ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

104 / 111
第104話「とある職員の苦悩(※)」

 某月某日、某冒険者ギルドにて……。

 

 

 

 私は冒険者ギルドの職員をしていた。

 新月のダンジョンという低ランク帯を擁するド田舎のギルドで、だ。

 

 ……望んで配置されたわけではない。

 

 新しくダンジョンが発見されればそこを調査し、

 使えるとなれあ、そこに見合った基準のギルドを設置する。……それが冒険者ギルドのやり方だ。

 

 なので、当然ここ──ベルント村にも冒険者ギルドが設置されることになった。

 

 職員は本部のある王都から派遣。

 そして、こなれてきたら現地採用のスタッフで回す──それが通例だ。

 

 もっとも、それはあくまで現地採用で使える人材がいたらの場合で、この時のベルント村はまぁ……最悪の募集環境だったらしい。

 というか、今でもあまり変わらない。

 

 元々開拓村だったこともあり、識字率は最悪。

 オマケに地主はただの農家か(きこり)か猟師ばかりで知識階級はほぼ皆無。

 

 ギルド職員のような事務ができるものなどいるはずもなく、当面は派遣職員で回すことになった次第。

 

 私?

 当然、そのまま残留だ──まさに最悪。

 

 そして、輪をかけて最悪なのが、ギルドマスターに選ばれクソハゲマッチョだ。

 

 まぁ、私を含めて、こんなド田舎に派遣されるくらいだ。

 一癖も二癖もある。

 そういう意味では私も──か。

 

 でなければ、こんなショボい村に派遣などされない。

 使える職員や優秀なものは誰しも手元に置いておきたがるもの──その意味では私もハゲも同列なのだろう。

 

 ……それはしゃーない。

 

 しゃーないんだけどさー。

 元Aランクかなにか知らないが、あのクソハゲはまったく使えないし、仕事はしない。

 やることと言えばピンハネやら搾取だけ。

 

 ──あげくあれだ。

 

 魔法学校からのダンジョン実習の受け入れ先の打診と、

 近衛騎士団の見習い部隊のダンジョン演習先への候補地として選ばれたことに有頂天になって、もー。それからはやりたい放題だ。

 

 貴族やら王族が使うということで、野営地や接待施設の建設費用として湯水のごとく金が流れて来た。

 当然、それは整備費だの食材の『購入や流通を整えるための費用だ。

 

 だのに、あのハゲときたら、その金を私物化しやがった……。

 

 野営地整備に回された金は使いまわすわ、

 ギルドの設備投資費は私用に使うわ、

 もっとも最悪だったのが、かのダンジョンが実習地として使うに適するか調査を実施するにおいて、自分の手駒を使って適当な調査をしやがったのだ。

 

 低レベルで安く使える斥候だの、

 ほぼ新人同然のなんとか兄妹とか、もー……とにかく、安く使うためにギルドの低賃金で動く連中を派遣してそれでOKだとかさー……。

 

 そりゃ低レベル帯のダンジョンですよ?

 奥行は分からないとはいえ、出てくるモンスターがゴブリンだのスライムだのとくればまぁ、最低限の調査でいいと判断するのは分かる──。

 

 だけど、そのおかげで先の大災害だ。

 そして、今も未解決の大惨事だ。

 

 なにせ、王族を含む生徒教師達を含めて未来の超エリートが全員行方不明。

 

 大惨事なんて言葉じゃ生ぬるい。

 前代未聞──国を揺るがす厄災だ。

 

 死体すら出ない。出てこない……低ランク帯のダンジョンで、だ。

 そして、捜索・救出に向かった高ランク冒険者ですら未帰還。

 

 だから、何一つ真相がわからないときた。

 

 そして、さらに事件は起こる。

 あのハゲ──……逃げやがった!!!!

 

 しかも、事件に関連する重要資料を破棄し、

 ギルドの運営資金を持ち出し──あげくは、野営地に残っていた魔法学校のお貴族様の金品まで奪って逃げるという超重犯罪級のしでかしをしたうえでだ!!

 

 

 そんなのもう、上を下をあげての大騒動だ!!

 

 

 ギルド本部は真っ青だし、ここの職員も大半が逃げるし、

 オマケに王族の行方不明を受けて、騎士団の大部隊は来るは、それすらも全部消えるは、

 

 今度は野戦師団だの、国家憲兵隊だの、公爵家の騎士団だの、もー……もー……わけわからん!!

