──ぐぱぁぁっぁああ!
「ひっ!」
「きゃああっ!」
大口を開けがてら、
舌なめずりし、歯の間にこびりついた人肉に骨片を──ブパァァァア! とまき散らしてやると、怯える高級ガキ肉ども。
ついつい、その顔に気をよくしちゃうぜ!!
「──ひゃーっはっはっはっは!!」
怯えろぉぉお!」
「魔法の実力を発揮できないまま死んでいくがいいわぁぁぁ!!」
そうして、腰を抜かしたあとは、
美味しい美味しい熟成肉コースに放り込んでやるぜぇっぇええ!
「ぎゃはぁぁあ! お前らは特別に、数か月はボッコボコにしてやるぜぇぇえ!」
生きていることを後悔するくらいに、毎日毎日、丹念に丹念に丹念に
ひゃーっはっはっはぁ!
……って、あれ?
「ん? な~んか忘れてるような……」
あれ?
高級ガキ肉が二人だけ……?
「おーやおや、なかなかに耐久力があるようですね」
「ッ!」
あー!
そうだった!
「……お、おまえ、いつの間に!」
どこに行ったのかと思えば、なんとまぁ、アマリア何某こと女エルフのやつが空中に浮いているではないか。
そういや、目の前のこれ──幻覚だったっけ?!
それに気づいたと同時に、ボサァッァ……と、奴の幻覚が砂が崩れるように消えていく。
「ふっ、いつの間にも最初からですよ」
あーん?
「最初からだぁ?……ってことは、なにか? 分身と弟子を戦わせておいて、自分は、呑気に空中散歩ってかー?」
はっ、いい身分だね。
「好きにほざきなさい。それよりも、興味深いですね。二人の近接攻撃に、私の魔法を至近距離で食らったはず。……いくら眷族越しとはいえ、爆風の余波くらいはそちらに行ったのでは?」
はっ。
な〜にを言うかと思えば。
「けけけっ。そんな攻撃、屁でもねーぜ」
みよ!!
「私」の耐久力は世界一ィィィイイ!!
一発二発で、負けることはなーい!
「な~るほどぉ。さすがはユニークモンスター、優秀な耐久力を誇るようですね」
続けて、「これは初見を誤りましたねー」とか
けっ、な~にを余裕ぶってるんだかー。
チッチッチ!
「残念だけど、耐久力だけじゃねーんだなぁ」
「では、なんと?」
決まってんだろ!
「──満腹ボーナス絶好調ってやつさー!」
ぐぱぁぁぁあ!
「うわっ、くせッ!」
「きゃ! こ、これは──人肉?!」
はい、せいかーい!!
思いっきり口を開けて胃の中にあった適当な肉をぶちまけてやる。
──ぎゃはははははは!
「こうしてよ~。この中にテメェらみたいなアホ肉を詰め込んで貪り食えば食うほど、「私」は強くなるのだぁっぁああ!」
そして、今日も今日とて、食いに食いまくったからなー。
冒険者に軍隊飯に、テメェらみたいなガキ肉をよぉぉ!
「ぎゃーはははははっはははははは!」
というわけで、お次のメニューは……。
「──お前らだー!!」
ひゃはぁぁ!
高級ガキ肉のエルフ定食だぜぇっぇええ!
「……なるほど。だいたいわかりました」
「そりゃどうもー」
はっ!
なにを余裕ぶってるんだかー。
「空を飛んでたら攻撃が届かないとでもー?」
甘い甘〜い。
こっちにはいくらでも攻撃手段はあるし、なんなら女エルフの前にガキ肉を仕留めてもいい。
「まさか! そんなつもりはありませんよ」
そういうなり、
静かにふわりと舞い降りた女エルフ(多分本物)は、そのまま、二人を背後に守るようにして「私」の前に立ちはだかった。
「……二人は、引きなさい」
「ア、アマリア?!」「アマリア様?!」
あ~ん?
何言ってんの?!
「引くも何も、馬鹿言っちゃいけないぜー。どっちも逃がすわけねーじゃん?」
宣言するなり、パチンと指ないし、隠しておいたボウガンを舌で弾く。
すると、仕掛けて置いた槍罠のトラップに命中し発動!
ガシャーーーーーーン!!
唯一の出入り口を槍罠で塞いでしまった。
「な!」
「い、入口が!!」
けーけけけ、あったりまえでしょうが。
「貴ッ重ぉぉぉおおな、高級ガキ肉だぜぇ。そんなん、女エルフともども絶対に食うに決まってるや~ん!」
「おやおや。これはしてやられましたね」
だろう?
