うーん。と周囲を見回すミユちゃん。
そこには、「私」が夜なべして作った傑作空間が広がっていた。
『これが傑作……』
そそ。
「すごいでしょ~!! なにせ、
『この先って?……あぁ、隠し通路の先のこと? なに? ここと
「その通り!」
えっへんとのけ反る「私」が舌で指さす先。
そこには、
ミユちゃんが振り返った先には少し長めの廊下があーる。
例によって1×1で掘り込んだ通路だ。
『あー。もしかして、あの部屋って……』
「お? 見て来た?」
『まぁ、サラっとは……?』
うむ。
ならば話は早い。
「そそ! そここそが、この部屋をより際立たせるための囮──本物(偽)のセーフポイントってやつだよ」
『は? 本物なのに……偽?』
そ。
本物の偽物。
それも、いつぞやリーデルちゃんたちを仕留めたあんなまがい物じゃないぞ!
コンセプトは同じだけど、
あんなのは、ただの休憩所だ!
『ってことはまさか……』
「イエス! ついに完成したのだよー! 数々の捕虜を尋問して作り上げたまさに
どんどん、ぱふぱふー♪
『あ、あぁー……。この先の部屋の
「うん。偽物だけどね」
『ん? いや、どっちよ』
「だから、本物の偽物だって」
『いやだからぁー』
うっせーな!!
「偽物だっつてんでしょ!! 本物っぽいね」
あーもー。
めんどくさいなー。
「たしかに自分で言っててややこしいけど、そこは分かれや!」
つーか、
「ったくもー。まぁ、苦労して作ったことだけ理解してくれたらいいよ。低能」
『うっせーわ、空箱』
ふんっ。
相変わらずめんどくせー、食べカスだぜ。
『ってことは、あれね? 前に生徒達を
「そーいうこと。……んだよ、わかってんじゃん」
ま、もっとも、今回は以前よりもさらに高度に仕上がっている。
前のときは、想像のセーフポイントだったからね。今回みたいな手練れは実物を知っている可能性が高いので、騙されてくれないだろう。
なので、
そんな相手には、
「それで引っかかるかどうかは分かんないけど、セーフポイントからの隠し部屋なら、進路は限定できるでしょ?」
『まぁ、一本道だしねー』
そゆこと。
「怪しまれようがなんだろうが、こっちのペースに誘い込むことができるそれだけで十分なのさ」
そして、この自信作なら、初手では引っ掛ける自信があーる!
ふひひっ。
こっちが大人しく宝箱のふりをしていたら、人間はそれをたしかめたくなるものさー。
「しかも、こんだけ凝こった作りの部屋ならなおさらね」
『……確かに凝ってるわねー』
「でっしょ~?」
見~てよこれ。
「9×9の部屋をつかって思う存分詰め込んだこの輝きをー!」
『あー、いつものが始まったー……』
うっさい、黙って聞けや。
「どうですー。この、いかにもファンタジーの遺跡ッポイ石造りの神々しい雰囲気!」
『禍々しいの間違いでしょー』
そして、壁には
さらには地面に苔むした感じに植生をはやして、まるで地上の忘れられた森の奥の雰囲気を出してみました~!
「さらには、この水堀!」
『無駄に綺麗ー』
でしょー。
部屋の外周をぐるっと囲うようにして8×8~6×6の部分を削って作ったのは幅3メートルの水堀ぃー!
それも、水底が深く、キラキラと輝く水で満たされた美しき水堀だ。
「そして、光を弾くのは、天井にふんだんにちりばめた魔力灯! まるで太陽の様~♪」
『不自然にあっかる~い』
んねー。
ダンジョンとは思えない明るさ。いっそ神々しくもあるよねー。
『ってか、ここだけでどんだけポイントかけてんのよ』
んむ。
軍隊の皆さんの
「ざっと、1万ポイントくらい?……知らんけど」
『よーそんだけ無駄使いするわ』
無駄ちゃうわ!!
「みてよ、これ! なんと、床には苔のほかにフカフカの草地! そして、堀の先には、崩れかけの木橋ぃぃいいい!」
『あー……たしかに味があるわね』
でしょ!
この、ちょうどいい寂れ具合が難しくてね。
……ぶっちゃけここに一番力をいれたね!
「えっへーん!」
『っていうか、この部屋って、水の上に浮かぶ小島みたいな?』
そう!