 

 当然というか必然というか、王都のギルドからは監察が入った。

 いや、あれは監察ではないな。……抹殺だ。

 

 ハゲマスターに関わっていた職員は軒並み連行。

 私?……当然、連行された。

 

 秘書的立ち位置にいた私はクソマスターの右腕のように見られていたから順当と言えば順当だ。

 

 その過程で幾人もの職員が消えた。

 おそらく処刑か、投獄されたのだろう。当のギルドマスターが行方不明だから、その責任を誰かしらが取らされた形になったのだろう。

 

 当然、次は私だと半ばあきらめていたのだが──……ここでなんと、待ったがかかることになる。

 

 そして、気が付いた時、私が座らされたのはここ……新月のダンジョンを擁するベルント村の冒険者ギルドの新ギルドマスターというわけの変わらないポジションであった。

 

 ──信じられるだろうか?

 

 二番目くらいに責任が重いとされていた私がギルドマスター?!

 あの廃止したほうがいいとまで言われた冒険者ギルドの?!

 

 しかし、現実としてギルドは復活し、再開し……。あろうことか以前よりも人が増えた。

 さらにいえば、冒険者の質も上がった。

 そして、今では軍隊すら立ち寄る、大規模なギルドへと進化を遂げていた。

 

 そんでもって、そこの責任者が……この私ぃぃぃいいい?!

 

 

「はーーーーーーーーー?!」

 

 

 まさに「はーーー?!」ですよ。

 ここ最近の発作で、時々頭を抱えて叫びたくなるという奴だ。

 他の職員は、またかの目で見ている。見ているが──何も言わず、決済の書類だけ置いていく。

 

 

 『行方不明』

  『行方不明』

   『行方不明』 『行方不明』 『行方不明』 『行方不明』

 

 行方行方行方行方行方行行行行方方方、不明不明不明不明ふめーーーーい!

 

 

 もはや、それ以外見たことねーわ。

 

 その相変わらずのダンジョンの未帰還率に戦慄すら覚える書類の数だ。

 当然、次は捜索部隊の派遣の認証だが──そんなもん、不許可、不許可、不許可だ!

 

 あんな場所に入んなっつーーーーの!!

 

 だが、現状としては次々に冒険者が突入していく。

 こっちの統制を受けない、どっかの遠方から来た雇われどもだ。

 

 一説には大商人に雇われた連中だとかで、子供の遺品だのを捜しているとかなんとか。

 他にも田舎貴族に雇われた老齢の騎士つきの冒険者集団とかなんとかもーいっぱい!

 

 さらには、正体不明のトラップにかかり、命からがら帰還した兵士だか冒険者だかが余計なことを言ったせいでその混乱した状況に拍車がかかった。

 

 なんでも、生存者がいたとかいなかったとか──……いや、ありえないだろう?

 何か月たっていると思うんだ?

 そんなのアンデッドか、ゴブリンの見間違いに決まっている……とは、言いきれなかった。

 

 なんと、遺品までご丁寧に回収してきやがった。

 その中には、魔力を宿した品まであったのだから、さー大変だ。

 

 ついには魔道具が算出されるダンジョンとして知名度が上がってしまったのだ。

 

 ……いや、でもあれって行方不明者の遺品だよね?

 だのに、魔道具??

 

(ええー? わ、わけがわからない……)

 

 だが、魔道具は魔道具だ。

 そう正真正銘の魔道具なのだ。

 

「──おっかしいなー……。新月のダンジョンで魔道具が出るなんてこといままであったっけ……?」

 

 頭を抱える私。

 そもそも、知る限り、こんなのほとんど初めての事例だと思う。

 

 たしかに宝箱なんかはダンジョンに自動生成されることもあるとは聞くが、魔道具ともなれば普通はあれだ。

 

 あれは、

 もっとこう……高レベル帯のダンジョンでしかでないはずなのだ。

 

 だのに、

 よりにもよって、新月のダンジョンで……?

 つい最近まで低レベル帯御用達だった、浅~~いダンジョンで?!

 

「いやいや、やばいでしょ……」

 

 なんたって魔道具は、ギルド認定では中級以上のダンジョンで算出されるマジックアイテムで、魔法の効果を宿しているレアアイテムだ。

 それは、魔力を持たない冒険者などには垂涎の品であり、それ以外にも需要は多数あるという超高級品。

 

 そんなのが、かつて低ランク帯とギルドが認定したダンジョンで出たんだぞ?

 そりゃー冒険者が殺到するわ。

 

 そして、この村にも殺到するわ。

 

 そうなると、王都の冒険者ギルドの本部としてはここを無人のまま、放置もできない。

 冒険者の動きは止められないからね。

 

 

 ──で、白羽の矢が立ったのは私。

 こうして、世にも奇妙な死刑か無期懲役確実のギルドマスターが誕生したわけだー!

