「んなっ!」
「こ、れが、ミミック?!」
驚く二人の弟子。
彼らもミミックの存在は知っているが、その知識はこれは違う。
通常のミミックは、深いダンジョンに潜む宝箱の魔物だ。
大して知恵もなく、ただただ冒険者なんかが訪れ、その箱を開ける瞬間をひたすらにじっと待ち続ける魔物……。それこそが
だのに!
これはなんだ?!
これがミミック?!
ただの醜悪な人食いの化け物じゃないか!!
いや。
だが、まぎれもなく人を貪り食うさまはそれだ……。
「おそらく、これを作り上げたのは普通のミミックではありませんね。……先のシギンスの文章にもありましたが、ユニークモンスターが関わっているはずです。ゴブリンタイプやオーガタイプにもこうして自前で群れを形成するユニークモンスターがいますが、これはそれのミミックと愉快な仲間たちと言ったところでしょうか」
そして、
それを知るがゆえにアマリアは動じない。
「ふふふっ……。しかし、正体不明の魔物の正体が、ミミックならばたいしたことはありません。
そう!!
──正体が露見したミミックなど遅るるに足らず!!
「はぁぁぁああ!!」
バチバチ、バチバチッ!
気合一閃!
言うが早いか、頭上に掲げた魔力の塊を一気に魔法の形に練りあげたアマリア。
……こんな魔法に詠唱などいらない。
そう。
こんなものは、ただ一言宣言するだけで十分──!!
「──滅せよッ!」
ガカぁ……ッ!!
猛烈な光!
そうとしか表現できない魔法がダンジョン奥に顕現した。
これまでの光景をまざまざと弟子たちに見せた後、アマリアは躊躇することなく、湛えていた大魔力を発射したのだッ!!
彼女のそれは、なんのひねりもない魔法であったが、それだけに最強にして無比!
そう。
これぞ人呼んで『
その威力はまさに最強。
その威力がまさに最恐。
その威力もまさに最凶。
あまりにも強烈な魔力の一撃は、音すら消すのだ!
だから、一瞬にして部屋を埋め尽くした高濃度の魔力が、文字通り全てを滅ぼしていくときはまさに無音!
空気も
色も
音も
ゆえに無慈悲!!
「(……ぁ)」
「(……ッッ)」
「(……ュヵッ)」
直撃を食らったものは、人も家具も、悲鳴も、血も──……音さえも、すべて滅却していくのだ。
……だが、ルドルフとシェイラは確かにみた。
食い千切られながら悲鳴を上げていた兵士達が、たしかに最後にアマリアたちを見て何かを言おうとしていたところを。
少なくとも恨み節ではない。
無念でもない。
……礼を。
「「「……ぅ」」」
ご、
しゅぅぅぅぅ……!
……そうして、何かを見て聞いたような気がした弟子二人の目の前で、魔力が収束していく。
まるで小型の太陽が生まれ、一瞬で消滅したかのような凄まじい放射であったが、あとに残ったのは炭化した様々な何かの残骸のみ。
人、肉、骨。そして……。
「む。……珍しいですね。これは『悪魔のるつぼ』の残骸ですか」
からんっ。
いつの間にか部屋に入っていたアマリアが、粉々になった欠片を拾い上げて興味深そうに見つめていた。
その様子に、ハッとした二人は慌ててあとをおう。
「だ、大丈夫なのか?」
「え? あぁ、はい。生存者はゼロ。……二人とも、それでいいですね?」
「あ、はい。……あれはもう」
ルドルフもシェイラも目を逸らす。
しかして、言いたいことはそうじゃない。
アマリアの言う、
一応は、生きていた人を見捨てたことを言っているんじゃない。二人だって、そんなことを責める気は微塵もない。
……ないからこそ、代わりに聞きたいのだ──。
「お、お前は大丈夫なのかよ?」
「私ですか?……とくには。──ま、慣れたものですよ、
「見送るたって……」
ルドルフが何か言おうとするも、シェイラが腕をつかんで小さく首を振る。
みなまで言うこともないだろうと。
「しかし、アマリア様。さっき言ってた『シギンスなんとか』っていうのは──あのギルドの?」
「えぇ、解読を急いでいたようなので、少しだけ読ませてもらいました。それには、かつてここに突入し──生きて帰らなかった者の手記のようなものでしたね。……もっとも、最後にはかなり
あぁ、どうりでと二人は納得する。
だから解読できなかったのかと──。
おそらく本人は正常なつもりで書いたのだろうが、まぁ、そんなものだ。
「──それによると、このダンジョンに巣食う魔物の詳細が書かれていたのですよ。なので、ある程度は予想させてもらったというわけです」
そういってあいまいに笑う。
しかして、その様子からして、どうやら文書の中身はギルドに伝えてないんだろうなーと思い、飽きれた顔のシェイラ。
「……アマリア様。それ、絶対にすぐに伝えたほうがいいですって。……まぁ、帰ってからでも遅くはないでしょうけど」
「ふふっ。これを解決すればいいことですよ──さぁ、行きましょう。ここにはもう、何もありません」
「ああ。ほんと、文字通りなにもねーなー」
カラン、
ボクッ……。
欠片や骨やら、炭化した何かを踏むも、残留物は他になし、だ。
冒険者なら、ギルド認識票を回収するところだけど、彼らは兵士──身分を示すドッグタグは全て溶けてしまったらしい。
「……つーか、アマリアよぉ? そんなデカい魔法使えんなら──最初っからダンジョンにぶち込めば早くないか?」
「ふふっ。そう言うのはズルというんですよ、なによりほら──私が本気で撃てば、」
──この星に穴が開きますよ。
ニッコリ。