まさに、それをイメージしています。
「ま、地底湖ってほどの面積はさすがにないけどねー」
やってやれないこともないけど、さすがにそれは手間が過ぎる。
なので、この部屋はとりあえず外周をぐるっと幅3mほどの水路で囲って、中央の部分を浮かせた形にしたのだ。
──するとどうでしょう。
隠し通路から来たものは、一本橋を渡ってしか中央の島へ行けないようになっているー。
もちろん、入口は一か所だけ。
つまりどうやっても橋を渡って島に行くしかないのだ。そこがミソでーす。
「どうです~奥さん。ダンジョンの奥地。セーフポイントの隠し部屋に、清涼なる水を湛えたこんな隠し部屋があったら──確かめたくなりませんことぉ?」
『誰が奥さんか』
そこは乗れよ。
「そして、その橋の先……。小島のような草地には、ひび割れた石材を組み合わせた台座が
じゃじゃーん!
ついに出ました小島の正体!
なんとそこには、
石のレンガを組み合わせたミニピラミッド~。
『……生贄の祭壇かな?』
ちゃうわ!
その祭壇の上にこそ、この部屋の目玉があるわけよ!!
「周囲が水堀で覆われているせいで、使える陸地は5×5! そのうちピラミッド状に段々に組んだ祭壇のおかげで最終的に使える場所はそう! この1×1マスのみー!」
つまり、
「私」のいる、ここだー!
「こここそが、この部屋に置いてもっとも注目を浴びる場所であるぞー」
えっへーん♪
「……どう? これ、RPGだったら、絶対に伝説の剣とかがぶっ刺さってるよね」
『いや、あーるぴーじーを知らないんだけど?』
うん。
「私」も知らない。なんだろ、RPGって。ロケットランチャー?
『で、なに? アンタがその台座の頂点に居座るって感じ?』
「そうゆうときもある」
『ん?
そりゃそうでしょ?
毎回こんなとこ使うわけないじゃん。目立ってしょうがないわ。
そもそも、
「こんなくっっっそ目立つ場所を、どうみても怪しいべ?」
『それはそう』
「でしょ? だけど、それはその時の使いよう──ようはさ……」
絶対に視線を集める場所!
それを作るのが目的なのだー。
「ま、今回の想定する敵はベテランっぽいから、それ専用に使うってだけ。ミユちゃんとかリーデルちゃんみたいなアホ肉には小細工しないよ」
『だれがアホか』
おめーだよ。
初手で宝箱に食われたアホのことだよ。
「ま。こーゆーのはわざとらしいくらい目立ってナンボ~。目立つなら目立つなりの使いようってのがあるのよ」
こんだけあからさまな部屋なら、どんなベテランでも目を奪われるには間違いないしね。
『んー。知ってる側だから思うのかもしれないけど、どーみても罠じゃん』
「うん。罠と勘付く奴なら、それはそれで
さっきも言ったけど、注目させるのが目的だからね。
アホ面してひっかかるならそれでよし、ひっかからないならひっかからないでも、とりあえず意識はそこに向く──そこをついてやるのさー。
『うーわ……。まーた、嫌らしいトラップベースだわ。そして、今回もなんか企んでる顔ね』
「当然っしょ! 上物を食うためなら手間暇惜しみませんよ、ボカぁ!」
さーて、
というわけで最後の仕込み仕込み~っと。
「今回の侵入者は相当な手練れだし、こんな罠にひっかからないだろうからね。ここは、プランBでいこっかなー」
……え~っと、そうすると、
トラップはここ、眷属はここで──っと。
いそいそと最終準備を整えていく「私」をミユちゃんが恨めしそうに見ている。
『くっそー。ダンジョンの裏側見せられてるのに、なにもできないのが、もどかしー!』
けけけっ。
君は一生そのまんまだよ。
「さーて、とりあえず最低限の仕込みは、こんなもんかな。連中が来るまでに、もうちょい時間があるだろうし、軍隊の精鋭どもがどうなったか確認しようかなーっと」
ふふーん。
実は眷族の連中とはある程度の感覚共有ができるんだよねー。完全な触感やら視界ジャックやらができるわけじゃないけど──ほら、「私」ってば感覚が鋭いじゃん?
だから、割となんとなく分かるのだー。
「というわけで──……はぁっぁああ!」
いざっ。
「
──ギュン!
「……さ~て、見えるかなー」
どーせ連中はすぐには来ないし、じっくり確認しよう。
あわよくば眷族越しに肉の味を楽しむのだー。
「つーか、この感じだとあれだな。軍人どもの悲鳴が凄いから、侵入者も気づいてるんじゃないかな?」
とすると、突入した連中も
眷族越しに偵察ができるってもんです。
「けーけけけっ、手練れほど、すーぐに弱者を助けようとするんだよなー」
強者の余裕って奴かね。
ま、それならそれでお手並み拝見といきましょうかね。
「……って、ミユちゃん何してんの?」
『ア、アンタが透視って言うからー!!』
は?
そんで胸押さえてんの……?
え? 隠してるつもりー?!
「……薄ッ」
『殺すぞこらぁぁぁあああああああ!!』