なんのための袋小路だと思ってんだか~!
「ひゃーっはっはっはー! これで閉じ込め完了だぜぇ」
余裕ぶってんのも今のうちだけ。
最初はあの眷族部屋を殲滅した魔法で攻撃されたら一撃かと思ったけども、ここまで接近したら怖くもなんともないぜー。
「つーかさー」
──ジュルリ♪
静かにこちらを睨む女エルフをつま先から頭のてっぺんまで舐めるように見る。
「……なんです?」
「はっ」
決まってんだろ?
「お前らさ、こっちの情報をもってるんだろー?」
「おや、お気づきでしたか?」
かっ!
「あったりめーだろ!」
「……だとしたら、なんです?」
「そりゃ、おめぇ、決まってんじ~ゃん! そんな勝ち筋を持ってんだったらさー……」
ジャキンッ!!
「魔法をぶっ放して最初の一撃で決着つけろって―の!!」
──おらぁっぁあああああ!
こっちを侮ったツケを、文字通りその体で払ってもらうぜっぇええ!
余裕の表情を崩さない女エルフに向かって、舌撃&グラハム君ソードじゃぁぁぁあ!
「心臓をブッ射した後は、お前は踊り食いにしてやるぁぁぁあああ!」
ひゃッはぁぁあああ!!
涎をまき散らしながらブンブンと舌撃を振りつつ、予測不能な軌跡から女エルフを襲ーう。
(──鈍重な魔法使いにこれは躱せまーいッ)
……とった!!
背後から襲うグラハム君ソードが、そのまま、女エルフの心臓を刺し貫────……ガッキーーーーン?!
「ん、んあなぁぁあ?!」
──ふ、防がれたぁぁあ?!
(いや、な、なんだ、今の手ごたえぇ?)
パリィでも、シールドバッシュでもねぇ!
ましてや防御魔法や鎧で防いだ感じのそれでもねぇぇ!
「……お、おいおいおい。そりゃ反則じゃねーか?」
見れば、ブゥゥン! と低く唸るのは、女エルフの周囲を覆う薄い防殻のような──……否、まさしく『
「ふッ、侮られたものですねぇ」
いやいや、
侮るとか以前に。
「な、なんだそりゃ? そ、そんな魔法みたこた
とねーぞ?!」
っていうか、
この剣の一撃を防ぐバリアーなんて、ありえねぇだろ?!
「なんか知らんがすげぇ、高級品だぞ、これ! たしか、前にきた騎士連中の話を総合すれば──国宝の、」
「キャルトールですか。……懐かしい物を見ましたね」
「ッ!」
んな!?
「なん、だと……」
し、知っているのか?!
「知っているもなにも、それは私がかつて使っていたものですよ。魔法に傾倒してからは、かの王国に譲渡したものですが──。しかし……なるほどなるほど、な~~~るほどぉぉ」
な、なにぃぃぃ……?!
この剣の……元の持ち主だっぁあ?
「じょ、冗談だろ? こりゃ確か──」
そう。
たしかこの剣って……。
「そう。かの王室に譲渡し──……今はいずれかの王子が使っていると聞きましたが、なるほど。やはり、一撃で消滅させなくてよかったです」
ギロリ!
「うっ!」
バリアー越しながら、至近距離で睨む女エルフ。そのプレッシャーよ!
間抜けキャラかと思いきや、眼力がすげぇぇ……!!
「お前……。私のかわいいかわいい、魔法学校の生徒達を食べましたね?」
「ッ!!」
その瞬間、ぶわっ!! と猛烈な殺気が押し寄せて来た。
それはそう──なんというか、母親が子どもを目の前で失った時の様な、強烈な喪失感と悲しみと憎悪に近しきもの!!
「……ふん、その動揺──やはりですか」
──け、けっ!!
「あ、あぁ。喰ったよ! ぜ~んぶ食ってやったぜ!!」
間抜けな先公含めて30余人ばかりを、ぜ~~~~んぶなぁぁあ!
「み~んな、美味かったぜぇぇえ! チッコイガキんちょなんか一口サイズだから、生きたまま丸飲みよー!」
ぎゃはぁぁ!
死ぬまで数十秒、喉奥でギャーギャー泣き叫んでやがったのが、まーーーーーーたサイコーだったぜぃ!
「そ〜れの何が悪い!! ここは「私」のテリトリーさ、勝手に入ってきた連中が悪いのだぁぁ!」
ぎゃーっはっはっはっは!
