ミミック転生~人食い箱の食味記録~   作:LA軍

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第106話「大賢者(※)」

「それでは、案内を」

「は、はい……」

 

 

 ガラガラガラ

 

 

 なぜかしょんぼりしたギルドマスターを先頭に、荷車に乗ったままの大賢者アマリアとその一行は村を抜け、盛況な野営地を抜け──新月のダンジョンを臨む場所にまで来た。

 

「……時にギルドマスター。あの野営地は随分立派ですが」

「あ、あぁ、それですか──じつは、」

 

 かくかくしかじか

 

「──というわけでして」

「なるほど……。そんな大事件が」

「いや、知らなかったんですか? 今、めちゃくちゃ王国で問題になってるんですが……」

 

 すっとぼけた顔のアマリアに引きつった顔のギルドマスター。

 その対比よ。

 

「長いこと国外にいましたのでね。しかし、そうですか……。魔法学校の生徒が」

「もしかして、知り合いが?」

 

 そういえば、この人大賢者だったなと、ギルドマスターはひとり思う。

 

「何度か講義に呼ばれましたよ。もしかすると犠牲者の中にその時の生徒がいるかもしれませんね……。あとはまぁ、一応は当時の創設メンバーとやらの一員ですよ。もっとも、その時の彼らはもう生きてはいないでしょうけどね。随分前のことです」

 

 はい?

 そ、創設メンバーって。

 

「あ、ああー、長命種あるあるですねー」

 

 とりあえず適当な相槌を打っているのがバレバレだけど、まぁいいやとギルドマスターは頷く。

 

 実際、この人らのいう随分前は本当の意味で随分前だったりするのだ。

 それこそ、建国の頃とか……なので、数年前などと考えてはいけない。

 

「ふふっ、知ってますか? あそこの制服を考えたのは私なんですよ。その縁もあって今でもあの学校とは関係が深くてですね──こうして、弟子にも、ほら」

「弟子でーす」

「でーす。……っていうか、これそう言うコスプレだったのかよ?!」

 

 知らなかったのか、少年のほうが、慌てて服を引っ張っている。

 いや、コスプレて……。たしかに、生徒でもないのに制服はあれだけど。

 

「フフッ、似合っているからいいじゃありませんか」

「いいとか悪いとかじゃなくて、アマリアの懐古趣味かよ」

「まぁ動きやすいし、可愛いですけどね」

 

 そういって女子弟子のほうがクルリと回ると、スカートがフワリと揺れる。

 

 たしかに可愛い。

 

「そう言ったモノも含めてデザインしたんですよ。もとは遠い国の水兵の服なんかを参考にしました。あ、男の子はどっかの独裁国家の軍服がモチーフです」

 

「「へー」」

 

 興味あるんだかなんだか、声をそろえた少年少女に苦い顔をするしかない。

 っていうか、子連れで大丈夫かな?

 

「……あの、本当に行くんですか?」

「それはもちろん。ギルドから要請を受けてますからね。……魔法学校の話を聞いたらなおさらです」

 

 あー。

 ギルドの要請って、あの時の──……いや、それいつの話だよ!

 

「い、いえ、アマリア様。も、もうあの話はいいんですよ? さっきもギルドでお話しましたが、その──前任者がどえらいことをしたその名残です」

「しかし、事実なんでしょう?」

 

 それはまぁ……そう。

 

「ですがその……アマリア様はまだわかるのですが──彼女たちも、ですか?」

 

「ん? 俺らは別に問題ないけど?」

「よゆーです、よゆー」

 

 不敵な笑みを浮かべる少年と、

 ムンッ! と可愛らしく力こぶを作る少女。

 

 いや、まぁ……うん。

 無問題に、余裕ねぇ……。

 

(いったい、そう言って何人消えたんだか……)

 

 しかして、ギルドマスターにそれを止める権限がないのはまた事実。

 できるのはダンジョンの管理と、捜索救助隊の派遣の有無を決める程度だ。なにせ、所詮は自己責任の世界で、すでにこのダンジョンは幾人もの冒険者と軍隊を飲み込んできた魔境だ。

 

 今更、アマリアとその弟子を止めるなんて詭弁(きべん)もいい所だろう。

 

「……ただ、その──今は軍の精鋭が突入しておりまして」

「精鋭? もしかして、野戦師団でしょうか?」

 

 ん?

 

「はい、ご存じで?」

「やっぱりそういうことですか……」

 

 呆れたようなアマリアに「ん?」と首をかしげるギルドマスター。

 

「あの、なにか……?」

「知らないのですか? 野戦師団が守るはずだった国境要塞──陥落してましたよ」

 

 ッ!

 

「フォ、フォート・ラグダが?!」

 

 あの難攻不落の王国国境の象徴が?!

 

「いくら城壁が硬くとも、守るはずの人がいないのでは張子の虎ですよ。……今の国王が誰かは知りませんが、投資先を間違えたようですね」

「…………そのようですね」

 

 そして、投資の回収は不可能。

 ここは果てしなく人も資本も何もかも飲み込む魔境だ──……。

 

 前ギルドマスターが半端な手を打ち続けたせいで、ついに国まで傾けるに至るとは……。

 

(いや、すでに私も同じ事をしているのかもしれないな……)

 

 ダンジョントライに消極的になっているのは事実。

 近隣都市や、ギルドに増援すら求めていない今、ただただ、やってくる軍隊とどこか雇われ冒険者に任せるまま──……。

 

 

 ……はぁ。

 

 

「今更ですが、アマリア様。よろしくお願いします」

 

「もちろんです。……すでに遺骸しかないでしょうが、生徒達の無念──きっと果たしてみせましょう。シェイラ、ルドルフ──行きますよ」

「「はい!」」

 

 こうして、大賢者は新月のダンジョンに挑む。

 

 聖戦士ルドルフを先頭に、

 大賢者アマリア、大魔法士シェイラの編制が突入する。

 

 

 ……彼らは三人パーティ。

 

 

 気ままなエルフと、

 その縁者や子で作られたパーティは知る人ぞ知る最強のパーティ、Sランク『静寂の杖』として……。

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