 

 あっはっは。

 

 

「そりゃね!!」

 

 ぶっちゃけ、だーーーーーーーーーれも、ベルント村の冒険者ギルドのマスターなんてやりたくないしね。

 王族の捜索隊は来るし、各地からは雇われ冒険者も続々やってくる。

 おまけに、低ランク帯と認定した場所から魔道具が出てくるし、再認定しようにも未帰還が多すぎて手の打ちようがない。

 

 そんな中で多少なりとも、新月のダンジョンの事情に詳しい職員をただただ処分するだけで浪費していいのかとギルド本部は思ったのだろう。

 そして、どーーーーーーせ今後も絶対問題が発生するなら、最初からそのための職員を派遣しとけとなるわけだ。

 

 そんな都合のいいのは私しかいない。

 何か起こった時に前世人をおっかぶせるのにちょうどいいのは私しかいない。

 

 他の職員だってよそから厄介払いされてきたような連中ばっかりだし、

 一癖どかとか、二癖も三癖もあるようなのしかいない。

 

「あははははー」

 

 その中でもトップクラスにやばいのが私だ。

 笑うわ。

 

 ただ、それでも、処分に至らなかったのは、あのクソハゲのやらかしを事前に何度もギルド本部にチクっていたというのも大きいようだ。

 それでも、ギルド本部がクソハゲを対処しなかったのも、原因の一つであるとみなされているのだろう。

 

 まぁ、首の皮一枚で繋がった状態。

 そして、このダンジョンはもはや時限爆弾と同じだ。

 

 何が潜んでいるか知らないが、絶対にヤバい。

 絶対にまた何かが起こる。

 

 あそこは欲望に取りつかれた人間やら、遺族の妄執やらなんやらがつまりに詰まった厄災を詰め込んだ箱のようなものだ。

 

 そんな中で発見されたあの文書……通称シギンス文書。

 あれの解読が急がれる。

 

 

 

「シギンス──生きているのだろうか……」

 

 

 

 いや、もはや生きてはいまい。

 

 あれ(・・)は、あのハゲが最後に派遣したダンジョン都市からの増援部隊だった。

 派遣してからどれほどの月日が流れたことだろう。

 

 たしか、荒野の迅雷サンダースとともに派遣され、あえなく未帰還となったはず。

 そのBランクパーティ『石清水』のリーダーのシギンスであるが、なんと先日──彼の残したであろう文書がダンジョンの入り口付近で発見されたのだ。

 

 そんなことがありえるか?

 軍隊がもぐり、未帰還となった場所で──……日を置いて手紙が発見されるなんてありえるか?

 

 だが、ありえた。

 あれは間違いなくシギンスのサインだ。ギルドに残されていたものと完ぺきに一致した。

 

 

 ……ただし、その文字はほぼ読み取れないものであった。

 

 

 まるで精神錯乱者(・・・・・)が書いたような、のたくったような文字で、

 かろうじて読み取れた自分の名前でさえ、まともに書けない状態で……血で書きなぐったような文字は、最初ただの落書きかと思われたくらいだ。

 

 ……だが残った。

 

 並々ならぬ執念を感じたためか、回収されたその文章は残った。

 そして、シギンスの行方とともにその解明が急がれてる。なぜなら、その解明こそが、あのダンジョンで起こっている真相に近づけるからと私が確信しているからだ。

 

「せめて、なにか問題が起こる前に何としてでも──…………!」

 

 だから、私が今できることはただの二つ。

 

 ダンジョンで問題がおこらないように、被害を極限するようにギルドとしてフォローするのみ。

 行方不明者の捜索隊などもってのほかだ。

 

 そして、なによりこの文書の解読だ。

 それさえできれば──……私も生き残れるかもしれない。

 

 いや、生き残る。

 なんとしてでも!……少なくとも、あのハゲが処刑されるのを目の当たりにするまで、死んでたまるかぁぁぁあああああああ!

 

 

 

 

 

「って、考えていたのが数時間前なんですけどねー……」

 

 

 

 

 

 はぁ……。

 なんなんだろうかこの状況は──。

 

「……ひとりごとが多い多いようですが、大丈夫ですか? ギルドマスターさん」

「大丈夫に見えますか? 大賢者殿」

 

 な~んでか知らんけど、

 いつぞやハゲがしていたように、このギルドの応接室には似つかわしくない人物がずらり……。

 

 

 大賢者アマリア。

 そして、その弟子(?)二人。

 

 

 もうこの時点で厄介ごとの匂いしかしないわー……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。