「悪い、悪くないでいえば、確かに領域を犯した者が悪いのでしょう」
「だろう? だったら、メンチきってんじゃねーよ、このクソ女エルフがぁぁあ!」
「ですが!! その言葉、そっくり変えて返してあげましょうか──……このクソミミックがっぁああ!」
──ギュパッ!!
そんな音がしたかと思うと、奴がいた位置に埃の渦を残して、なんとあの女エルフの姿が掻き消えた!
い、いや、消えたわけじゃない──これは……!
「んなぁぁ!?」
う、後ろか?!
……は、速すぎんッッ!
「遅い! 領域を犯した者が悪とするならば────……」
ガキンッ!!
「がっ?!」
ちょ?!
後に回り込んだだけでなく、いつの間にそこに乗った?!
慌てて意識を背後に向けるがもう遅い!
なんと、そこには上蓋にのっかり、拳を振りかぶったあの女エルフがいたーーー!!
「ちょわぁぁぁ! い、今の一瞬でぇぇえ?!」
バ、バカな!!
「────魔法を使いし者はすべて私の子!! ならば、その領域を犯したお前に報復をしても文句はありませんよねぇっぇええ!」
んなぁぁあ!
や、
「やめぇっぇえええええ!」
パッカーン!
「──んがはぁぁぁあああ?!」
刹那、
空気の擦過音したかと思えば、小気味のいい音とともになんということ!
わ、
「私」の上蓋に拳大の穴がぁぁあ!
「い、いっだぁっぁああああ!」
「ほっ! なんだ、耐久度は口ほどにもないじゃないですか!」
そ、そりゃな!
頑丈は頑丈だけど、所詮は宝箱の強度!
つまりはただの箱ですからね!!
「つーか、速いなお前ッ!? そして、素手かよッ?!」
見れば、なんということ!
拳大の穴は、文字通り「拳」による大穴!
そいつが私を貫き、その穴越しにガッシリと上蓋を掴んでござる────って、お、おいおい!
「ちょ! や、やめー!」
めききき……。
「やめるわけがないでしょう。そして、杖でやれば壊れるに決まっていますしね。あと、私はもともと──」
──こっちが主流です!!
キュィィィイイン!!
奴が言い切るや否や、慌てて視線を背後に向ければ、なんてこと!!
ガッチリ箱の穴と背後から掴んでいる手とは、逆の空いた方の手に、なにやら黄金のオーラのようなものが収束していく!
「ちょ、ちょぉぉぉおおっとぉぉぉおお!!」
や、やばい、やばい!
何か知らんが──あれは、やばーーーーい!!
「よ、よせぇぇぇえ!!」
「よすものですか。……私はアマリア。近代の魔法使いの祖にして──……」
──彼らの母です!
「チェストーーーーーーーーーーーーーー!!」
「ぐぁぁぁああああああああ!」
ドーーーーーーーーン! という衝撃が「私」を背後から貫き、その衝撃で、潜伏場所ごとぶっ飛ばされる!!
そのまま、潜伏場所から弾き飛ばされ、無様に神殿部屋のピラミッド状のその頂点から転がり落ちていくー。
が、ごっ、がらーん!!
「い、が、げっ! ごへーーー!!」
がららら~ん。ゴトン!
いッつつつ……。
「クッソがぁ……いっっでえなぁぁぁあーーーー!?」
この野郎!!
「殺す気かぁっぁああ!!」
二三回転して、最下段まで落ちてなんとか体勢確保。しかし、どんだけふっ飛ばされだの?!
つーかなに?!
今、何をされた?!
っていうか、なんか視界が変なんですけど?!
「ほ~ぅ。今のを耐えますか? 人を食らいし箱よ、一体どれほどその身に人の魂と血肉を取り込んでいるのか」
まるで興味深いと言いたげに、ゆっくりとピラミッドを降りてくる女エルフ。
下から見上げるものだから、なかなか光景──……じゃなくて!
「な、なんちゅうデタラメな……」
バリアーだけでも厄介だというのに、
まるで湯気にように沸き立つオーラを陽炎のごとく形作ってみせてノシノシと降りてくる……こ、こぇー。
人間だったら、あれだぞ?
ずるずると後ずさりながらそいつを見上げながら、命乞いする場面だぞ?
あいにく「私」は動けないので、辛うじて視線をむけるのみ。
そもそも、命乞いなんざする気はないし、
これしきで即死させられると思ったら大間違い……。
「……っていうか、な、なんかさっきから視界がスースすると思ったら、」
う、
う──。
「上蓋がぁっぁあああああああ?!」
上蓋がぁっぁああ!!
上蓋がーーーーー!!
な、なんてこった。
上蓋消失?!
人生……もとい箱生一の大ダメージを受けてしまったー。