を見上げて呟いた。あぁ、冬の大三角かぁ。

 

 

 

 

 

「せっかく出かけたのだから、なにかこう、お正月らしいものを買って帰りたいですわね」

 

「お正月らしい?門松かなんかですか?」

 

「そんなのもう家の門に飾ってありますわ」

 

「あ、なら、鯛なんてどうです、おめで鯛、なんつって」

 

「あら、いいですわね甘鯛」

 

えっ、いまから魚河岸にでも行く気ですか。

 

結局お嬢様はアーケードの中で開いていた魚屋で甘鯛を購入した、凄いなこの店、元旦なのにこの時間に店開けてるんだ、いやこの時期だから開けているのか。

えっ、私が持つんですか?重いんですけどコレ。

 

お屋敷まで帰って来ると、エリカお嬢様が持っていたバッグからゴソゴソと封筒を取り出して私に渡してきた。

 

 

「あ、そうそう、お年玉ですわ。今年もよろしくお願いしますわ」

 

「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします!」

 

お嬢様はそう言ってお頭付きの鯛を持って厨房に向かった、今日の夕飯は豪華そうだ。

 

 

パタン

 

部屋に戻るとさっそく先程頂いたお祝儀袋のような封筒の中身を確認する、ん、結構厚みがあるな。

 

「さ〜て、いくら入っているかしら………ガサッ………ドサッ………う、嘘でしょ」

 

帯封のついた札束が出てきてビックリした、流石にこんなに貰えないと慌てて廊下に出ると、お嬢様にスカウトされて昨年から家の厨房で働くようになった料理人の中川さんが、私と丁度同じお年玉袋を開けながらこっちに歩いてくるのが目に入った。

封筒に指を突っ込みながらも向こうも私に気づく。

 

「あ、戸田ちゃん明けおめ〜!って、うえぇぇええええええ!!」

 

封筒から出てきた札束、うんうん、普通そうなるよね。

 

「明けましておめでとうございます。それってエリカお嬢様から?」

 

同じく帯封の札束を手に呆然としている中川さんに声をかける、中川さんもコクコク頷きながら私が持っている派手なお年玉袋に気づいて自分の封筒と見比べた。

 

「戸田ちゃん」

「中川さん」

 

「「何買います?」」

 

後、お屋敷で働いている者には全員にこのお年玉袋が渡されたらしい、私は欲しかったワンピースを買って残りは貯金に回した。

くそっ、お嬢様め!一生ついていきます!!

 

 

 

 

後日。

 

「戸田、たい焼きを買いに行きますわ、付き合いなさい」

 

「ワン!」

 

「犬の真似?なんですのソレ?」

 

私の忠誠心に何故か頭を傾げられた。解せぬ。

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